第7次交通安全基本計画の概要

第1 計画期間

平成13年度から17年度

第2 計画の基本的考え方

  • 21世紀の安全な交通社会の形成に向けて、経済社会情勢の変化を踏まえ、交通事故の実態に対応した安全対策が必要
  • 交通社会を構成する人間、交通機関、交通環境の3要素について、適切かつ効果的な施策を総合的に策定し、これを国民の理解と協力の下、強力に推進する。
  • 3要素に係る施策の基礎として、事故原因の総合的な調査・分析の充実・強化、科学技術の振興及びそれらの成果の普及を図る。
  • 交通事故が発生した場合の被害軽減対策、被害者救済対策、被害者等の心情に配慮した対策を推進する。
  • 高齢化、情報化、国際化等の社会情勢の変化等に対応し、適切な施策を重点的かつ効果的に実施する。
  • 市民参加型の交通安全活動を推進する。

第3 道路交通の安全

1. 道路交通事故のすう勢と交通安全対策の今後の方向

(1)平成12年の交通事故

死者数は9,066人、負傷者数は115万5,697人、事故件数は93万1,934件であり、12年までに死者数を9,000人以下にするという目標は達成できなかった。

(2)近年の特徴

  1. 65歳以上の高齢者の死者数が高水準で推移しており、全死者数の約3分の1を占めている。このうち、高齢者の歩行中の死者数が高齢者の死者数の約5割を占め、また、高齢者の自動車運転中の死者数が増加している。
  2. 高齢者が第1当事者(交通事故の当事者のうち、過失が最も重い者又は過失が同程度の場合は被害が最も軽い者)となった自動車運転中の死亡事故件数が急増している。
  3. 自動車乗車中の死者数が高水準で推移しており、その約6割はシートベルト非着用である。
  4. 夜間における死亡事故件数が高水準で推移している。

(3)今後の方向

  • 従来の交通安全対策を基本としつつ,効果的な対策への改善を図り、有効性が見込まれる新規施策を推進する。
  • 対策の実施に当たっては,目標を設定し,その実施後においては,効果評価を行い,必要に応じて改善するという枠組みの確立を図る。
  • 市民参加型社会の進展,高齢化,国際化,情報化等の社会情勢の変化に対応した施策の展開を図る。
  • 高齢者,身体障害者,交通事故被害者等の視点にも十分配慮する。
  • 自動車交通量の拡大の抑制等により交通需要や円滑性・快適性にも配慮

2.道路交通安全対策の重点・新規施策

(1)高齢者の交通安全対策の推進

  • 参加・体験・実践型の交通安全教育、高齢者交通安全指導員(シルバーリーダー)の養成
  • バリアフリー化を始めとする歩行空間の整備等により、高齢者等が安心して暮らせる道路環境づくりを推進
  • 高齢者講習の充実、更新時講習における高齢者学級の拡充、高齢者が乗りやすい自動車の開発促進等による高齢者の安全運転対策の推進

(2)シートベルト及びチャイルドシート着用の徹底

  • シートベルト及びチャイルドシートの着用効果及び正しい着用方法についての理解を求め、正しい着用を徹底
  • 後部座席におけるシートベルトの着用推進
  • チャイルドシート着用指導員の養成、チャイルドシートと座席との適合表の公表の促進、地方公共団体等が行うチャイルドシートの再利用活動等の促進

(3)安全かつ円滑な道路交通環境の整備

  • 事故多発地対策の推進
  • 交通管制システム・信号機の高度化、道路標識の高輝度化・大型化・可変化、道路標示の高輝度化等の推進
  • 道路の面的整備等と交通規制を組み合わせたコミュニティ・ゾーンの形成、歩道の整備、自転車道の整備、「道の駅」の整備等の推進
  • 高度道路交通システム(ITS)の推進
  • 交通需要マネジメント(TDM)施策の推進
  • 災害に強い道路及び交通安全施設等の整備、的確な交通規制の実施等災害時における交通安全を確保するための施策の推進

(4)交通安全教育の推進

  • 幼児から成人に至るまでの段階的かつ体系的な交通安全教育及び高齢者、身体障害者等に対する適切な交通安全教育の実施
  • 国,地方公共団体,警察,学校,関係民間団体及び家庭の連携による指導者の養成・確保、教材等の充実、参加・体験・実践型の教育の普及
  • 安全運転意識の育成及び危険予測・回避能力の向上を目的とした、免許取得前教育、免許取得時教育、免許取得後の再教育の充実

(5)車両の安全性の確保

  • 車両の安全基準の拡充・強化
  • 先進安全自動車(ASV)の開発、普及
  • 自動車アセスメント事業の推進
  • リコール制度の充実

(6)効果的な指導取締りの実施

  • 死亡事故等重大事故に直結する悪質・危険性、迷惑性の高い違反に重点を置いた効果的な指導取締り
  • 暴走族による悪質事犯に対する指導取締りの強化

(7)救助・救急体制の整備

  • 救急救命士の養成・配置等の促進、ドクターカーの活用推進、消防・防災ヘリコプターによる救急業務、ドクターヘリによる救命医療の推進
  • 心肺そ生法等の応急手当の普及、事故車両等から自動的に緊急通報等を行うシステムの普及、救命救急センターの整備促進等

(8)被害者対策の充実

  • 重度後遺障害者に対する介護料の支給及び重度後遺障害者の治療・看護を専門に行う療護センターの設置・運営に対する援助措置の充実
  • 被害者等が事故相談を受けられる機会の充実、被害者等への事故概要、捜査経過等の情報の提供、被害者連絡制度の充実、行政処分に関する情報の適切な提供等の被害者対策の充実

(9)交通事故調査・分析の充実

  • 多面的な角度からの交通事故情報の収集・分析
  • 交通事故総合分析センターの充実・活用

(10)市民参加型の交通安全活動の推進

  • 交通安全対策に関して住民が計画段階から実施全般にわたり積極的に参加できる仕組みづくり
  • 住民や道路利用者が主体的に行う「ヒヤリ地図」の作成,交通安全総点検等により,市民参加型の交通安全活動の推進
  • 国、地方公共団体及び民間団体等が一体となった交通安全活動推進体制強化

3. 道路交通安全対策の目標

自動車保有台数当たりの死傷者数を可能な限り減少させるとともに、平成17年までに、年間の24時間死者数を、交通安全対策基本法施行以降の最低であった昭和54年の8,466人以下とすることを目指す。

第4 鉄軌道交通の安全

1. 鉄軌道事故のすう勢

  • 鉄軌道の運転事故は、長期的に減少傾向
  • 平成11年には山陽新幹線においてトンネルのコンクリートのはく落事故、12年には営団日比谷線中目黒駅構内列車脱線衝突事故が発生し、社会的に大きな影響を与えた。

2. 鉄軌道安全対策の重点施策

(1)事故調査体制の充実による同種事故の再発防止

事故等の教訓をいかし、問題の所在に的を絞った効果的な対策を講ずるため、所要の鉄道事故調査体制の整備

(2)事故の未然防止対策の推進

  • 鉄軌道事業者からの事故等の報告制度について見直し等を行い、重大インシデント(結果的には事故には至らないものの、事故が発生するおそれがあると認められる事態)分析の充実を図る。
  • 事故等に関する情報公開を積極的に推進し、広く鉄軌道事業者に周知することで、事業者における再発防止対策の充実強化に資する。

第5 踏切道における交通の安全

1. 踏切事故のすう勢

踏切事故は、長期的に減少傾向にあるが、依然、踏切事故は鉄軌道の運転事故の約半数を占めている状況にあり、踏切道における交通の安全と円滑の観点から改良すべき踏切道がなお残されている。

2. 踏切道における交通安全対策

踏切道改良促進法改正、第7次踏切事故防止総合対策により、踏切道の立体交差化、構造の改良、統廃合の促進、踏切保安施策の整備、交通規制の実施等を総合的かつ積極的に推進する。

第6 海上交通の安全

1. 海難等のすう勢

  1. 海難の原因は、人為的要因によるものの割合が高い。
  2. 港内や湾内などの船舶交通がふくそうする海域での要救助船舶の隻数の割合は、横ばい状態で推移
  3. 平成10年以降漁船の要救助船舶の隻数が増加に転じた。
  4. 船舶からの海中転落による死亡・行方不明者は依然として多く、中でも漁船、プレジャーボート等からの海中転落による死亡・行方不明者が多い。
  5. プレジャーボート等の要救助船舶の隻数は増加しており、その原因は、他の一般船舶と比べるとバッテリーの過放電や燃料の欠乏等極めて初歩的なミスによるものの割合が高い。

2. 海上交通安全対策の重点施策

(1)ふくそう海域における海上交通安全の確保

航行管制制御システムの確立等を行うとともに、既存航路の拡幅・増深等のハード施策とITを活用した海上交通のインテリジェント化等による湾内交通ルートの最適化等のソフト施策を有機的に組み合わせることにより安全で高速に航行できる海上ハイウェイネットワークの構築を推進する。

(2)プレジャーボート等の安全対策の推進

マリンレジャー愛好者自らが安全意識を十分に持つようにするため分野毎にきめ細かな海難防止指導を実施するとともに、事故の発生を未然に防止する施策を、マリンレジャー愛好者の意見を幅広く取り入れつつ推進する。

(3)救命胴衣の着用率の向上及び救助体制の強化

長時間の着用に適した救命胴衣の技術基準の検討を行い、漁船、プレジャーボート等の乗組員に対し、救命胴衣の着用を徹底させるためのキャンペーンを強力に推進するとともに、ITを活用した遭難者の正確な位置の把握等により救助体制の強化を図る。

(4)漁船の安全対策の推進

乗組員の安全運航の意識向上に努めるとともに、見張りの励行等について、積極的に指導・啓発を図る。

(5)外国船舶の監督の強化

海上人命安全条約(SOLAS条約)、海洋汚染防止条約(MARPOL条約)等の国際条約に基づき、我が国に寄港する外国船舶に対する監督(PSC)を実施し、国際基準に適合していない船舶(サブスタンダード船)の排除に努める。

3. 交通安全基本計画における目標

年間の海難及び船舶からの海中転落による死亡・行方不明者数を平成17年までに200人以下とすることを目指す。

第7 航空交通の安全

1. 航空事故のすう勢

我が国の定期航空運送事業における乗客死亡事故は、昭和61年以来皆無であるが、負傷事故や外国航空機、自家用航空機等による死傷事故が依然として発生している。

2. 航空交通安全対策

航空交通環境の整備、航空機の安全な運航の確保、航空機の安全性の確保、救助・救急体制の整備、科学技術の振興等の対策を充実し、総合的かつ計画的に推進するとともに、重大インシデントの分析及びそれに基づく対策、外国航空機への立入検査に取り組むほか、次世代航空保安システムの運用に向けた対策を強力に推進する。