中央交通安全対策会議専門委員会議(第1回)議事要旨
文責:総務庁長官官房交通安全対策室
日時
平成12年2月22日(火)14時~16時35分
場所
虎ノ門パストラル 葵の間
出席者
- (委員)
- 越、岡崎、久保田、小西、小山、斎藤、佐藤、島田、杉山(武)、杉山(雅)、鈴木、鶴岡、長江、福島、宮本、山村の各委員(座長:越委員)
- (総務庁)
- 菊池事務次官、久山審議官、人見交通安全対策室長、影山参事官、生亀参事官、西川参事官、その他関係官
- (関係省庁)
- 警察庁 石川交通企画課長
- 文部省 徳重学校健康教育課長
- 運輸省 佐久間技術安全課長
- 建設省 村上道路環境課長
- 消防庁 鷺坂救急救助課長
- その他関係省庁担当官
内容
- 菊池総務事務次官から、開会の挨拶が行われた。
- 専門委員及び総務庁(事務局)並びに関係省庁出席者の紹介が行われた。
- 議事
- (1)会議開催の趣旨、第7次交通安全基本計画作成に係る専門委員会議の進め方について事務局から説明が行われた。
- (2)第6次交通安全基本計画の進捗状況について事務局から説明が行われた。なお、詳細な質問・意見は、後日事務局にお願いする旨、座長から発言があった。
- (3)第7次交通安全基本計画作成のための主な論議事項について、論議事項の全般と道路交通について事務局から説明が行われた。
- (4)論議事項についての自由討議(専門委員の発言は●とする。)
● 特に主張したいのは交通安全教育の充実であり、中でもマナーやモラルの問題が最も重要である。
高齢者の教育も大事だが、幼児からの一貫した交通教育が必要である。
年齢を重ねてからの教育は困難な面もある。大人はペナルティーで対応することもやむを得ないと思うが、約束を守ることや他の者に「譲る心」といった社会生活の基本ルールについて、人格形成も含め幼稚園、小学校からの交通安全教育で徹底させたい。
欧州運輸大臣会議によれば、事故原因は人が80%以上、道路が10数%、車が2~3%とのことである。
また、ドライバーが納得できる取締りを行って欲しい。
さらに、車の安全性を高めるのは重要だが、費用対効果が悪いと思われるので、高度なITSが飛躍的に普及し安全性が高くなるまでの間は、人間教育を中心に施策を進めて欲しい。● 市民参加が論点の一番目に掲げられていることが特徴的だと思う。ある種の危機感を与え得る情報提供といった自発的・主体的参加の動機付けとともに、参加したことによる成果の保証を併せて行うことが大切である。例えば、社会実験の結果が公共事業とどう関わるか等、参加の位置付けを議論する時期に来ていると考える。
● 新聞で報道されるケースだけが当事者が苦しむケースではないという実態を国民に知ってもらいたい。実態を知らなければ、対策を立てることはできないと考える。
「事故後の対策」が第6次交通安全基本計画にはほとんどないことにショックを受けた。「予防」とは防止のみならず事故後の早期対策・リハビリを含めたものであり、防止以外の部分も重視すべきと考える。また、事故は当事者にとってはエラーではない。事故の発生をゼロにはできないため、事故後の対策をもっと充実してもらいたい。
死者は減ったが、長期リハビリを要する者等重傷者は増えているかもしれない。その実態を調べているのか。● 地球環境計画との整合性の観点をもっと強く出して欲しい。
次に、任意保険のリスク細分型保険の支払率は、事故の特徴を示していると思うが、北海道や鹿児島に多いといった地域のばらつきが見られる。これらの地域には公共交通機関のインフラ整備が不十分であり、車を良く使うといった要素がある。したがって、全国一律でなく地域性の差異を前提とした基本計画を作るべきだと考える。● 学校教育の中での交通安全教育の重要性を感じる。中学生、小学生、乳幼児の事故は減少しており、20~30年前に学校教育を受けた人達が親になって、やっと当時の教育の効果が出てきたと考える。長い目で見れば、交通安全教育の重要性は大きく、学習指導要領にもさらに交通安全教育を組み込むべきだと思う。また、少子化、過保護との関連から、思春期の心の教育にもつながる交通安全教育が必要である。
● 飛行機の場合と同様、自動車による事故の場合も当事者間の関係の処理のためだけでなく、より安全な交通対策に活かすための情報を取り込むための丁寧な事故調査・分析が必要であると考える。
また、海上・航空交通の分野ではレジャーが原因の事故が増えているが、交通といわゆる遊びは観点が違うと思う。道路交通においてもそのような要素があるのではないかと思う。● 事故調査・分析を行うと、複雑でない交差点の事故でも、運転者の女性が身長が低く標識が見えなかったことによる場合がある。実況見分の際、運転者の視点も含めた現場での態様を詳しく調べ、原因究明を対策にフィードバックして欲しい。安全対策は簡単なところから進められるのではないか。
● 目標設定値の根拠算出方法の添付は、当然行うべきだと考える。何故そのようになるのか十分に示された場合と、キャッチフレーズだけの提示では大きく効果が違うと思う。
市民参加については重要だと考えるが、積極的参加者数は少ないため、参加の動機付けは「成果の情報提供」だけでは足りず、「市民参加によりどんな便益が得られるか」まで示す必要があると考える。
また、「自家用自動車交通の便益の享受の抑制の必要性」については、当該便益の享受を前提として施策が立案されていることを考えると、計画の柱として最初から位置付けられるものかが疑問である。そのようになるのが望ましいという「結果」に過ぎないのではないかと思う。
さらに、何を重視するかにより、複数の手段の提示もあり得ると考える。● 交通安全基本法中の「総合的」の用語は、焦点がぼやけやすいので、意味を明確にすべきである。
交通安全基本計画の中の既存の施策の継承部分については、現実に死亡者が減っても事故発生件数は増えているので、厳しめに第6次交通安全基本計画をレビューする必要がある。
新機軸については、「費用対効果」の観点から、どこまで行うのかということを具体的に検討し、場合によってはモデル分析を行うなどする必要もあると考える。
ITSについては、もう少し踏み込んで記述して欲しい。
「社会的コスト」については、経済学的には用語の使い方が違うので、留意されたい。● 市民参加型社会の重視は大切であるが、目標による管理を重視して欲しい。
「参加」は計画(Plan)、実行(Do)、評価(See)まで含めたものだと思う。評価段階での参加が大事であり、評価のものさし作りにも参加してもらうことが必要である。第6次交通安全基本計画の目標設定の際には国民の参加はなかったが、第7次交通安全基本計画においては、目標作りにも国民を参加させ、どうなれば成功又は失敗なのかというものさしを国民に作ってもらってはどうか。それが国民の参加や国民一人一人の安全への動機付けとなるのではないか。
また、目標値の算出方法を交通安全シンポジウム等で提示して国民の反応を見てはどうか。負傷者を重傷者・軽傷者に分けてものさしを作ることも重要である。
なお、社会がコストを負担することにより個人の罪の意識が薄れるのではないかという懸念がある。● まとめ方が網羅的なのはやむを得ないが、5年間の社会の変化を明らかにし、その変化に対応して新計画はどこに重点を置くのかを明確にし、読み手に分かりやすいものにすることが必要である。
例えば、死者数は減ったが、事故発生件数は増加しており、総量抑制が必要である。また、環境との調和から自転車の利用が促進されているが、高齢者・歩行者の安全性の確保から見ると危険性をはらんでいるため、新しい方法もあり得るのではないかと考える。
運送事業の規制緩和については、安全コストについて考えるべきである。
なお、受け手側に分かりやすいように年齢層別に対策の記述をする必要がある。それにより地方自治体も各々の施策のイメージをしやすくなると思う。● ITS絡みでASVが進展していく。
しかしながら運転するのは「人」である。過去30年の歴史を振り返り、同じ講習を何度も受けさせていないか等交通安全対策の受け手の立場を考慮する必要がある。また、主婦や高齢者等情報を得にくい状況もあると思われるので、頻繁に仕組みを見直し、さらに幅広い指導者養成に力を入れて欲しい。● 論議事項試案の文章が難解過ぎる。言葉を大事にすべきである。
交通事故において、1年間に9千人以上の死者数が発生している事実に直面すると、コストと割り切れるものではない。
防災だけに特化して強化された地域がないのと同様、交通安全だけに特化した安全教育は難しい。子供達がキレる、荒れるといったことに対応する交通安全教育を、どのように行うべきかということに関心がある。
また、中央省庁再編を、第7次交通安全基本計画作成において考慮する必要はないのか。● 従来は、「総合的」といっても各分野の枠内での概念であったので、従来の分野の枠を取り払い、交通体系全体でどうあるべきかを考えるべきだと思う。例えば、「都市の中での自動車と鉄道の役割」等を検討し、総合的な社会全体の交通安全を増加させることが必要である。
● 論議事項試案について、個人的には非常に分かりやすい文章であった。なお、いくつかの単語については後日確認したい。
心の教育は大切なことである。また、自発的に自分の身を守ることが重要であるが、走っていても競争心を煽るような道づくり、取り締まる側が心がゆがんでいるのではないかと思えるような取締りがある状況において、若者にちゃんと育てといっても無理がある。行政はきちんとサポートして欲しいと思う。
市民参加型社会に必要なのは、お互い気持ちいいという心の納得であり、それが自然に根付いてルールとなるのが本来の姿だと思う。 - 事務局から次回日程等の説明があった。
- 閉会
以上