中央交通安全対策会議専門委員会議(第3回)議事要旨

日時

平成12年7月18日(火)14時00分~16時30分

場所

中央合同庁舎第4号館(総務庁)4階 共用第2特別会議室

出席者

  • (委員)
    • 越(座長)、生内、岡崎、久保田、小西、斎藤、佐藤、島田、杉山(武)、杉山(雅)、鈴木、鶴岡、長江、福島、宮本、森地、山村、蓮花の各委員
  • (総務庁)
    • 人見交通安全対策室長、影山参事官、林参事官、その他関係官
  • (関係省庁)
    • 警察庁 石川交通企画課長
    • 文部省 高杉学校健康教育課長
    • 運輸省 中崎技術安全課長、森崎保安車両課長、遠藤運航課長
    • 建設省 荒井道路交通管理課長、宮田道路環境課長
    • その他関係省庁担当官

内容

  1. 越座長から、開会の挨拶が行われた。
  2. 第2回会議における専門委員からの質問及び意見に対して、関係省庁による回答及び説明が行われた。
  3. 関係省庁による交通安全諸施策の説明が行われた。
  4. 第7次交通安全基本計画の作成について、第7次交通安全基本計画作成のための主な論議事項試案に基づくフリーディスカッションが行われた。

    (以下、発言内容)

    • 外国航空機の安全確保について、航空会社の安全管理体制やパイロットの操縦訓練の仕方などが、どう普段の安全運航に反映されるかや不安全要因に結びついているかといった情報が運輸省で得られるのであれば、それを公開することによって、不安全要因を各航空会社が取り除いていくと考える。運輸省はインシデント情報、危険な異常運航などの情報が多い航空会社については、ある程度発表してもいいのではないか。
    • 鉄道が他の乗り物と比べて安全だということで、日常的な業務の中で事故に出くわさないということが安全を阻害する要因になっているのではないか。情報を事業者間に共有の財産として開示し、財産を築いていくことが必要である。いかにインシデント情報を適切かつ正確に取り出すかを検討しなければならない。現場においても、全体の安全を考えた視野を広げた教育が必要である。
    • 事故が起こると救急、事故調査ということが念頭に置かれるが、初期の対策において、精神的なケアの問題も考えられるようにしていただきたい。長期的な療護という点では、精神的な問題というのは非常に大きく、保障の問題にも影響してくる。
    • 事故発生時における早期復旧体制の確立について、鉄道事故の場合、ダイヤ回復の情報が提供できていない。復旧体制と同時に、さらなる情報システムの推進を行うべきである。海上交通について、東京湾や瀬戸内海など割合逼迫したようなところは、きちんとした管制システムを早急につくることが必要である。
    • 日比谷線の事故において事故調査検討会がつくられたが、今後はそれを常設したり、法制化して法的な権限を持たせることについてどう考えているのか。インシデント情報の収集について、具体的にどういう情報の集め方をイメージしているのか。飛行機とは違って、鉄道のように乗る会社を選択できないものに対しては、情報を単に開示するだけでいいのか。船に関しては、非常に厳しい労働を強いられ、そういう労働環境に関する言及が全くないことについて、どう考えているのか。
    • 公的な交通と私的な交通を考えた場合に、ある程度公的な交通を優先するが、私的な交通というものとどう調和させるかが重要である。渋滞対策というのは、ある意味では事故対策とも関連する。公的な交通が麻痺すると、併せて私的な交通が麻痺してしまうので、私的な交通を補填するための施策等を検討すべきである。特に踏切事故に関してそれを強く感じるので、その対策が必要である。
    • 航空交通に関して、インシデント等の情報公開については、昨年6月に航空法を改正し、今年2月から施行され、ニアミス以外のインシデントについても報告義務を課すようになっている。この目的は、事故に至らないような小さなものを集めて、それに対する再発防止策を的確に立てることである。もう一つは、さらにインシデントにもならないようなものについても情報を共有することで、例えば他のパイロット、整備士の安全性の向上、その後の事故再発防止に役立てられるため、匿名での報告制度を設けて、それを航空会社間で共有させるようなことも行っている。また、航空会社のランキング付けをすることについては、インシデントの発生率でランキング付けをした場合、短距離路線で小型機を使っている場合と長距離路線で大型機を使っている場合では、インシデントの発生率が違ってくるので公平でない等の問題がある。航空機事故の後の精神的ケアについて、これは航空事故ばかりでなくて、全てに共通する問題であるが、諸外国の動向なんかを含めて確認している状況である。
    • 精神的なケアの問題について、事故直後に各省庁で横断的な対策をとるといったシステムに精神的なケアの対策を重点事項として入れないと意味がない。
    • 鉄軌道交通に関して、運輸技術審議会の事故分析小委員会、保安連絡会議において、事故情報の提供について検討を行っており、今後ともその強化を図って参りたい。また、職員の縦割りをなくすような努力も保安連絡会議のような場を使って考えて参りたい。乗客への情報提供についても、乗客に配慮した情報提供システム等を今後検討して参りたい。事故調査検討会の法制化については、現在の事故調査検討会でさらなる事故調査体制のあり方を議論していただく予定であり、法制化についても議論が行われるのではないかと考えている。また、鉄道のように乗る会社が選択できないものについては、鉄道事業者の努力の指標として、今後とも情報提供は進めて参りたい。さらに、事業者との情報交換の場を通じて、事故による他の交通への影響が極力少なくなるよう努力して参りたい。
    • 海上交通に関して、現在、運輸技術審議会で海上でのITSの検討を行っているが、システムを開発するためには予算が必要であり、今後は予算面について考えて参りたい。また、内航船の安全性について、厳しい労働環境を強いられているため、こういったことも含めて考えるべきという御指摘については、そのような観点からも検討していく必要があると考えている。
    • 21世紀に入って初めての基本計画なので、交通関係の情報化、IT化を盛り込んだらどうか。道路交通情報センターでは、既にインターネットによるオンタイムの状況提供を始めたが、鉄軌道、航空などを網羅したIT化の問題について、そういう視点が必要である。外航船が海賊の脅威にさらされているようだが、基本計画は海外での事故は計画外であるのかもしれないが、外航船のセキュリティの整備についても言及するのがよいのではないか。交通事故等の救急ドクターヘリが最近本格化してきたようだが、いざというとき使えるよう、着陸場所の総点検についても実施していくべきである。
    • データの蓄積、正確な分析は、交通事故を減らすために大切なことであり、また、捜査や調査をできるだけ明確化していくと、そこから別のアプローチの可能性が引き出すことができる。交通教育について、学校の現場と、家庭や社会という三つのネットワークを確立しなければいけないが、そのネットワークの中にメディアというものを組み込んでいけば、もっといい効果が上げられる。
    • 日本の道路は、外国人が運転しづらいと思うので、交通標識の改善をお願いしたい。メディアの活用については、交通安全をより理解することができるので賛成である。
    • 船舶の安全に関して、ポートステートコントロールは以前から言われてきた施策なので、今後は何を強化していくのか具体的に明確にすべきである。また、基本計画の中で、規制緩和と安全確保との関係をどのように認識しているかについて明確にすることが必要である。
    • 基本計画は、一般の人たちに周知させることが必要な計画である。また、論議事項試案中の表現で、トーンの弱いものと強いものがあるが、道路交通に関しては、もっと強い表現であってもいいのではないか。
    • 21世紀に出す基本計画は、20世紀で失敗したことを踏まえていかなければいけない。IT革命については、周辺技術が目覚しい発達をしているが、それをどうやって使うのか、安全運転とどう結びつけていくかを考えた上で進めていくべきである。
    • ドライバーや交通参加者にとってユーザビリティが高い交通環境や道路をつくること、ドライバーや交通参加者の行動や気持ちなどに配慮することが必要である。道路交通での重大事故で、原因解明が必要なものについては、事故調査委員会をつくり、そこで一つ方向性を示すようにすべきである。また、イギリスの道路安全監査のように、道路建設の前に安全アセスメントを行う制度を日本でも進めていくべきである。運転者教育、特に免許制度や試験のあり方について、他国で行っている効果的なものを積極的に取り入れるべきである。
    • 交通安全教育というのは、交通主体、交通参加者としての正しい行動のあり方を教育することだと思うが、それとは別に、望ましい交通社会のあり方とか安全な街をつくる主体を育てる、そういう教育が早い段階で必要ではないか。交通安全教育の指導者の育成では、街づくりとか、そういうレベルの指導する方を育成すると、各街の状況は変わってくるのではないか。
    • 交通安全教育について、子供から高齢者までを生涯教育としてとらえた場合、一貫した指導が重要であるが、学校では組織的・計画的な教育が行われるが、成人ではそれが途切れるような状況がある。地域社会の中で、仲間づくりや情報の交換できる場をいかに取り入れていくかという教育のあり方を模索する必要がある。
    • 現在の交通取締りについて、建前と現実の間にかなりの遊離が見られるように思われ、果たして国民が納得できる取締りが行われているのか、このことについて、もう一度考え直すべきではないのか。
    • 実際に起こっている事故現場から交通事故の分析を行うことが必要であり、事故原因の分析を行う機関が必要である。また、事故分析を行った場合、それを各省庁でフィードバックできるシステムをつくり、総合的な交通安全対策を推進すべきである。
    • ITSの導入は、ハード面の整備を伴うため、そのための道路工事によって交通事故を引き起こすことのないよう注意しなければならない。
    • 今の裏と表の話とか、建前と本音の乖離とかという話は非常に根が深いが、このことについて何も考えないわけにはいかないと思う。また、事故調査分析で、責任追求と原因追求は本質的に違うところがあるとの御指摘があったが、このことについては随分昔から言われてはいるが、何も進展はないように思える。多発地点の処理では、専門家を育てることが必要で、その専門家に調査研究をお願いするといった体制ができたらと期待している。
    • 高齢者対策について、高齢者の身体機能の変化ということを、これまでも安全対策に組み入れて考慮されてきていると思うが、身体機能の変化の個人差を、きめ細かく安全対策に反映させるようなことも必要ではないか。
    • 警察庁のパイロット事業を見ると、非常に健全に機能している地域や家族を前提にしているが、意識の高い人にだけ向かって効果が出ればいいというものでもなく、その辺をもう少し考えられた方がいいのではないか。また、交通事故の調査や捜査をきっちり分けたりしてもよいのではないか。
    • 都心部や駅の近くや商店街について、コミュニティゾーンの住宅地版と同じようなものでマニュアルをつくり、プロジェクト化して、事故の多いところから実行するようなことを提案してはどうかと思う。
  5. 第19回交通安全シンポジウムについて、事務局より説明があり、その実施内容について了承された。
  6. 事務局から次回日程等の説明があった。
  7. 閉会

以上