第1部 陸上交通の安全
第3章 踏切道における交通の安全
1.踏切事故のない社会を目指して
踏切事故は、長期的には減少傾向にあるが、改良すべき踏切道がなお残されており、引き続き踏切事故防止対策を推進することにより、踏切事故のない社会を目指す。
2.踏切道における交通の安全についての目標
平成22年までに踏切事故件数を平成17年と比較して約1割削減することを目指す。
3.踏切道における交通の安全についての対策
<視点>
それぞれの踏切の状況等を勘案した効果的対策の推進
<4つの柱>
- 踏切道の立体交差化、構造の改良及び歩行者等立体横断施設の整備の促進
- 踏切保安設備の整備及び交通規制の実施
- 踏切道の統廃合の促進
- その他踏切道の交通の安全と円滑化を図るための措置
第1節 踏切事故のない社会を目指して
踏切事故は、長期的には減少傾向にある。しかし、一方では、踏切事故は鉄道運転事故の約半数を占め、また、改良をすべき踏切道がなお残されている現状である。こうした現状を踏まえ、引き続き、踏切事故防止対策を総合的かつ積極的に推進することにより踏切事故のない社会を目指す。
I 踏切事故の状況等
1.踏切事故の状況
踏切事故(鉄道の運転事故のうち、踏切障害及びこれに起因する列車事故をいう。)は、長期的には減少傾向にあり、平成17年の発生件数は450件、死傷者数は306人であり、12年の発生件数450件、死傷者数260人と比較して、発生件数は変化がなく、死傷者数で18%の増加となっている。
踏切事故は長期的には減少しており、これは踏切道の改良等の安全対策の積極的な推進によるところが大きいと考えられる。しかし、依然、踏切事故は鉄道の運転事故の約半数を占めている状況にあり、また、改良するべき踏切道がなお残されている現状にある。
2.近年の踏切事故の特徴
近年の踏切事故の特徴としては、(1)原因別でみると、直接横断によるものが半数以上を占めており、また、衝撃物別では自動車と衝撃したものが半数以上を占めている。
(2)踏切道の種類別にみると、発生件数では第1種踏切道(昼夜を通じて踏切警手が遮断機を操作している踏切道又は自動遮断機が設置されている踏切道)が最も多いが、踏切道100箇所当たりの発生件数でみると、第1種踏切道が最も少なくなっていることなどがあげられる。
II 交通安全基本計画における目標
【数値目標】踏切事故件数を約1割削減
踏切事故は、長期的には減少傾向にある。しかし、一方では、踏切事故は鉄道運転事故の約半数を占め、また、改良をすべき踏切道がなお残されている現状である。こうした現状を踏まえ、踏切道における交通の安全と円滑化を図るため、国民の理解と協力の下、第2節に掲げる諸施策を総合的かつ積極的に推進することにより、平成22年までに踏切事故件数を平成17年と比較して約1割削減することを目指すものとする。
第2節 踏切道における交通の安全についての対策
I 今後の踏切道における交通安全対策を考える視点
踏切道における交通安全対策について、踏切事故件数、踏切事故による死傷者ともに減少傾向にあることを考えると、第7次交通安全基本計画及び第7次踏切事故防止総合対策に基づき推進してきた施策には一定の効果が認められる。
しかし、踏切事故は、一たび発生すると多数の死傷者を生ずるなど重大な結果をもたらすものであること、立体交差化、構造改良、歩行者等立体横断施設の整備、踏切保安設備の整備、交通規制、統廃合等の対策を実施すべき踏切道がなお残されている現状にあること、これらの対策が、同時に渋滞の軽減による交通の円滑化や環境保全にも寄与することを考慮し、開かずの踏切への対策等、それぞれの踏切の状況等を勘案しつつ、より効果的な対策を総合的かつ積極的に推進することとする。
II 講じようとする施策
【第8次計画における重点施策及び新規施策】
- 踏切道の立体交差化、構造の改良及び歩行者等立体横断施設の整備の促進(開かずの踏切等における構造改良等による速効対策と立体交差化の抜本対策)(1)
- 踏切保安設備の整備及び交通規制の実施(2)
- 踏切道の統廃合の促進(3)
1.踏切道の立体交差化、構造の改良及び歩行者等立体横断施設の整備の促進
立体交差化までに時間のかかる「開かずの踏切」等について、効果の早期発現を図るための構造改良及び歩行者等立体横断施設の整備を緊急的に取り組む。
また、歩道が狭隘な踏切等における歩行者安全対策のための構造改良等を強力に推進する。
さらに、「開かずの踏切」等の遮断時間が特に長い踏切等で、かつ道路交通量の多い踏切道が連担している地区等や、主要な道路との交差にかかわるもの等については、抜本的な交通安全対策である連続立体交差化等により、踏切道の除却を促進するとともに、道路の新設・改築及び鉄道の新線建設に当たっても、極力立体交差化を図る。
以上の構造改良等による「速効対策」と立体交差化の「抜本対策」との両輪による総合的な対策を緊急的かつ重点的に推進する。
2.踏切保安設備の整備及び交通規制の実施
踏切遮断機の整備された踏切道は、踏切遮断機の整備されていない踏切道に比べて事故発生率が低いことから、踏切道の利用状況、踏切道の幅員、交通規制の実施状況等を勘案し、着実に踏切遮断機の整備を行う。
また、遮断時間の長い踏切ほど踏切事故件数が多い傾向がみられることから、大都市及び主要な地方都市にある踏切道のうち、列車運行本数が多く、かつ、列車の種別等により警報時間に差が生じているものについては、必要に応じ警報時間制御装置の整備等を進め、踏切遮断時間を極力短くする。
さらに、自動車交通量の多い踏切道については、道路交通の状況、事故の発生状況等を勘案して必要に応じ、障害物検知装置、オーバーハング型警報装置、大型遮断装置等、より事故防止効果の高い踏切保安設備の整備を進める。
道路の交通量、踏切道の幅員、踏切保安設備の整備状況、う回路の状況等を勘案し、必要に応じ、自動車通行止め、大型自動車通行止め、一方通行等の交通規制を実施するとともに、併せて道路標識等の大型化、高輝度化による視認性の向上を図る。
3.踏切道の統廃合の促進
踏切道の立体交差化、構造改良等の事業の実施に併せて、近接踏切道のうち、その利用状況、う回路の状況等を勘案して、地域住民の通行に特に支障を及ぼさないと認められるものについて、統廃合を進めるとともに、これら近接踏切道以外の踏切道についても同様に統廃合を促進する。
ただし、構造改良のうち、踏切道に歩道がないか、歩道が狭小な場合の歩道整備については、その緊急性を考慮して、近接踏切道の統廃合を行わずに実施できることとする。
4.その他踏切道の交通の安全と円滑化を図るための措置
踏切道における交通の安全と円滑化を図るため、必要に応じ、踏切道予告標、踏切信号機、ITの導入による踏切関連交通安全施設の高度化を図るための研究開発等を進めるとともに、車両等の踏切通行時の違反行為に対する指導取締りを積極的に行う。
また、踏切事故は、直前横断、落輪等に起因するものが多いことから、自動車運転者や歩行者等の踏切道通行者に対し、交通安全意識の向上及び踏切支障時における非常ボタンの操作等の緊急措置の周知徹底を図る必要がある。
このため、広報活動等を強化するとともに、学校、自動車教習所等において、踏切の通過方法等の教育を引き続き推進する。
このほか、踏切道に接続する道路の拡幅については、踏切道において道路の幅員差が新たに生じないよう努めるものとする。