第3部航空交通の安全

航空事故のない社会を目指して

  • 航空事故を減少させる。
  • 事故につながりかねない安全上のトラブルの未然防止を図る。

航空交通の安全についての目標

昭和61年以降継続している特定本邦航空運送事業者における乗客の死亡事故ゼロの記録を継続する。

航空交通の安全についての対策

<3つの視点>

  1. 航空輸送の安全に対する信頼回復
  2. 航空容量の拡大
  3. 安全で効率的なシステムの確立

<6つの柱>

  1. 航空交通環境の整備
  2. 航空機の安全な運航の確保
  3. 航空機の安全性の確保
  4. 救助・救急活動の充実
  5. 被害者支援の推進
  6. 研究開発及び調査研究の充実

第1節 航空事故のない社会を目指して

航空事故を減らすため、また事故につながりかねない安全上のトラブルの未然防止を図るため、航空交通安全についての対策を着実に実施していく。

I 航空事故の状況

航空機の大型化及び航空交通量の増大に対応して、航空交通の安全を確保し、事故発生を防止するため、航空保安施設の整備、航空保安業務の近代化、航空機の安全性を確保する体制の充実強化、航空交通に関する情報システムの整備等の施策が進められてきた。
これらの施策の成果として、我が国の航空機の事故の発生件数は、長期的には減少傾向にある。我が国の大型機による航空事故は、乱気流によるものを中心に年2、3件の発生であり、事故の大半は小型機によるものである。我が国の特定本邦航空運送事業者(客席数が百又は最大離陸重量が5万キログラムを超える航空機を使用して行う航空運送事業を経営する本邦航空運送事業者)における乗客死亡事故は、昭和61年以来発生していないが、平成17年1月以降の新千歳空港における管制指示違反、同年6月の高度計の誤った指示に従った飛行等、ヒューマンエラー、機材不具合に起因する安全上のトラブルが目立っている。
一方、小型機については、航空事故の発生件数は、多少の変動はあるものの、近年は10件程度とほぼ横ばい傾向を示しており、操縦時の不注意や基本的な操作ミス等によるものが多くを占めている。

航空交通事故による事故発生件数、死亡者数及び負傷者数の推移

II 交通安全基本計画における目標

【数値目標】特定本邦航空運送事業者における乗客の死亡事故ゼロ

航空交通事故は、一たび事故が発生すれば、重大な事故となるおそれがあるほか、国民誰しもが巻き込まれる可能性を有しており、国民の理解と協力の下、第2節に掲げる諸施策を総合的かつ強力に推進することにより、航空交通事故の発生を防止し、昭和61年以降継続している特定本邦航空運送事業者における乗客の死亡事故ゼロの記録を継続する。

第2節 航空交通の安全についての対策

I 今後の航空交通安全対策を考える視点

昭和60年の日本航空機墜落事故以降、我が国の特定本邦航空運送事業者による乗客死亡事故は発生していないものの、平成17年1月以降、我が国の航空会社においてはヒューマンエラー及び機材不具合による安全上のトラブルの発生が顕著であり、事故の予兆ともいえる一連のトラブルの発生を断ち切り、国民の航空輸送の安全に対する信頼を回復することが喫緊の課題となっている。
一方、航空交通情勢をみると、現在、空港及び上空では航空機の交通集中による混雑や遅延等が深刻化しており、今後更に航空交通量が増大していくと予測される中で、羽田再拡張事業を始めとする空港容量の拡大を図るとともに、上空においてもより一層安全で効率的な航空交通システムを確立することが喫緊の課題となっている。このような観点から、航空交通環境の整備、航空機の安全な運航の確保、航空機の安全性の確保、救助・救急活動の充実、研究開発及び調査研究の充実等の各般の安全対策を充実し、総合的かつ計画的に推進することとする。

II 講じようとする施策

【第8次計画における重点施策及び新規施策】
  • 次世代航空保安システム(1(1)ア)
  • 航空交通サービスの充実(1(1)ウ)
  • 空域の容量拡大と空域の有効活用(1(2)ア、イ)
  • 空港・航空保安施設の災害対策の強化(1(4))
  • 航空運送事業者等に対する監督体制の強化(2(1))
  • 予防的安全行政への転換(2(2))
1.航空交通環境の整備

航空交通の安全を確保しつつ、航空輸送の増大に対応するため、次世代航空保安システムの整備及びこれらを活用した航空管制の高度化に資する空域・航空路の整備等を着実に推進することにより、航空交通環境の整備を推進する。
具体的には、空港の整備、管制施設・保安施設等の航空保安システムの整備等については、社会資本整備重点計画に基づき、総合的かつ計画的に推進する。
また、今後の空港整備等に伴い複雑大規模化する航空交通をより安全かつ適切に処理するためには、空域の容量を拡大するとともに、限られた空域を効率的に運用する必要があることから、空域の整備等について強力に推進する。

(1)航空保安システムの整備と提供サービスの充実
航空交通の安全確保を最優先としつつ、交通量の増大やユーザーニーズの多様化に適切に対応した航空交通システムの構築を図るため、運輸多目的衛星(MTSAT※)を始めとする「次世代航空保安システム」の整備を着実に推進する。
また、引き続き整備あるいは更新が必要となる現行航空保安システムについては、その有効利用を図るとともに、次世代航空保安システムへの移行の進捗状況等に応じ、縮退可能な地上航法施設等については漸次廃止を進めていく。
さらに、既存ストックを有効活用し、運航者に提供する航空交通サービス(ATS※)の質的充実を図る。
ア 次世代航空保安システム
(ア)次期管制システムの整備
航空管制情報処理システムが連携し、通過機・到着機の順位付け機能を始めとする多様な管制支援機能の活用や、ヒューマンエラーを防止するための一元的なインターフェースの導入により管制官のワークロードを軽減し、管制処理能力の向上とより一層の安全性の向上を図る次期管制システムの整備を推進する。
(イ)航空交通管理(ATM※)システムの整備
ATS、航空交通流管理(ATFM※)及び空域管理(ASM※)を総合的に機能させることにより、航空交通の安全と効率性を向上させるATMシステムの整備を推進する。また、航空路・空域を設計するためのシミュレーション機能の導入及び運航者と管制機関間等の協調的意志決定(CDM※)の強化等により、そのシステムの高度化を図る。
(ウ)航空灯火・無線施設の整備
空港において、交通の高密度空域における航空機の監視機能の強化等を図るため「改良型二次監視レーダー(SSRモードS※)」の整備を推進する。
(エ)飛行検査の充実
航空交通の安全確保に不可欠な飛行検査業務について、老朽化の著しい現用のYS-11型飛行検査用航空機を更新するとともに、広域航法(RNAV※)や次世代航空保安システムの導入に対応させるため、新しい飛行検査体制の整備及び強化を推進する。
イ 現行航空保安システム
(ア)現行施設の整備
空港において、就航率や定時性の改善による利便性向上を図るため、費用対効果を勘案した上で、新空港の整備にあわせた計器着陸装置(ILS※)、方位・距離情報提供施設(VOR※/DME※)、精密進入用滑走路灯火等の新設及び既存空港における離着陸性能向上のための高カテゴリー化整備等を推進する。
また、航空管制のヒューマンエラーによる事故・トラブルを未然に防止するため、滑走路の使用の可否等に係る情報を処理し管制官に注意喚起する管制支援機能等のシステムの導入を図る。
(イ)航法施設等の縮退
今後、航空機の運航形態は衛星を利用したRNAV(GNSS※)へ移行していくとみられ、このような運航環境下においては、無指向性無線標識施設(NDB※)を廃止できる環境が整いつつあるため、漸次廃止する。
ウ 航空交通サービスの充実
(ア)RNAV運航環境の整備
柔軟に飛行ルートを設定できるRNAVルートを順次全国に導入展開し、飛行ルートの直線化による運航効率の向上及びルート数拡大による上空の受入容量(空域容量)の拡大、更に一方通行化等の安全対策を図る。
また、離島空港等においても、RNAVによる運航便益を享受できるよう、運輸多目的衛星用衛星航法補強システム(MSAS※)を利活用した運航環境を順次整備する。これらRNAVルートを利活用し、全国の飛行ルートネットワークの再構築を図る。
(イ)航空情報(AIS※)センターの設置
今後主流となるRNAVは、機上で衛星測位や電子演算処理が行われ飛行することから、これらの航空技術等に適切に対応し、かつ国際的な品質基準に適合した航空情報の電子化を進めるとともに、これら情報の品質管理体制、情報提供体制の強化を図るため、AISセンターを設置し、円滑な運用を図る。
(ウ)小型航空機の安全対策
既存ストックの利活用による積極的な情報提供やヘリコプターの特性を活かした計器飛行方式による運航の実現に向けた環境整備を図る。
また、海上部及び山間部における送電線への接触事故等を未然に防止するため、特定された地区の航空障害物件への航空障害標識(航空障害灯及び昼間障害標識の総称)の適切な設置を促すとともに運航者に対して物件情報の提供を行う。
  • ※ ILS:Instrument Landing System
  • ※ VOR:VHF Omnidirectional Radio Range
  • ※ DME:Distance Measuring Equipment
  • ※ GNSS:Global Navigation Satellite System
  • ※ NDB:Non Directional Radio Beacon
  • ※ MSAS:MTSAT Satellite Based Augmentation System
  • ※ AIS:Aeronautical Information Servicies
  • ※ MTSAT:Multi functional Transport Satellite
  • ※ ATS:Air Traffic Service
  • ※ ATM:Air Traffic Management
  • ※ ATFM:Air Traffic Flow Management
  • ※ ASM:Air Space Management
  • ※ CDM:Collaborative Decision Making
  • ※ SSRモードS:Secondary Surveillance Radar Mode S
  • ※ RNAV:Area Navigation
(2)空域の整備等
航空管制の高度化を図るため、ATM機能やRNAVを活用した空域・航空路の抜本的再編を行い、空域の容量拡大及びその有効活用を図る。
ア 空域の容量拡大
(ア)洋上空域
現在、特に混雑している北太平洋路線では、空域容量の制約から日本発航空便の約半数が希望経路・高度を飛行できない状況にあるが、今後、MTSATを活用することにより管制間隔の短縮を図り、上空の受入容量を拡大し、安全かつ効率的な運航が実現する環境を確保する。
(イ)国内航空路
RNAVルートを全国的に展開するとともに、これに伴って生じる既存の飛行ルート(VOR/DME等地上航法施設間を直線で結んだルート)との併設による交通集中を避けるため、RNAVルートと既存ルートを運用的に高度分離する航空路再編(スカイハイウェイ計画)を行う。
(ウ)空港周辺空域
衛星を利用したRNAV(GNSS)に対応した出発経路、到着経路、進入方式等のRNAVルートの拡大を図る。
また、特に、東京国際空港及び成田国際空港を含む関東の上空空域では交通混雑が顕著となっており、交通量は更に増加していくとみられている。今後、羽田再拡張事業に併せて、RNAV及び新システム等を導入することにより、限られた関東空域を有効利用し、空域の容量拡大、運航効率の向上、環境対策及び管制官・パイロットのワークロード軽減等を実現するため、関東空域の再編を行う。
イ 空域の有効活用
(ア)基本的考え方
空域の効率的な運用を実施するため、以下の考え方の下、所要の措置を図る。
  1. 航空機運航者が飛行経路、高度等をより少ない制限で選択し飛行することを可能とする運航上の新しい概念やASMの考え方に基づく可変経路や可変空域等を導入し、運用を行う。
  2. 諸外国及び米軍等の空域管理機関との連携を強化し、空域の有効活用を行う。
  3. これらを可能とするための情報処理システムの開発を進める。
(イ)ATMセンターの機能活用
ATMセンターにおいて、全国の航空交通状況を一元的に把握管理するとともに、関係行政機関や航空会社との協力により、新たに自衛隊訓練試験空域を自衛隊が使用しない場合に民間航空機が飛行するための調整や航空機の遅延削減のための航空会社との調整等を実施し、安全かつ効率的な空域の利用を図る。
(3)空港の整備
ア 大都市圏拠点空港等の整備
国内・国際航空需要の増大に対応するため、大都市圏における拠点空港の整備を最優先課題として推進するとともに、一般空港等についても既存施設の高質化等所要の整備を推進する。
また、航空旅客ターミナル施設においては、旅客の安全確保のため、高齢者、障害者等の安全利用に配慮した、段差の解消等のバリアフリー化を引続き推進するとともに、総合的・一般的な環境整備を実現するなどの観点からユニバーサルデザイン化を図る。
イ 空港安全技術の強化
航空機の安全な運航を確保するためには、滑走路等の施設が定められた基準に従って確実に建設され、かつ、常に諸施設が完全な状態で機能するよう維持管理されることが極めて重要である。このため、空港内の工事中における運航の安全確保、飛行場標識施設等の高規格化、舗装構造物の劣化診断、施設の破壊、故障等を未然に防止する予防保全、積雪地における迅速な除雪・融雪等、航空機運航の安全に直接かかわる空港安全技術の強化を図る。
また、空港安全技術に係る新技術を積極的に導入すべく試験研究を推進する。
(4)空港・航空保安施設の災害対策の強化
兵庫県南部地震や新潟県中越地震においても、空港や航空保安施設は大きな被害を受けず、緊急輸送や鉄道・道路の代替輸送としての役割を担うとともに、復旧拠点として大きな役割を果たした。このことからも、空港は災害時においても、その機能を保持することが求められている。よって、空港及び航空保安施設について災害対策の強化を図る。
ア 災害に強い空港づくりの在り方の検討
地域における役割を勘案しながら、必要性に応じた災害に強い空港の在り方を検討し、災害時においても空港機能を保持可能なよう、空港自身の防災性能を向上させる。また、これらの実現のために、既存空港の液状化対策や耐震性向上等の施策について研究を進める。
イ 空港施設の耐震性の強化
既存の空港の滑走路や誘導路等の土木施設、管制塔等の建築施設には、旧設計基準によって建設された施設や老朽化等により現時点で必要とされる耐震性能が確保されていない可能性がある。これらの施設については、適切な診断やそれに基づく地盤の液状化対策等を施し、空港の耐震性能を向上させる。
ウ 航空保安業務の継続的提供の強化
震災時における緊急輸送及び代替輸送を確保するために、空港における航空保安施設や航空路管制施設のバックアップ機能等をその必要性に応じて適宜強化し、災害時における航空保安業務の継続的提供を図る。
2.航空機の安全な運航の確保

航空会社に対する監査専従部門の新設、事後対応型から予防的安全行政への転換等の安全対策を推進するほか、経営トップから現場まで一丸となった安全管理の態勢の構築を推進するとともに、その確認を国が行う「安全マネジメント評価」の仕組みを導入することにより、航空機の安全な運航を確保する。

(1)航空運送事業者等に対する監督体制の強化
航空会社の事業形態が複雑化・多様化する状況を踏まえ、これまでの立入検査実施体制を抜本的に強化し、航空会社における安全性の現状や将来のリスクを把握するなど体系的な監査を実施する。また、専門的かつ的確な監査の実現を図るため、監査担当職員等の研修の充実等を図ることとする。
(2)予防的安全行政への転換
事故や重大なトラブル等の発生を未然に防止するため、事故、インシデントや機材不具合等の航空安全に係る情報を集約し、継続的に分析することにより、航空会社に対する安全対策の指示や安全基準の見直し等を行う予防的安全行政を推進する。また、ヒューマンエラーの防止のため、航空従事者等の教育訓練方式の在り方について検討を行うとともに、操縦士のコミュニケーション能力向上のため航空英語能力証明制度を導入する。
(3)航空従事者の技量の充実等
航空需要の増加等により、今後も長期的には、航空運送事業における航空機操縦士の需要の増加が見込まれていることから、独立行政法人航空大学校において、航空運送事業者の基幹的操縦要員を養成し、その安定的確保を図るとともに、航空運送事業者の行う自社養成についても、十分な指導を行い、操縦要員の質を確保する。
航空機の安全運航を確保するためには航空機乗組員の心身の状態が健全であることが極めて重要であるため、航空機乗組員の身体検査を行う医師及び医療機関等について国土交通大臣の指定制度を設けているが、これらの医師等に対して講習会を通じ判定基準の統一的な運用を指導するとともに、航空運送事業者等に対して航空機乗組員の日常の健康管理等を十分に行うよう指導する。また、航空従事者等に安全に関する情報を周知徹底させ、安全意識の高揚を図るよう航空運送事業者を指導する。
(4)航空保安職員の教育の充実
老朽化・狭隘化している航空保安大学校を移転整備し、将来の航空保安職員の養成の充実を図るとともに、航空衛星システムを中心とする次世代航空保安システム等の導入の進展等に合わせ、職員研修コース・カリキュラム等の見直しを行い、訓練施設の充実を図る。さらに、国際化、経済社会ニーズ等の環境変化に対応できるよう、研修制度の改善、研修体制の強化を推進する。
(5)外国航空機の安全の確保
国際民間航空条約及び航空法(昭和27年法律第231号)に基づき、我が国に乗り入れる外国航空機の安全性を確保する目的で、外国航空機への立入検査(ランプ・インスペクション)を実施しているところであり、今後も我が国に乗り入れている全運航国及び全運送事業者を対象に、広くランプ・インスペクションの展開を図る。
(6)小型航空機等の事故防止に関する指導等の強化
小型航空機の事故を防止するため、法令及び関係規程の遵守、小型航空機の運航者に対する教育訓練の徹底、的確な気象状況の把握等について指導を強化する。また、近年普及してきたレジャー航空については、関係団体を通じ事故防止の指導を行う。さらに、災害時における救援航空機等について、ふくそうする航空交通の中での安全運航確保のための施策の充実を図る。
(7)スカイレジャーに係る安全対策の推進
超軽量動力機、パラグライダー、スカイダイビング、滑空機、熱気球等のスカイレジャーの愛好者が今後も更に増加することが予想されるため、日本航空協会、関係スポーツ団体等の関係団体を通じた安全教育の充実を図る。
(8)危険物輸送の安全基準の整備
医療技術等の発展に伴う放射性物質等の航空輸送量の増加、化学工業の発展に伴う新規危険物の出現等による危険物の航空輸送量の増加及び輸送物質の多様化に対応し、ICAO及び国際原子力機関(IAEA※)において国際的にも危険物輸送に関する安全基準の整備・強化が進められているところであり、これらの動向を踏まえ所要の基準の整備を図る。
また、航空運送事業者等については、危険物輸送従事者に対する社内教育訓練の徹底を指導する。
(9)航空事故原因究明体制の強化等
航空事故及び重大インシデントの原因究明の調査を迅速かつ適確に行い、航空事故の防止に寄与するため、事故調査職員の研修の充実を図り、また、海外の事故調査当局との情報交換を積極的に行うことにより、事故調査職員の資質向上を図るとともに、各種調査用機器の活用により分析能力の向上に努める。
(10)航空交通に関する気象情報等の充実
航空交通に影響を及ぼす自然現象を的確に把握し、飛行場予報・警報、空域を対象とする気象情報、航空予報図、航空路火山灰情報等の航空気象情報の質的向上と適時・適切な発表及び関係機関への迅速な伝達に努める。また、気象及び火山現象等に関する観測施設を適切に整備・配置し、観測・監視体制の強化を図るものとする。

※IAEA:International Atomic Energy Agency

3.航空機の安全性の確保

技術基準等の整備、情報の収集及び処理体制の充実、検査体制の充実等の安全対策を推進することにより、航空機の安全性の確保を図る。

(1)航空機、装備品等の安全性を確保するための技術基準等の整備
航空機の安全性の一層の向上を図るため、我が国の航空機の安全性に関する情報や外国政府、外国メーカー等から得られる安全確保に関する情報を収集、分析及び提供するとともに、技術の進歩等に対応した安全基準の策定、安全性の向上に資する技術に関する調査等の充実を図る。
(2)航空機の安全性に係る情報の収集、処理体制の充実等
航空機の運航回数の増加に対応して、航空機の安全性に関する情報の収集及び処理体制を強化することにより、機材故障等の発生を未然に防止するための対策を推進する。
また、航空機の安全性に関する情報については、運航の安全に関する情報とともに公開されており、今後、情報媒体の多角的活用、情報公開基盤の整備等について検討する。
(3)航空機の検査体制の充実
国産及び輸入航空機に対する型式証明等における設計検査を充実するとともに、国の検査に代わり基準適合性の確認を行う民間事業者の指導・監督等に万全を期すことなどにより、航空機の検査体制の充実を図る。
また、航空機検査官に対する研修の充実等により、検査の質的向上に努める。
(4)航空機の整備審査体制の充実
航空運送事業者の新規参入、整備業務の委託等による整備体制の多様化等に対応するため、航空機の整備に対する審査及び指導・監督体制の充実を図る。
また、整備審査官に対する研修の充実等により、審査の質的向上に努める。
(5)航空機の経年化対策の強化
航空機製造者・運航者等の不具合事例及び諸外国における対策の動向等を踏まえ、航空機の経年化対策を推進する。
4.救助・救急活動の充実

航空機の遭難、事故等の事態に迅速かつ適切に対応するため、関係機関相互の連携を強化するなど救助・救急体制の整備を図る。

(1)捜索・救難体制の整備
航空機の遭難、行方不明等に際して、迅速かつ的確な捜索・救難活動を行うため、関係行政機関の合議体である救難調整本部においては、種々の緊急状態に対応した活動計画、訓練、情報の収集・処理体制等を充実するとともに、施設の性能向上等により、連絡・協調体制の強化を図る。
(2)消防体制及び救急医療体制の整備
国の管理する第1種空港(成田国際空港、中部国際空港、関西国際空港及び国際航空路線に必要な飛行場)及び第2種空港(主要な国内航空路線に必要な飛行場)の消防体制については、国際的な基準に準拠して、化学消防車の配備等所要の措置を講じて、その充実強化を図る。成田国際空港、中部国際空港及び関西国際空港並びに地方公共団体の管理する第2種空港及び第3種空港(地方的な航空運送を確保するため必要な飛行場)についても、同様に、消防施設等の整備に努めるよう空港管理者を指導する。
また、空港における救急医療体制については、年次計画に従い救急医療活動に必要な医療資機材の配備等を進めるとともに、救急医療活動が的確かつ円滑に実施できるよう関係医療機関等との連携の強化を図る。
さらに、空港の所在する市町村における消防・救急体制については、関係消防機関による消防施設の整備を始め、所要の措置を講ずるよう指導する。また、早期に応急手当を実施するため、空港職員の応急手当講習の受講を推進する。
5.被害者支援の推進

損害賠償請求の援助活動等の強化や被害者等の心情に配慮した対策の推進を図る。特に、大規模事故が発生した場合に、警察、医療機関、地方公共団体、民間の被害者支援団体等が連携を図り、被害者を支援する。

6.研究開発及び調査研究の充実

航空交通の安全に関する研究開発及び航空事故の原因究明のための調査研究を推進し、その結果を速やかに安全対策に反映させることにより、航空交通の安全の確保を図る。

(1)航空交通の安全に関する研究開発の推進
独立行政法人等の試験研究機関においては、(1)空域・航空路の容量拡大や安全性の評価に関する研究、(2)混雑空港の容量拡大に関する研究、(3)予防安全技術・新技術による安全性・効率性の向上に関する研究、(4)衛星航法補強システムに関する研究、(5)空港面における航空機の視覚誘導システムに関する研究、(6)航空機の安全な離着陸のための滑走路等空港土木施設の研究、(7)事故時の搭乗者保護のための客室安全性向上技術に関する研究、(8)乱気流等を機上で事前に検知する技術の研究等を推進するとともに、関連試験研究機関相互の連絡協調体制の強化による総合的な研究開発を推進する。
(2)航空事故の原因究明のための総合的な調査研究の推進
航空事故及び重大インシデントの原因究明の調査を迅速かつ適確に行うため、(1)飛行記録解析技術の向上、(2)シミュレーター装置を利用した解析技術の向上、(3)航空材料分析技術の向上、(4)事故調査報告書データベースの整備等により総合的な調査研究を推進し、その成果を原因の究明に反映させる。