第8次交通安全基本計画・ポイント
副題
交通事故のない社会を目指して
計画期間
平成18年度から22年度までの5年間
計画の基本理念
- 真に豊かで活力のある社会を構築していくためには、その前提として国民の安全と安心を確保していくことが極めて重要であり、交通安全の確保もその重要な要素である。
- 人命尊重の理念に基づき、また交通事故がもたらす大きな社会的・経済的損失をも勘案して、究極的には交通事故のない社会を目指す。
- 自動車と比較して弱い立場にある歩行者や、高齢者、障害者、子ども等の交通弱者の安全を一層確保する「人優先」の交通安全思想を基本とする。
《 道路交通 》
基本的考え方
道路交通事故のない社会を目指して
- 人命尊重の理念に基づき、究極的には、交通事故のない社会を目指す。
- 今後は、死者数の一層の減少に取り組むことはもちろんのこと、事故そのものの減少についても積極的に取り組む必要がある。
- 我が国では、欧米諸国と比較して、交通事故死者数に占める歩行者の割合が高くなっており、人優先の交通安全思想の下、歩道の整備等により歩行者の安全確保を図ることが重要である。
目標
- 平成24年までに、交通事故死者数を5,000人以下とし、世界一安全な道路交通の実現を目指す。
- 平成22年までに、交通事故死者数を5,500人以下にすることを目指す。
- 平成22年までに、交通事故死傷者数を100万人以下にすることを目指す。
対策
4つの視点
- 少子高齢社会への対応
- 今後の急速な高齢化を踏まえると、高齢者にとって、安全で安心な交通社会の形成が必要である。
- 安心して子どもを生み,育てることができる社会を実現するためには、子どもを交通事故から守る対策が一層求められる。
- 歩行者の安全確保
- 我が国では、交通事故死者数に占める歩行者の割合が3割を超え、欧米諸国と比較して高い割合となっている。
- 人優先の考えの下、通学路、生活道路、市街地の幹線道路等において歩道の整備等による歩行空間の確保を一層積極的に進めるなど、歩行者の安全確保を図る対策を推進する。
- 国民自らの意識改革
- 交通社会に参加するすべての国民が、交通事故のない社会を目指し、意識を再確認すべきである。
- 住民が、自ら交通安全に関する活動にかかわり、積極的に関与していくような仕組みづくりが必要である。
- ITの活用
- ITは、人間の認知や判断等の能力や活動を補い、不注意によるミスを打ち消し、被害を最小限にとどめるなど、交通安全への貢献が期待できる。なかでも、ITSの取組を推進する。
8つの柱
- 道路交通環境の整備
(安全・安心な歩行空間が確保された人優先の道路交通環境整備を強化する)- 通学路等の歩道整備等の推進
- あんしん歩行エリア
- 「生活道路事故抑止対策マニュアル」
- くらしのみちゾーン
- 優先度明示方式による交通事故対策
- 事故危険箇所対策
- 高度道路交通システムの活用
- 交通安全思想の普及徹底
(段階的な交通安全教育や高齢者自身の意識の向上を図る)- 参加・体験・実践型活動の推進
- 高齢者に対する安全教育の推進
- 自転車の安全利用
- 後部座席等のシートベルト着用の推進
- 反射材の普及促進
- 民間団体等の主体的活動の推進
- 住民の参加・協働の推進
- 安全運転の確保
(高齢運転者を始めとする運転者教育の充実を図る)- 高齢運転者対策の充実
- 安全運転管理の推進
- 自動車運送事業者に対する指導監督の充実
- 貨物自動車運送事業安全性評価事業の促進
- 映像記録型ドライブレコーダーの普及
- 車両の安全性の確保
(被害軽減対策に加え予防安全対策を充実する)- 先進安全自動車の開発・普及の促進
- 日本工業規格の整備
- 自動車の点検整備
- リコール制度の充実・強化
- 道路交通秩序の維持
(悪質性、危険性、迷惑性の高い違反を重点的に取り締まる)- 背後責任の追及
- 自転車利用者に対する指導取締りの推進
- 交通犯罪捜査及び交通事故事件捜査体制の強化
- 暴走族対策の強化
- 救助・救急活動の充実
(救助・救急体制の整備。特に応急手当の普及を推進する)- 自動体外式除細動器の使用も含めた応急手当の普及啓発活動
- 救急救命士の養成配置
- 緊急通報システムの拡充及び現場急行支援システムの整備
- ドクターカー
- ドクターヘリ
- 損害賠償の適正化を始めとした被害者支援の推進
(犯罪被害者等基本法等の下、総合的かつ計画的に推進する)- 損害賠償請求の援助活動等の強化
- 交通事故被害者等の心情に配慮した対策
- 研究開発及び調査研究の充実
(人、道、車の3要素の分野の研究等を行う)- 安全運転の支援
- 高齢者の交通行動特性に関する研究
- ナンバープレート・封印のIC化
- 道路交通事故原因の総合的な調査研究の充実強化
《 鉄道交通 》
基本的考え方
鉄道事故のない社会を目指して
各種の安全対策を推進し、国民の鉄道に対する信頼を揺るぎないものとする。
目標
- 乗客の死者数ゼロを目指す。
- 運転事故件数の減少を目指す。
対策
2つの視点
- 事故個別の問題の解決
- 過去に起きた事故等の教訓の活用
6つの柱
- 鉄道交通環境の整備
- 運転保安設備の整備(速度超過防止用ATS等の設置)
- 鉄道の地震対策の強化
- 鉄道の安全な運行の確保
- 乗務員及び保安要員の教育の充実及び資質の向上
- 鉄道事業者に対する保安監査等の実施
- 鉄道車両の安全性の確保
- 救助・救急活動の充実
- 被害者支援の推進
- 研究開発及び調査研究の充実
《 踏切道における交通 》
基本的考え方
踏切事故のない社会を目指して
踏切事故防止対策を総合的かつ積極的に推進することにより、踏切事故のない社会を目指す。
目標
平成22年までに踏切事故件数を平成17年と比較して約1割削減することを目指す。
対策
視点
それぞれの踏切の状況等を勘案した効果的対策の推進
4つの柱
- 踏切道の立体交差化、構造の改良及び歩行者等立体横断施設の整備の促進
- 「開かずの踏切」等における構造改良等による「速効対策」と立体交差化の「抜本対策」
- 踏切保安設備の整備及び交通規制の実施
- 踏切道の統廃合の促進
- その他踏切道の交通の安全と円滑化を図るための措置
《 海上交通 》
基本的考え方
海難等のない社会を目指して
- 海難の発生を未然に防止する。
- 乗船者等の迅速かつ的確な捜索救助・救急活動を行う。
目標
- ふくそう海域における航路を閉塞するような大規模海難の発生を防止し、その発生数をゼロとする。
- 平成22年までに年間の海難及び船舶からの海中転落による死者・行方不明者数を220人以下とすることを目指す。
対策
2つの視点
- 海難防止のための諸施策の継続的推進
- 迅速かつ的確な人命救助体制の充実
9つの柱
- 海上交通環境の整備
- 海上交通の安全に関する知識の普及
- 船舶自動識別装置を活用した次世代型航行支援システムの構築
- 船舶の安全な運航の確保
- 旅客船事業者等に対する指導監督の充実強化
- 水先制度の抜本改革
- 船舶の安全性の確保
- 海上交通に関する法秩序の維持
- 救助・救急活動の充実
- 救助・救急体制の充実
- 被害者支援の推進
- 研究開発及び調査研究の充実
- 小型船舶等の安全対策の充実
- ボートパーク、フィッシャリーナ等の整備
- 漁船等の安全対策の推進
- プレジャーボート等の安全対策の推進
- ライフジャケット着用率の向上
- 海難等の情報の早期入手
《 航空交通 》
基本的考え方
航空事故のない社会を目指して
- 航空事故を減少させる。
- 事故につながりかねない安全上のトラブルの未然防止を図る。
目標
昭和61年以降継続している特定本邦航空運送事業者における乗客の死亡事故ゼロの記録を継続する。
対策
3つの視点
- 航空輸送の安全に対する信頼回復
- 航空容量の拡大
- 安全で効率的なシステムの確立
6つの柱
- 航空交通環境の整備
- 次世代航空保安システム
- 航空交通サービスの充実
- 空域の容量拡大と空域の有効活用
- 空港・航空保安施設の災害対策の強化
- 航空機の安全な運航の確保
- 航空運送事業者等に対する監督体制の強化
- 予防的安全行政への転換
- 航空機の安全性の確保
- 被害者支援の推進
- 研究開発及び調査研究の充実
特記 公共交通機関における総合的な安全対策
JR西日本福知山線脱線事故や航空分野における人的ミスや機材不具合に起因するトラブル等、公共交通機関における重大事故やトラブルが続発しており、公共交通に対する国民の信頼回復が喫緊の課題となっている。
このため、自動車、鉄道、船舶、航空の各分野ごとの安全対策に加え、以下の施策を分野横断的に推進する。
- 安全マネジメント態勢の構築と継続的取組
- ヒューマンエラー事故防止の技術開発