中央交通安全対策会議専門委員会議(第3回)議事要旨

文責:内閣府政策統括官(共生社会政策担当)

日時

平成17年6月28日(火)14時から16時30分

場所

中央合同庁舎4号館 共用第2特別会議室

出席者

(専門委員)
森地座長、赤羽、大久保、岡野、岡本、河内、久保田、鈴木、中島、益子、松岡、三木、山村、横須賀、吉岡、蓮花の各専門委員
(内閣府)
加地審議官、二見参事官(交通安全対策担当)、島村参事官補佐
(関係省庁)
警察庁交通局交通企画課 石井課長
警察庁交通局交通規制課 種谷課長
消防庁救急救助課 井内救急専門官
文部科学省スポーツ・青少年局学校健康教育課 山口課長
厚生労働省医政局指導課医療対策室 宮本室長
国土交通省総合政策局 北野参事官
国土交通省道路局道路交通管理課 江畑課長
国土交通省道路局地方道・環境課交通安全対策室 森若補佐
国土交通省自動車交通局総務課安全対策室 清谷室長

議事

  • (1)今後の交通安全施策について、警察庁、文部科学省、国土交通省より説明が行われた。
  • (2)第8次交通安全基本計画の骨子案等について、内閣府より説明が行われた。

以下、各専門委員の主な発言内容

<警察庁、文部科学省、国土交通省の今後の交通安全施策について>

専門委員

  • 幹線道路の6%の区間に全死傷事故件数の53%が集中しているとのことであるが、可能であれば参考数値として、6%の区間の交通量や残りの94%の区間の交通量を記述したら良いのではないか。
  • 生活道路の安全対策として、歩行者の死亡事故の6割は自宅から500m以内の範囲で発生しているとのことであるが、可能であれば、500m以内に存在している時間は1日24時間のうち何%、1キロ以内に存在している時間の何%というような情報を追加したら良いのではないか。

専門委員

  • 「交通事故抑止のための効果的な対策の考え方」には、被害者支援という観点がどのように反映されているのか。
  • 「損害賠償の適正化を始めとした被害者支援の推進」に関連して、相談体制の整備のために財政的な援助をしたらどうか。
  • 福知山線の事故について、重度後遺障害の方や遺族の方々は、これから大変な人生を歩いていかなくてはならないと思うが、その長期にわたる被害者支援をどのように行っていくのかという視点が重要ではないか。
  • 何か大きな事件や事故があった際に、すぐ危機管理や危機介入が可能となるような体制の整備をお願いしたい。

専門委員

  • 福知山線の事故について、尼崎駅の線路の付け替えやダイヤの変更といった様々なシステム変更が、事故の遠因や促進要因になったと思うが、かかる点に関するリスクアセスメントが、当時どうであったのかを調べる必要があるのではないか。
  • 航空機の分野においても、空港の開港等の航空交通システムの大きな変更に伴うリスクアセスメントが適切に行われているかどうかについて検討する必要があるのではないか。

専門委員

  • 福知山線の事故について、「再発防止対策検討チーム」において、人命よりも定時運行を重んじた企業体質や労務管理についても検討の対象に加えるべきではないか。

専門委員

  • 高齢者が関わる交通事故が目立っていることは、高齢者ひとりひとりの安全性のみな らず、高齢者の実数や全体に対する比率が増していることも影響しているのだろう。特に、 交通安全教育などは、最後は一人一人への働きかけに帰結するのであるから、「高齢者世代が全体として目立つ」という認識と、「あなた自身がどのくらい安全性を改善できるか?」という個々の高齢者への働きかけとを峻別することが重要ではないか。

専門委員

  • 重度後遺障害者に対する救済対策の推進に関して、専門的な治療・看護を行う養護センターの設置を、今後拡大して欲しい。

専門委員

  • 交通事故総合分析センターの充実・強化について、ミクロ調査を充実させるためには、つくば市の件数だけでは足らず、対象地域をもっと拡大させるべきではないか。

専門委員

  • あんしん歩行エリアについて、自転車の存在をどのように考えるのか。具体的には、歩行者と共存する関係にあるものとして捉えるのか、あるいは、歩行者に対する加害者として位置づけるのか教えて欲しい。

<第8次交通安全基本計画の骨子案について>

専門委員

  • 道路上にいる時間が道路以外の時間に比較して、死に至る危険性が4.2倍も高いということは、分かりやすく説明する必要があるのではないか。
  • 地域における身近な交通安全目標を設定する際には、計画段階で評価基準を検討しておく必要があるのではないか。具体的には、これまで「安全」を死者数や負傷者数等の数値ではかってきたわけであるが、それ以外の具体的なモノサシを作ったらどうか。
  • 地域における交通安全活動を考える際には、地域の生活と密着したという視点が重要ではないか。
  • ITの活用に関して、人間の認知や判断の能力を補うという視点が重要ではないか。
  • 他の世代における高齢者への配慮に関して、高齢者の特性を知るという視点が重要ではないか。
  • 鉄道交通の安全については、モノ対策のみならずヒト対策も重要なのではないか。具体的には、鉄道事業者の安全管理体制や、スピードや効率性のみを求めている国民の意識の問題もあるのではないか。

専門委員

  • 国際化への対応について、今後、外国人が日本で運転する機会が増加するであろうことから、分かりにくい道路標識や運転免許をもっと合理化すべきではないか。
  • 防災の観点について、地震が心配なので、大変難しいことであるが、震災時における交通機関のあり方や情報提供のあり方について検討しておくべきではないか。
  • 高齢者の特性について、歩行者側とドライバー側、また、年齢相互間の理解を深めるために、様々な科学的なデータを用いて、積極的に広報啓発すべきではないか。
  • 自転車利用者に対する交通安全教育については、子供たちに対して科学的・体験的に教えるべきであるし、また、ルールを上から押しつけるのみならず、交通社会人としての責任をはぐくむことが重要ではないか。
  • 自動車の運転では免許取得1年以内は非常に事故を起こす率が高いのであるが、福知山線の事故について、年齢や経験年数を考慮せずに電車を運転させるというのは、経営上の事情だと想像するが、ゆゆしき問題ではないか。

専門委員

  • 国民自らの意識改革は非常に画期的なことだと思うが、地方自治体の意識も改革すべく、新たな仕組みづくりや方策を生み出すのは地方自治体であることを明確に打ち出すべきではないか。
  • 国民から見ると、あんしん歩行エリアとくらしのみちゾーンの両者の関係が分かりにくいので、第8次交通安全基本計画に際して、生活道路対策を再構成したらどうか。具体的には、点対策、線対策、ゾーン・エリア対策と様々なレベルのものがあることを明確にしたらどうか。

専門委員

  • 交通安全教育について、裁判所の交通教室も考慮に入れるべきではないか。
  • 交通環境の整備について、交通と人間との「分離」という概念が非常に大事だと考えるので、基本的な理念として導入したらどうか。

専門委員

  • そもそも「交通安全思想」とは何かというのは難しい問題であり、おそらくは国家公安委員会告示の「交通安全教育指針」に求めることになると思うが、実は、一般の人はこれをなかなか入手しにくい状況にあることから、交通安全教育指針をもっと普及させることが重要ではないか。
  • ドライブレコーダーは今後どんどん普及していくことになると思われるが、その場合には、保険会社を通じて車種別の事故データを公表していくことになるのではないか。

専門委員

  • 各章の初めに「事故のない社会を目指して」とあるのは今回初めてであり、大変素晴らしい表現であると思っている。計画全体の方向を示すキーワードとなるだけに、その決意を明確にするためにも、計画の基本理念の中に「本来、事故はなくし得るものであり、困難であっても私たちは事故を撲滅していくために運動を展開していく」というような内容を盛り込んだらどうか。

専門委員

  • 厚生労働省が平成16年度に全国で200チーム立ち上げた「災害派遣医療チーム(ディザスター・メディカル・アシスタンス・チーム」、略してDMATと言うが、これをぜひとも盛り込んでいただきたいと思う。

専門委員

  • 道路交通事故の見通しは、新規の交通安全施策の効果はもとより、最近導入されて効果発展の途上にある施策の効果は十分に織り込まれていないということを説明として補足し、安全目標との差異を明確にする必要がある。
  • 幹線道路に関しては交通事故総合分析センター経由で情報がかなり公開されているが、生活道路では未だ十分ではない。情報の管理体制や活用体制が整っている自治体に対しては、個人情報以外の事故情報を開示したらどうか。

専門委員

  • 交通安全対策を行う上で、関係団体と密接な連携を図ることは大切であると思うが、やはり活動するに際して経済的な裏づけが必要となるので、政府の方で支援をしていただきたい。
  • 確かに、高齢者対策が一番のキーポイントになると思うが、事故は高齢者ばかりでもないので、他の年齢世代の交通安全対策も怠らないで欲しい。特に、交通安全教育は幼児から行うことが大切であり、幼児の交通事故対策もお願いしたい。

専門委員

  • ITSを始めとした様々なシステムについて、本当に安全なのかどうか不安なところがあるので、そういうフォローをきちんとすべきではないか。
  • ITの活用について、システムの安全性という問題の前に、人間の認知能力や判断の問題もあるので、その点も重視すべきではないか。
  • あらゆる立場の方が、例えば道路交通法の改正内容やナビゲーションのシステムを理解できるように、分かりやすく広報啓発活動を実施すべきではないか。

専門委員

  • 地方自治体の行政担当者の中には、意外と事故実態や交通安全対策の知識がない方も多いので、事故分析等に関する資格制度のようなものを設けて、人材を養成したらどうか。
  • ドイツでは、市長のための交通安全プログラムがあるが、日本においても市町村といった地方自治体のトップに対する交通安全教育や啓発活動があってもいいのではないか。

専門委員

  • 陸上交通の部分は、現場で自主的に安全を考えるという考え方があるのに対して、航空交通の部分は、管制による監視、注意、命令という上から押しつける考え方が強いので、航空交通においても、事業者による自主性やチームワークや連帯感といった視点も重要なのではないか。
  • 最近、公共交通について、かつてない危険なことが色々と発生しているが、これは人間社会の変化に原因があるのではないか。具体的には、家庭を犠牲にして徹夜をしてでも働くといった精神論的な部分が薄れてきており、一方で、それを補う社会的なバックアップシステムが必ずしも十分ではないような気がする。

専門委員

  • 交通安全基本計画に基づいた交通安全指導を実際に行う者としては、計画上やらなければならないことがたくさんあるので、例えば、年度ごとに大きな柱みたいなものを掲げてもらえれば取り組みやすいと思う。
  • 交通安全指導者の育成に関して、研修は「広く浅く」ではなくて、行政の交通安全担当者や実際に現場で指導を行う者といった対象となる指導員の特性を考慮した研修内容にすべきではないか。

専門委員

  • 交通事犯に対する教育活動の充実とあるが、交通事故被害者の調査をすると、自損事故を起こした人は何度も繰り返して事故を起こしている実情にあるので、「交通事犯」にまで至らない人たちに対する教育活動の充実も考えるべきではないか。
  • 研究開発及び調査研究について、交通事故に起因する障害についての原因解明や治療研究の推進も充実させるべきではないか。

専門委員

  • 学校における交通安全に関連して、例えば体育の時間に車が突っ込んできて亡くなった被害者の方たちは、学校の中でどう対応すればいいのかわからずに放置されて苦しんでいる現状にあるので、学校内における交通事故被害者への対応も考えるべきではないか。

専門委員

  • 警察署の交通事故現場で、事故現票を直接コンピュータに入力するGPS連動のシステムを作れば、簡単に事故のピンマップが作成でき、それを公開すれば、例えば雨の日の夜に右折事故が起こりやすい場所等が研究者のみならず町の人もホームページにアクセスして分かり、事故防止上極めて有効であるので、そういうシステムを道路管理者と一緒に構築すべきではないか。
  • インターナショナルに行われていることであるから、交通事業者別や車種別の事故データを公表すべきではないか。
  • 施設の老朽化に対する安全対策については、第8次交通安全基本計画に書くか否かはさておき、ぜひとも国土交通省で何らかのケアをすべきではないか。
  • 交通事故による経済的損失が約4兆幾らという数字が出ているが、この金額は国際的に比較すると非常に少なく、また、交通事故の被害を受けた方々の一生の心の苦しみも積算されていないので、こういう小さな額の数字は出さない方がいいのではないかと思うが、検討して欲しい。

閉会

以上