中央交通安全対策会議専門委員会議(第4回)議事要旨
文責:内閣府政策統括官(共生社会政策担当)
日時
平成17年9月6日(火)14時から16時30分
場所
中央合同庁舎4号館 共用第2特別会議室
出席者
- (専門委員)
- 森地座長、赤羽、太田、岡野、岡本、河内、斎藤、杉山、鈴木、中島、益子、松岡、三木、宮本、横須賀、吉岡の各専門委員
- (内閣府)
- 加地審議官、二見参事官(交通安全対策担当)、島村参事官補佐
- (関係省庁)
- 警察庁交通局交通企画課 石井課長
- 警察庁交通局交通規制課 種谷課長
- 消防庁救急救助課 井内救急専門官
- 文部科学省スポーツ・青少年局 戸田体育官
- 厚生労働省医政局指導課 鈴木課長補佐
- 国土交通省総合政策局 北野参事官
- 国土交通省道路局道路交通管理課 桝田課長
- 国土交通省道路局地方道・環境課交通安全対策室 岩崎室長
- 国土交通省自動車交通局総務課安全対策室 江角室長
議事
第8次交通安全基本計画(中間案)について、内閣府より説明が行われた。
以下、各専門委員の主な発言内容
専門委員
- 速度マネジメントの概念を導入し、道路の機能別体系的整備とあわせてその安全面からの運用として市街地全体で速度規制を体系的に適用したらどうか。また、車両の技術開発について、時速20km、30kmといった低速域での高度速度制御(ISA:Intelligent Speed Adaptation)の研究開発を推進したらどうか。
- 踏切の安全を考える場合、鉄道事業者は、鉄道サービス増強に関して、沿線住民や自治体に対して安全アセスメントを実施する必要があるのではないか。また、「開かずの踏切」について、基本指標の設定や実態調査のための調査研究が必要ではないか。
専門委員
- 高速道路における緊急開口部の整備は、ドクターヘリの緊急着陸の推進との調和を図りつつ行うべきではないか。
- 救急業務に特化した消防防災ヘリコプターの整備を検討すべきではないか。
専門委員
- 数値目標については、「交通事故のない社会を目指す」という究極的目標からステップを踏んで演繹的に導かれるべきではないか。
- 最終的に交通安全基本計画をまとめる際には、非常に多くの施策があることから、施策の記述の重複感を与えないようにすべきではないか。
- 一般の運転者に対して、ヒューマンファクターの視点からの考え方を啓蒙することも交通事故防止に効果的なのではないか。
- 自動車の部品の摩耗や劣化等、いわゆる経年劣化の対策を推進すべきではないか。
- 鉄道交通に関して、新幹線等のホームにある開閉扉(ホームドア)により人と鉄道車両とを分離したらどうか。
- 海上交通に関して、堤防の高さなど津波対策の視点が重要ではないか。
- 航空交通に関して、航空事故の分析やその分析を踏まえた視点を充実させることが重要ではないか。また、ヒューマンファクターに関する調査研究を推進すべきではないか。
専門委員
- 国民自らの意識改革という視点は重要であるので、それをどのように達成していくのかという具体的な施策を充実させるべきではないか。
- 例えば、幼児の交通安全教育について具体的な教育プログラムと絡めて充実させたらどうか。
専門委員
- 高校生に対する交通安全教育について、参加・体験・実践型で実施するに際しても、受け身の立場ではなく、中学生や小学生に対する指導者的役割を担わせるとかなり効果的になるのではないか。
- 交通規制と指導取締りとは表裏一体の関係にあるので、両者を総合的に考える視点が重要ではないか。
専門委員
- 本日、航空・鉄道事故調査委員会から国土交通大臣へ中間報告が提出された。併せて4項目の建議((1)ATSの整備、(2)列車防護、(3)モニター装置の整備、(4)速度計の精度確保)がなされており、これらの中で長期的取り組みの必要なものは交通安全基本計画にも盛り込むべきではないか。
- 厳しい経営が強いられている中小鉄道が輸送機関として持続しながらも、どのように安全を充実させていくかという施策を基本計画に盛り込むべきではないか。
専門委員
- 見やすく分かりやすい道路標識という施策は、「バリアフリー化を始めとする歩行者空間の整備」という観点よりも、道路照明やガードレール等の「交通安全施設の整備」という観点から整理すべきではないか。
- 高齢歩行者が青信号中に道路を渡りきれないといったケースがあるので、信号サイクルの見直しを推進すべきではないか。
- 道路標識があまりにも多く掲げられて分かりにくいので、もう少し単純化することを検討すべきではないか。
専門委員
- 高速道路において、「ヘリコプターの着陸場所を何キロメートル置きに整備する」といった目標を設定したらどうか。
- 航空安全において、「予防的安全行政への転換」が重要であるとするならば、事故調査と刑事訴訟の問題を議論すべきではないか。具体的には、事故原因を解明するために、航空・鉄道事故調査委員会の報告書を刑事裁判の証拠として採用しないというような制度を検討すべきではないか。
- 航空安全における捜索・救難体制の整備に関して、航空機にトラブルが生じたような場合に、自衛隊機が緊急発進するような仕組みを構築すべきではないか。
- 航空安全における調査研究に関して、ヒューマンファクターやデータベースから知識を抽出する方法などを実施すべきではないか。
専門委員
- 交通安全基本計画を最終的に公表するに際しては、要約版を作成したり、前計画と比較した新規性をまとめたりするなど、国民一人一人に対して分かりやすいプレゼンテーションが必要となるのではないか。
- エコドライブは、環境にやさしく、経済的に優れているのみならず、交通事故の減少にも効果的なので、エコドライブの視点を追加すべきではないか。
- 交通事故被害者は、肉体的・精神的打撃のみならず、経済的打撃も受けていることを明確にすべきではないか。
- 「第一種踏切」や「第一種空港」といった専門的用語については、国民に対して分かりやすく説明する必要があるのではないか。
専門委員
- 最終的に公表する際には、国民に対して分かりやすい形にするのが重要ではないか。
- チャイルドシートの貸出し事業については、制度が施行されてから5ヵ年が経過し、利用者の減少や貸出し用シートの耐用年数超過などから市町村では廃止傾向にある。「子ども一人に一台」の意識は浸透しているが、取締りが厳しくないなどの理由から装着率が低下しているのが現状。取締り等の強化や装着推進などに重点を置くべきではないか。
専門委員
- 交通安全教育は、即効性は少ないけれども、交通安全にとって一番重要な柱であるので、徹底することが必要である。
- 幼児や高齢者に対する交通安全教育を具体的に充実させることが必要であるが、その際には、参加・体験・実践型の教育を含めるべきではないか。
専門委員
- 自転車に関して、交通規制の抜本的見直しや総量抑制といった点についての将来展望を検討すべきではないか。例えば、大量の自転車が放置されていたり、どのような場所を走ったら良いか分かりにくかったり、歩行者に対する加害者としての存在になったり、自転車事故に対する保険制度が充実していなかったり、さらには、アジア諸国で作られた安価な自転車が溢れかえり占有離脱物横領の対象となったりするなど、様々な自転車に関する社会問題が発生している。これらの問題は、自転車に歩道上の通行を認めたことに起因しているのではないかと考えている。
専門委員
- 高齢者が安全にかつ安心して外出することができる交通社会の形成という視点は大変重要だと認識した上で、敢えて言うならば、加齢に伴って運転等に支障のある高齢者を外出させない、あるいは、運転させないということも視野に入れるべきではないか。
- 交通事故防止対策の特効薬として、例えば、時速100キロメートルを超えてはスピードが出ないような自動車を開発するようにしたらどうか。
専門委員
- 高齢者の運転資格について、免許の更新期間の短縮や適性検査の充実強化を検討すべきではないか。
- 遺族の悲しみを始めとする交通事故の悲惨さの理解を深める交通安全教育として、例えば、被害者遺族の声を聴いたり、視聴覚教材を用いたりすべきではないか。
- アメリカにおいては、飲酒教育の中で飲酒運転の危険性が教えられているので、我が国の学校でも、飲酒運転に関する教育を加えるべきではないか。
専門委員
- 道路交通環境を整備するに際して地域住民の意向を十分に反映させるためには、道路交通環境安全推進連絡会議等が有効であると思うが、加えて、交通安全に関する専門家の人材育成が重要ではないか。
- 交通安全への市民参加を促すためには、地方自治体に対する交通事故情報の提供や、交通事故原票を直接コンピュータに入力するGPS連動のシステム構築が重要ではないか。
専門委員
- 数値目標の設定に関し、航空交通や鉄道交通についてはなかなか数値の設定が難しいというのは理解できるが、死傷者数については、仮に良い施策がないからと言って遠慮することなく、様々な施策で一生懸命に頑張っていけば問題ないのではないか。
- 死者数の数値目標について、「交通事故死者数を10年間で5千人以下とする」という政府目標から2年分の差を計算して5600人を打ち出したというのは、いかにも役所の理論であり、さらっと「5000人~5500人」とするか、あるいは、「2年前倒しにして5000人としました」といった理屈にしたらどうか。
- 事故原票を直接コンピュータに入力するGPS連動システムを設定し、交通事故マップを作成すると、事故分析地図情報(ピンマップに各種分析機能を付加したシステム)が安全対策に有用である。
- 交通安全基本計画に盛り込むかどうかは別にして、中小民鉄の経営問題や安全対策をどうするかは別途議論すべきではないか。
- 交通安全基本計画を最終的に決定する際において、国民に対して分かりやすく説明するために、例えば、対策を階層的に分類して一覧表にして、「政策対応表」なるものを作成したらどうか。
- 日本におけるこれまでの交通安全施策を体系化するとともに、その効果評価を行って、国際的に情報提供したらどうか。発展途上国にとって極めて重要な情報である。
専門委員
- 高齢者の交通安全教育については、内閣府が推進している「3世代交流事業」が施策の目玉になるのではないか。
専門委員
- スピードの出ない自動車について、例えば、あんしん歩行エリアや高速道路といった一定の場所で、そこを通過する車両は全て一定速度以上の速度が出ないような技術開発を目指したらどうか。
専門委員
- 速度規制を大幅に見直して、速度規制を段階的に設定することは、道路標識を無用に増加させることにもなりかねないので、日本の文化事情や個々の交通状況に応じて検討すべきではないか。
- ソウルの駐車違反の取締りは、民間でコンピュータを活用して組織的に行われており、どうしても罰金を支払わない段階になって初めて警察が登場する。我が国においても、駐車違反の民間委託について、IT技術の活用として参考となるのではないか。
専門委員
- 鉄道交通の調査研究に関して、戦後に整備されたインフラが現在かなり老朽化しているが、かかる老朽施設を監視して補修するための調査研究が必要ではないか。
専門委員
- 一般的な緊急医療体制の整備とは別に、交通事故に特化した外傷診療システムを充実させるべきではないか。
- 厚生労働省の研究事業で「外傷診療機能に大きな施設間格差が存在する」ということが明らかになっており、医療機関の外傷診療機能を評価し、質の向上を図る必要があるのではないか。
専門委員
- 地域における道づくりを、市町村独自で取り組んでいるところもあり、関係機関等での道づくりの取り組みなどのデータがあれば、インターネットなどの情報提供をお願いしたい。
- 生活道路における無電柱化の取り組みで、電柱を撤去するのではなく、立っている電柱を利用して、ドライバーに対しての視覚的プレッシャーを与えることができないか研究をしている市町村があるが、そのような取り組みがなされていたら、情報提供をお願いしたい。
閉会
以上