中央交通安全対策会議専門委員会議(第1回)議事概要(案)
1.日時:
平成22年2月19日(金)15:00~17:00
2.場所:
中央合同庁舎第4号館共用第2特別会議室
3.出席者:
- 【委員】
- 太田座長、赤羽委員、大久保委員、尾形委員、岡野委員、河内委員、佐々木委員、杉山委員、藤森委員、益子委員、松岡委員、三国委員、宮本委員、山崎委員、山村委員、蓮花委員、渡邉委員
- 【内閣府・事務局】
- 太田内閣府大臣官房審議官
加藤参事官(交通安全対策担当) - 【オブザーバー】
- 警察庁入谷交通企画課長、警察庁石田交通規制課長、消防庁森田救急企画室課長補佐、文部科学省小林学校健康教育課課長補佐、厚生労働省福原医政局指導課課長補佐、国土交通省石原交通安全対策室長、国土交通省酒井道路交通管理課長、国土交通省小口道路交通安全対策室長、国土交通省中桐安全監理官、国土交通省大森事故防止対策推進官、国土交通省清谷技術企画課長(代理甲斐氏)
4.概要:
○福島内閣府特命担当大臣挨拶
- 皆さんや全国のさまざまな方の努力で、交通事故で亡くなる方がだんだん減ってきているが、依然としてその数が多い。
- 遺族の方にお会いすることも多いが、何とかこういう苦しむ方や、交通事故をなくしたい。
- 高齢者の皆さん、歩行者、自転車、まだまだ事故が多い方たちに向けて、特に施策をきちんと行いたい。
- 本年1月、平成30年を目途に交通事故死者数を半減させ、2,500人以下とし、世界一安全な道路交通の実現を目指すという交通安全対策の目標を示した。
- この目標達成に向けて、都道府県や関係団体だけではなく、国民の方々からの御意見も幅広く伺いながら、今後5年間の交通安全対策の検討を進めて、平成23年度からの次期基本計画を策定したい。
○委員紹介及び提出資料説明
- 事務局より、出席委員の紹介を行った。
- 座長を太田委員とすることに決定した。
- 事務局より、内閣府提出資料1~6について説明を行った。
○委員からの主な発言
政策評価
- 「(2)政策評価の推進」について、限界生産性は減少することから、更に効果を上げるためには、政策上の配慮として、効果を上げたところに対してはボーナスを、効果を余り上げられなかったところに対してはボーナスを与えないというようことは、考えられないか。
- 厚生労働省の救命救急センターの機能評価のランク付け、そしてその指導、救命救急センターの適正配備、ドクターヘリの配備促進といったことが非常に大きな効果を上げて、交通事故死者数は減ってきていると思うので、是非書き加えていただきたい。
- 特記の「安全マネジメント態勢の構築と継続的取組」は今までと違い、会社が自主的に安全管理を行うというユニークな制度だと了解しており、「自主的」という言葉を入れていただくと、いままで違うということがよくわかると思う。
理念・目標
- 第8次では、究極的には事故ゼロということを掲げ、これは非常にいい基本理念だと思うので、是非第9次でもこれを踏襲していただきたい。
- 目標設定には高齢者、自転車、歩行者などいろいろあるが、結局生活道路の理念というものをまずはっきりと打ち出せば、これらの問題をひとくくりで考えられるのではないか。
- 死者数のみにこだわるのではなくて、もう少し幅を広げて、事故に遭うと、悲惨な状況で社会生活もできなくなり、家庭も崩壊してしまうことがあるということも、含めていただきたい。
高齢者対策
- 個人差が非常に大きく、いろんなケースがあり、そのタイプに応じて教育や指導を行うといった一歩進んだ対策あるいは教育訓練というものができないか。
- 非常に運転負荷が高いにもかかわらず、タクシーやトラックなどでも運転者の高齢化が進んでおり、そういった高齢者には特別な診断や教育が必要ではないか。
- 高速道路などは、日本人全体が若いころの基準でつくられており、標識の文字の大きさ、明るさなども含め高齢者に適したガイドライン等に基づき再チェックをする必要があるのではないか。
自転車対策
- 中学生など7割ぐらいが自転車事故であり、自転車の問題は非常に大きな問題。これから大きく事故を減らすには、自転車対策が大事だと思うが、記載の事項は、今までのものを踏襲しており、もう一歩何かできないかなと思う。
- 自転車が高速で当たれば、お年寄りなどはすぐに事故になってしまうので、高性能な自転車に対しては、保険や何らかの規制をかける必要もあるのではないか。
- 無灯火という問題について、例えばハブダイナモの自転車などは、走れば自動的に点灯するので、義務付けをすれば、夜間の無灯火事故には非常に効果があるのではないか。
- 幹線道路には、ほとんど自転車の通行可能な歩道が整備されているが、細街路から幹線道路に出てくると歩道上を走る自転車の出合い頭事故が特に多い。その7割は、幹線道路を走っている車と反対方向に走っている自転車であり、そういうことを考えて対策をとっていただきたい。
- 一番の問題点は自転車が左側通行だということが、今の若い人には認識されていない。自転車の通れる歩道でも、車と同じ方向に走っていると、細街路からの出会い頭事故も減ると思うので、対策をきちんとすれば、事故の率はもっと減ると思う。
- 中学生の通学の時にかぶっているヘルメットをもう少し格好いいものにできないか。一様に白いヘルメットで中学生はかぶりたくない。そういうことから始めていかないと、なかなか交通安全というのは浸透していかないのではないか。
- 自転車にはメリットとデメリットがあるが、走行環境を整備することが一番大きいと思う。非刑罰化の議論をそろそろして、反則金など自動車の経験をもう少し活用し、新たな法整備を是非視野に入れて検討していただきたい。
生活道路
- 住民参画と生活道路における安全の確保は非常に重要な視点だと思う。ただし、生活道路における安全の確保と歩行者や高齢者、自転車というテーマとは相当オーバーラップしている部分がある。柱の立て方として、もうひと工夫が必要ではないか。
- 「生活道路」という表記を使っているが、どこが生活道路なのかということは非常にあいまいである。それを定めて、道路を使う人に明らかにわかるようにすることが基本である。
- 都道府県警察において導入が進んでいる交通事故データベースには、生活道路も含めて、すべての人身事故が登録されている。そういう情報を関係する自治体、あるいは住民にも共有してもらうことで、対策が実効あるものになるような枠組みを考えていただきたい。
- 生活道路について、自転車道は整備した場合、車道に落とすと車に轢かれ、歩道に乗せると人を轢くということで、一方通行にしたらどうかと提案したことがある。これは、趣旨賛成・各論反対であったが、各省庁、あるいは自治体と中央との関係も含めて、交通安全に関しては、垣根を取り払わなければならないのではないか。
- 警察庁で市街地の規制速度を30kmにしてはどうかという議論が本格的に始まっており、そういったものとITS技術との連携をどうするか、生活道路とは何かということを、そのときに整理する必要がある。道路についても生活道路とわかるよう、舗装だけではなく断面も含めて、新しい対応を是非取っていただきたい。
国民自らの意識改革
- 「国民自らの意識改革」を実効性あるものにするのは大変難しい。全国では有効性のある施策を実践しているところもあると思うので、モデルケースを紹介すれば、全国一律に効果あるものが展開されるのではないか。
情報通信技術の活用
- 生活道路において、最高速度違反に対し違反を取り締まるばかりではなくて、IT技術を使って、カーナビと連動させて、速度がどうであるかという警告を出すようなシステム化を追求すれば、効果が上がるのではないか。
道路交通環境の整備
- 運輸安全マネジメントについて、効果測定をして、公共交通だけではなくて、一般の会社、あるいは車両を用いている安全運転管理者などの会社などにも適用していくようなものを是非進めていただきたい。
- 歩行空間バリアフリー化というと、私もずっとスムーズに行けることが大事だと思っていたが、視覚障害者の杖が自転車に引っかけられ、よく折られると聞き、こういったことを是正することも、バリアフリーのひとつだと思う。このようなデータが本当にあるのかどうか、調べていただきたい。
交通安全思想の普及徹底
- デンマークなどの海外でよく見られるような交通教育をうまく入れ込んだ教材を使用するなど、学校の負担を少し下げるような教育をしていただきたい。
- 学校教育の中で安全に関することだけではなくて、とにかく被害に遭うということはどういうことなのか、その影響は長く続くということもとり入れた形での教育を浸透させていただきたい。
- 特別支援学級の子どもたちは非常に多くなってきていて、注意が散漫になったりとか、道路への飛び出しが多いこれらの子どもたちに対して、通常の学校教育で交通安全を教えるだけでは、その子たちに入っていかない。文部科学省も含めて、発達障害特別支援の中に何か交通安全ということを特別に取り組んでいけるような道筋を立てていけると良いと思う。
- 先ほど特別支援学級のお子さんの話があったが、養護学校では交通教育が大変やりにくいと先生方は話しておられて、何か教科で取り組んでいただき、養護学校の生徒さんだけでなくで、保護者を絡めたカリキュラムで考えていただきたい。
- 安全意識の低い人に目を向けさせることはなかなか難しいと思う。テレビでCMを放送したとしても意識の低い人はほとんど注意を向けないと思う。作っても伝わらないという難しさがあると思う。
- 「安全意識の低い者への働きかけの強化」について、外国ではかなり衝撃的なDVDをつくって、一般のテレビで公開しており、インパクトを与えるようなものをつくって、全国の関係機関や、公共のメディアを通じて流すということも考えられるのではないか。
- スケアード・ストレイトという事故の恐怖感を与える交通教育を中学生・高校生向けに実施していたが、今回、小学校高学年から実施し始めた。効果はまだ2、3校なのでわからないが、今年も続けて、データを出していきたい。
- メールを打ちながら自転車を運転している学生や、歩行中でも車の音や自転車のベルの音も聞こえないような音で音楽を聞いている子が、今は多い。売り手側の人たちもこういうことは危ないということを発信していかないと、子どもたちが間違った形で使用しているし、それがマナー違反だとは子どもたちは思っていない。
- 横断歩道を渡ろうとしているのに車が止まらないという状況が、日本ではすごく多い。海外では、渡ろうとすると必ず車は止まるというところもある。こういう市民一般の人たちの安全意識というか、安全文化というところが弱いと思う。歩行者よりも車重視みたいなところはなかなか変えにくいとは思うが、根本を変えていかないと、最終的にはもっと減っていかないのではないか。
- 参加・体験・実践型の交通安全教育の推進については、まずそこに出てくるかどうかということ。いいソフトがあっても、それがほとんど本来使うべき人に伝わらないというのは、非常にもったいない。
- 若いお母さんたちが交通教育に興味を示さず、講話では一切耳を貸してくれない。お子さん向けの交通教育を見ていただいた方が効果がある。
- 群馬県で、昨年100人の方が亡くなったが、そのうち59人が高齢者の方で、亡くなった方が全員反射材を付けていなかった。ショッピング・ママ作戦とか家庭訪問等で反射材を配ったが、安全意識が低く、老人クラブ等にも出て来なかったり、自治会などにも出て来ない人が事故に遭うのではないか。
- 老人クラブなどでは、とにかく活発な動きがあり、交通安全教室を受けたいという高齢者が大変増えている。一方独居老人の方たちへの教育が難しいと感じている。
- 高齢者だけではなくていろんなやり方で教育のようなことができるのではないか。成功した例をどんどん広げていくようなことは必要だと思う。
- 高齢者の無関心さ、社会全体がそうかもしれないが、それをいかに巻き込むか、そのための何か新しいアプローチの仕方、単に教育というだけではなく、全体的にいろんなところで議論すべきではないか。
- どういった対策を選択すべきか、その対策の提案を市民のレベルで提案して、それだけで実行するということになると、バランスを欠くかもしれないので、その辺りの書きぶりを少し工夫していただきたい。
- 交通安全基本計画は、政府が作成する計画の中で、とりわけ一般の人たちとの結びつきが強く一般の人たちの協力がないと、なかなか目標が達成できないため、国民にとって理解しやすいように概要版をできるだけ広く頒布することを検討いただきたい。
- 高齢者だけではなく、いろんなやり方で教育のようなことができるのではないかと思う。物と情報、それから心というのがあると思うが、例えば海上保安庁の海守のインターネット情報では、子ども用のライフジャケットが安価で販売していて、法定で使えるものではないけれども、こんなに安かったら、もう何百人でも使えるなという感じで書いてある。そういう情報をもっと広げていくとか、成功した例をどんどん広げていくようなことは、すごく必要だと思う。
- 交通社会は車だけではない、鉄道も飛行機も含めて、移動したり生きるとは何だろうということを考えてくれるような、何かそういう人なりイベントでも、いろんな形で楽しいもの、美しいもの、夢のあるもので広げていく方法も必ず入れてほしいと思う。
飲酒運転
- 飲酒運転の厳罰化は非常に効果があったが、ひき逃げが非常に増えている。これはひき逃げしないということを書くことよりは、なぜひき逃げしてしまうのかということを分析し、原因究明をする必要がある。
- 厳罰化をしても常習者はおり、取締り限界、懲罰限界というのがあり、その対策にはインターロックについて考えた方がいいと思う。
- 飲食店でお酒を出さないことによるダメージは大きい。そういう場合に、運転者となる代表すなわち、ボブを決めることを推奨する際には、経済産業省、業界団体の人たちに呼びかけて連携することが非常に重要だろうと思う。飲食店はすごく困っているので、むしろ厳罰がマイナスであれば、そういうプラスをやると実はもうかるということを少し書くといいのではないか。
車両の安全性の確保
- ドライブレコーダーに関しては、東京都トラック協会が強力にこれを推し進めており、効果が上がっているとのことであるから、参考にしていただくのが良いと思う。
- ドライブレコーダーについて、非常に有効なものであり、是非義務化も含めて考えていただきたい。たとえば、営業車では数年以内、あるいは自家用車では10年以内には義務化ということを打ち出すのも1つの考え方ではないか。
- 欠陥車問題であるが、欠陥車とは何か、リコールはどういうプロセスで決めるのかということの、非常にいい示唆を与えてくれているのではないか。
- 今の技術というのは非常に難しい領域に入り込んできており、人の感覚による欠陥と、設計者は正しいものを作っているということのずれというのは非常に大きい問題だと思う。この辺をもう少し車両の安全という面から取り組んでいく必要があると思う。
救助・救急活動の充実
- 救急隊が多くの人命を救助できるようになったのは、消防庁が中心になり、重症度・緊急度判断基準を救急振興財団を通じて作成し、救急隊員が重症度・緊急度の判断や処置が適切に行われるようになったことが一番大きい。
- 千葉県では、5年前から警察、消防、そして医療機関が連携して、交通事故で亡くなった方の全例を調査している。平成20年度の調査研究を昨年実施し、213人亡くなっているが、その8人に1人は救急隊による病院前救護あるいは搬送、医療機関の医療を改善することによって防ぐことができたのではないかと考えている。
- 医療機関では適格な初期治療が必ずしもされていないという実態があり、こういうことを明らかにすることによって、どこをどう改善すればいいのかということにつながると思う。全国的にこういった調査研究の仕組みを広めていただきたいと思う。
損害賠償の適正化を始めとした被害者支援の推進
- 被害に遭った人たちはもちろん精神的な被害もあるが、経済的にも社会的にも、そしてそこで育つ子どもたちにも、大きな問題があるので、例えば全国の被害者支援センターを効果的に活用するとか、自治体の協力など連携を強力に進めていただきたい。
研究開発及び調査研究の推進
- 自動車事故について、国土交通省で試行的に安全対策のため交通事故調査を実施しているが、この場でも議論した方がよいのではないか。
- 自動車ではデータベースがまだ十分ではなく、解析が遅れており、場所、時間、運転者の年齢など基礎的な整理で相当有意なデータが出ているので、今後も積極的に行うべきだと思う。
鉄道交通
- 鉄道の安全な運行の確保について、安全を極めようとすると、安全は確保できるが、安定な輸送と裏腹なところがあり、すごく難しい。JR東日本などは風速計を充実させた結果、首都圏でかなり強い風が吹いたときに、民鉄は走っているが、何でJR東日本は止まったという一部の御意見もあった。安全と安定のバランスをどうとっていくかということは、かなり重要なことだ。
海上交通
- AISは、500トン以上を対象としており、我が国の内航海運というのは、それ以下のものも非常に多い。AISの効果は高いため、できる限り小型船にも整備できれば、海上交通ももっと事故が削減できるのではないか。
- AISについては、義務化をかなり広げるべきではないか。漁船の方はAISを付けたくないという事情がいろいろあるようだが、安全対策からすれば重要な問題であると思う。
○泉内閣府大臣政務官挨拶
- 学生時代に弁論部に入っており、ボンエルフや、さまざまな都市交通の関係の取組や、北海道では冬の期間は交通死亡事故がベスト10にも入らない、夏に集中的に事故が起こるなど、いろいろと勉強させていただき、スピードというものの一つの怖さというものを学ばせていただいた。
- 皆さんが今日こうしてお集まりいただき、これから御議論をいただくという意味合いは大変大きいと思う。
- 与野党を超えて、これまで一貫して、特にこの数年間、政府がこの交通安全対策に非常に注力をして、そして死亡事故が大変減ってきているというのは、大変すばらしいことであり、これを更に、2,500という数字に向かって歩んでいくということについても、是非とも一丸となって取り組んでいきたい。
- 各省の審議会と比べても、1、2を争うぐらい女性の比率が高い形でスタートさせていただいた。それがすべてということでは勿論ないが、いろんな視点で、高齢者の視点、そして交通弱者の視点、勿論、女性の視点ということでお入りをいただいたと考えており、是非研究者の皆様もそういった御意見を積極的に採用していただき、さまざまな国民の層の意見が集まった、計画を是非ともつくっていただきたい。