中央交通安全対策会議専門委員会議(第2回)議事録

【中央交通安全対策会議専門委員会議(第2回)議事次第】

日時:平成22年4月19日(月)15:00~17:15

場所:内閣府共用第2特別会議室

  1. 開会挨拶
    • 太田内閣大臣官房審議官
  2. 委員等紹介
  3. 議事
    • (1)中央交通安全対策会議専門委員会議(第1回)議事録(案)について
    • (2)「道路交通安全に関する基本政策等に係る調査」の結果報告について
    • (3)第9次交通安全基本計画に盛り込むべき事項」に関する関係団体等からの意見一覧及び回答について
    • (4)第9次交通安全基本計画作成のための主な論議事項について(自由討論)
    • (5)その他
  4. 閉会

【議事内容】

加藤内閣府参事官 それでは、定刻より若干前でございますけれども、全員おそろいでございますので、ただいまから第2回「中央交通安全対策会議専門委員会議」を開催させていただきます。
 本日は、皆様御多忙中にもかかわらず御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
 初めに、内閣府大臣官房審議官の太田より、ごあいさつを申し上げます。

太田内閣府大臣官房審議官 ただいま御紹介をいただきました大臣官房審議官の太田でございます。本来なら、政務三役のいずれかにおいでいただきまして、ごあいさつをと思っておったんですが、どうしても公務が重なってしまいましたので、私からごあいさつを申し上げさせていただきます。
 本日は、御多忙の折にもかかわりませず、専門委員の皆様には御参集を賜りまして、誠にありがとうございます。
 また、4月6日~15日まで、春の全国交通安全運動を実施いたしましたが、各行政機関、民間団体、そしてボランティアの方々の御協力を得て、新入学児を始めとする幅広い方々に、交通安全について働きかけることができたと思っております。
 その結果というか、1人も死者がなければと思っておったんですが、なかなかそうもまいりません。結果といたしまして、期間中の24時間以内の交通事故死者数は96名ということになりました。1人でも少なくということでやっておったわけでありますが、この96名というのは、春、秋を通じて交通安全運動期間中の交通事故に係る統計として残っているものの中では、100名を下回ったのは初めてということでございます。1人でも少なくという意味におきましては、従前に比べますと成果があったのではないかなと思っております。
 交通安全に関する取組みの一つひとつが交通事故の減少に寄与しているわけでありまして、改めてこういう成果を踏まえつつ、さらなる前進を目指していきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 御案内のとおり、道路交通については、24時間死者数を更に半減するという目標が掲げられているところでありますし、また、鉄道、海上及び航空につきましても、大量輸送という特性から、その安全性には万全を期さねばならならいことは当然のことであります。専門委員の皆様には、それぞれの分野における知見をいただきながら、本会議での議論を深めてまいりたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

加藤内閣府参事官 続きまして、議事に入らせていただく前に、本日は前回御欠席の専門委員の方で御出席になっていらっしゃる方がいらっしゃいますので、まず御紹介をさせていただきます。
 座長の方から見て左の角にいらっしゃいます久保田委員でございます。
 座長の方から見て右の角にいらっしゃいます芳仲委員でございます。
 また本日は、岡野委員、小浦委員につきましては、御欠席ということでございます。
 それでは、最初に資料の確認をさせていただきたいと思います。
 お手元の資料でございますけれども、資料1は「中央交通安全対策会議専門委員名簿」。
 資料2は「中央交通安全対策会議専門委員会議(第1回)議事録(案)」。
 資料3は「道路交通安全に関する基本政策等に係る調査報告書」。緑色の厚い冊子でございます。
 資料4は「『第9次交通安全基本計画に盛り込むべき事項』に関する関係団体等からの意見一覧及び回答」。
 資料5は「第9次交通安全基本計画作成のための主な論議事項試案」。前回もお配りいたしましたものでございます。
 資料6は「平成21年中の交通事故発生状況(鉄軌道・踏切道・海上・航空)」。
 また、益子委員から、前回の委員会の際に御紹介のあった資料が提出されておりますので、御説明の必要があれば最後のフリーディスカッションのところでお願いできればと思っております。
 参考として2点付けております。
 1つ目は、第8次計画の各部門の要約版です。目標なり、視点なり、柱を記載したものでございます。
 2つ目は、死傷者の傾向を示す事務局側の資料を一部付けさせていただいております。
 漏れ等がございましたら、事務局にお申し出をいただきたいと思います。よろしいでしょうか。
 特にないようでございましたら、ここから議事に入らせていただきたいと思います。
 それでは、以後の進行を太田座長にお願いいたします。

太田座長 それでは、早速ですけれども、お手元の議事次第に沿って進めさせていただきたいと思います。
 最初に(1)の「中央交通安全対策会議専門委員会議(第1回)議事録(案)について」です。
 これは事務局の方から説明をお願いします。

加藤内閣府参事官 それでは、資料2をごらんいただきたいと思います。
 中身につきましては、各委員に御照会をさせていただいて、チェック済みでございますけれども、また念のためごらんいただければと思います。
 全体を御紹介するのも時間をとりますので、座長の方で要約をいただいている部分、36ページを御覧いただきたいと思います。
 各委員の皆様からさまざまな貴重な御意見をちょうだいしたわけでございますけれども、最終の座長のまとめのところでございます。
 3行目からでございますが、生活道路の問題が非常に大きいだろうということで、特に歩行者、自転車について留意すべきではないかということで御意見がございました。
 更に、最近の情報化の進展の中で、ITS技術との連携をどうしていくのかということが御議論としてございました。
 2段落に行っていただきまして、自転車の問題、特に走行環境の整備ということで御指摘をいただきました。自転車は、メリット、デメリットの双方ありますけれども、いずれにしても走行環境の整備が必要ではなかろうかということでございます。
 3段落のところで、特に高齢者も具体例が出ましたけれども、無関心な方、社会全体としてそういう方をこれからどう取り込んでいくのかということで、いろいろなアプローチとか、新たな点が必要ではないかということで御議論をまとめていただいておるところでございます。
 その他、各委員のところは、御照会したものをチェックして、今回議事録としてお出しさせていただいております。
 事務局からは、以上でございます。

太田座長 ありがとうございました。ただいまの事務局からの説明につきまして、御質問、御意見などがございましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。
 ありがとうございました。それでは、確認したということで、次に(2)の「『道路交通安全に関する基本政策等に関する調査』の結果報告について」でございます。
 それから、議事の「(3)『第9次交通安全基本計画に盛り込むべき事項』に関する関係団体等からの意見一覧及び回答について」と「(4)「第9次交通安全基本計画作成のための主な論議事項について」は、いずれも関係が深いということで、事務局より一括して説明をお願いいたします。

加藤内閣府参事官 それでは、事務局より説明させていただきます。
 まず(2)緑色の冊子で「道路交通安全の基本政策等検討会」でございます。
 これは昨年度、内閣府の方で有識者会議ということで、基本政策の在り方をどうするか、長期予測についてどうするかということを御議論いただいた会議でございます。
 メンバーにつきましては、おめくりいただいて1ページに御紹介してございますけれども、当専門委員会議からも、赤羽先生を始めといたしまして、何名かの先生に御参加をいただいておるところでございまして、1年間かけて議論をいただいたものでございます。
 具体的な中身につきましては、今回赤羽委員が御出席でございますので、赤羽委員から御紹介をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

太田座長 それでは、お願いいたします。

赤羽委員 わかりました。
 それでは、この報告書の1ページからごらんになってください。
 1ページ「第1章 調査研究の目的等」です。
 第8次交通安全基本計画に係る政策評価、交通安全に関する国民の意識調査及び関係団体等の要望調査等を行い、それらを踏まえて、今後の道路交通安全に関する基本政策について検討するということが、1つ目の目的です。
 もう一つは、交通安全基本計画の中では、中長期的な目標の実現を図るため計画期間内における目標を指し示すこととしているところです。この目標設定に当たっては、ある程度の見通しが必要だということで、道路交通に係る長期予測を併せて行うことを2つ目の目的としております。
 2ページ、上からちょっと下がったところに「スケジュール」とあります。
 ここにありますとおり、計4回の検討会を開催するとともに、交通事故被害者等の関係団体からの意見聴取会を昨年の11月30日に開催いたしました。
 四角の上に「(1)国民の交通安全意識等に関するアンケート調査」という囲みがあります。
 「調査概要」にありますとおり、国民の交通安全意識及び交通安全対策に関する国民の要求を明らかにするため、国民の交通安全意識等に関するアンケート調査をインターネット形式で実施いたしました。
 その結果に関しましては、あとで簡単にまとめて御紹介いたします。
 3ページ「(2)関係団体に対する第9次交通安全計画に盛り込むべき事項に関する調査」を実施いたしました。
 対象は、都道府県、政令指定都市の交通安全対策担当部署、関連団体等です。これは調査票形式、つまり紙ベースで実施されました。調査対象は、合計148機関でした。
 この結果に関しましては、あとで事務局からまとめて説明していただきます。
 少し飛びまして、30ページをごらんください。
 第9次計画の「構成」に関して、当該委員会で議論した結果は、以下のとおりです。
 2行目からですが、現行第8次計画に定められた目標を2年前倒しで達成しました。このため、次期第9次計画の基本的な枠組みの検討に当たっても、現在効果を上げていると見られる現行計画の方向性を継続することが適当ではないかと考えました。その上で、近年の交通事故の状況や社会経済情勢の変化等を踏まえた検討を行う必要があると考えた次第です。
 第2段落の2行目に行きまして、基本的には現行の第8次計画の構成と同様に、基本計画の体系を明確にするとともに、国民にとって理解しやすくするために『基本理念』(長期的な方向性)、『目標』(期限を明確にした数値目標)、『戦略』(具体的な交通安全施策)、4つの視点と8つの柱の3つの流れで構成することを考えております。
 その上で、この場で議論していただきたい論点としては、
 『基本理念』に更に盛り込むべき考え方はないかということ。
 総理大臣談話・特命担当大臣談話を踏まえ、計画期間の具体的な『目標』をどう設定するか。
 『戦略』における対策の構成・考え方はどのようにあるべきか。新たな政府目標の達成に向けて重点的に取組む事項はあるかということです。
 31ページには、第8次基本計画の構成を示しております。
 32ページは、第9次計画の「目標」に関してです。
 (1)死者数、死傷者数、事故件数の数値目標です。
 第8次計画における「交通安全基本計画における目標」では、四角の囲みのような数値目標が定められております。
 四角の下の段落の2番目です。
 現在、①平成22年1月の総理大臣談話を元に、“死者数”の目標値については「平成30年末までに2,500人以下」とする政府目標が設定されていること、②平成22年1月の特命担当大臣談話において、“発生件数”や“負傷者数”についても一層減少させる、との決意が示されていることを勘案して、数値目標の設定の是非を検討する必要があるとこの委員会では考えております。
 (2)社会資本整備重点計画等、政府の計画・プログラムにおける数値目標です。
 第8次計画では、8つの柱のうち「道路環境の整備」について、前・社会資本整備重点計画(平成15~19年度)において定められた数値目標を引用し、四角囲みのような抑止目標を設定しております。
 ここで「エリア」と言っているのは、具体的には安心歩行エリアを指しております。
 33ページは、もう少し具体的にどのような数値目標がこの社会資本整備重点計画との関連において定められているかが紹介されております。
 34ページをごらんください。
 全体の目標だけではなくて、先ほどの議事録でも御紹介がありました高齢者、歩行者、自転車利用者を対象にしたサブ数値目標の設定が考えられます。
 交通事故死者数については、前述のとおり、年齢層別では65歳以上の高齢者が最も多く、状態別では歩行者が最も多くなっております。いずれもほかの階層に比べて減少率は低くなっております。また、自転車乗車中については、人口当たりの死傷率はかえって増加しております。欧米諸国との比較で見ますと、我が国では「高齢者」「歩行者」「自転車利用者」の占める割合が圧倒的に高いことが特徴として上げられます。
 先ほど挙げました全体の死者数の削減目標を達成するためには、この「高齢者」「歩行者」「自転車利用者」の交通事故死者を減少させることを重点に置く必要があると考えられます。そのためには、このセグメントに対してサブ目標を設定することの是非を検討する必要があります。
 ただし、これらのターゲットグループのサブ目標を設定する際に、対象別の死者数等について推計モデルを用いて科学的根拠を有する形での目標値設定は、なかなか困難であろうというのが私たちの結論です。
 ただし、例えば①今後の交通安全対策の目標である交通事故死者数の半減を前提として、2008年(平成20)年時点での年齢層別・状態別交通事故死者数(実数)を、2018(平成30)年時点でそれぞれ半減した場合、過去からの推移(の延長線)で見れば、35ページの図II-29、図II-30のとおりとなります。35ページの破線の部分が、今、御説明したような考え方で延長した結果です。
 36ページが、その結果として、65歳以上、歩行中、自転車乗車中の人口10万当たりの死者数が欧米諸国と比べてどういう関係になるか。現在がこうで、それに対して半減するとどうなるかということを示しております。
 この結果を見て、必ずしもそのとおりにできるかということは、我が国と欧米諸国とは交通事情が異なるから同列に比較することができない面もありますが、そういうことを考慮しても、同じようなレベルに近づけるという目標設定はあり得るのではないかということが我々の考え方です。
 37ページ「4.第9次計画の『戦略』」です。
 このページの表が、第7次計画における「重点施策・新規施策」「講じようとする施策」です。
 これに対して第8次計画では、この表の下にありますが、8つの「講じようとする施策」に横断的なものとして、①少子高齢化社会への対応、②歩行者の安全確保、③国民自らの意識改革、④ITの活用が挙げられておりました。
 しかしながら、第8次計画について、これら4つの視点の中に、交通安全対策の目標等の達成に向けた重点対象(①②)と、目標を達成するための手段である交通安全対策を講ずるに当たっての考え方(③④)とが混在しているため、わかりにくいとの意見がありました。
 第8次計画の目標設定等が38ページの上の表になっております。
 このような意見を踏まえて、当該委員会では、次のような提案をしております。
 案1は、38ページの下の図にその概念が示されております。
 「今後の方向・視点」において、目標等の達成に向けた『重点対象』と、交通安全対策を講ずるに当たっての『考え方』を区別・明確化するということです。
 39ページには、それに対して代替案が示されております。
 案2は、第8次計画の「今後の方向・視点」に新たな視点を適宜追加修正するということです。
 具体的には、第8次計画の視点は“少子高齢化社会への対応”“歩行者の安全確保”“国民自らの意識改革”“ITの活用”である。これに何らかの新しい視点を加えるということです。
 案3は、「今後の方向・視点」を削除し、重点施策・新規施策を示すということです。
 これは第8次計画と実質的に同じになるという案です。
 次に、大分飛びますが、113ページをごらんください。当該委員会の2番目の目的であります長期予測に関する報告の部分です。
 「4.道路交通事故死者数の予測手法の検討」ということで、最初に説明したとおり、死者数の推計だけではなくて、事故件数や死傷者数の予測もしておりますけれども、まず、事故死者数の推計モデルについて御説明いたします。
 今回の予測に当たっての特徴の1つは、事故発生要因と致死要因を分離したということです。これは図に概念が示されているとおり、交通事故が発生する要因(事故発生要因)、あるいは衝突の要因と、衝突事故が起こった後に死に至る要因とは必ずしも同一ではないと考えられます。例えば24歳以下の人口などの人口要因、あるいは技術要因等の説明変数は事故発生確率と事故発生死亡確率の双方に影響を与え得るのに対して、エアバッグの普及率、救命活動インフラ等は、事故の発生に影響を与える要因ではないが、事故発生時の生存確率には影響を与える要因であると考えたわけです。
 図の下に行きまして、モデルによって説明される被説明変数として「事故発生件数(100件)あたりの交通事故死者数(dead_acci)」を採用して、これが先ほど説明したような要因の影響を受けるという構造になっております。
 114ページ以降に、代表的な説明変数、何を要因したかということが紹介されております。
 個別には説明いたしませんが、シートベルト着用義務化ダミー。
 自動車当たりの舗装延長。これは道路の質がどう安全に影響を与えるか。
 人口当たりの高規格救急車数、人口当たり救急救命士数。これは救急の体制が生存率の向上に効果をもたらしているでしょうということです。
 115ページに行きまして、車のストックに占める新車割合とタイムトレンドの交差項という説明変数があります。これは大ざっぱに言いますと、前回のこの会議でも御紹介したとおり、初度登録年が若い車、最近の車ほど、10万台当たりの死傷者数が一貫して減っているという車の安全技術の向上が統計的に現れますので、それを取り入れたということです。
 115ページの一番下に、推定方法・推定結果がまとめられております。全部で8パターンのモデルの推定を行いました。
 シートベルト着用義務化の規制要因、あるいは道路インフラ要因、救急インフラ要因等がいずれも期待どおりマイナスの係数、つまり死者数を減らすような効果を与えていることが統計的に明らかとなりました。
 117ページは、破線がこれまでの実際の統計値です。実線がモデルの出力です。このような結果になっている例です。
 120ページ、長期予測で2番目の考え方で推計した結果を御紹介いたします。
 2番目の方法は、年齢階級別人口に着目した分析ということです。
 式の形が示されておりますけれども、要するに一番下の表のとおり、年齢を3階級に分けまして、代表的な年齢区分に対して、総人口に占める割合とそのセグメントの実人口とがありますが、それをかけ合わせた量で交通事故死者数を説明するという考え方です。これは第8次計画の場合にも採用されたモデル方式の1つです。
 121ページは、継続した統計値がある過去からさかのぼった実績値に対して、モデルがどのような出力をしているかということを示しております。赤が実績値、青が予測値であります。
 122ページは、トレンドによる分析です。
 この考え方は、第1に「①予測手順」にありますとおり、「自動車走行キロ1億キロあたり交通事故死亡者数」の対数値を、西暦年によって対比する。つまり、ごく大ざっぱにいきますと、10年で半分になっているとか、時間の経過によってのみ、事故死者数の増減を説明するというモデル方式になっております。
 その後で、この自動車走行キロという将来推計を行いまして、その結果を掛け合わせて、交通事故死者数の実数値を推定する、あるいは予測するという方式になっております。この方式も第8次計画でも採用された方式です。
 125ページの図に、過去の動向と将来を予測した結果があります。
 これは後で御紹介しますけれども、過去から統計値があるすべての期間にわたってモデルを適用しようとするとなかなか難しい問題が出てきまして、125ページの図は、直近のトレンドを延長するという方法で予測をしております。
 127ページをごらんください。
 今、ごく大ざっぱに3つの長期予測のモデル方式を御紹介いたしました。ここでは、それぞれのモデルの出力に関して、予測値に関しての使い方、位置づけを説明しております。
 「2.本調査研究における基本的な考え方」の第2段落からです。これは第1に説明したいろんな技術要因も入ったモデルの説明です。
 道路交通事故件数(道路交通事故死者数)推計モデル(構造要因モデル)は、個々の政策効果の有無の大きさや説明変数の係数を通じて把握することが可能である反面、将来予測を行うためには、走行キロ、賃金、道路舗装延長及び政策変数を将来に先延ばしする必要があり、誤差が増幅され、予測精度が落ちる。
 これに対して、2番目と3番目に御紹介した年齢階級別人口の大きさに着目した分析やトレンドによる分析は、将来的に不確定な変数を説明変数に置く必要がないため、あるいは年齢階級別人口のように、経済によってその動向が余り影響を受けない人口という、平べったく言うと固い予測値を使って、それを入力として予測するというために、構造要因による予測モデルよりも将来予測の精度は高いと考えられる。
 そのため、127ページの一番下の表のように、1番目のモデルは、モデルの用途として今後の政策の方向性についてのインプリケーションを把握する。つまり、どんな技術的な要因、精度的な要因が事故の減少にどの程度効きそうかという検討をつけるために使いましょう。
 2番目と3番目のモデルにつきましては、道路交通事故件数や道路交通事故死者数の将来予測値の算出に使ってはどうか。
 そのように使い分けをしてはどうかというのが、この報告書での提案です。
 128ページは、今、御紹介したいずれの予測方式にも含まれない要因を挙げてあります。
 ①です。例えば交通安全教育や交通安全啓発のような道路交通安全施策は、モデルには明示的に組み入れられておりません。それから、政策実施量を数値化することが困難であったり、他の政策変数との相関が強いため、モデルに組み入れることが困難であったり、説明変数の自由度を確保するために捨象している説明変数があります。
 このモデルで取り上げられていない政策変数であっても、必ずしも政策効果がないというわけではなく、推計結果は、他の交通安全施策や技術的取組みが実施された上での効果と考えることが適当であろうと考えております。
 130ページ「第5節 道路交通事故長期予測の結果」です。
 第1番目に御紹介した構造要因分析モデルのまとめです。走行キロ当たりの事故件数モデルからは、若年ドライバーの割合や65歳以上人口といった人口要因は大きく利いているほか、車両安全性の向上効果、酒酔い運転罰金額、VICSナビゲーション普及率、エコドライブ、携帯電話普及率といった要因が走行キロ当たりの事故件数に影響を与えていることが確認されました。また「事故件数あたりの死者数」モデルからは、シートベルト着用義務化、道路インフラの改善、救急インフラの拡充、車両安全性といった要因がいずれも統計的に有意に死者数の低下に寄与していることが示されております。
 「2.トレンド分析及び年齢階級人口の大きさに着目した分析からのまとめ」です。
 2番目の段落です。年齢階級別人口の大きさに着目した分析からは、2015年における道路交通事故件数は、58万件から112万件、道路交通事故死傷者数は72万人から140万人、道路交通事故死者数は2,988人程度と推計されました。
 一方、トレンドによる分析からの推計では、2015年における道路交通事故件数は、61万件から103万件、道路交通事故死傷者数は76万人から129万人、道路交通事故死者数は3,623人から4,771人程度と推計されました。
 その詳しい数値が131ページに表として掲載されております。
 今、御紹介した数字の中で、特に死傷者数あるいは事故件数の幅が大きいのですが、その事情の一部を説明いたします。
 ページを戻っていただいて、101ページをごらんください。
 このグラフは、先ほど御紹介した2番目の階級別人口を説明変数として、交通事故件数を予測したものですが、継続的にずっと伸びていってしまっているものがモデルの出力です。途中でがくんと下がっているものが実績値です。
 これは平成16年から死傷者数が減り始めているんですが、その傾向をモデルに取り込めておりません。そういう構造変化をモデルに取り込めていないために、こういう結果になっていると考えられます。
 それに対して、102ページをごらんください。
 一番下のグラフですが、これも同じように途中で線が止まっているものが実績値で、2017年まで伸ばされているものが予測値です。これは1985~2008年と期間を区切ってモデルの推定に使って予測したものです。このように減少傾向が取り込めているようにも見えますが、モデルのパラメータのプラスマイナスの解釈が難しかったり、あるいはデータの数がもともと少ないものですから、統計的な有意性も必ずしも十分でないということで、扱いに注意する必要があるという背景がこの予測値の幅にも現れていると御理解いただければと思います。
 最後の部分です。132ページをごらんください。
 「第4章 今後の道路交通安全対策に盛り込む施策の方向性」です。冒頭で説明しましたアンケート結果をごく簡単に御説明いたします。
 1.の冒頭のポツです。
 交通事故についての考え方を質問しました問18によると、交通事故死者、同負傷者、交通事故それぞれについて、“なくすことが困難だが、大幅に減少させるべきである”と回答した者が全体の8割前後を占めておりました。更に“なくすことは可能であり、ゼロとすべきである”と回答した者も1割前後存在し、特に交通事故死者について見れば、全体の15.8%がゼロとすべきと回答していることに注目すべきでありましょう。
 2番目「戦略」についてです。
 交通事故情勢をどうとらえているかに関する設問によりますと、“好ましい方向に向かっている”と回答した者が全体の2割弱、逆に“悪化する方向に向かっている”と回答した者が3割を占めました。
 133ページをごらんください。
 今後の方向性を考える上で、政策評価に基づいてどんなことが考えられるべきかということで、もう時間もありませんのでかいつまんで申し上げますと、この表にまとめられるように「さらに取り組むべき分野」として、先ほどからもキーワードとして紹介されている「高齢者」「子ども」「自転車」というのが挙がってきております。
 134ページの最後のところでは、これに加えて、場所を区切って考えるとしたら「生活道路」というキーワードを付け加える必要があるのではないかととりまとめております。
 以上で御説明を終わりにいたします。

太田座長 赤羽先生、ありがとうございました。大変大部な検討ということですが、あとの資料を続けてお願いいたします。

加藤内閣府参事官 続きまして、資料4以下を事務局から説明させていただきます。
 資料4につきましては、先ほど赤羽委員から御説明がありましたとおり、県、政令市、団体からの資料をまとめたものでございます。
 右側の回答欄に1~4まで番号を振ってございますが、これは現在の各省庁の検討状況ということで、参考までにごらんいただければと思います。
 全体を通じまして、前回の各委員からの御意見等と共通点が非常に多かったということで、高齢者、自転車、生活道路対策の実施、安全教育の必要性、ITSの推進を挙げるものが多かったということでございます。
 具体的にかいつまんで御紹介させていただきます。
 まず、1ページ目は「目標」に関するものでございます。整理番号で見ますと、2番あるいは6番のように「ゼロ」を目標に置いてほしいということで、意欲的な目標を掲げてほしいという御意見が多数ございました。
 2ページの10番から4ページまで、高齢者の対策についての御意見を多くちょうだいいたしております。高齢化社会を迎える中で、高齢者に意を払った対策を行うべきであるということでございます。
 特に3ページの17番の意見ですと、高齢者が関与する事故が増えているといったような実態を踏まえた対策が必要であろうという御指摘をいただいております。
 4ページ、28番以降が自転車の安全利用ということで、これも7ページまで多くの御意見をちょうだいいたしております。特に交通安全教育、自転車の安全な利用の指導という御指摘をちょうだいしております。
 個別のものでは、29番にありますような幼児2人同乗用自転車の推進でございますとか、5ページの34番にございますような通行帯、あるいは33番の自転車道の整備ということで御指摘をいただいております。
 少し変わったところでは、37番のところで、ナンバープレートとか反則金の導入ということで、実はなかなか対応が難しいわけでございますけれども、このような御指摘もちょうだいいたしております。
 6ページの辺りも事故防止ですとか、42番の専用道の設置といった意見が並んでございます。
 39番のところで、自転車の場合は、加害者になった場合に損害賠償の費用の点でも非常にかかるということもしっかり告知すべきだという御意見をいただいております。
 7ページ、47番以降、特に被害者団体の方から、歩車分離信号の普及促進ということで御意見をちょうだいいたしております。
 54番、55番では、生活道路の対策。特に速度制限等の御意見をちょうだいしておるところでございます。
 8ページ、65番の事故多発地点の解消ということで、政策評価の中でも、やはり事故が多発しているところに多くの資源を投入すると効果的に削減ができるということでございまして、多発地点の対策の必要性を訴えていただいております。
 9ページ、個別の施策では、71番の音声案内ですとか、75番の標識の文字の拡大といった点を御指摘いただいております。
 飛びまして11ページ、数は少ないんですけれども、道路交通環境の整備ということで、インフラ整備についても公共事業削減の中で整備を進めてほしいといった声が出てございます。
 90番では生命尊重の観点から安全第一ということで、かけがえのない生命、健康の損失をお金に換算するなという御意見をちょうだいいたしております。
 12ページ、95番の飲酒運転の撲滅などの飲酒運転の関係ですとか、96番以降が教育の関係でございます。交通安全教育で3世代の交流ですとか、あるいは世代に応じた教育の必要性を御指摘いただいております。
 13ページ、高校での教育、あるいは生涯教育といったことでいただいております。
 103番のところで、前回佐々木委員からもございましたけれども、反射材を利用していない方も多いということで、反射材をしっかり付けていただきたいということが御指摘としてございます。
 少し飛びまして15ページ、120番のシートベルト着用の徹底でございますとか、122番の二輪車につきましては、ヘルメットも勿論でございますが、ジャケットやプロテクターも普及してほしいという点、126番の後部座席のシートベルトといったような御指摘がございます。
 16ページ、130番ですが、被害者団体の方から11月の第3日曜日を「交通安全」のよりどころとし、犠牲者の日として追悼してほしいという御意見もちょうだいいたしております。
 132番以降、運送業者に対して厳しく指導をしていただきたいという御意見をちょうだいいたしております。
 17ページ、137番以下、前回も御意見がございましたけれども、運輸安全マネジメントの活用ということです。
 145番、免許の取得要件の厳格化ということも御指摘がございました。
 18ページ、149番の辺りですが、資源として自動車教習所があるので、これを活用してはどうかということがございました。
 19ページ、158番ですが、高齢化が進む中で自主返納についても積極的な活用を求める御意見がございました。
 20ページ、172番辺りから後ろでございますが、ITSの推進ということで、いろんな個別具体の名前も出ております。171番の盗難防止のイモビライザですとか、172番にデジタルタコグラフ。
 21ページ、178番にスピードリミッターなどです。
 180番、181番の辺りですが、杉山先生からは前回の御意見の後、資料もいただいておりますけれども、トラック協会で行っているようなドライブレコーダーを入れることによって事故が削減できるのではないか。これをしっかり入れてほしい。
 あるいは184番、携帯電話等の規制をしっかりしてほしいという御指摘がございました。
 少し飛びます。23ページの192番、193番の辺りです。救急救命や応急手当の必要性について御意見をちょうだいしております。
 一番下の198番、被害者に対する支援の充実ということでいただいております。
 24ページ以降は、調査です。前回も捜査と調査という御意見がございましたけれども、調査分析をしっかり進めていく、あるいはヒューマンエラーへの対応をしっかりするということで御意見をちょうだいいたしております。
 少し飛びますが、26ページ、218番以降、エコドライブの推進は、環境だけでなく、交通安全の面でも非常に効果があるという御指摘をいただいております。
 222番以降、鉄道、踏み切りについての安全対策の必要性。
 27ページ、海難関係の体制整備の必要性。
 その他、国、地方の役割の明確化ですとか、年次の統一の必要性ですとか、あるいは対応する省庁についての追加等々の御意見をちょうだいいたしております。意見は多岐にわたっておりますけれども、このような形で御意見をちょうだいいたしておるところでございます。
 最後に資料5です。これは前回御説明させていただいた論議事項試案です。赤羽先生から御説明いただいた点に関連して、再度補足をさせていただきたいと思います。
 最初に目次がございまして、1ページに期間の設定の考え方ということで、2,500人という目標が平成30年で出ておるわけですけれども、計画は5か年でずっときていますので、そうだとすれば27年までが計画期間ということでございます。27年までの目標を置いて30年の目標もあるということになりますと、経過期間をどうするのか、目標が2つできることについてはどう考えるかということでございます。
 2ページ「総論」の「1 目標値の設定」の下の方です。
 基本的に、現在は過去からの統計の継続性もあって、24時間死者を採用させていただいておりますけれども、世界的には30日以内死者ということも採用されております。第8次計画では30日以内死者も24時間死者と同程度に減らしていくということで、具体の数値の言及はないわけですが、30日以内についてももう少ししっかり書き込んではどうかという御意見もございます。
 5ページ、個別の御説明は紹介いたしませんけれども、(2)交通安全対策を講ずるに当たっての考え方ということで、意識改革、情報通信、効果的・効率的な対策ということがございました。これは道路交通のところに記述がございますが、これ自体はほかの分野についても当てはまる施策でありますので、広く考えてもいいのかなということも御意見としてはございます。
 参考の方に道路交通以外のところも1枚紙で付けておりまして、目標なり視点が書いてございますので、特に具体のところは、次回の3回目に案をお示ししようと思っていますが、今日はこの辺も含めて御議論をいただけたらと思います。
 進め方といたしましては、前回御説明したとおり、5回ぐらいということで、前回と今回、赤羽先生の御説明と私が説明いたしましたところを含めてフリーディスカッションをいただいて、3回目にそれを整理したいと思っています。特に本日は、前回議論が出ていません事故死者数ですとか、死傷者数といった辺りについても御意見をちょうだいできれば、勿論、全体のどこでも結構でございますが、事務局としてはそのようなことを考えておるところでございます。
 説明は以上でございます。

太田座長 ありがとうございました。
 ということで、前回と今回がフリーディスカッションで、次回でいよいよ具体的なとりまとめをする。ということは、具体的にはここにあります資料5の中身を検討するのが次回ということでしょうか。

加藤内閣府参事官 前回と今回の御意見を踏まえまして、次回は論議事項試案を骨子というか、項目をお示しして整理をさせていただこうと思っています。

太田座長 そういう位置づけですので、今日は赤羽先生から、かなり詳しい調査の中身について御報告をいただきましたので、その辺の具体的な数値目標のことも含めながら、議論をさせていただければと思います。

加藤内閣府参事官 座長、申し訳ございません。1点申し忘れました。
 参考2という資料を付けております。赤羽先生から幾つか数字を御指摘いただいた中で、1枚紙でグラフが付いておるものでございます。
 特に下の方のグラフですけれども、先ほどもお話があったように、ずっと上昇してきまして、急にカーブが下がっておるものですから、なかなか予測し難いのですが、仮に昨年から今年の減少幅でいきますと4%という数字がございます。それでいきますと71万人ぐらいが負傷者数の目標になってきます。長期予測の統計でいきますと、現行の負傷者数よりも目標値が上回ってしまうようなことになりまして、なかなか数字として置くのは厳しいかなということもございます。仮に今の足元、今年度の数値がやはり3%弱、4%まできていませんけれども、きつめに置きますと70万人ぐらいの数字が出てくる。
 それから、2,500という30年の目標を単純に伸ばしていきますと、平成27年のところでは3,100ぐらいになりまして、赤羽先生の説明の中で一番低い数字は3,000ぐらいの数字だったかと思いますが、それだとかなり厳しいということはございますけれども、そのような数字をお示しした上であとは自由に御議論いただければと思います。

太田座長 そのようなことのようですが、直ちに中身がはっきりわからないところもあろうかと思いますが、こういった考え方で進める、考え方より目標の数値といいますか、それに関連したことを中心に議論させていただければと思います。
 質問を含めて、どなたからでも結構ですから、お願いいたしたいと思います。いかがでしょうか。どこからでも結構です。
 では、私の方から、関連した資料の読み方です。資料4で関連団体からの意見というものがございましたね。これは赤羽先生からございましたけれども、去年の10~11月について、148機関に割って、返ってきたのが67機関とちょっと少ないような気がします。
 それと、ここで1から全部まとめていただいたのは、1つの機関である項目についてまとまったところを書いたということであって、ある機関が実は複数いろんな場所でコメントしていて、それを一応分野別に分けてみたという編集をされているということでよろしいのですか。

加藤内閣府参事官 全体の構成は、全体の目標から視点、8本柱ということで並べていますので、団体の意見を分けて、それぞれのところで入れ込んでいるものがございます。
 それから、先ほど座長からございましたように、たくさんの団体に送ったのですが、返ってきた団体数としては、先ほどの緑の本にあったようなことであるということでございます。

太田座長 ありがとうございました。
 ということで、それを見ますと、どうも政令指定都市の回答率が悪いということと、都道府県が半分ぐらい。関連団体はいろんなところがありますので、これが半分ぐらいということで、特に分野的に意見が少なかったということはございますか。余りそういうことは考えずに、大体いろんな意見は出ているという判断でよろしいのでしょうか。

加藤内閣府参事官 そうですね。都道府県、政令市は、御指摘のあったとおりでございます。
 団体につきましては、90団体ぐらいございますけれども、やはりどうしても道路交通の団体が多くなりますので、鉄道や海上、航空のところは御意見がちょうだいできなかったところもあるのかなとは感じております。その辺はまさにこの場で御指摘をいただいた上で反映させていただきたいと思っております。

太田座長 わかりました。ということで、資料4については理解していただきたいということのようでございます。
 それでは、どこからでも結構ですけれども、何かございますか。
 三国委員、どうぞ。

三国委員 先ほどのグリーンの表紙の資料で、15ページの「政策的インプリケーション」の下の図「年齢階級別・人口10万人あたり・自転車運転中の事故『死者+負傷者』数」です。
 1986年から急に16~24歳の年齢の死傷者数がどんどん伸びていっているわけなんですが、その辺はどのように分析されているのかを伺いたいです。

加藤内閣府参事官 それは一番上ですか。

三国委員 一番上です。1986年までは余り死傷者数の差がないですね。

加藤内閣府参事官 今、一番上の出ている線でございますか。

三国委員 そうです。いただいた資料をインターネットで見ましたので、今カラーで話していましたけれども、ひし形の線が急に上がっているんです。

太田座長 原因がわかるかということですね。

三国委員 はい。原因がわかるかということと、私もそれなりに考えてみたので、それが正しいかどうかも確認したいんです。
 警察庁の方に伺いたいんですが、自転車、歩行者道というか、それができたのは昭和45年でしたか。1970年ではなかったですか。

警察庁(入谷課長) 確認します。

太田座長 自転車を歩道に上げることを認めたときですね。
 それでは、その辺は確認していただいて、関連して、今の15ページの図の分析はちょっと細かいということで覚えていらっしゃるかどうかわかりませんが、どういうふうに理解されたか、何か今、おわかりでしたらお願いいたします。

赤羽委員 この点に関しては、具体的に今のような分析はしていなかったと思います。私は覚えがないです。

三国委員 私の記憶が正しいかどうかわからないんですけれども、たしか昭和45年から自転車も歩道に上がっていいとなったと思うんです。
 そう考えますと、1970年に生まれた子がちょうど16歳になっていまして、その子たちは歩道も走っていいよという教育を受けていたので、結構今の若い人たちもそうなんですが、左も右も関係なく自転車で走っているという感覚なんですね。そう考えますと、例えば一番多い2005年のピーク時は、そのお子さんがもし18歳だとすれば、1986年のころには5歳だと思うんです。そうすると、自転車が歩道も走っていいよという改正になってから、自転車が左右のどちらを走っていいかという教育が行き届かなくなって、若い人の自転車の事故が増えたのではないかと思うんです。

太田座長 これは1つの可能性で、今の点でお答えできる点がございましたらお願いします。

警察庁(入谷課長) とりあえず、自転車が歩道を走る普通自転車という制度が設けられたのは、昭和53年ということになります。

太田座長 それでは、今の委員の御質問は、少なくともこういう状況があって、どうも走行環境なり、それに関連する教育と関係しているのではないかということで、確認していただきたいことと、そうだとすればどうしたらいいかというのは、次の議題になると思いますので、よろしくお願いします。
 それでは、そういう質問があったということで、また調べさせていただければと思います。
 関連して何かございますか。
 赤羽委員、どうぞ。

赤羽委員 これまでは具体的に今のような視点を持って分析してはこなかったと思うんですけれども、もし御指摘のようなことがあるとすれば、例えば世代に着目して、その世代が年齢を重ねるに従って、どのように自転車事故に関わっているかということを統計的に分析して、有意かどうかということを分析するという方法はあると思いますので、これからそういう視点で分析していくという方向はあると思います。私もその御指摘に興味があります。
 以上です。

太田座長 三国委員、どうぞ。

三国委員 私もこの図に興味を持ちまして、自分の年齢に当てはめて、自分はこの年に何歳だったかなと思って、この表の中に自分を当てはめてみたんです。ただ、私の年齢でいくと、大体死傷者数が低い方にいくんです。
 だから、若い人の教育と私たちの年代の教育は違っていたのと、やはり交通の環境、子どものころに歩道を走ってもいいという状況ではなかったので、その辺で教育も変わってきているのではないかと思うんです。
 以上です。

太田座長 ありがとうございました。これからのひとつの視点として、年齢階層のデータを見るときの理解ですね。そういった環境状況の変化ということがございますし、自転車の運転そのものの総量が増えているかもしれませんね。その辺を含めて、また検討されて、交通安全に対する政策的な意味は何かということを是非フィードバックさせていただければと思います。
 そのほか、何かお気づきの点ございますか。
 大久保さん、どうぞ。

大久保委員 先ほど座長さんの方から、今回の計画に盛り込むべき事項の関係団体からの意見聴取の一覧表の中でお話なさったことで少し思ったことなんですけれども、これを見させていただきますと、被害者団体からの被害者支援対策というものがとても少ないように思うんです。
 被害者支援の現場では、日々、被害者の方たちが大変困窮する状況になり、生活なり、あるいは精神的なダメージも大きく、その家庭の中で育つ子どもへの影響も日々大変大きいものがあるということを感じている割に、ここにはなかなか出てきておりません。それはそういう意見聴取に応じる元気、あるいは意見聴取をしているということを知るという機会があっても、なかなかそこまで目を向けることができない状況に被害者の人たちはあるということが、ひとつ言えるので、少ないのではないかと思いました。
 それと、鉄道とか海とか空の方たちからの意見がないということでしたが、これに関しましても、今までも日本の社会の中では、大量の被害者の方たちが出ているわけです。その方たちのお話を聞いていますと、被害者としてさまざまな困難に直面をして、でも相談をするときには、結局加害者である事業体にいろいろな相談をしたり、あるいは支援を受けたりしなければならない。これほど悲しく、苦しいことはないということを聞くわけなんです。
 ですから、是非この第9次の計画の中にも、道路の中には、被害者支援の推進ということが入っていますけれども、海とか空とか鉄道とかに関しましても、それは是非入れて、進めていっていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

太田座長 ありがとうございました。御意見ということで伺わせていただきたいと思います。
 そのほかいかがでしょうか。
 佐々木委員、どうぞ。

佐々木委員 先ほどいただいた資料4「第9次交通安全基本計画に盛り込むべき事項」の5ページの37番のところですけれども、自転車の「交通反則通告制度の導入のために」とあるんですが、群馬県だけなんですかね。よく高校生が捕まっているんですが、警察官が黄色いカードに住所とか氏名とかを記入して、それを学校の方に通告するという制度が群馬県はあるんですけれども、これは群馬県だけなんでしょうか。イエローカードといって、よくサッカーなどでありますね。そういう黄色い紙なんです。

久保田委員 埼玉はレッドカードです。

太田座長 それぞれの県警といいますか、各県でいろいろやられているということでしょうかね。

佐々木委員 やはり、マナーというか、ルールを守らない子が多いんですよ。特に高校生は、やはり悪いと思います。

太田座長 どうぞ。

警察庁(入谷課長) 今の件でございますが、具体的にそれぞれの県がどうやっているかということを把握していないところがあって恐縮なんですが、基本的には、今、自転車のルールを守らせるということで、それぞれの各県がいろいろ工夫しながら指導警告をしておる状況でございますから、そういう中で取り組んでいると考えております。

佐々木委員 ありがとうございます。

太田座長 そういう意味ですと、いろんな取組みのいい例をまとめておいていただくということなんでしょうかね。そんな形の御意見ということで伺いたいと思います。
 そのほか、いかがでしょうか。
 杉山先生、どうぞ。

杉山委員 フリーディスカッションということでよろしいんですね。

太田座長 結構です。

杉山委員 前回参加させていただいて、また新たに気がついたところを3点ほど申し上げておきたいと思います。
 1点目は、理念と現実に関してのことです。やはり理念は崇高のものを掲げるべきではないかなと思います。ただ、その反面として、相変わらず交通事故が大きな課題になっているという現実は、明確に踏まえなければいけない。そのためには、資料の5にありますように、交通社会に参加する人たちが一層の取組みをする必要があるのではないかと思います。これを徹底させるべきではないかなと思います。
 その1つの手段といたしまして、実は内閣府だけでやろうと思うのは、かなり荷が重いのではないかと思います。交通安全対策に関しましては、役所の中でもいろいろなところがいろいろなことを試みている。そういう交通安全対策の情報のデータバンク的なものを内閣府で担うことはできないだろうか。あるところではこういうことをやっている。それについて情報を知りたいんだけれども、内閣府のホームページ等々を通してアクセスできないだろうかと。それに対する答えみたいなものを御検討いただけないかというのが1点でございます。
 第2点目は、目標設定に関してのことでございます。私は、やはりこの交通安全基本計画がインディカティブ・プランニングといいますか、指示的計画ですから、目標設定はあっていいと思います。ただ、その際に、余りにも非現実的な目標であると信用されなくなる可能性がありますので、今日の赤羽先生の推計等を聞いておりますと、私はその懸念はないと思いますが、ここまでなら実行できるのではないかというところを示してほしいなと思います。
 その際に、24時間か30日以内かという御議論がありました。私は2つあると、かえって混乱を来すのではないかと思います。ですから、あくまでもどちらかにして、私は24時間の方がいいと思うんですけれども、その参考値として30日以内を載せるという形にしないと混乱が大きいかなと思います。
 それに関していいますと、前回あるいはこのアンケートの中にも出てきているんですけれども、世界一安全な交通社会を目指すんだと。ですから、世界一ということは競争が入る。本来、この側面は、競争にはなじまないという位置づけなんですが、世界一を目指すのであれば、例えばヤードスティック競争的なものが考えられてもいいのではないでしょうか。競争条件が余りにも異なっていれば問題ですが、同じような競争条件の下で、あるところではやれた、あるところではやれない。そこは問題ではないかという形で、競争という言葉がいいか悪いか、これは後ほど検討しなければいけないと思いますが、そんなフレームがあってもいいのかなと思います。これが2点目です。
 第3点目は、前回も、あるいは今の大久保委員のお話にもありましたけれども、どうもこの計画そのものは道路交通が圧倒的に多い。これはやむを得ない側面はあると思います。ただ、その中で鉄道も海上交通も航空も取り上げているものですから、この計画の冒頭に、第9次計画の重点は、道路、鉄道、海上交通、航空は何なんだということを絞り込んで、それを絞り込むのが非常に難しいとは思うんですが、重点的なものを各モードについて挙げておくことが必要になってくるのではないかと思います。
 そのヒントは、委員の皆様方の御意見、あるいはこの関連団体からの意見の一覧の中に相当含まれているのではないかと思います。特に8次計画と9次計画はここがこう違って、ここをしっかりとやれという意見もありますので、その中から抽出することが可能になってくるのではないかと思います。これが基本的な3点です。
 あと、個別的な点で恐縮ですが、この関連団体からの一覧を見せていただいておりまして、若干気がついたことを追加させていただきます。
 1つは、今、公共投資が非常に厳しい目を向けられているんですけれども、その一面で、やはり公共投資でやらなければいけない側面がある。特に安全に絡んだものは軽視することはできませんので、何か言葉を変えるような工夫をして、安全投資は積極的にやっていきますよということがさけばれているのかなと思います。
 それから、意見の中で出てきましたのは、歩車分離信号、ASVとかドライブレコーダー。これは複数指摘がありましたので、こんなことを9次計画の中で検討いただく1つの選択肢なのかなと感じました。
 以上です。

太田座長 ありがとうございました。3つの主要な意見と、コメントとして特定のものについて、やはり重要ということで、そういうことを書き加えたらどうかという御意見かと思います。

杉山委員 別に答えはいただかなくて結構です。

太田座長 御意見ということでよろしいですね。

杉山委員 はい。

太田座長 ほかにいかがでしょうか。関連したことでも結構です。
 松岡委員、お願いします。

松岡委員 今の御意見に少し関連していると思うんですが、この骨格の基本としまして、まず理念があって、その次に具体的な目標としての数値があるわけですが、そこで緑色の冊子の32ページに死者数が具体的に書いてあるんですが、2,500人以下を目指すということが、大臣の談話を基に出ているという考えなんですが、そうしますと、非常に難しい問題は、なぜ2,500人なのか。なぜ何千人なのかということになってくると思います。この辺をしっかりと議論する必要があるのではないかなと思います。
 一番理念としてはっきりしているのは、何人ではなくて、ゼロというのが議論の余地なくはっきりとしているわけです。ただ、それはなかなか難しいといったときに、1つ考えられるのは、少し難しいんですが、36ページに例えば諸外国との比較のグラフがいろいろございます。先ほどの理念の目標としまして、世界一安全な日本を目指すという目標というのは、非常にすっきりした考え方なんですが、諸外国の中で一番低いところは、現実に実現されている実態であると。それよりももっと低いところを目指そうという発想でもって数値を議論するという考え方の議論を少ししっかりとやってから、最終的に数値を第9次で決めたらよろしいのではないかなと思った次第でございます。
 以上でございます。

太田座長 ありがとうございました。今の御意見は、杉山委員の意見にも関連する部分がございますが、目標なりの具体的な決め方ですね。今回も一応、基本理念、目標、戦略というアプローチをしたいという御提案と理解しますが、その基で、基本理念という意味では、かなり共通しているけれども、ある年次を限った場合にどこまでかということと、世界一安全ということをひとつのスローガンにしておりますので、それを具体的に示すしかないかと。そういうことのひとつの考え方ですね。それと現実性ということで、推計値というのが別途あります。だけれども、推計値はいろいろと赤羽委員のお話を伺いましたが、こういうものの性質上、どうしても幅を持ってくるもので、そういうことだけでいいのか。それプラスある種の我々の心構えといいますか、意思を加えて、それをどういうふうに解釈して、更に大きな目標値にするのか。この辺は皆さんの御意見をいただかなければいけないことかと理解してございます。
 何かその辺も含めて、ひとつ目標をどう設定するかということでまず御意見をいただいて、その目標値そのものの推計の話は技術的な話になりますので、これはまた一拍置いて議論した方がいいのかなと思っておりますが、全体の方向性について、更に御意見がございましたらお願いいたします。質問も含めて結構ですけれども、いかがでしょうか。
 尾形委員、どうぞ。

尾形委員 前回もちょっと申し上げたんですけれども、生活道路ということが恐らくこの報告書でも入ってまいりましたし、今回もそうしていただけると思うので、その場合に、何を理念にするかということなんです。生活道路を交通事故がないようにしましょうということは、だれも反対しないと思うんですが、基本的には生活道路で事故を起こさないようにするのはだれかということだと思うんです。
 これは一番重要なのは、そこに住んでいる人だと思うんです。だから、市民だと思うんです。それを理念に入れるのか、入れないのか。これは内閣府がこうしましょう、政府がこうしましょうと言うことなのか、そこに住んでいる住民に大幅に権限を移譲するのか。これは非常に危険なことですが、そういうことが理念に入るのか、入らないのかということが重要だと思います。
 例えば子どもが外へ出て遊んでいる道路には車を入れない。入れたら10km以下にする。これは警察に任せることはできませんから、住民がパトロールをする。防犯パトロールというのは、警察官関係でうまくいっていますね。かなりうまくいっています。そういうことをするのか、しないのか。そういう基本的な理念というものを出さないで、これまでのような施策をとっていれば、最後に出てくるのは、日本は諸外国、欧米と比べて条件が悪いのだからということ。今回も3回ほど聞きましたけれども、そのとおりだと思うんです。条件が悪いときはどうするかといったら、お金もない、行政もいろんな役所に分かれている、警察がやるのか、自治体がやるのか、内閣府がやるのか分かれている。分かれているとそれぞれやる。でも結局は、生活道路では安全確保ができない。そうすると数値が達成できない。
 いろんなことをやることは大変いいことだと思うんですけれども、だれがやるのか、だれが主人公なのかということを理念に明確にしないと、動かないのではないかと思うのです。ただNPOにしてもらうとか、NPOというのもいろいろなものがありますから、わいわいやって何も決定できないということもありますので、やはり住民、市民というものが主人公だという考え方にそろそろなってまいりましたから、そういう考え方も理念として入れたらどうかと思います。

太田座長 ありがとうございました。理念のベースに、それを実行する主体、交通社会の参加者という言い方をいろいろな形で言っていると思いますが、これは勿論国民全体。そこはいろんな立場の同じ国民が歩行者でもあり、生活者でもありますし、同時に車の運転者でもあるということを踏まえた形で、その責任をみんなで分担する。責任という言い方がいいのかどうかわかりませんが、皆さんが参加して安全にしていくんだという考え方ですね。それは1つのベースかなと思うんですが、具体的にどう書き込むか。それから、実際の安全を達成するための戦略の後の戦術といいますか、その中でこの計画をどう実行していくかの中の議論をやはりきちんとしておかないと、政府関係者だけの計画になってしまうというのは、勿論そういう趣旨は毛頭ないと思いますので、その辺をきちんと入れておくということかなと理解しました。
 何かこの辺につきましていかがでしょうか。更に御意見をいただければと思います。
 久保田先生、お願いします。

久保田委員 埼玉大の久保田でございます。今、生活道路の話が出ましたので、私もとにかくいろんな統計を見る限り、生活道路がうまくいかなければこの目標が達成できないのは明らかだと思っております。ただ残念ながら、なかなか本格的な生活道路対策が始まって15年ぐらい経つにもかかわらず、なかなか日本でそういった対策が一般化していないというのが、正直な現段階だと思います。
 この間、ドイツに行ったら驚かれたというか、日本はまだやっているのかと。ドイツはもう生活道路対策は終わったという認識なんです。80年代にゾーン30をやって、それがもう普及し終わったと彼らは認識されていて、だから次に自転車をやるんだとか、彼らは今そういう状況にいます。日本はまだ取組みの最中ということを言うと、ちょっとびっくりしたような顔をするということです。
 私としても、やはり何か思い切った考え方の転換をやっていかないとうまくいかないだろうなと思っています。一方で、市町村などからは、いろいろと金銭的な問題とか伺って、なかなか展望が開けていないというところだと思うんです。
 今日はフリーディスカッションということなので、1つだけ思い切ったことを言わせていただきますと、「生活道路」という名前が資料の中にも入っているわけですけれども、ただ、道路交通法にも、道路法にも「生活道路」という言葉はないわけです。そのことをどう思うかというところから、やはり議論を始めなければいけない時期に来ているのではないかと。
 つまり、何をやろうとしても、ここは道路であるから、どんな人が車で入ってきてもいいはずの道路だから、これはできないとか、あるいは人はやはり右を歩いて、車は左を走るという大原則は、幅員が下手したら3mぐらいしかないところですら、一気通貫した大原則になっているわけです。
 だから、そういう枠の中で、今、生活道路対策と我々は考えをいろいろとやっているけれども、外国のいろんなやり方などを見ると、かなり思い切った発想でそこを転換して、生活道路という固有のある種の特別なタイプの道路を構造的にも、規制的にも、あるいは場合によって、今、尾形先生がおっしゃったような管理の考え方も変えることもあるのかどうか。今回、この辺りから1回議論をするチャンスではないかなと今、思ったところです。
 具体的な話はいろんなことがあると思うんですけれども、とりあえずそれだけ申し上げます。

太田座長 ありがとうございました。一応今までの議論の中でも、高齢者、子どもたちの話と自転車ということと生活道路というのが、ひとつの対象としていろんな形で認識されている。ただ、その具体的なやり方についての議論というのは、まだ始まっていないということで、やはり生活道路というものの考え方。
 それから、海外のことで補足しますと、イギリスなども新しい街路のデザインでは、交通だけではないんだと。都市の中の街路は、生活の公共空間だという理論です。国交省で前からたまりの空間とか、そういう言い方をしておりましたが、交通だけではなくて、そこでいろんな活動が行われる場所。そことしての安全・安心だという言い方まで踏み込んでいまして、そういうもう少し交通以外のことを含めた身の回りの道路という意味での生活道路ですね。その辺を日本としてどうとらえるか。そこで、では安全というのはどういうことかということを議論しなければいけないんですが、それを実際に実行するためには、勿論、交通警察、交通管理者だけでは難しいし、道路管理者だけでも難しい。当然そこに住民という話が出てこないといけない。そういう新しい取組みを積極的に出さないといけないのかなというのは、私も同感です。
 それでは、蓮花委員、どうぞ。

蓮花委員 数値目標のことですけれども、非常に日本みたいに人口の多い国で直ちにゼロというのはなかなか難しいと思うんですが、例えば飲酒運転の死者をゼロにするとか、子どもなどはかなり激減していますが、まだ百数十名の子どもの死者がいらっしゃるので、子どもの事故をゼロにするという目標をモデル事業的に立てる。飲酒運転にインターロックにせよという一方で、非常に厳しいコントロールのものもあるし、この前、警察庁さんが発表されたように、飲酒運転で取消しになったドライバーの方に再交付するときに、今までのような処分者講習ではなくて、運転日誌というか、飲酒日誌みたいなものをつくって、カウンセリング的なことをやって指導するというのは、諸外国でも非常に成果を挙げているものなのでいいと思うんです。
 しかし、そういういろんな手法を組合せて、いかにしてゼロにするかということを国民的議論というか、そういういろんな観点を盛り込んだような対策を立てていこうとすると、住民参加というか、国民参加の意思決定というのはやっていったらいいなと思うんです。イギリスなどの場合は、シートベルト対策でも、よくマスコミなどが非常に積極的な役割を果たすんですけれども、余り言ったらあれですが、日本はどちらかというと第三者的に批判することが多いですね。一緒に考えるということをつくっていければいいかなというのは、今、お聞きしていて考えたことです。
 以上です。

太田座長 ありがとうございました。国民参加といいますか、具体的にどういうふうにやるかというのは、またこれからの議論かと思いますが、方向性として、1つのそういうスタンスはどうかということかと伺いました。
 そのほかはいかがでしょうか。
 赤羽委員、お願いします。

赤羽委員 先ほどの生活道路対策に関して、私からも一言申し上げたいと思います。
 益子委員を前にして、このたとえはどうかと思うんですけれども、私は市民参加の交通安全対策をインフォームド・コンセントによく例えて説明しているんです。
 まず、患者さんから医師がどんなところがどんなふうに調子が悪いんですかと聞くのは、例えばこの生活道路のどこでどんなタイプの事故が起こっているかと。普段危険を感じているということを確認すると。それを例えばいろんな検査に基づいて、実際の事故の起こり方とどんなふうに対応しているんだとか、その事故の起こり方とスピードがどんなふうに関係していそうだという裏付けをとって、それに対して幾つかの治療法、交通安全対策が考えられると。その対策には、メリット、デメリットがあるんです。速度を落とすということは、その道路を使う人にとって、移動の不便さを増すことになりますが、しかし、それによってもたらされる安全とどうバランスをとるかという選択の問題だと思うんで。
 あるいは生活道路に通過交通を全く入れないという選択もありますが、それでは幹線道路が渋滞していて、その地域に入ってこようとしている人たちもその渋滞に巻き込まれる。それはちょっと不便が大き過ぎる。だから、ある程度入ってきてもらってもいいから、速度を抑えてもらいましょうという選択があるんですが、どれを選択するかというのは、まずはそこに住んでいる人たちの選択でありますし、そこに用があって来る人たちの選択かもしれない。
 何がどんなふうに効果をもたらして、しかしどんなデメリットがあるかということを提案するのが専門家の1つの役割だと思うんです。それに対して、それをどう思うか、どう評価するかというのは、市民が選択する時代ではないかと考えるんです。何かそういう枠組みが必要ですし、その判断を正確にするためには、まずどこでどんな事故が起こっているんだということを正確に知る必要がある。それで私が前から申し上げていたとおり、生活道路も含めて、きちんとそういうたぐいのデータを整備するのが第一歩ですよと言うわけです。
 それを考えると、久保田委員が先ほどお話ししたとおり、生活道路の対策というのは非常に重要で、キーになると思いますが、具体的に目標を設定して減らせるというところまで基盤ができているかどうかというのが、私は同じ必要性を感じていて、しかしちょっと心配なところでもあるんです。
 以上です。

太田座長 ありがとうございました。そういった1つのプロセスといいますか、理論的な考え方をきちんと整理した上で、データから始まった流れというのを、ひとつ横につくっていかなければいけない。それと同時に、実際の行動もしなければいけませんので、そこをどうするかというのが議論かと思います。
 更に御意見ございますか。益子委員、お願いします。

益子委員 今、赤羽先生から生活道路をどうするかという対策を考える場合に、具体的な事故事例やら、細かいデータを分析して、そして住民に提示してどうするかということを検討する必要があるというお話が出たものですから、ちょうど千葉県の交通事故調査委員会の報告書を皆さんのお手元に用意しているんですが、これは1冊のものでボリュームがあるものですから、1枚紙で整理しているので、それだけ簡単に説明させていただきます。
 千葉県では、平成20年の交通事故で亡くなった方は、警察の24時間死亡のデータを基に、消防と医療機関にアンケート調査を出して、その得られたデータを医療機関、救命救急センターのドクター、千葉大学の先生と一緒になってPeer Reviewといって、審査をしました。救助や医療を改善することによって、死亡という転帰を回避する可能性があったかどうかということを検証しました。
 その結果、全交通事故死者213人中26例、12.2%、約8人に1人ぐらいは救助医療のシステム改善により救命できる可能性がある。救急隊が現場に到着したときに、生命兆候を有していた、つまり心停止になっていなかった事例の4割はそういった事例に該当するということでありました。
 なぜそういった防げた外傷死亡、PTDになったかということを見ますと、初療室の処置にいろんな問題がある。治療方針の決定やら、優先順位の決定やら、診断が遅れたとか、循環管理が問題である等々のことがあって、ですから病院で提供される外傷診療の質をもっと上げないといけないということも言えるわけであります。
 下から4行目にありますが、交通事故発生から消防が119番通報までの覚知時間は、1分から22分で平均4.6分かかっております。この消防が覚知してから救急車は現場へ行くわけですから、既にそこからは5分ぐらい遅れてしまっているというのが千葉県のデータであります。
 一番下に書いてありますように、医師引き継ぎまでの時間、交通事故が起きてから救急隊が医師に患者さんを引き継ぐまでの時間というのは45分経ってしまっているというデータで、後ろにグラフがあります。
 死亡事故発生から消防覚知までの間は平均4.6分。
 事故発生から医師引き継ぎまでが45分というデータでした。
 そして、図3でありますが、交通事故発生から治療開始までの時間を見ますと、救急車で搬送された群は、平均で47分かかっていたんですが、ドクターヘリで診療を受けた群は35分でした。つまり、ドクターヘリの方が12分診療が早く始まっていたということであります。
 図4を見ますと、搬送距離と治療開始までの時間を、横軸を治療開始までの時間、縦軸を搬送距離で見たものでありまして、赤い三角がドクターヘリ、ブルーの四角が救急車であります。こうして見ますと、ドクターヘリ群では大体50分以内に治療が始まっていることがわかると思います。そして、距離にしてみれば80キロぐらいまでをカバーしていることがわかると思います。
 一方、救急車ですと60分以上かかっていたという事例が11事例ございました。交通事故に遭って、現場で生命兆候を有していて、そして病院で24時間以内にお亡くなりになるという最重症の患者さんであっても、60分以上もしなければ病院で治療を始められないという現実があるということがわかりました。
 そういったさまざまなデータを分析しまして、最後に提言を8つまとめてございます。
 こういった千葉県のような交通事故例調査というのは、外傷診療の質の向上を図る上で大変有効なんですが、残念ながら全国的なデータというのは皆無でございますので、こういう千葉県のような取組みを千葉県でも継続する必要がありますが、全国にも拡大する必要はあるということであります。
 救急隊のJPTECプログラムというのは、外傷患者さんに対しての救急隊の活動のガイドラインであります。それから、医師に対してのガイドラインであるJATECプログラムをもっと一層推進しなければいけない。
 事故が発生してから消防覚知までの時間が平均5分かかっているということですから、やはり事故が起きたときに自動通報システム(Automatic Collsion Notification:ACN)をもっと普及させなければならないのではないか。
 千葉県では既に実運用しています救急搬送支援システム(M-MOCS)、ITSの1つでありますが、そういう活動を更に推進すべきだろう。
 ドクターヘリやラピットカー等による現場への迅速な医師派遣体制を確保すべきである。
 ドクターヘリが今は朝から夕方までの運行しかできておりませんので、この運行時間の拡大を目指す必要がある。
 地域における外傷診療の質を確保するため「基幹外傷センター」を整備すべきであるという提言をさせていただいたところです。
 全体的、俯瞰的なお話をしているときに、救助、医療のところに限局したお話で恐縮ですが、以上、千葉県の報告をさせていただきました。

太田座長 ありがとうございました。貴重なデータかと思いますので、やはりこういう目標を決めるときに、これで更に減らす可能性もこういうことからもありますし、また、これからの政策の中に是非検討していただきたいという意見として承りたいと思います。
 残り30分ぐらいですが、そのほか、目標、具体的な数値目標の決め方でいろいろ回帰分析という議論をされていたのですが、そのことを含めて、全体で何かございましたらお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
 山村委員、お願いします。

山村委員 目標数値はいつも気持ちはゼロというのは、皆さん一緒だと思うんですけれども、それだけではだめなんだなと思いました。今、先生の意見を聞いていてもそうですし、先ほどおっしゃっていたように、いろんな形のところでゼロというのを決めていくというのはすごくいいのではないかなと思いました。
 たまたまいつも私事で申し訳ないんですけれども、昨日フルマラソンに出ていまして、その参加人数が5,000人ぐらいだったんですよ。40何キロ全部その人数が走っていましたらば、これだけの人が死んでしまうのかと思ったら、すごいリアリティがありまして、多分5,000という数を何となく皆さんが感じたときに、そういうことを思っていただけるとリアリティがあるなと思ったんです。
 行けども行けどもこの人は死んでしまう、この人は死んでしまうと思いながら、何とか完走はできたんですが、でも、その数だけではなくて、本当に被害者の人も加害者の人も大変な思いをするんだなと思うと、数は無限大なので、とてもなるほどと思うと同時に、すごく辛いなという気がしました。気持ちはやはり自分の中ではゼロなんだけれどもというのはすごくあるんですけれどもね。
 もう一つ、私は生きることが好きなので、生活道路ということがすごく大好きなんですけれども、やはりお話を聞いていると、規則もちゃんとしなければいけないから、それもすごくわかるし、やっていかなければいけないんですが、辛くなってしまうとつらいなというのがあって、クラッチの遊びみたいなものがないと辛いかなと思います。それはどんな規則ができても、楽しい生活環境があってほしいという希望なんですけれども、そういうことがないと、数値とか方策とか、その中で本当に辛いようなことになってしまうのではないかなと。何も三丁目の夕日がいいとは言いませんけれども、昔はもう少し何となく、人の生きる何かがあったような気もするんです。
 とはいっても、決めていかなければいけないことはいっぱいあると思いますので、それはよろしくお願いしますという感じです。
 済みません、何かフィーリング的な話になってしまいました。

太田座長 2つの御意見ということで伺いますが、目標につきましては、皆さんも同じように伺えるかと思いますので、その数値をもっと具体的な意味づけをやはり国民の皆さん一人ひとりが感じていただきたい。半減ということで、2,000人とか1,000人にしたとしても、その人数というのは物すごいということですね。これが交通事故ということで失われているということ。それを実際に、今度は戦略的にどう減らしていくかという議論ですので、そこと結び付く形は何かと。
 後半の方は、やはり生活している主体ということの考え方から物事を見てほしいと理解しました。
 更にございますでしょうか。
 芳仲さん、どうぞ。

芳仲委員 芳仲です。前回欠席でしたので、ちょっととんちんかんな発言があるかもしれませんので、御容赦いただきたいと思います。
 大先生がいっぱいいらっしゃる中で発言するのは勇気が要ることなんですけれども、財団法人日弁連交通事故相談センターというものが国交省の所管でございまして、そちらでは何万件ということで交通相談をやっていて、それから和解ですね。加害者、被害者さんの間の示談あっせんと言っていますけれども、交通事故を専門に扱っている弁護士がこちらのあっせんを担当して、示談、和解をまとめている。こういう活動を日々やっておりまして、医者で言うと臨床医みたいな立場で、現場の意見ということでお聞きいただければと思います。
 昭和40年代から交通事故は非常に増えてきて、そのころは国家として、交通社会の利益を享受する代わりにリスクも負担しようと。そういう選択をしたんだと。だから、目標がゼロは勿論そうだと思いますけれども、起きてしまった事故について、後始末について手厚いということがないと、不十分なのではないかと思います。基本的にはそういう感想を持ってお聞きしておりました。
 私たちは日々後始末をしているものですから、特にそういう感想を持つんですけれども、そういう意味で、被害者が救済される安心がないと、みんなががけっぷちで交通社会の利益を享受しているという状態になってしまうと思いますので、やはり被害者をいかに今の社会の中で救済、あるいは普通の社会の一員として受け入れていくかという問題は、非常に大切なのではないかと感じております。
 そういう意味では、自転車の問題が出ておりましたけれども、自転車は勿論被害者になるケースも多いと思いますが、実際には現場の感覚からすると、自転車が加害者になるケースが結構あると思っております。例えば現場の感覚ですからデータはないですが、若者の携帯文化の流れから来る加害者案件。ロードレーサータイプの自転車に乗る方が最近増えております。それから、やはり高齢者が加害者になるケース、高齢者同士が加害者と被害者になってしまう。特に地方で限界集落という言葉がありますけれども、そういった地域では、お年寄りは自転車に乗れれば若くて元気な方で、自動車に乗らざるを得ないんです。どんなによぼよぼのおじいさん、おばあさんでも、自動車に乗らざるを得ない。生活道路の問題もありましたけれども、地方の広域農道とかでもお年寄り同士がぶつかって、どちらかが死んでしまうというケースが非常に多いです。
 話が流れてしまいましたけれども、まず、自転車の加害者となっているデータというのを今後何らかの視点で分類しながら、何かデータ化していかれることが、何らかの対策に結び付いていくのではないかなと思いました。
 それから、生活道路の問題と関連しているのかもしれませんが、高齢者の限界集落の問題も大きいのではないかと思っていて、都心でも例えば通院するためには自動車に乗らざるを得ない。おじいちゃまがおばあちゃまを病院に連れて行っているとか、そういう事例も多いと思いますので、やはり地域とか住民とか主体になって、何らか自動車に乗らないでも済む村をつくるとか、そういう工夫があっていいのかなと思います。そうすると、地方自治とか住民とかといったところとの連携も必要だし、高齢者福祉のお立場からもやらなければならないし、限界集落の問題がけりがつけば、交通事故だけではなくて、いろんな問題も片付いていくと思いますので、すごく横断的といいますか、今日は総務省の方はいらっしゃらないようなんですが、そういう全体的な交通事故が減るだけではない施策を何か工夫できないのかなと。特にお金のかかる問題ではなくて、ソフト面の工夫で何とか工夫できないのかなということを思いました。
 あと、目標のデータのことなんですけれども、統計の専門的なことは全くわからないんですが、交通事故の賠償問題を扱っておりますと、30日経って死んでしまうと交通事故で死んだと遺族は思うし、それは死亡事故なんです。だから、統計上、24時間以内のものを死亡事故といって取っているんだよというのは、長年私が学生のころからそう聞いておりましたが、そのデータの取り方はそれとして継続性があるから残すにしても、30日にするやり方もあるんだというお話もありましたので、そういうふうにやっていってもいいのではないかなと思います。
 先ほどの加害者案件については、やはり加害者が保険で付保されないと、実は被害者は救済されない。要するに、自転車などでだれに責任があるかというと、自転車を運転していた人しか責任がありませんよというと、被害者はその人にしか責任を追及できないので、その人が何らかの保険でカバーされたりしていない限りは、全然救済されないんです。例えば子どもが自転車に乗っていたとき、あるいはほとんどぼけてしまっているお年寄りが乗っているときとかに、その高齢者だとかお子さんだとかをきちんと監督していなければいけなかったという立場の人を保険でカバーするようなやり方はないのだろうかとか、現場ではいろいろ工夫して、無保険の人にひかれてしまった人とか、先ほどお話がありましたけれども、歩道で高校生にぶつけられてお亡くなりなってしまった人とか、何とか救済できないかということで頑張っておりますが、やはり被害者を何とか救済していかないと、要するに受け皿が手厚くないと、交通社会事態も手薄になってしまうのではないかなという感覚が現場ではありますので、何かの御参考にしていただければと思います。
 以上です。

太田座長 ありがとうございました。かなり多感的なお話ということですが、車社会の中での交通というのが、どうも直接的な事柄だけを考えてもだめだということで、いろいろ御意見をいただいたように思います。
 そのほかいかがでしょうか。
 渡邉委員、お願いします。

渡邉委員 今ちょうど自転車の話も出たところで、今日、資料5を拝見させていただきました。
 議論事項試案なんですが、重点事項として自転車のことがこの中で挙がっていますけれども、毎回感じていたことなんですが、自転車というと、マナー違反という言葉とかがよく出てくるんですが、どうもこの表現が気になるんです。
 というのは、自転車もやはり軽車両ですから、やはり交通法規を遵守するということがまず第1にあるわけで、マナーを守るという言い方になると、何となくトーンダウンしてしまう。勿論、そういう部分もあるとは思うんですけれども、それを余り表に出して書くというよりは、やはりきちんと交通法規を守るという言葉を正しく言わないと、なかなかそこら辺の意識といいますか、読む方もマナーだったらまあいいかみたいな感じになってしまいはしないかということで、これからこういう表記をするときは、そういう面から少し自転車に対する見方を厳しくしてもいいのではないかと思います。これは目標というか、施策の方になるかもしれませんが、また考えていただければと思います。

太田座長 ありがとうございました。ついついマナーなどと言ってしまいますけれども、確かにそうですね。意識がちょっと違ってくるかと思いますね。
 時間が近づいてきましたので、発言の少ない方、特に今日まだ発言されていない方を中心にということで、今、渡邉委員の方からきましたから、蓮花委員は何か更にございますでしょうか。よろしいでしょうか。

蓮花委員 はい。

太田座長 それでは、後ろの方からといいますか、山崎さんは何か御意見はございますか。

山崎委員 今、交通安全教室の予定が、夏まで埋まっている状態です。
 先ほど、芳仲委員さんから、ソフト面の関係でというところで、国民の方には是非交通安全の意識の高揚、交通教育のレベルをもっと上げようと、全国の交通指導員がすごく熱意を持って頑張っておられます。その中で、先ほど2,500名という交通事故死亡者の抑制目標がありますが、これを多分現場の交通安全教室で言うと、「何を言っているの指導員さん、目標はゼロでしょう」とどなたからも声がかかってくるのではないかと思っております。
 やはり世界一の安全の国と言った方が、国民の方にはわかっていただけるかなと思います。世界一の安全な国にしようということで、交通安全の意識が高まっていただけるような気がします。
 その中で、先ほど自転車の安全利用が出ていますが、先日市民の方から、もし私が自転車に乗っていて、相手をけがさせたら、損害賠償的な保険がありますかという御質問のお電話をいただきました。やはり加害者になってしまうという意識が少しずつ市民の方にも高まっているような気がします。教室の方でも、各交通指導員は、全国で加害者になってしまう危険が自転車にはたくさんあるよということをかなり訴えてきていますので、少しずつですが、そんな意識が高まっているかなということで、是非保険会社の方にも、そんな保険を開発していただければなと思いました。
 交通教育というのは、恐らく本当に地道なものですが、先日の1回目のときにたしか言ったと思いますが、時代に合った、世代に合った交通教育を是非いろんな形から出していきたいなと思っております。
 以上です。

太田座長 ありがとうございました。交通安全の現場からという御意見ということですね。
 それでは、宮本委員はいかがでしょうか。

宮本委員 道路交通の話がずっと続いておりましたので、口を挟むのを遠慮しておりましたけれども、鉄道交通に関してです。
 資料5の15ページに鉄道交通の安全ということが書いてあります。前回発言をした中に、鉄道というか、輸送の安全性と輸送の安定性というものは、ある意味では相反するものだということで、風の規制で列車が止まるという例をお話ししたんですけれども、そういうことに関連しまして、15ページの総論の下から4行目ですか。安全性と安定性の2つの言葉を対比して書いていただいて、こういうことが重要だということを書き込んでいただいていることは、非常に我が意を得たりということで、是非お願いしたいと思います。
 それから、15ページの各論の1番「事故等の原因分析と効果的な事故防止対策の実施」の6行目に「鉄道事故調査官の専門調査技術の向上に努めるべきではないか」と書いてありますが「ないか」ではなくて、是非努めなければいけないと思います。
 現在、運輸安全委員会ですけれども、3条機関になっておりまして、独自の採用ということもできる状況になっております。現在の調査官という方は、ある割合は国土交通省の方からローテーションといいますか、回ってこられて、3年とかの任期でまた戻っていかれるという運用をなされております。
 ということで、独自採用という道も開けておりますので、現状の体制では、これはすべての分野というわけにはできませんので、やはりそういうローテーションの人にかなりのところを頼らざるを得ない状況になっておりますけれども、キーとなるような分野については、独自の採用ということで、調査能力を持続的に高めていくという事柄も必要ではないかなということを思っております。
 それから、16ページの3番目「事故・故障等発生時における早期復旧体制の確立」があります。これが先ほどの安定性ということにも絡むと思いますけれども、これに関しましては、前回も申しました風対策です。安定輸送をできるだけ確保するという意味では、どこの時点で規制といいますか、解除するか。解除の論理的なやり方、考え方というのもかなり重要になってまいります。
 ということで、そういうことは研究また技術的なことも関連しますので、そういうところの実施を促進すべきというか、推進すべきだという感じのことが入るといいなと思います。
 それから、風対策に対しては、かなり力のあるところはどんどんセンサーを付けたりとか、そういう対策をやっているわけですけれども、鉄道事業者のかなりの部分はかなり弱小といいますか、経営が非常に大変な状況になっているというところで、こういう風に対しても安全のレベルをあるところまでは持ち上げる。そういう意味では、技術的な援助、また経済的な援助というのも要るのではないかなと思います。
 これで最後ですけれども、17ページの踏切に関してです。私は、現在、運輸安全委員会の委員で、調査や報告書の作成に関わっているんですが、その中に踏切事故というのはかなりの件数でございます。かなりのものは確信犯的に入ってきたねとか、そういうものも多いんですが、中には道路信号との関連で、それは手前で止まるべきだねということではあっても、何となく入らざるを得ないような、ちょうど踏切の真ん中で右折待ちをするような状況になってしまうとか、あるいは左右の見通しが非常に悪くて、出たところにすぐ道路があるとかということで、やはり道路信号と踏切との関連とか、そういう監督官庁がそれぞれ違うということはあるとは思うんですが、そういうことで、是非一体に見て、そういう全体的なサーベイといいますか、事故が起きてから、ここはちょっと問題かねということではなくて、事前にそういうチェックだとか、そういうこともやられるといいかなという気がします。
 それから、カーナビだとか、IT技術との連動ということも、この5か年を見ると随分進歩すると思いますので、例えば踏切の警報器が鳴っていたら、自動車のカーナビに何とか情報を出すとか、いろんなことが考えられるので、是非こういう踏切に関しても、IT技術との連動という観点での書き込みもしていただければなと思います。
 以上です。

太田座長 ありがとうございました。具体的に鉄道関係全体について御意見をいただきました。
 それでは、松岡委員何かございますか。

松岡委員 先ほど言いましたので、結構です。

太田座長 それでは、藤森委員ですね。

藤森委員 小さなところになってしまうかもしれないんですが、交通事故の被害に遭った人の御家族に御連絡をする、例えば医療現場であったり、学校の中で下校中お子さんが交通事故に遭って、学校の方が先にその状況をわかって、病院に親御さんに来てもらわなければいけないときがあります。先生方がお電話をしたりするときにも、何々病院に搬送されましたといったときに、お母さんやお父さんが物すごくショックを受けて、とにかく一刻も早く病院にというときに、その伝え方がすごくあいまいだと、運転をして来られるときに、ほかのところに注意がいっていない状況で運転をして来られます。そのときに、なるべく公共交通機関またはタクシーを利用してくださいという一言があると、お父さんやお母さんが車で来てしまう、または自転車で暴走してしまうというときに、事故が防げることもあります。
 そういう緊急時にも、私たちはよく緊急支援で学校などに入っていくんですけれども、それ以前の問題。本当に第一報を専門家の方や病院の方、学校の先生や近所の方が御家族に連絡するときの方法が1つでもあれば、二次被害が防げるかなということはあります。
 あともう一点は、交通事故に遭った被害者や加害者が次に車に乗るとき、いつ再開するかというのは、御本人に結構任されていることが多いです。そうすると急性ストレス障害といって、まだショック状態のときに、私は平気だわといって乗ってしまう方もいれば、怖くて乗れないという人も、両方結構極端にいらっしゃるんです。多くの場合、やはり急性のショック状態のときというのは、自分自身で意識がフラッシュバックが起きたりとかして、次の交通事故になる可能性もあるということをどなたかに、やはり被害を受けても、加害者の方も運転を再開するときのインフォームド・コンセントという心理教育がとても重要なのではないかなと思います。勿論それは自転車の事故に関してもそうかなという気がいたしております。
 心理的な側面からは、以上のことを要望というか、提案したいと思います。

太田座長 ありがとうございました。事故後のいろいろな対応の中で、情報自体が伝わっていない可能性がありますね。ありがとうございます。
 そういたしますと、次は佐々木委員からお話をいただけますか。

佐々木委員 私は先ほど言いました。

太田座長 では、河内委員、よろしくお願いします。

河内委員 私が拝見していて非常に興味があったのは、データレコーダーの件です。ドライブレコーダーと書いてありますが、これは非常に航空機の分野で効果がありました。
 例えば今度のトヨタの件でも、ドライバーが意図的にやったのか、あるいは本当に故障があったのかということは、結局何か証拠がないとわからない。ですから、ドライブレコーダーは是非付けてほしいんですが、それには価格が最大の問題です。価格がどれぐらいになるのかということを是非調べていただきたいと思います。飛行機の分野にも、輸送機には付いていますが、価格の安いヘリコプターや小型航空機にはまだ付いていません。結局そういうところが事故の手を打つのが遅くなって、いまだに小型航空機やヘリコプターの事故が多いのは、1つの原因がそこにあります。
 ですから、できるだけ安い費用でデータが取れるものを開発して、付けていただきたいと切に思います。

太田座長 ありがとうございました。

河内委員 済みません、もう一つ。
 これを付けるときに自主性に任せたら、絶対だれも付けません。ですから、その場合には、必ず強制力をもって付けないとだめです。

太田座長 ありがとうございました。
 一通り御意見をいただいたと思いますが、もし何か今までに発言された方でも、何か特に付け加えることがございましたらお願いしたいと思います。
 どうぞ。

三国委員 先ほどの38ページのところなんですけれども、歩行者及び自転車ということで、移動手段を考えて重点対象とされているんですが、歩行者というとき、高齢者を考えた場合、車の運転ができなくなった高齢者とかが公共交通に乗り変えることも必要だと思いますので、やはり歩行者及び自転車及び公共交通というのも一緒に考えて重点対象としないと難しいのではないかなと思います。
 それから、考え方なんですけれども、国民自らの意識改革とありますが、交通事故、特に自転車などの交通事故は結構出会い頭事故が50%を占めますので、その交通事故のメカニズムなどをきちんと国民に知らせるということで、意識改革が必要ではないかなと思います。
 その点で、あと道路交通環境の整備ということなんですけれども、私は自転車のことと歩行者のことに関わっていて思いますのは、警察庁の方で自転車と歩行者の事故を防ぐということで、国土交通省と一緒に取組みをされているんですが、道路環境を整備していくと、新しい道をつくるというよりは、今、ある道をどう再配分するかが重要になってくると思います。その点で難しくなってくると、最後は自転車と歩行者は一緒で、今の自歩道感覚でいいのではないかとなっていくと、いつまで経っても自転車と歩行者の事故は減らないと思いますので、できるだけ自転車と歩行者を分離するという方向で考えていっていただきたいなと思います。
 そういう点で進めていく中で、電線共同溝などの分野があると思うんですが、そこは交通とはまた違うところで国土交通省が所管なされているというので、電線共同溝がされたところは、新たに自転車の道とか歩行者の道を分けようと思っても、お金がかかるからこれ以上は手をつけられないということでなかなかできない部分もありますので、その辺も電線共同溝をするなら、そのときに一緒に交通のことも考えるような方法はできないのかなと思っております。
 以上です。

太田座長 かなり具体的な御提案も含まれておりますので、意見ということにさせていただきたいと思います。
 それでは、今日は大体時間が来てしまいましたけれども、今日もフリーディスカッションということで、いろいろな意見をいただいておりますが、一応これからの進める第9次の安全の基本的な目標に関する意見が主体です。皆さんの御意見は、やはり基本理念としては、ゼロを目指して、そのときの具体的な数値としての考え方について、少し前向きに取り組んだらどうかというのが基本的な方向かと思いますが、そのときに注意しなければいけないのは、どうもここではまた「基本理念」「目標」「戦略」という言葉が出ているんですが、それを進める仕方のときに、国民全体が参加しながらどう進めたらいいのかという、その辺のプロセスなり、それぞれの役割を是非今後の議論の中でもしてほしいと思います。
 それから、それぞれの自転車交通、生活道路あるいは歩行者、高齢者ということで、それぞれの局面につきまして、いろいろ具体的なコメントがございましたので、是非その辺を組み入れた形で、これからまとめていただければと思います。
 そんなことかと思いますので、次回がどうなっておりますか。事務局からよろしくお願いいたします。

加藤内閣府参事官 貴重な御意見をたくさんいただきまして、ありがとうございました。かなり宿題も多いんですけれども、またしっかりやりたいと思います。
 2,500人ということになれば、結果的には白書等で紹介しておりますけれども、10万人当たりでは世界一の水準までくるということになっております。
 個別の目標については、赤羽先生の御説明された表にもございましたけれども、諸条件が違うということを言い訳にするなと言われつつも、なかなか厳しいところもある中で、各省ともまたその辺りの相談をしたいと思います。
 それから、保険のところで御意見がありました。御案内だと思いますけれども、TSマークで1,000万円あるいは2,000万円の補償というものがありますし、製造責任ではSGマークとかがございます。また、保険の中で個人についている保険とかがいろいろありますので、その辺のところも今回の課題として、また議論していきたいと思います。
 次回の日程でございますけれども、6月29日の17時~19時ということで、御案内の中で決めさせていただいております。なかなか全員の御参加はいただけませんが、早めにということで、この時間で予定しておりまして、場所は中央合同庁舎4号館で探したいと思います。また、後ほど御案内をさせていただきたいと思います。

太田内閣府大臣官房審議官 どうも先生方ありがとうございました。今日いただきました貴重な御意見を踏まえながら、また検討を進めさせていただきたいと思っております。私どもも交通死亡事故は1件でも少なく、死者は限りなくゼロに近づけたいという気持ちでおりますので、そういう気持ちの中で政策目標というのを掲げていかなければいけない。そういう意味では、死者を数字で表すということは、気持ちでは非常に辛いところではあるんですけれども、今、参事官からもありましたような形で、世界一を目指しながら頑張っていくという所存でありますので、これからもよろしくお願いします。

太田座長 それでは、長時間どうもありがとうございました。非常に貴重な御意見ということで、また是非この内容を最終的な計画の提案の中に含めさせていただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。