交通事故被害者の支援 第6章 交通事故被害者および家族・遺族の会の役割
交通事故被害者は被害後、関係者や周囲の人たちから励ましの言葉をかけられるが、被害を受けた衝撃が大きく、被害にあった実感も持てないなかでその声に応えられる状態でなくなる。
周囲の励ましに応えられない自分を責め、励ましの言葉がかえって苦痛に感じられる。その結果、同じような体験者でなければ自分の悲しみや苦しみは分かってもらえないと思い、本当の気持ちは周囲の人には言えなくなる。
また、話せたとしても、話を聞いた相手が困惑し、どう応えればいいのか戸惑っていることが直感的に分かるため、結局は沈黙しがちになる。
激しいトラウマ(心の傷)を負い、極限状態に追い込まれている被害者は、回避症状(被害にあわなかったことにしたい、自分が被害者になるわけがない、被害については考えたくないなど)が表れ、現実のことと受け止めることができず、周囲の人たちとはすっかり変わってしまった自分を痛感し、人としての自尊心をも失った結果、将来に対する希望も失いがちになり、自分には未来はないと感じる。
過覚醒やフラッシュバックの症状等の精神的反応により自分で自分の感情コントロールができず、いらいらして周囲に怒りをぶつけてしまう、眠れない、ちょっとしたことで恐怖や不安を感じる、思い出したくないのに事故を思い出す、怖い夢にうなされるなどといった症状にも苦しめられることがある。
このようなさまざまな症状は、衝撃を受ければ誰でもが感じることであるが、それを知らない多くの被害者は「自分はおかしくなってしまった」と考え、苦しむことも多い。そのため、安心して話せ、その一言で理解し合える仲間の存在は、被害者の孤立感や疎外感を軽減し、自尊心を取り戻し、被害からの回復に大きな力となるため、存在意義が大きい。