平成10年版 交通安全白書の概要

第1編 陸上交通

第1部 道路交通

1 道路交通事故の動向

(1)
平成9年中の交通事故の状況
交通事故死者数は、2年連続1万人を下回ったものの、発生件数は5年連続で過去最悪の記録を更新し、負傷者数3年連続で90万人台となるなど、依然厳しい状況にある。
平成9年中の交通事故の状況
発生件数 780,399件 対前年比 9,315件増 1.2%増
死者数 9,640人 302人減 3.0%減
負傷者数 958,925人 16,722人増 1.8%増
30日以内死者数 11,254人 420 人減 3.6%減
(2)
近年の交通事故の推移
交通事故死者数は、昭和45年に史上最悪の1万6,765人を記録した。
昭和45年に交通安全対策基本法が制定され、同法に基づき、46年度以降交通安全基本計画を5か年ごとに策定し、交通安全対策を総合的・計画的に推進してきた。
昭和46年以降、交通事故死者数は着実に減少を続け、54年には8,466人にまで減少した。しかし、その後増勢に転じ、57年以降9,000人台を続けた後、63年から8年連続して1万人を超えた。
平成9年は、昨年に続き1万人を下回り、9年までに1万人以下とする第6次交通安全基本計画の第1段階の目標を達成することができた。

道路交通事故による死者数、負傷者数及び事故件数の推移

人口10万人当たりの交通事故死者数は、昭和45年にピーク(16.2人)を記録したが、46年以降減少に転じ、54年には7.3人まで減少した。以後徐々に増加し、63年以降は8人台から9人台で推移していたが、平成9年は7.6人と8年に引き続き7人台となった。
自動車1万台当たりの交通事故死者数及び自動車1億走行台キロ当たりの交通事故死者数は、昭和50年代半ばまで大きく減少してきたが、その後は漸減傾向が続いている。

人口10万人・自動車1万台・自動車1億走行台キロ当たりの交通事故死者数の推移

道路交通指標(指数:昭和45年=100)の推移

2 道路交通死亡事故等の特徴

 平成9年の交通事故死者数は、8年に比較して、自転車乗用中を除くすべての状態で減少したが、特に、歩行中の死者数の減少、若者の自動二輪車乗車中の減少、自動車乗車中の死者数の減少が著しい。これは、シートベルトの着用率の向上、道路交通環境の整備、交通安全教育の推進、車両の安全性の向上などの交通安全施策の効果によるものと考えられる。

(1)
年齢層別交通事故死者数及び負傷者数
年齢層別死者数では、16歳~24歳の若者(2,026人)及び65歳以上の高齢者(3,152人)が多く、この二つの年齢層で全交通事故死者数の53.7%を占めている。前年と比べると、50~59歳(14人増)と65歳以上(7人増)を除き減少しており、40~49歳(130人減)と16~24歳(99人減)が大きく減少している。
年齢層別負傷者数では、16歳~24歳の若者(244,230人)が最も多く、全負傷者数の25.5%を占めている。前年と比べると、30~39歳(6,563人)25~29歳(5,867人)、65歳以上の高齢者(5,348人)が大幅に増加している。
(2)
状態別交通事故死者数及び負傷者数
状態別死者数においては、自動車乗車中が最も多く、全死者数の44.1%を占めている。前年と比べると、自転車乗用中(13人増)を除き減少しており、特に、歩行中(151人減)が大幅に減少している。
状態別負傷者数においても、自動車乗車中が最も多く、全負傷者数の5 9.8%を占めている。前年と比べると自動二輪車乗車中(1,729人減)と歩行中(1,420人減)を除き増加しており、特に自動車乗車中(16,006人増)が大きく増加している。

年齢層別交通事故死者数の推移

状態別交通事故死者数の推移

年齢層別交通事故負傷者数の推移

状態別交通事故負傷者数の推移

(3)
年齢層別・状態別交通事故死者数

ア 若者(16歳~24歳)

  • 自動車乗車中については、平成4年以降減少傾向にあり、7年はいったん増加したが、9年は、8年に続いて減少した。
  • 自動二輪車乗車中については、6年にいったん増加したが、その後3年連続して減少した。

若者の状態別交通事故死者数の推移

イ 高齢者(65歳以上)

  • 高齢運転者の増加を背景に、自動車乗車中が増加を続け、平成9年は、3年連続して自転車乗用中を上回り、歩行中に次ぐ多さとなった。
  • 最も多い歩行中は、平成77年に最多となっていたが、2年連続して減少した。

高齢者の状態別交通事故死者数の推移

(4)
シートベルト着用の有無別死者数
自動車乗車中の死者のうち、シートベルト非着用の死者数は2,696人で、前年より減少した(303人減)。16~24歳の若者の非着用死者数は、全非着用死者数の31.5%を占めているが、前年より減少(74人)した。
近年、横ばい状態にあった着用率が、6年から上昇傾向にある。

シートベルト着用の有無別自動車乗車中死者数の推移

シートベルト着用率の推移

(5)
昼夜別交通死亡事故発生状況
昭和55年に昼間における死亡事故を上回って以降、一貫して夜間の死亡事故発生件数が昼間の発生件数を上回っている。
平成9年中の交通事故1,000件当たりの死亡事故発生件数(死亡事故率)を見ると、夜間が21.2件、昼間が7.7件で夜間は昼間の2.8倍になっている。

昼夜別死亡事故件数の推移

3 若者の交通事故の状況とその対策

 今の若者は、我が国のモータリゼーションが進展し、家庭に浸透してきた時期に育ってきた世代であり、自動車は若者の日常生活において、極めて身近なものとなっている。
 また、近年の運転免許取得状況をみると、大半の者が人生の若い時期に免許を取得していることがうかがえる。言い換えると、我が国の交通社会には、逐年、新たに多くの若者が運転者として参入してきていることを示しているものといえる。
 若者(16~24歳)の交通事故死者数は、高齢者(65歳以上)に次いで多く、負傷者数は、他の年齢層と比べて突出した第1位となっている。また、若者が第1当事者となっている事故件数は、交通事故件数、死亡事故件数ともに最も多く、若者は被害者としてだけではなく、事故の原因者としても交通事故に関与する度合いが高い。
 若者の交通事故を減少させることは、若者のみならず我が国の交通社会全体の死傷者数を一層減少させることに繋がっていくと考えられる。また、少死・高齢化の進展により、今後生産年齢人口の減少が見込まれているが、一方で、交通事故死が若者世代の死亡原因の第1位となっていることから、若者の交通事故を減少させることは広く社会的にも重要な課題である。

(1)若者の交通事故の状況

ア 若者と交通社会

  • 若者の免許保有率は、16~19歳が30%前後、20~24歳が83%前後でここ数年推移しており、若者の大半が20歳代前半までに免許を取得している。
  • 平成6年に総務庁が実施した意識調査から、高校生は、原動機付自転車免許と自動二輪車免許について各々約2割が取得を希望している。一方、普通免許については8割以上が取得を希望しており、そのうち8割以上が20歳頃までに取得したいとしている。
  • 交通事故死が若者の死亡原因の第1位(2位:自殺)となっている。
交通事故が原因で死亡した者の年代別割合
総死亡者数のうち交通事故が原因で死亡した者 14,343人(1.6%)
15~19歳の死亡者のうち  〃   〃  1,260人(42.4%)
20~25歳の死亡者のうち  〃   〃  1,432人(31.5%)

[厚生省「人口動態統計」]

イ 若者の交通事故の状況

  • 若者(16~24歳)の交通事故死者数は、減少傾向にあるものの、平成9年は、2,026人(全交通事故死者数に占める割合は21.0%)と、高齢者に次いで多く、負傷者数は、ここ数年横ばいであるものの、9年は244,230人(全交通事故負傷者数に占める割合は25.5%)と年齢層別では突出した第1位となっている。

    若者の交通事故死者数・負傷者数の推移

  • 平成9年における状態別の死者数では、自動車乗車中が57.7%(1,168人)と最も多い。また、状態別死者数の占める割合は、16~19歳では二輪車乗車中(原付含む)が47.4%と自動車乗車中(44.3%)を上まわっているが、20~24歳では自動車乗車中が68.6%と二輪車(25.3%)より圧倒的に高い。
  • 男女別の死者数では男性が81.5%(1,652人)と、男性が占める割合が圧倒的に高くなっている。

    若者の男女別状態別死者数の推移

  • 交通事故及び死亡事故とも若者が第1当事者となった事故は3割弱を占め、突出した第1位であり、若者の事故の原因者としての関わりが高くなっている。
    また、第1当事者が自動車等(自動車、自動二輪、原付)となっている死亡事故件数の運転免許取得者1万人当たりの値をみると、若者は2.6件と突出した第1位であり、全年齢層の1.2件に対して2倍以上の値となっている。

    年齢層別交通事故発生割合の推移(第1当事者)

    年齢層別死亡事故発生割合の推移(第1当事者)

  • 若者が第1当事者である死亡事故の主な特徴は次のとおりである。
(ア)
事故類型別にみると、全年齢層に比べ、車両単独事故の割合が高く、人対車両事故の割合が低い。

事故類型別死亡事故件数構成率(第1当事者)

(イ)
曜日別にみると、全年齢層と比較して土曜日と日曜日の占める割合が高い。

曜日別死亡事故発生件数構成率(第1当事者)

(ウ)
時間帯別にみると、夜間、特に深夜から早朝にかけて発生した事故の割合が高い。この傾向は、自動車と自動二輪車について明確であるが、原動機付自転車については、夕方から夜にかけて若干多くなっているものの、時間帯による差はそれほど大きくない。

時間帯別・当事者別死亡事故件数

(エ)
自動車等運転中の法令違反別にみると、全年齢層と比較して最高速度違反による事故が圧倒的に多い。

車両(原付以上)運転者の法令違反別・年齢別・死亡事故発生件数(第1当事者)

以上のことから、若者の交通事故死者の特徴としては、自動二輪車乗用中の死者が近年著しく減少していること、男性の占める割合が著しく高いことが挙げられ、また、事故の特徴としては、事故の原因者としての関わりが多いこと、車両単独事故の割合が高いこと、週末の事故が多いこと、夜間の事故が多いこと、最高速度違反による事故が多いことなどが挙げられる。

(2)若者の交通安全対策

ア 高等学校における交通安全教育の充実

  • 高等学校においては、学習指導要領の「保健体育科」の内容として「交通安全」が明記され、交通安全教育の充実が図られている。
  • 昭和57年に社全国高等学校PTA連合会が「免許を取らない」、「乗らない」、「買わない」のいわゆる「3ない運動」を特別決議し、全国的に運動を展開した。しかし、政府は「二輪車の事故防止に関する総合対策について」(平元交通対策本部)を決定し、「3ない運動」を行っている学校においても、交通安全教育・指導の積極的な推進を図ることとした。また、平成9年には社全国高等学校PTA連合会が「3ない運動」の新たな展開を宣言し、「3ない運動」を推進するとともに、地域の実態及び学校の実情から二輪車の安全運転に関する効果的な在り方について検討し、交通安全指導を計画的に行うよう努めている。
  • 文部省では、各都道府県ごとに高等学校1校を「二輪車研究指定校」に指定し、実技指導を含めた実践的な調査研究を行う等高等学校における二輪車に関する交通安全教育の充実を図っている。

イ 運転免許取得前の高校生の年代に対する交通安全教育の推進

  • 高校生の年代の若者は、二輪車の免許取得可能年齢であるとともに、普通免許取得可能な年齢の直前の年代であり、これらの者への交通安全教育は特に重要である。総務庁では、「免許取得前の若者に対する交通安全教育の在り方に関する検討会」を開催し、以下のような提言を取りまとめた。
    • 免許取得時教育及び取得後教育の再教育と並んで、若者が免許を取得する以前から免許取得を前提とした交通安全教育が必要
    • 若者が交通社会に運転者として参加することを前提に、「交通社会を安全に生き抜く知恵や態度を育む」という立場に立った交通安全教育が必要
    • 学校、家庭及び地域が一体となって、相互の情報交換や連携協力を図ることが必要
  • 検討会の報告を受け、「免許取得前の若者に対する交通安全教育モデル事業」を実施している。このモデル事業の結果を踏まえ、今後も更に具体的かつ効果的な指導方法の開発及びその推進方策について検討を重ね、参加・体験・実践型教育の一層の普及・拡充の推進を図る。

ウ 運転免許取得時の交通安全教育の充実

  • 平成9年に新たに運転免許を取得した者のうち、若者が88.0%を占めている。また、運転免許(原付、小特、第二種を除く)を新たに取得した者のうち、指定自動車教習所を卒業した者は93.4%を占めていることから、指定教習所における教習は、若者の初心運転者教育の中核をなすものとなっている。
    警察では指定自動車教習所に対する指導監督を徹底し、教習体制の充実に努めている。また、道路交通法の改正により平成6年から普通自動車の教習カリキュラムに危険予測教習、高速教習、応急救護処置教習等を導入、さらに、8年から指定自動車教習所において大型自動二輪車に係る教習及び技能検定制度を導入したことから、大型自動二輪車及び普通自動二輪車の新たな教習カリキュラムを導入するなど、常に教習内容の見直し及び充実強化に努めている。

エ 運転免許取得後の交通安全教育の充実

(ア)
運転免許取得後の制度的交通安全教育講習等の充実
運転免許取得後の経過年数の短い者、特に若者が死亡事故を引き起こしている場合が多いことから、平成元年の道路交通法改正により初心運転者期間制度が創設され、若者に対する安全運転意識の向上が図られている。
二輪免許交付時講習として、主に二輪免許を新規取得した若者を対象に、優れた技能を有する白バイ隊員等を講師として安全運転講習を行っている。
(イ)
参加・体験・実践型実技等再教育の充実
安全運転意識の向上とそれを実践する態度の涵養を図るのに効果的な運転実技等再教育として、総務庁では「四輪車安全運転実技教育事業」を実施し、これらの実績を踏まえ、更に具体的かつ効果的な指導方法の開発及びその推進方策について検討を重ね、参加・体験・実践型教育の普及の推進を図っている。
「二輪車の事故防止に関する総合対策について」に基づき、総務庁では、全国的な二輪車事故防止キャンペーンを展開するとともに、主に若者を対象とした二輪車事故防止イベントを実施している。
実技教育施設の充実として、自動車安全運転センター安全運転中央研修所を始め、都道府県においても、順次自動車教育施設の整備が進められており、また、民間団体においても交通安全教育施設の整備を始め、各種の交通安全教育スクールが開催されている。

オ 暴走族対策の推進

  • 若者の交通死亡事故は無謀運転に起因するものが多いことから、悪質性・危険性の高い違反に重点を置いた効果的な指導取締りを積極的に行なっており、中でも、若者でほとんど構成される暴走族への対策は重要なものの一つである。
  • 暴走族に対しては、警察の総合力による取締りの徹底・強化により暴走行為そのものを封じ込めるとともに、暴走族グループの解体、個別指導等による暴走族からの離脱、中学校及び高等学校が警察等と連携しながら、個別指導等により暴走族への加入の防止、各都道府県における関係機関・団体等からなる暴走族対策会議を中心として地域ぐるみの暴走族追放の諸活動等推進している。

カ 交通安全に関する普及・啓発活動の推進

(ア)
シートベルト及びヘルメットの着用徹底のための広報啓発活動
シートベルト着用促進のため、シートベルトコンビンサー等を活用した体験型講習会等を全国各地で開催する等シートベルトの安全効果を実感できるような啓発活動を展開している。
二輪運転者、特に原動機付自転車の運転者に対するヘルメットの着用徹底を図るため、運転実技指導等を通じ、着用意識の効用を推進している。
(イ)
二輪車事故防止のための広報啓発活動の推進
「バイクの日」( 8月19日)前後の時期を中心に、二輪車の安全な利用を促進するための全国キャンペーン等広報啓発活動を展開しており、その一環として総務庁では、同日、バイクフォーラムを開催している。

キ 車両の安全対策の推進

  • 運輸技術審議会答申を受け、高速ブレーキ試験及び耐フェード試験の導入等ブレーキに係る基準を強化するとともに、前面衝突試験、側面衝突試験を乗用車等に対し義務付けた。二輪車については、高速ブレーキ試験及び耐フェード試験の導入等ブレーキに係る基準を強化するとともに、被視認性の向上を図るため、エンジン始動時に前照灯を自動的に点灯させることを義務付けた。
  • 安全性が格段に高い先進安全自動車(ASV)の開発推進に取り組んでおり、二輪車についても、21世紀初頭において統合システムを搭載したASV車の実現化を目指し、研究開発を推進している。
  • より安全な自動車の普及や自動車ユーザー等の安全意識の向上を図るため、装置の整備状況、前面衝突安全性能等を掲載した「自動車安全情報」を公表している。

ク 道路交通環境の整備

  • 高速道路等の道路ネットワークの体系的な整備とともに、一般道路について、特定交通安全施設等整備事業七箇年計画に基づき、事故多発地点緊急対策事業やコミュニティ・ゾーン形成事業などを推進している。
  • 無謀運転が行われやすい場所について、効果的な交通規制を実施するとともに、高速走行抑止システムや対向車接近表示システムの整備を推進している。
  • 二輪車の安全かつ円滑な走行に配意した交通規制として、交差点における二段停止線、原付自転車の二段階右折の導入、自動二輪車専用通行帯の設置を実施している。
  • (財)交通事故総合分析センターの総合データを基に事故原因の分析、現場点検等総合的かつ計画的な交通事故防止対策を実施している。

4 平成9年度の主な施策等

 第6次交通安全基本計画(計画期間:平成8年度~12年度)に基づいて、特に以下の重点施策等を推進した。

(1)交通安全施設等の重点的整備

平成9年度は、交通安全施設等整備事業七箇年計画の第2年度として、次のような事業を実施した。

歩行者等の事故防止のために、平坦性と快適な通行空間を十分確保した幅の広い歩道整備,住居系地区等において、ゾーン規制等の交通規制とコミュニティ道路等の面的整備を適切に組み合わせて行うコミュニティ・ゾーンの形成を図るほか、信号機の弱者感応化、歩行者感応化等の高性能化、道路照明灯、道路標識等を整備した。
通学路における事故防止のために、歩道等の整備を始め、信号機、立体横断施設、道路標識等を整備をした。
車両の事故防止のために、交通の流れが円滑化されるよう信号機の高度化改良、交差点等の改良や付加車線、中央帯、防護柵、道路反射鏡等を整備するとともに、夜間交通のために、道路照明灯、高速走行抑止システム等を整備した。
新交通管理システム(UTMS)としての中央装置や交通情報提供装置を整備するなど交通管制システム機能を充実・高度化した。

(2)高度情報通信技術等を活用した道路交通システムの整備

平成8年に関係5省庁が策定した「高度道路交通システム(ITS)推進に関する全体構想」に基づき、道路交通情報通信システム(VICS)のサービスの全国展開に向けた整備を推進するとともに、新交通管理システム(UTMS)構想に基づく公共車両優先システム(PTPS)の試行、ノンストップ自動料金収受システム(ETC)の実用化に向けた試験運用等を行った。

(3)交通需要マネジメント施策等の推進

「新渋滞対策プログラム」(平成5年~9年度)において、交通容量の拡大策等と併せて、パーク・アンド・ライド、相乗り、フレックスタイムなどの道路利用の仕方に工夫を求め、輸送効率の向上や交通量の時間的・空間的平準化を図る「交通需要マネジメント(TDM)施策」を盛り込んでおり、この施策の実施のための具体的取組として、全国13都市を総合渋滞対策支援モデル事業実施都市として、施策の導入に向けた試行等への支援を行うとともに、試行結果の紹介や研修等を通じて交通需要マネジメント施策の全国への普及・啓発を図っている。
また、都市交通の円滑化、都市の快適・利便性等に資するために、交通容量拡大等、TDM施策、マルチモーダル施策を組み合わせて実施する都市圏交通円滑化総合計画について、全国数都市圏において新たに策定・実施するための取組を支援している。
さらに、人、まち、環境にやさしいバスを中心とした安全で快適なまちづくりを目指すオムニバスタウン構想を推進している。

(4)交通安全教育指針の作成

道路交通法の一部改正により、公安委員会が住民に対する交通安全教育を行うよう努めることとされ、その交通安全教育を効果的かつ適切に行うための指針の作成、公表が規定された。

(5)高齢者に対する交通安全教育等の推進

高齢者の交通安全意識の向上を図っていくため、参加・体験・実践型の交通安全教育として「高齢者交通安全実践促進事業」を実施している。

(6)高齢運転者対策の充実

道路交通法の一部改正により、75歳以上の免許更新者は、実際の運転及び運転適性検査等を内容とする高齢者講習を受講することとした。
また、75歳以上の者が運転する普通自動車が、高齢運転者標識をつけているときは、他の車両が幅寄せをしたり、割り込みをしたりすることが禁止された。

(7)シートベルト着用の徹底

シートベルト及びチャイルドシートの着用の徹底を図るため、普及啓発活動や各種広報媒体を通じた積極的な広報活動を実施するとともに、教育・広報等と取締りを組み合わせたステップ方式による効果的な着用推進対策を実施した。
また、チャイルドシートの適切な使用による乗車中の子供の交通事故被害の軽減についての記者発表を行う等の活動を行った。

(8)自動車運転中の携帯電話使用に関する広報啓発

自動車運転中の携帯電話の使用による交通事故については、事故実態調査を踏まえ、「交通の方法に関する教則」に運転中は携帯電話を使用しないこと、運転する前に電源を切るなどすることを規定する改正を行った。
また、「移動電話利用マナー委員会」が設置され、全国の事業者が共同して、全国紙への共同広告、マナーブックの配布等のキャンペーンの実施等、携帯電話使用に関するマナーの啓発を行った。

(9)交通安全総点検の実施

交通安全は、人、道、車の調和を図ることにより確保されるものであり、利用する人の視点に立ってとらえるべき課題であることから、良好な道路交通環境をつくりあげるために、地域の人々や道路利用者の主体的な参加のもとに「交通安全総点検」を本格的に実施した。

(10)先進安全自動車(ASV)の開発支援

ASV推進検討会を中心に、ASV車の実用化に向けての研究開発を推進した。

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第2部 鉄軌道交通

1 鉄軌道交通事故の動向

  • 踏切事故防止対策の推進、各種の運転保安設備の整備・充実、制御装置の改善、乗務員等の資質の向上など総合的な安全対策を実施してきた結果、運転事故及び踏切事故は、長期にわたり減少傾向が続いており、平成9年の運転事故件数は974件、運転事故による死者数は336人であった。
  • 事故の種類別の発生件数では、踏切障害493件(50.6%)、人身障害381件(39.1%)、道路障害67件(6.9%)となっている。
  • 踏切事故(498件)は運転事故の過半数を占めている。

    運転事故件数と死傷者数の推移

2 重大事故の発生と交通安全対策

(2)重大事故の状況

  • 重大事故(死傷者10人以上、又は脱線車両数10両以上の運転事故)は、ここ5年間は前の5年間に比べ45.7%減少したが、依然、年間数件程度発生している。
  • ここ10年間における重大事故は、54件発生しており、事故種類別の構成比でみると、件数が多い順に列車脱線50.0%、列車衝突22.2%、踏切障害20.4%となっている。

    重大事故発生状況の推移

    事故種類別の重大事故発生状況(昭和63年~平成9年)

  • 平成9年は、7件の重大事故が発生し、例年に比べ列車衝突事故の割合が高くなっている。具体的には、8月にJR東海の東海道線、弘南鉄道の弘南線、10月にJR東日本の中央線で、多数の負傷者を生じる列車衝突事故が発生した。

    平成9年重大事故一覧

(2)重大事故等に対する交通安全対策

列車衝突事故防止対策
平成9年の列車衝突事故3件は、担当職員による基本的な取扱いが行われなかったことに起因しており、ひとつ間違えばさらに甚大な被害を生じるおそれのあるものであったことから、運輸大臣より直接全鉄軌道事業者の代表者に対し、担当職員による基本動作の励行の徹底についての緊急指示を行った。
また、これを受け、運輸省とJR各社の安全担当部長等で構成される「鉄道保安連絡会議」を開催し、運輸大臣の緊急指示に対する各社の取組状況について検討を行ったほか、同種事故の再発防止に向けて更なる指導の強化を図っている。
さらに、自動列車停止装置(ATS)が未設置の鉄軌道事業者に対しては、今後とも導入を指導する。
踏切事故防止対策
踏切道改良促進法及び第6次踏切事故防止総合対策に基づき、引き続き踏切道の立体交差化、構造改良、踏切保安設備の整備、交通規制、踏切道の整理統合等の施策を推進している。
自動車運転者や歩行者等に対し、安全意識の向上等を図るための広報活動等を一層強化する。
その他の交通安全対策
線路施設、信号保安設備等の整備等を促進するとともに、乗務員の教育訓練の充実、基本動作の徹底、厳正な服務、確実な運転取扱い、適正な運行管理の徹底、ATS及び列車集中制御装置(CTC)の設置・改良等に関して所要の指導を行い、さらに火災対策を講じた施設及び車両の整備を指導している。
鉄道保安連絡会議において、事故防止に関する情報交換、検討を行い、同種事故の再発防止に活用している。
既存の鉄道構造物の耐震性の強化として、新幹線、輸送量の多い線区で高架橋・橋台及び開削トンネルの中柱の耐震補強工事や、落橋防止工の設置をしている。

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第2編 海上交通

1 海難の動向

  • 救助を必要とする海難に遭遇した船舶(要救助船舶)の隻数は概して減少傾向にある(台風及び異常気象下のものを除く。)。中でも、漁船、貨物船の海難の減少が顕著である。
  • 一方、近年の海洋レジャ-活動の活発化に伴い、プレジャ-ボ-ト等の海難の全要救助船舶隻数に占める割合が高くなってきており、平成9年は40.5%(675隻)を占めるに至り、漁船の海難を上回り、最多となった。
  • 要救助船舶の乗船者の死亡・行方不明者数は、近年200人前後で推移してきているが、平成9年は170人であった。

    要救助船舶隻数及び死亡・行方不明者数の推移

    要救助船舶の用途別隻数の推移

2 プレジャーボート等の事故の増加と交通安全対策

(1)プレジャーボート等の海難の発生状況

  • プレジャーボート等の海難は、海洋レジャー活動の活発化、モーターボート・ヨット等の増加(平成4年度末37万1千隻→8年度末42万7千隻)等に伴って年々増加しており、9年には海難隻数で初めて漁船を抜き第1位となった。
  • 平成9年の状況を船型別でみると、モーターボート463隻(68.6%)、ヨット92隻(13.6%)、遊漁船48隻(7.1%)、水上オートバイ46隻(6.8%)、手漕ぎボート26隻(3.9%)となっている。5年前と比較するとモーターボートが増加している。

    プレジャーボート等の船型別海難の推移

  • 次に海難原因別でみると、機関取扱不良154隻(22.8%)、見張り不十分106隻(15.7%)、操船不適切80隻(11.9%)気象・海象不注意71隻(10.5%)等の人為的要因に起因するものが80.1%を占めている。漁船と比較して、気象・海象不注意、機関取扱不良などの割合が高く、運航のための初歩的知識や技能の不足がうかがえる。

    プレジャーボート等の船型別海難原因別発生状況

(2)プレジャーボート等に対する交通安全施策の状況

  • プレジャーボートの安全な活動拠点となるマリーナ、漁港におけるフィッシャリーナ等の整備を推進している。
  • 巡視船艇・航空機等による救助体制の強化、民間海難救助体制の整備の推進等により、救助体制の充実強化を図っている。
    また、事故等の情報が迅速かつ的確に入手できるように、海洋レジャー用無線機の普及、船舶電話、衛星船舶電話等の緊急通報体制の確立を図っている。
  • プレジャーボート等の船体形状、使用形態等の多様化に対応し、小型船舶の安全基準の整備及び検査体制の整備を図っている。
  • 海洋レジャー愛好者に対し、海上交通ルールの周知、気象・海象情報の的確な把握、その他の安全運航のための基本的事項の励行等の指導を行うとともに、民間団体の自主的な安全活動を積極的に支援している。
  • 海洋レジャーの安全等に資する海洋情報等の収集・管理・提供体制の整備及びその情報提供の充実強化を図っている。

3 海上交通事故に対する主な交通安全対策

  • 港湾及び漁港の防波堤、航路、泊地、係留施設等の整備を進めるとともに、開発保全航路、避難港及び航路標識等の整備を推進している。
  • 港湾及び漁港の耐震性の強化として、耐震強化岸壁の整備、防災拠点の整備、輸送施設の整備等を行っている。
  • 輻輳海域においては、特別の交通ルールを定めるとともに、海上交通に関する情報提供と航行管制を一元的に行うシステムである海上交通情報機構等の整備・運用を行っている。
    また、海図・水路書誌等の整備及び水路通報、気象情報等の充実を図っている。
  • 舶の航行に関する安全管理体制を確立するための国際安全管理規則(ISMコード)が、海上人命安全条約(SOLAS条約)の改正により強制化されたことから、国内法令の整備を行い、船舶の安全管理審査体制の整備充実を図っている。
  • 外国船舶に対するポートステートコントロール(旗国政府による監督だけでなく、寄港国よる監督)について、監督範囲・内容の拡充、専従監督要員の配置など、その充実強化を図っている。
  • ナホトカ号の大規模油流出事故の原因が船体の老朽化であったことなどから、船体構造の健全性に関する国際的なポートステートコントロール強化のため、検査報告書記載事項の追加及び通報制度の改善を国際海事機構(IMO)に提案し、一部実施されることとなった。

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第3編 航空交通

1 航空交通事故の動向

  • 近年、民間航空機の事故発生件数は、航空輸送が急速に拡大する中でほぼ横ばいの状況にある。平成9年中の事故発生件数は30件、死傷者数は62人(うち死者数28人)となっている。

    航空機の事故件数と死傷者数の推移

2 航空交通の主な交通安全対策

  • 第7次空港整備七箇年計画(平成8~14年度)に基づき、空港、航空保安施設等の整備を計画的に推進している。
  • 空港、航空保安施設の耐震性の強化については、既存施設の耐震補強(庁舎等の点検・改修等)及び管制施設の多重化(管制機能の代替・非常用レーダー等の整備)等、を推進した。
  • 航空機乗組員等の資質の向上、運航管理体制の強化、航空機整備体制の充実等、定期航空の運航の安全対策の充実強化に取り組んでいる。
  • 小型航空機の事故を防止するため、法令及び安全関係諸規程の遵守、無理のない飛行計画による運航の実施、的確な気象情報の把握、操縦士の社内教育訓練の充実等を内容とする事故防止の徹底を指導している。
  • スカイレジャーについては、愛好者に対する安全知識の普及や技能の向上訓練等について関係航空団体を指導するとともに、「優良スカイレジャーエリア認定制度」の推進等により安全確保を図っている。

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