平成14年版 交通安全白書 概要
2 現況編の概要 第2編 海上交通

平成14年度交通安全白書概要

2 現況編の概要

第2編 海上交通

1 海難等の動向

I 平成13年中の海難等及び海難救助の状況
  • 海難船舶2,836隻(うち945隻自力入港)中、1,652隻救助
  • 海難船舶乗船者13,670人(うち7,615人自力救助)中、5,884人救助

    船舶海難及びそれに伴う死亡・行方不明者の推移

    船舶海難及びそれに伴う死亡・行方不明者の推移グラフ

II 平成13年中の海難等の特徴
  • 海難に遭遇した船舶(海難船舶)の隻数は、前年に比べ37隻減の2,836隻となっており、平成10年以降増加していたものの減少に転じた。
  • 近年のマリンレジャー活動の活発化に伴い、プレジャーボート等の海難は、昨年に比べ126隻増の1,268隻で過去最悪であり、海難船舶隻数に占める割合は45%であった。
  • 海難船舶乗船者のうち死亡・行方不明者数は171人であった。
    また、船舶からの海中転落による死亡・行方不明者数は149人であった。

2 平成13年度の主な海上交通安全施策

(1)海上交通環境の整備

  • 港湾整備七箇年計画等に基づき、開発保全航路、港湾及び漁港の整備、港湾等の耐震性の強化を図るとともに、港湾等の整備の進展、船舶の高速化等により変化する海上交通環境に適応した航路標識の整備を実施している。
  • 船舶交通のふくそうする海域においては、特別の交通ルール等を定めるとともに、海上交通に関する情報提供と航行管制を一元的に行うシステムである海上交通情報機構等の整備・運用を行った。このほか、船舶自動識別装置(AIS)の設備義務化及び東京湾口航路整備事業の進展を踏まえ、東京湾をモデルとした新しい交通体系の構築、管制制御システムの高速化等に関する調査・検討の実施、高速航行等に必要な技術基準の策定等を推進し、湾内航行のノンストップ化を図ることにより、安全かつ効率的な海上交通環境である「海上ハイウェイネットワーク」を構築するための整備を行った。
  • 海図・水路誌等の整備及び水路通報、気象情報等の充実を図った。

(2)船舶の安全性の確保

  • 船舶の安全性を確保するため、船舶の構造、設備等の安全基準を船舶安全法及びその関係省令において規定しており、平成13年10月には、内航船舶に係る満載喫水線基準の合理化のための関連規則の改正を行った。また、旅客船のバリアフリー化の義務化に対し、事業者等が円滑に対応できるよう、旅客船のバリアフリー基準説明会の開催等必要な対策を講じた。
  • 平成9年1月の「ナホトカ号」事故等タンカーからの大規模油流出を受けて、平成13年4月、国際海事機関(IMO)においてダブルハルタンカーの建造を促進することを内容とする海洋汚染防止条約の改正が採択された。
  • 平成12年9月の沖合底びき網漁船「第五龍寶丸」転覆沈没事故を受け、同種事故の再発防止対策及び今後の課題に関する提言を取りまとめるとともに、同提言を受け、漁業関係者に対し再発防止対策を指導した。
  • 近年における人的要因に係る海難等の発生に対応するため、操作要件(乗組員が機器等の操作に習熟しているかどうか)に係るPSCやISMコードに関するPSCを重点的に実施するとともに、GMDSS(海上における遭難及び安全のための通信システム)の関連要件等に関するPSCの強化を図った。

(3)各種船舶等の安全対策の充実

1)プレジャーボート等の安全対策の推進
プレジャーボート等の活動が活発化する時期等を考慮しながら、巡視船艇を効率的に配備し、ヘリコプターを最大限に活用する等、救助体制の強化を図るとともに、海難防止講習会や訪船指導等を通じて、海難防止指導を行っている。
また、気象・海象情報、海上安全情報の提供、民間救助機関による安全サポート体制の構築といった、「マリンロード構想」の基本コンセプトを構築した。
さらに、海中転落事故に際しては、まず海上に浮くことが死亡事故防止にもっとも役立つことから、救命胴衣の着用率を向上させるための方策について検討を行い、常時着用により適した救命胴衣の技術基準の導入等の対策を検討した。
2)漁船の安全対策の推進
漁船の海難による死亡・行方不明者数は、全体の4割以上を占めていることから、海難防止講習会の開催や訪船指導の実施等により、見張りの励行等について、指導・啓発を行い乗組員の安全運航の意識向上に努めるとともに、安全基準の適用が免除されている一部の小型漁船の安全性について評価を行った。

(4)救助・救急体制の整備

  • 海難情報の入手体制の整備、巡視船艇・航空機による救助体制の強化及び海難救助技術の向上を図るとともに、(社)日本水難救済会に対し、救助訓練の指導を行う等、救助体制の充実強化を図っている。
  • SAR条約への対応として、近隣諸国等の要請に応じ、技術協力を積極的に推進するとともに、海運・水産関係者に対して、JASREPへの参加を促進した。
  • 海難及び船舶からの海中転落による死亡・行方不明者を減少させるために、救命胴衣の常時着用、携帯電話等の連絡手段の確保及び緊急通報用電話番号「118番」の有効活用を基本とする「自己救命策確保キャンペーン」を強力に推進した。

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