平成14年度において実施すべき交通安全施策に関する計画
第1部 陸上交通の安全に関する施策 第1章 道路交通の安全に関する施策
第7節 損害賠償の適正化と被害者対策の推進
第1部 陸上交通の安全に関する施策
第1章 道路交通の安全に関する施策
第7節 損害賠償の適正化と被害者対策の推進
1 自動車損害賠償保障制度の充実等
交通事故被害者保護の充実を図るため、次の施策を重点的に推進する。
- (1)自動車損害賠償責任保険(共済)の充実
- 自賠責保険については、政府再保険制度が廃止されることにより、今後は国の支払審査が死亡など重要事案に限られることになるが、被害者保護の充実が図られるよう、新制度における保険会社等の情報提供措置の着実な実施、支払基準に基づいた適正な保険金支払いの実施及び公正中立な紛争処理機関による紛争処理業務の円滑な実施が図られるよう、引き続き保険会社等を指導する。
- (2)政府の自動車損害賠償保障事業の充実
- 自賠責保険による救済を受けられないひき逃げや無保険車による事故の被害者救済制度である保障事業についても、自賠責保険と同様、被害者保護の充実を図る。
- (3)無保険(無共済)車両対策の徹底
- 原動機付自転車等に係る自賠責保険(共済)の普及の促進を図り、無保険(共済)車対策の充実を図る。
- (4)任意の自動車保険(自動車共済)の充実等
- 自賠責保険(共済)とともに重要な役割を果たしている任意の自動車保険及び自動車共済は、自由競争のもと、補償範囲や金額、サービスの内容も多様化してきており、交通事故被害者の救済に大きな役割を果たしているが、被害者救済等の充実に資するよう、制度の改善及びその普及率の向上について引き続き指導を行なう。
2 損害賠償の請求についての援助等
- (1)地方公共団体の設置する交通事故相談所の活動の強化
- 交通事故被害者救済対策の一環として、地方公共団体が設置する交通事故相談所の強化を図るため、都道府県及び政令指定都市に対して、交通事故相談所の活動に必要な経費の一部として、平成14年度は総額2億7,165万円の交付を行なう。
また、相談内容の複雑・多様化に対処するため、交通事故相談事例・判例等の事例研究会の開催及び情報誌の作成・配布を内容とした交通事故相談員育成事業及び初任相談員中央研修会を実施し、交通事故相談員の資質の向上を図る。
また、市(区)町村相談窓口に対する都道府県交通事故相談所の指導の充実、研修の実施などにより、地域における交通事故相談活動の充実を図る。 - (2)損害賠償請求の援助活動等の強化
- ア
- 警察における交通相談の積極化
警察においては、交通事故被害者に対する適正且つ迅速な救済の一助とするため、救済制度の教示や交通相談活動の積極的な推進を図る。 - イ
- 法務省における人権相談活動の強化
法務局、地方法務局及びその支局並びに人権擁護委員は、人権擁護活動の一環として、交通事故に関する相談についても従来から積極的に取り組んできたが、なお一層、地域住民の利便に資するため、人権相談の充実強化を図る。 - ウ
- (財)法律扶助協会による民事法律扶助事業の推進
交通事故の被害者を含め民事紛争の当事者が資力に乏しい場合であっても、民事裁判等において自己の権利を実現することができるよう、法律相談を実施したり、訴訟代理費用(弁護士費用)の立替えを行う民事法律扶助事業を推進するとともに、同事業について一層の周知を図るための広報に努める。 - エ
- (財)日弁連交通事故相談センターによる交通事故相談活動の強化
(財)日弁連交通事故相談センターにおいて行なっている交通事故の損害賠償等に関する弁護士による無料の法律相談及び示談あっせん事業をさらに利用しやすくするため、相談所の増設等の業務の拡充に努める。 - オ
- (財)交通事故紛争処理センターによる交通事故相談活動の強化
交通事故に関する紛争の適正な処理を図るため、(財)交通事故紛争処理センターが行なっている嘱託弁護士による無料法律相談及び和解のあっせん並びに審査会による裁定等の業務の強化に努める。 - カ
- 改正自賠法に基づく紛争処理機関による紛争処理
改正自賠法に基づき、自賠責保険の保険金の支払いに関する紛争を解決するため、(財)自賠責保険・共済紛争処理機構が公正中立で専門的な知見を有する紛争処理機関として平成14年4月より業務を開始したところであり、通常の裁判による救済に比べてより迅速な紛争の解決が図られるよう、指導を行なう。
3 交通事故被害者対策の充実強化
- (1)自動車事故被害者等に対する援助措置の充実
- ア
- 改正自賠法の自動車事故対策計画に基づく交通事故被害者救済対策等
改正自賠法による自動車事故対策計画に基づき、被害者保護の増進及び自動車事故の発生の防止が安定的に行われるよう、補助等を行なっていく。 - イ
- 自動車事故対策センター
自動車事故対策センターは、交通事故被害者の救済を図るため、次に掲げる業務を拡充して行う。 - (a)
- 介護料の支給
自動車事故により重度の後遺障害を負い、常時又は随時介護を要する被害者に介護料の支給を行う。さらに、在宅介護者の支援を強化するため、短期入院費用の一部助成を行う。 - (b)
- 重度後遺障害者療護施設の運営等
自動車事故による重度後遺障害者に対し、専門的な治療及び養護を行う療護センター(千葉、東北、岡山、中部の4箇所)の運営を行うとともに、千葉療護センターの介護病床の整備を行なう。 - ウ
- 交通遺児等に対する援助
交通遺児の生活基盤を確立し、その健やかな育成を図るため、(財)交通遺児育成基金において、交通遺児から拠出された資金を長期にわたり安定的に運用して、その育成資金を定期的に給付する交通遺児育成基金事業を行う。 - (2)交通事故被害者等の心情に配慮した対策の推進
- ア
- 交通事故被害者等に対する情報提供の実施
ひき逃げ事件、交通死亡事故等の被害者・遺族に対して、事故の概要、捜査状況等についての被害者連絡を適時、適切に実施するとともに、「交通事故被害者の手引」の配布や各種相談活動によって、被害者等にとって必要な情報の提供に努める。
また、交通死亡事故等を起こした加害者に対する行政処分結果等について被害者等からの問い合わせがあった場合には、適切に教示するなど、被害者にも配意した行政処分制度の運用に努める。
検察庁においては、事件処理結果等を通知する被害者等通知制度や、被害者支援員における被害者等からの各種相談等の対応を充実させるとともに、不起訴記録を被害者等に開示するに当たって弾力的な運用を図るなどの施策を実施し、これらを通じて被害者等の保護に努める。 - イ
- 交通事故被害者等を講師とする講習の推進
交通事故の被害者や遺族を停止処分者講習の講師とすることについて、積極的な推進を図る。 - ウ
- 交通事故被害者の手記等の作成
交通事故の被害者や遺族から寄せられた手記をとりまとめ、手記集やビデオを作成し、交通安全推進団体並びに学校教育関係者、病院、公共交通機関等に配布し、また、処分者講習や違反者講習等において活用するなど交通事故の悲惨さを遺族等の声を通じて紹介する。