平成14年度交通事故の状況及び交通安全施策の現況
第2編 海上交通
第2章 海上交通安全施策の現況
第4節 船舶の安全性の確保
第2編 海上交通
第2章 海上交通安全施策の現況
第3節 船舶の安全な運行の確保
第4節 船舶の安全性の確保
1 船舶の安全基準の整備
船舶の安全性の確保については、国際海事機関(IMO)を中心に国際的な基準が定められており、海上人命安全条約(SOLAS条約)等、船舶の構造、設備等の安全基準を船舶安全法(昭8法11)及びその関係省令において規定している。SOLAS条約において、船舶の航行の安全に係る技術革新等に対応した船舶自動識別装置(AIS)の搭載を始めとする、船舶の航海設備・防火構造・消防設備等に関する安全基準の大幅な見直しが行われ、平成14年7月1日に発効し、我が国も国内法の整備を行った。
また、平成9年の「ナホトカ号」・平成11年の「エリカ号」の大規模油流出事故を受けて、13年4月、IMOにおいてタンカーの安全性向上のため、シングルハル(単船殻)タンカーを段階的に廃止し、ダブルハル(二重船殻)タンカーの建造を促進することを内容とする海洋汚染防止条約(MARPOL条約)の改正が平成14年9月1日に発効し、我が国も国内法の整備を行った。
さらに、平成14年5月からの交通バリアフリー法に基づく旅客船のバリアフリー化の義務化に対して、機器の研究開発、非常時における安全性の向上など、更に進んだバリアフリー化を促進させるための環境整備を行った。
2 重大海難事故の再発防止
平成12年9月11日に発生した沖合底びき網漁船「第五龍寶丸」転覆沈没事故を受け、13年3月27日に同種事故の再発防止対策及び今後の課題に関する提言を取りまとめた。この提言を受け、再発防止対策として、総トン数160トン船尾トロール型沖合底びき網漁船(類似船である124トン船尾トロール型沖合底びき網漁船を含む。)を対象に「漁船の復原性の明確化」、「船体構造設備の改善」及び「操業中の安全な作業、操船の実施」について漁業関係者に対し指導した。
3 危険物の安全審査体制の整備
放射性物質等危険物の海上輸送の増加及び化学工場から発生する危険物の多様化に対応して、船舶による危険物の海上輸送に関する安全基準を整備するとともに、安全審査体制の強化を図った。
4 船舶の検査体制の充実
平成14年7月の船舶における防火構造、消防設備及び航海設備等に関するSOLAS条約の改正の発効や、従来の船舶設計手法とは全く異なる船型を有する船舶が増加していること等に対応するため、船舶検査体制の整備充実を図った。
近年、船舶技術の高度化やその安全性への社会的関心の高まりに的確に対応するため、外部有識者からなる「船舶安全評価委員会」を設置し、国の安全審査体制の充実強化を図った。
また、海難等防止のため船舶自動識別装置(AIS)の搭載などが国際的に義務化されるが、これに合わせて船舶検査体制の充実に努めている。
さらに、小型船舶の検査については、海洋性レクリエーションの発展とともに、増加・多様化しているプレジャーボート等に対応するため、小型船舶の検査実施機関である小型船舶検査機構の検査体制の整備充実を図っている。
5 船舶の安全管理の向上
国際安全管理規則(ISMコード)が平成14年7月に完全適用になったことから、制度の円滑な実施体制の整備を図るとともに国際的な協力体制の構築に努めた。
一方、ISMコードの強制化がなされていない内航船舶についてもISMコードと同等な認証制度(船舶安全管理認定書交付規則(平12運輸省告示274))を制定しており、この制度の実施体制の整備拡充等を図った。
6 外国船舶の監督の推進
近年、人的要因による海難等が増加していることから、操作要件(乗組員が機器等の操作に習熟しているかどうか)に係るPSCや、平成14年7月1日より完全適用されたISMコードに関するPSCを重点・強化するとともに、GMDSS(海上における遭難及び安全に関する世界的な制度)の関連設備等に関するPSCについて強化を図った。
また、アジア太平洋地域におけるPSC実施協力に関する覚書(東京MOU)に基づき、検査官研修及びセミナー開催等、PSCの実施協力体制の充実強化を図った。