平成19年度交通安全施策に関する計画
第1部 陸上交通の安全についての施策
第1章 道路交通の安全についての施策
第3節 安全運転の確保

第1部 陸上交通の安全についての施策

第1章 道路交通の安全についての施策

第3節 安全運転の確保

1 運転者教育等の充実

 運転者の自覚と責任ある行動を促し、安全に運転しようとする意識及び態度の育成を図るため、その行動特性を踏まえつつ実効ある運転者教育を推進する。

(1)運転免許を取得しようとする者に対する教育の充実
自動車教習所における教習の充実
安全運転に必要な知識及び技能を身に付けた上で安全運転を実践できる運転者を養成するため、指定自動車教習所における教習や技能検定が適切に行われるよう必要な指導監督を行うとともに、指定自動車教習所職員に対する研修等を充実し、指導員等の資質の向上を図る。また、指定自動車教習所以外の届出自動車教習所等に対して、必要な助言等を行い、教習水準の維持向上に努めることとするほか、特定届出自動車教習所に対しては、教習の課程の指定を受けた教習が適切に行われるよう指導する。
このほか、教習水準に関する情報の国民への提供に努める。
取得時講習の充実
大型第二種免許、中型第二種免許、普通第二種免許、大型免許、中型免許、普通免許、大型二輪免許、普通二輪免許又は原付免許を取得しようとする者に対する取得時講習を効果的に実施するため、必要な施設、体制の整備及び内容の充実に努める。
(2)運転者に対する再教育等の充実
 高齢者講習、違反者講習、取消処分者講習、停止処分者講習、初心運転者講習及び更新時講習の指導員の養成、資器材の整備その他の講習実施体制を整備し、効果的な講習の推進に努める。
 このほか、運転免許を取得した者に対する再教育を実施している自動車教習所等に対し、必要な指導・助言を行い、その水準の向上を図るとともに、公安委員会の認定制度の活用により、運転免許取得者教育の普及を図る。
(3)二輪車安全運転対策の推進
 平成17年4月の改正道路交通法の施行により、自動二輪車の高速道路における二人乗りが可能となったことを踏まえ、取得時講習の円滑かつ効果的な運用に努めるとともに、更新時講習等における二輪車学級、普通二輪・大型二輪免許証交付時講習の実施に努める。また、二輪車安全運転講習及び原付安全運転講習の開催や指定自動車教習所における二輪車運転者に対する実践的・効果的な教習の実施を支援する。
(4)高齢運転者対策の充実
高齢者に対する教育の充実
高齢運転者の交通事故防止を図るため、高齢者講習、更新時講習における高齢者学級等の機会を通じて、高齢運転者の交通事故の実態、高齢運転者にみられる身体機能の特性等を理解させることを内容とする交通安全教育を推進する。また、運転適性検査器材や運転シミュレーターを活用した個別安全運転指導の推進や、実車を用いた参加・体験・実践型の交通安全教育の実施に努める。特に、高齢者講習においては、身体機能の検査項目の追加、検査結果を効果的に自覚させる手法等の導入のための諸準備を行う。
※運転シミュレーター
運転者の適正を判断するための模擬運転装置。
適性検査の充実等
高齢者の交通事故の状況を詳細に分析するなどして、適性検査の充実方策の検討を行う。また、認知症の疑いがある運転者の把握に努め、安全な運転に支障のある者については運転免許の取消等の行政処分を行う。
高齢運転者標識(高齢者マーク)の表示促進  高齢運転者の安全意識を高めるため、高齢者マークの積極的な表示の促進を図る。
(5)シートベルト、チャイルドシート及び乗車用ヘルメットの正しい着用の徹底
 シートベルト、チャイルドシート及び乗車用ヘルメットの正しい着用の徹底を図るため、関係機関・団体と連携し、各種講習・交通安全運動等あらゆる機会を通じて、着用効果の啓発等着用推進キャンペーンを積極的に行うとともに、着用義務違反に対する街頭での指導取締りの充実を図る。
(6)自動車安全運転センターの業務の充実
 自動車安全運転センター安全運転中央研修所における各種の訓練施設を活用し、高度の運転技能と専門的知識を必要とする安全運転指導者、専門的技能運転者、青少年運転者等に対する参加・体験・実践型の交通安全教育の充実を図るとともに、通知、証明及び調査研究業務等の一層の充実を図る。
(7)自動車運転代行業の指導育成等
 自動車運転代行業の業務の適正な運営を確保し、交通の安全及び利用者の保護を図るため、自動車運転代行業者に対し、立入検査等を行うほか、無認定営業、損害賠償措置義務違反、無免許運転等の違法行為の厳正な取締りを実施する。
(8)独立行政法人自動車事故対策機構等による自動車運送事業等に従事する運転者に対する適性診断の充実
 事業用自動車の運転者の運転行動の改善を図るため、初任、高齢及び重大事故惹起運転者に義務付けられている国土交通大臣が認定した特別な適性診断の受診の徹底を図る。また、独立行政法人自動車事故対策機構等に対し、カウンセラーに対する定期的な教育・訓練の実施や診断機器等の改良による適性診断の一層の充実を指導する。
(9)悪質危険な運転者の早期排除等
 行政処分の迅速・的確な実施のほか、適性試験及び運転免許証の更新時における適性検査等を適正に実施し、悪質・危険な運転者の早期排除を図る。

2 運転免許制度の改善

 運転免許試験及び各種講習について、運転者の資質向上が図られるように、その内容を充実させるとともに、これらの業務に従事する者の資質や能力の向上に努める。また、高度なセキュリティ機能を有する電子技術を応用したICカード免許証については、5都県において発行が開始されたが、他の道府県においても、円滑な発行開始のための諸準備を行う。
 さらに、運転免許試験場における障害のある人等のための設備・資器材の整備及び運転適性相談活動の充実に努める。

3 安全運転管理の推進

 安全運転管理者及び副安全運転管理者に対する講習を充実するなどにより、これらの者の資質及び安全意識の向上を図るとともに、事業所内で交通安全教育指針に基づいた交通安全教育が適切に行われるよう安全運転管理者等を指導する。
 また、安全運転管理者等の未選任事業所の一掃を図り、企業内の安全運転管理体制を充実強化し、安全運転管理業務の徹底を図る。
 さらに、事業活動に関してなされた道路交通法違反等についての使用者等への通報制度を十分活用するとともに、使用者、安全運転管理者等による下命、容認違反等については、使用者等の責任追求を徹底し適正な運転管理を図る。
 事業活動に伴う交通事故防止を更に推進するため、映像記録型ドライブレコーダー等、安全運転の確保に資する車載機器等を効果的に活用した交通安全教育や安全運転管理の手法等について検討を進める。

4 自動車運送事業者の安全対策の充実

(1)自動車運送事業者に対する指導監督の充実
 労働基準法等の関係法令等の履行及び運行管理の徹底を図るため、重大事故を引き起こした事業者及び新規参入事業者等に対する監査を徹底するとともに、関係機関合同による監査・監督を実施し、不適切な事業者に対しては厳正な処分を行う。このため、効果的かつ効率的な監査を実施するための監査システムについて、事故を引き起こした事業者等を効果的に抽出する機能を拡張するとともに、引き続き監査実施体制の充実・強化を図る。
 また、関係行政機関相互の連絡会議の開催及び指導監督結果の相互通報制度等を活用することにより、過労運転に起因する事故等の通報制度の的確な運用と業界指導の徹底を図るとともに、事業者団体等関係団体を通じての指導にも努める。特に、貨物自動車運送事業者については、貨物自動車運送適正化事業実施機関を通じての過労運転・過積載の防止等運行の安全を確保するための指導の徹底を図る。
 さらに、企業全体に安全意識を浸透させ、より高い水準での安全を確保するため、事業者が経営トップから現場まで一丸となった安全管理体制を構築する取組を推進するとともに、その構築状況を国が評価する「運輸安全マネジメント評価」を着実に実施することにより、更なる輸送の安全の確保を図る。
 このほか、飲酒運転根絶に向けた指導監督の徹底に努めるとともに、交通事故要因分析検討会が平成19年3月に取りまとめた「バスの車内事故を防止するための安全対策の提言」を踏まえ、対策の実行を図るべく、関係団体等に対し指導の徹底を図る。
(2)貨物自動車運送事業安全性評価事業の促進等
 貨物自動車運送適正化事業実施機関では、貨物自動車運送事業者について、利用者がより安全性の高い事業者を選択できるようにするとともに、事業者全体の安全性向上に資するため、平成15年度から、事業者の安全性を正当に評価・認定し、公表する「貨物自動車運送事業安全性評価事業」を実施して安全性優良事業所を認定するとともに、荷主等に対する周知を図る。
(3)事故情報の多角的分析の実施
 事業用自動車の事故に関する情報の充実を図るため、自動車事故報告規則(昭26運輸省令104)に基づく事故情報の収集・分析を行う。具体的には、自動車事故報告書のオンライン申請化を進めるとともに、事故情報を効果的に分析するための事業用自動車の重大事故データベースを構築する。また、自動車運送事業に係る交通事故要因分析のための情報収集・分析を充実及び強化する。具体的には貨物自動車運送事業の事故の50%を占める追突事故のうち、運転者の過労や居眠りが原因で発生する事故について科学的に解明し、再発防止対策について検討を行う。
 さらに、事故発生時の前後の走行状態(前方映像、車両速度、急加減速)を記録する映像記録型ドライブレコーダーについて、記録された映像を活用し、自動車運送事業者が乗務員への安全運転教育の充実を図るための方策についての検討を進める。
(4)運行管理者等に対する指導講習の充実
 運行管理者等に対する指導講習について、模擬点呼の実施や運送事業者の事故防止に関する取組事例の紹介等講習内容の充実を図るとともに、視聴覚機材の活用等による効果的な講習を実施し、過労運転・過積載の防止等運行の安全を確保するための指導の徹底を図る。
(5)輸送の安全向上のための優良な労働力(トラックドライバー)確保対策の実施
 事業用貨物自動車による輸送の安全確保策の強化が急務となっていること及びトラックドライバーの不足による物流への悪影響が懸念されていることを踏まえ、悪質ドライバーの排除方策、優良ドライバーの育成・確保策等について調査検討を行う。

5 交通労働災害の防止等

(1)交通労働災害の防止
 交通労働災害防止のためのガイドライン(平6労働省通達)を事業場に周知徹底するとともに、ガイドラインに基づく対策が効果的に実施されるよう、関係団体と連携して、交通労働災害防止指導員等により、事業場に対する個別指導等を実施し、事業場における交通労働災害防止のための管理体制の確立、無理のない走行計画の策定等自動車等の適正な走行管理等の推進を図る。また、交通労働災害防止担当管理者及び自動車運転業務従事者に対する教育の推進を図る。
(2)運転者の労働条件の適正化等
自動車運転者の労働条件確保のための監督指導等
自動車運転者の労働時間などの労働条件の向上を図り、もって交通事故の防止に資するため、労働基準法(昭22法49)等の関係法令及び自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(平元労働省告示7)の遵守を図るため、監督指導を実施する。
また、必要に応じ交通関係行政機関合同による監査・監督を実施する。
相互通報制度等の活用
交通関係行政機関が、相互通報制度等を活用し、連携を密にすることにより、協力して自動車運送事業者等の労務管理及び運行管理の適正化を図る。
自主的労務改善の推進
事業主自らが労務管理の改善意欲を高めることにより、業界及び各事業場の自主的な労務改善が行われるよう自動車労務改善推進員(民間有識者に委嘱)を中心として指導を行う。

6 道路交通に関する情報の充実

(1)道路交通情報の充実
 多様化する道路利用者のニーズにこたえるため、道路利用者に対し必要な道路交通情報を提供することにより、安全かつ円滑な道路交通を確保するとともに、光ファイバーネットワーク等の新たな情報技術を活用しつつ、交通監視カメラ、路側通信システム、車両感知器、交通情報板、道路情報提供装置等の既存の情報収集・提供体制の充実を図る。
 また、予測交通情報を提供する事業者の届出制、不正確又は不適切な予測交通情報を提供した事業者に対する是正勧告措置等を規定した道路交通法(昭35法105)及び交通情報を提供する際に事業者が遵守すべき事項を定めた交通情報の提供に関する指針(平14国家公安委員会告示12)に基づき、事業者に対する指導・監督を行い、交通情報提供事業の適正化を図るなどにより、警察や道路管理者により収集された道路交通情報を活用した民間事業者による正確かつ適切な道路交通情報の提供を促進する。
 さらに、高度道路交通システム(ITS)の一環として、運転者に渋滞状況等の道路交通情報を提供する道路交通情報通信システム(VICS)の整備・拡充を積極的に図ることにより、交通の分散を図り、交通渋滞を解消し、交通の安全と円滑化を推進する。加えて、高度化された交通管制センターを中心に、個々の車両等との双方向通信が可能な光ビーコンを媒体とし、高度な交通情報提供、車両の運行管理、公共車両の優先、交通公害の減少、安全運転の支援、歩行者の安全確保等を図ることにより交通の安全及び快適性を確保しようとする新交通管理システム(UTMS)の構想に基づき、システムの充実、キーインフラである光ビーコンの整備等の施策の推進を図る。
(2)危険物輸送に関する情報提供の充実等
 危険物の輸送時の事故による大規模な災害を未然に防止し、災害が発生した場合の被害の軽減に資する情報提供の充実を図るため、イエローカードの携行、容器イエローカードの導入の推進、関係法令の遵守、運転者教育の実施等について危険物運送事業者の指導を強化する。特にイエローカードは、事故発生時に迅速、かつ的確な対応を図るための書面であることから、積載物品以外のイエローカードを携行しないなどの措置を講ずるよう指導する。
 また、危険物運搬車両の交通事故による危険物の漏えい等が発生した場合に、安全かつ迅速に事故処理等を行うため、危険物災害等情報支援システムを構築、運用しているが、登録データの充実及び危険物災害に対応可能な装備資機材等の情報の整備を図る。
(3)気象情報等の充実
 道路交通に影響を及ぼす台風、大雨、大雪、津波等の自然現象について、的確に実況監視を行い、適時適切に予報、警報等を発表・伝達して、事故の防止及び被害の軽減に努める。また、道路の降雪状況や路面状況等を収集し、道路利用者に提供する道路情報提供装置等の整備を推進する。
 また、雨及び風の詳細な立体分布データを取得することにより集中豪雨、突風の監視・予測能力向上を図るため、気象レーダーにドップラー機能を付加する更新整備を進める。局地的な激しい気象現象に伴う突風や雷に係る短時間予測情報の提供に向け、情報の利用者も参加する情報利活用検討会において新たな情報の内容を調査・検討する。高速大容量での通信・情報処理による防災気象情報の高度化と情報提供の迅速化を図るとともに、東西二中枢化により大規模災害時にも安定した気象情報の提供を実現するために気象情報通信網の整備を行う。火山活動に関する情報の質的向上を図るため、火山に関する関係機関の観測データ及び情報の共有化並びに火山活動の評価体制の強化等を引き続き行うとともに、現行の火山活動度レベルから避難等の具体的防災対応を踏まえた新しいレベルへの切り替え及び導入を順次進める。また、大規模地震に備えた防災関係機関等の初動体制の強化を目的として、地震の主要動が到達する前にその情報を伝達することを目指す「緊急地震速報」の広く国民への提供を開始する。

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