平成19年度交通安全施策に関する計画
第3部 航空交通の安全についての施策
第2節 航空機の安全な運航の確保

第3部 航空交通の安全についての施策

第2節 航空機の安全な運航の確保

1 航空運送事業者等に対する監督体制の強化

 航空会社に対する専門的かつ体系的な安全監査を引き続き実施するとともに、中小航空会社に対しても、国土交通省に監査担当部門を新設し、監視回数の増加や抜打ち立入検査を導入するなど、監督体制を強化する。
 また、引き続き経営トップから現場まで一丸となった安全管理体制の構築状況を国が評価する「運輸安全マネジメント評価」を着実に実施する。

2 予防的安全行政への転換

 事故や重大なトラブル等の発生を未然に防止するため、安全情報の収集・分析を通じて、航空会社に対する安全対策の指示や安全基準の見直し等を行うとともに、安全上のトラブルの発生原因の傾向を分析するためのシステムの構築を行うなど、予防的安全行政を推進する。また、ヒューマンエラーの防止のため、航空従事者等の教育訓練方式の在り方について、引き続き検討を行う。

3 航空従事者の技量の充実等

(1)高質な操縦要員の安定的確保
 航空需要の増加等により、今後も長期的には、航空運送事業における航空機操縦士の需要の増加が見込まれていることから、独立行政法人航空大学校において、航空運送事業者での基幹となる操縦要員を養成し、その安定的な確保を図るとともに、航空運送事業者の行う自社養成についても、十分な指導を行い、操縦要員の質を確保する。
(2)適切な医学適性管理の実施
 航空機の安全運航を確保するためには航空機乗組員の心身の状態が健全であることが極めて重要であるため、航空機乗組員の身体検査を行う医師及び医療機関等について国土交通大臣の指定制度を設けているが、これらの医師等に対して講習会を通じ判定基準の統一的な運用を指導するとともに、航空運送事業者等に対し、航空機乗組員の日常の健康管理を十分に行うよう指導する。
 また、航空機乗組員の医学適性や身体検査基準の在り方について、国際標準との整合性を図りながら、新たな医学的知見を取り入れ、より合理的な制度を確立していくことにより、航空機乗組員の需要の大幅な増加に対応することとしている。
(3)事故防止のための取組
 航空運送事業者に対し、航空従事者等に安全に関する情報を周知徹底させ、安全意識の高揚を図るよう指導する。

4 航空保安職員の教育の充実

 老朽化・狭あい化している航空保安大学校を移転整備し、将来の航空保安職員の養成の充実を図るとともに、航空衛星システムを中心とする次世代航空保安システム等の進展等に併せ、職員研修コース・カリキュラム等の見直しを行い、訓練施設の充実を図る。さらに、国際化、経済社会ニーズ等の環境変化に対応できるよう、研修制度の改善、研修体制の強化を推進する。

5 外国航空機の安全の確保

 我が国に乗り入れている外国航空機に対する立入検査(ランプ・インスペクション)を実施し、外国航空機の安全性を確認するとともに、問題点が発見された場合には、当該航空機の所属する外国政府に通知する等所要の措置を講じる。

6 小型航空機等の事故防止に関する指導等の強化

 小型航空機の事故を防止するため、法令及び関係規程の遵守、小型航空機の運航者に対する教育訓練の徹底、的確な気象状況の把握等について指導を強化するとともに、小型航空機の運航者が安全運航のために留意すべき事項について全国8会場で開催する安全運航セミナー等において周知徹底を図る。
 また、小型航空機を運航することの多い自家用操縦士に対しては、操縦士団体等が開催する安全講習会への参加を呼びかけるとともに、講師の派遣等安全講習会への積極的な支援を行い、近年普及してきたレジャー航空については、関係団体を通じ事故防止の指導を行う。
 さらに、近年発生している小型航空機の事故は、操縦士に起因すると推定される例が多いため、自家用操縦士に対する技量維持方策の見直しの必要性等について検討する。

7 スカイレジャーに係る安全対策の推進

 超軽量動力機、パラグライダー、スカイダイビング、滑空機、熱気球等のスカイレジャーの愛好者が今後も更に増加することが予想されるため、(財)日本航空協会、関係スポーツ団体等を通じた安全教育の充実、航空安全に係る情報公開、「スカイ・レジャー・ジャパン」等のイベントの機会等を活用して、スカイレジャーに係る安全対策の充実・強化を図る。

8 危険物輸送の安全基準の整備

 危険物の輸送量の増加及び輸送物質の多様化に対応すべく、国際民間航空機関(ICAO)及び国際原子力機関(IAEA)における危険物輸送に関する安全基準の整備強化についての検討に積極的に参画する。
 また、航空運送事業者等については、危険物輸送従事者に対する社内教育訓練の徹底を指導する。

9 航空事故等原因究明及び体制の強化等

 航空事故及び航空事故の兆候(重大インシデント)の原因究明の調査を迅速かつ適確に行い、航空事故防止に寄与するため、事故調査職員の研修の充実を図るとともに、各種調査用機器の整備の推進に努める。

10 航空交通に関する気象情報等の充実

(1)気象情報等の充実
 航空交通に影響を及ぼす自然現象を的確に把握し、飛行場予報・警報、空域を対象とする気象情報、航空予報図、航空路火山灰情報等の航空気象情報の質的向上と適時・適切な発表及び関係機関への迅速な伝達に努めるとともに、情報の提供体制の充実を図る。また、気象及び火山現象等に関する観測施設を適切に整備・配置し、観測体制の充実を図る。
 東京国際空港においては、非降水時における低高度のウインドシアー(離着陸に重大な影響を及ぼす地上付近の風の急変)を検知可能な、空港気象ドップラーライダーの観測を開始する。
(2)運航情報等の充実
 空港情報(使用滑走路、進入方式、気象情報等)、飛行中の航空機から報告があった情報等を体系的に整理・蓄積したデータベース等を利用して、運航者及び関係機関に対して航空機の運航に必要な情報を提供する。

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