平成20年度 交通事故の状況及び交通安全施策の現況 平成21年度 交通安全施策に関する計画(概要)
トピック
運輸安全委員会の設置について
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運輸安全委員会の設置について
国民の安全・安心が強く求められている昨今、近年の公共交通機関における事故・トラブルも踏まえ、事故調査機関に寄せられる期待の高まりには著しいものがある。このような国民の期待に的確に対応していくため、陸・海・空の事故原因究明機能の強化・総合化を図るべく、平成20年10月1日に航空・鉄道事故調査委員会と海難審判庁を改組し、運輸安全委員会と海難審判所を設置した。
我が国では、海難は原因究明と懲戒(海技従事者等の免許に係る行政処分)を海難審判手続のもとで一体的に行ってきたが、国際海事機関(IMO)において、海難の調査は、懲戒から分離した、再発防止のための「原因究明型」調査とすべきとの国際的なルールが成文化され、平成22年1月に発効する予定となった。また、航空・鉄道事故調査委員会については、かねてより国会からも、体制・機能の強化、陸・海・空にわたる業務範囲の拡大の必要性について、指摘がなされていた。
このような状況を受け、航空・鉄道事故委員会の事故原因究明のための調査対象に船舶事故を加えるとともに、懲戒については海難審判所が行うこととした。また、機能強化を図る一環として、国土交通省の「審議会等」という位置づけであった従来の航空・鉄道事故調査委員会を、国家行政組織法第3条に基づく府省並びの組織(いわゆる3条機関)である運輸安全委員会に改組することにより、職員の任免権や、独自の規則制定権を持つこととなり、より主体的な組織の統轄、政策立案・実施機能の高度化が図られた。
このように、同委員会は、独立性をより高めた専門の調査機関として、公正・中立な立場で、航空・鉄道・船舶交通の事故等について自らが証拠収集等の現場調査を行った上で事故発生の様々な要因を科学的かつ客観的に分析し、再発防止の方策を広く国民に提示する組織となった。また、以下に示すとおり、原因関係者に直接勧告を行うことができる等、事故再発防止機能の強化も図られた。
運輸安全委員会の設置の効果には、大きく以下の4つが挙げられる。
(1)原因究明機能の強化
陸・海・空の原因究明を一つの組織で行うことによって、ヒューマンファクターなど、航空、鉄道、船舶交通に共通する専門的知見が有効活用され、事故原因分析を高度化することが可能になるとともに、効率的な業務運営体制が構築された。
(2)事故再発防止機能の強化
これまでの航空・鉄道事故調査委員会においては、国土交通大臣に対してしか勧告を行えなかったが、今般、新たに原因関係者へ直接勧告を行うことができることとなった。また、勧告を行った場合においては、運輸安全委員会が、勧告を受けた原因関係者に対して報告徴収を行うことを可能とすることで、再発防止のためのフォローアップを図る仕組みが取り入れられた。さらに、原因関係者が正当な理由がなくその勧告に係る措置を講じなかったときは、その旨を公表することも可能となった。
(3)事故調査体制の充実
事故調査官の調査業務のサポート体制を充実させるとともに、事故等の分析機能の強化や、諸外国の事故調査機関との連携や開発途上国の技術的支援などについても、今後更に発展させていくための体制を構築した。
(4)被害者等への情報提供
調査の実施に当たって、被害者やその家族・遺族の心情に配慮し、調査に関する情報を適時に、かつ、適切な方法で提供する義務を負うことが法律上位置付けられた。これに基づき、重大な被害が生じた事故に係る経過報告や最終報告書の公表に際して説明会を開催するなど、適切な情報提供を行っていくこととなる。
このように、運輸安全委員会は、独立性をより高めるとともにその機能が強化され、国民の安全・安心の期待に十分応えられるよう、的確な事故原因の究明と再発防止策の提示を積極的に行うこととしている。