平成22年度 交通事故の状況及び交通安全施策の現況 平成23年度 交通安全施策に関する計画(概要)
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第9次交通安全基本計画

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第9次交通安全基本計画

 我が国における交通安全対策は、昭和46年度以降8次にわたり、5か年ごとの交通安全基本計画を作成し、それに基づき陸上、海上及び航空の各交通分野において諸施策を推進してきたところであり、平成23年3月31日に、中央交通安全対策会議(会長:内閣総理大臣、委員:関係12閣僚)は、23年度以降の5か年間の交通安全に関する施策の大綱となる第9次交通安全基本計画を作成した。
 ここでは、第9次交通安全基本計画について、その作成経緯と構成について説明するとともに、計画の基本理念及び各交通分野の概要を紹介する。

<1> 計画の作成経緯

中央交通安全対策会議専門委員会議の様子

 第9次交通安全基本計画の検討に先立ち、平成21年度に第8次交通安全基本計画の政策評価を実施した。道路交通の分野においては、目標である死者数・死傷者数の減少と、その実現に向けて実施している個別施策の関係をより明確にするため、道路交通安全対策を実施するに当たって特に重視すべき4つの視点、交通安全対策基本法に基づく講じるべき施策として取り組まれている8つの柱等を「施策群」として設定し、評価を行ったところである。
 政策評価のまとめの中で、交通事故死者数に占める高齢者の割合や高齢者が第一当事者となる事故件数が増加していること、交通事故死者数に占める歩行者が約3割(33.4%(平成20年))と高い割合であること、自転車関連事故の交通事故件数に占める割合が増加傾向(21.2%(平成20年))にあることから、今後、高齢者、歩行者、自転車利用者の交通安全対策をより一層推進することが重要である、とされた。
 このような問題認識を踏まえ、第9次交通安全基本計画については、中央交通安全対策会議に置かれた専門委員(工学、教育学、心理学等の20名の有識者)で構成される専門委員会議(座長:太田勝敏東洋大学国際地域学部教授)において、平成22年2月から、およそ1年間にわたり検討を重ねてきた。この間、22年10月には「第9次交通安全基本計画(中間案)」を公表し、意見募集手続(パブリックコメント)を実施した。また、10月22日には公聴会を開催し、公述人から直接意見を聴くなど、広く国民の声を反映することに努めた。
 以上のような検討を踏まえ、第9次交通安全基本計画が作成された。

<2> 計画の構成

 第9次交通安全基本計画は、陸上、海上及び航空の全ての交通分野において共通の基本理念を最初に記述した上で、<1>道路交通<2>鉄道交通<3>踏切道における交通<4>海上交通<5>航空交通の分野ごとに、それぞれ「基本的考え方」「目標」「対策(視点及び講じようとする施策)」を記述している。

<3> 計画の基本理念

 第9次交通安全基本計画の基本理念の概要は次のとおりである。

(1)交通事故のない社会を目指して

  • 真に豊かで活力のある社会を構築していくためには、その前提として国民の安全と安心を確保していくことが極めて重要である。
  • 人命尊重の理念に基づき、交通事故被害者の存在に思いをいたし、また交通事故がもたらす大きな社会的・経済的損失をも勘案して、究極的には交通事故のない社会を目指すべきである。

(2)人優先の交通安全思想

  • 高齢者、障害者、子ども等の交通弱者に配慮し、思いやる「人優先」の交通安全思想を基本とし、あらゆる施策を推進する。

(3)交通社会を構成する三要素

  • 「道路交通」「鉄道交通」「踏切道における交通」「海上交通」「航空交通」ごとに計画期間内に達成すべき目標を設定し、その実現を図るため、交通社会を構成する三要素(「人間」「交通機関」「交通環境」)について施策を策定し、国民の理解と協力の下、強力に推進する。

(4)ITの活用

  • 情報通信技術(IT)の活用は、人間のミスによる被害の防止等に大きく貢献することが期待できることから、高度道路交通システム(ITS)や、船舶自動識別装置(AIS)の活用等を積極的に進める。

(5)救助・救急活動及び被害者支援の充実

  • 交通事故が発生した場合の救助・救急活動の充実を図るとともに、交通安全分野における被害者支援の一層の充実を図る。

(6)参加・協働型の交通安全活動の推進

  • 国民の主体的な交通安全活動を積極的に促進するため、計画段階から国民が参加できる仕組みづくり等を地域の特性に応じて推進する。

(7)効果的・効率的な対策の実施

  • 厳しい財政事情を踏まえつつも、地域の交通実態に応じて、最大限の効果を挙げる対策に集中的に取り組むとともに、効果的な予算執行に配慮する。

(8)公共交通機関等における一層の安全確保

  • 保安監査や運輸安全マネジメント評価を充実・強化する。

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