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海上交通安全対策の今後の方向-第9次交通安全基本計画より-

<1> 基本的考え方

 一たび海上における船舶の事故が発生した場合には、人命に対する危険性が高いことはもちろん、我が国の経済と自然環境に与える影響も甚大なことがありうる。したがって、海上交通全体の安全確保の見地から、全ての関係者が連携・協力して、ハード・ソフトの両面にわたる総合的かつ計画的な安全施策を推進することが必要である。また、事故が発生した場合の乗船者等の迅速・的確な捜索・救助活動を引き続き強力に推進する。

<2> 目標

  • 我が国周辺で発生する海難隻数(本邦に寄港しない外国船舶によるものを除く。)を第8次計画期間の年平均(2,473隻)と比較して、平成27年までに、約1割削減(2,220隻以下)する。
  • 「ふくそう海域」における、航路閉塞や多数の死傷者が発生するなどの社会的影響が著しい大規模海難の発生を防止し、その発生数をゼロとする。

<3> 対策

(1)視点

 海難等の防止のための諸施策を、関係者が連携・協力して推進するとともに、特に、小型船舶海難に伴う人身事故が多い沿岸海域における迅速かつ的確な人命救助体制の充実・強化等を図る。また、海難が発生した場合には、海難の原因、発生場所、関係船舶の種別・大きさ等の諸要素の整理・分析に基づいて、事故の様々な態様に応じた、きめ細かい発生防止策を講じる。

(2)講じようとする施策

<1> 海上交通環境の整備

 船舶の大型化、高速化、海域利用の多様化、海上交通の複雑化等を踏まえ、船舶の安全かつ円滑な航行、港湾における安全性を確保するため、航路、港湾、漁港、航路標識等の整備を推進するとともに、安全に関する情報の充実及びITを活用した情報提供体制の整備を図る。

<2> 海上交通の安全に関する知識の普及

 海難を防止するためには、海事関係者や、マリンレジャー愛好者、更には広く国民一人一人の海難防止に関する意識を高める必要がある。そのため、海難防止講習会や訪船指導等のあらゆる機会を通じて、海難防止思想の普及に努める。

<3> 船舶の安全な運航の確保

 海事関係者の知識・技能の維持向上や安全な運航に係る体制を確立することにより、船舶の運航面からの安全の確保を図る。そのため、船員、水先人、旅客船事業者及び内航海運業者の資質の向上、運航管理の適正化に関し、事故の要因分析も踏まえた適切な指導・監督を充実強化するとともに、運航労務監理官による監査を推進する。

<4> 船舶の安全性の確保

 船舶の安全性を確保するため、国際的な協力体制の下、船舶の構造、設備、危険物の海上輸送及び安全管理システム等に関する基準の整備並びに検査体制の充実を図るとともに、我が国に寄港する外国船舶の構造・設備等に関する監督を推進する。

ふくそう海域における安全対策

<5> 小型船舶等の安全対策の充実

 漁船、プレジャーボート等の小型船舶等による海難が海難全体の7割を占めることから、ボートパーク等の整備、水域の秩序ある利用、ライフジャケットの着用、ヘリコプターを活用した機動救難体制の拡充等を推進する。

<6> 海上交通に関する法秩序の維持

 海上交通のふくそうする航路等における航法に関する指導取締りの強化及び無資格運航や区域外航行のような海難の発生に結び付くおそれのある事犯に関する指導取締りの実施に加え、海上輸送やマリンレジャー活動が活発化する時期等には、指導取締りを強化し、海上交通に関する法秩序の維持を図る。

<7> 救助・救急活動の充実

 ヘリコプターの機動性、高速性等を活用した機動救難体制の拡充によるリスポンスタイムの短縮、救急救命士による高度な救急救命体制の充実を図るとともに、関係省庁及び民間救助団体と連携した救助・救急活動を実施する。また、効率的な救助活動のため、精度の高い漂流予測を実施する。

<8> 被害者支援の推進

 船舶の事故により、第三者等に与えた損害に関する船主等の賠償責任に関し、保険契約締結等保障制度の充実を図る。また、被害者団体等の参画を得ながら、我が国において求められる交通事故被害者等支援の内容等について検討し、我が国の実情に沿った支援の仕組みや体制の整備に向けて必要な取組を行う。

<9> 船舶事故等の原因究明と再発防止

 船舶事故及び船舶事故の兆候(船舶重大インシデント)の原因究明調査を迅速かつ適確に行うため、調査を担当する職員に対する専門的な研修を充実させ、調査技術の向上を図るとともに、各種調査用機器の活用により分析能力の向上に努め、もって船舶事故の防止に寄与する。

<10> 海上交通の安全対策に係る調査研究等の充実

 海の流れの予測を始めとする海洋情報について、精度を向上させるための総合的な研究を実施する。

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