平成25年度　交通事故の状況及び交通安全施策の現況

第1編　陸上交通

第1部　道路交通

第1章　道路交通事故の動向

第2節　平成25年中の道路交通事故の状況

1　概況及び交通事故死者数の減少幅が縮小している背景

平成25年中の交通事故発生件数は62万9,021件で，これによる死者数は4,373人，負傷者数は78万1,494人であった（死傷者数は78万5,867人）。

前年と比べると，発生件数は３万6,117件（5.4％），死者数は38人（0.9％），負傷者数は４万3,902人（5.3％）減少した（死傷者数は４万3,940人（5.3％）減少）。

交通事故による死者数は13年連続で減少となり，ピーク時（昭和45年：１万6,765人）の３割以下となり，交通事故発生件数及び負傷者数も９年連続で減少した。

しかしながら，交通事故死者数の前年比減少率はわずかにとどまり，高齢者の死者数が平成13年以来12年ぶりに増加している。

また，死者数の指標となる致死率についても平成22年以来３年ぶりに上昇に転じており，死者数が減りにくい状況となっており交通事故情勢は厳しい状況にある（第1-4図）。

死者数の減少幅が縮小している背景としては，「高齢者人口の増加」，「シートベルト，エアバッグ等の装着率の頭打ち」，「飲酒運転による交通事故の減少幅の縮小」を挙げることができる。

(1)高齢者人口の増加

高齢者は他の年齢層に比べて致死率が約6.6倍高く，さらに，他の年齢層の人口が減少していく一方で，高齢者人口は年々増加の一途をたどっている。このことが高齢者の交通事故死者数を減少しにくくさせており，近年，全体の死者数の約半数を占める高齢者の死者数が減りにくくなることにより，全体の死者数の減少幅も縮小していると考えられる（第1-5図）。

(2)シートベルト，エアバッグ等の装着率の頭打ち

エアバッグ装着車率は平成17年までにほぼ100％，ABS装着車率はほぼ98％まで上昇したが，シートベルト着用者率は，最近は90％台前半で横ばい状態にある。これまで，シートベルト着用者率，エアバッグ装着車率等の向上が自動車乗車中の死者数減少に大きく寄与していたが，シートベルト着用者率がかつてに比べ伸び悩んでいることのほか，エアバッグ等装着車率が頭打ちとなっていることが死者数の減少幅が縮小している一因となっていると考えられる（第1-6図）。

(3)飲酒運転による交通事故の減少幅の縮小

原付以上運転者（第１当事者（交通事故の当事者のうち，過失が最も重い者又は過失が同程度の場合は被害が最も軽い者をいう。以下同じ。））の飲酒運転による事故での死亡事故率は，全体と比べると7.8倍高くなっている。近年，飲酒運転による交通事故の減少幅が縮小しており，これがかつてほど死者数が減少しない一つの要因になっていると考えられる（第1-7図）。

2　交通死亡事故等の特徴

（1）年齢層別交通事故死者数及び負傷者数

平成25年中の交通事故死者数を年齢層別にみると，65歳以上の高齢者（2,303人）が最も多く，次いで50～59歳（420人），40～49歳（395人）の順に多い。

前年と比べると，65歳以上の高齢者の死者数が増加したほか40～49歳，60～64歳，15歳以下も増加した。死者数のうち65歳以上の高齢者の死者数が占める割合は52.7％と過去最高となった（第1-8図）。

年齢層別の交通事故死者数の推移をみると，過去10年間では，16～24歳（平成15年の0.36倍）及び25～29歳（平成15年の0.31倍）が約３分の１に減少しているが，65歳以上の高齢者（平成15年の0.73倍）は，他の年齢層の減少率より低いことから，全体に占める65歳以上の高齢者の割合は年々増加し，平成15年に初めて４割を超え，平成25年は人口構成率25.1％（平成25年10月１日現在人口推計）の２倍を超える52.7％に至っており，他の年齢層と比べても高い水準にある（第1-9図）。

交通事故負傷者数を年齢層別にみると，30～39歳（14万3,958人）と40～49歳（13万6,469人）の年齢層が多く，両者で全体の35.9％を占めている。前年と比べると，全ての年齢層で減少し，その中でも16～24歳（１万151人減）と30～39歳（１万792人減）の年齢層が特に減少した（第1-10図）。

（2）状態別交通事故死者数及び負傷者数等

平成25年中の交通事故死者数を状態別にみると，歩行中（1,584人）が最も多く，次いで自動車乗車中（1,415人）となっており，両者で全体の68.6％を占めている。前年と比べると，自動車同乗中，原付乗車中，歩行中の状態で減少しており，中でも自動車同乗中（50人，12.8％減）の減少幅が最も大きい（第1-11図）。

交通事故死者数に占める割合が最も多い65歳以上の年齢層について状態別にみると，歩行中がほぼ半数（48.5％）を占め，次いで自動車乗車中（26.6％），自転車乗用中（16.4％）の順に多い（第1-12図）。

状態別の交通事故死者数の推移をみると，昭和50年以降，自動車乗車中の死者数が状態別で最多であったが，シートベルト着用率の向上などにより，平成５年（4,835人）をピークに減少に転じ，その後は，ほぼ一貫して減少しており，歩行中死者数との差は年々縮小し，平成20年には歩行中死者が最多の状態となり，平成25年も継続している（第1-13図）。

交通事故負傷者数を状態別にみると，自動車乗車中が51万239人と最も多く，全負傷者数の65.3％を占めており，次いで自転車乗用中が11万9,929人（15.3％）となっている（第1-14図）。

（3）状態別・年齢層別の交通事故死者数

平成25年中の状態別の交通事故死者数を年齢層別にみると，次のような特徴がみられる（第1-15図）。

<1>　自動車乗車中については，65歳以上の年齢層が全体の43.3％と最も多くを占めている。

<2>　自動二輪車乗車中については，40～49歳の年齢層が全体の22.2％と最も多くを占めている。

<3>　原付乗車中については，65歳以上の年齢層が全体の46.8％と最も多くを占めている。

<4>　自転車乗用中及び歩行中については，65歳以上の年齢層が，それぞれ全体の63.0％，70.5％と最も多くを占めている。

また，平成25年中の状態別・年齢層別の交通事故死者数を前年と比較すると，30～39歳自動車乗車中（36人減）と50～59歳，60～64歳の歩行中（26人減）が特に減少した。その他では，65歳以上の原付乗車中（24人減），16～24歳の自動二輪車乗車中（24人減）等が減少し，一方で65歳以上の自動車乗車中（22人増），16～24歳の自動車乗車中（21人増），65歳以上の自動二輪乗車中（15人増）等が増加した（第1-16図）。

（4）男女別・状態別の交通事故死者数

平成25年中の交通事故死者数を男女別にみると，男性は自動車乗車中が35.4％を占め，女性は歩行中が50.3％を占めた。

10年前と比べると，男女とも減少しているが，男性の減少（45.2％減）が顕著である。状態別でみると，特に自動車乗車中が大きく減少しており，男性は半数以下となった（第1-17図）。

また，年齢層別にみると，65歳以上の女性の歩行中，15歳以下の男性の歩行中と16～24歳の女性の自動車乗車中の占める割合が高い（第1-18図）。

（5）飲酒運転による交通事故発生状況

平成25年中の原付以上運転者（第１当事者）の飲酒運転による交通事故件数は4,335件（構成率0.7％）で，前年と比べると268件（5.8％）減少した。交通死亡事故発生件数は238件（構成率6.2％）で，前年と比べると18件（7.0％）減少した（第1-19図）。

飲酒運転による死亡事故は，平成14年以降，累次の飲酒運転の厳罰化，飲酒運転根絶に対する社会的気運の高まりにより大幅に減少してきたが，平成20年以後は減少幅が縮小している（第1-19図）。

（6）シートベルト着用の有無別死者数

平成25年中の自動車乗車中の交通事故死者数をシートベルト着用の有無別にみると，非着用は659人で，前年に比べて36人（5.8％）増加した（第1-20図）。

過去10年間のシートベルト非着用の交通事故死者数を乗車位置別にみると，前年に比べ運転席，後席で死者数が増加しており，これまでシートベルト着用者率の向上が自動車乗車中の死者数の減少に大きく寄与していたが，これらの着用がかつてに比べて伸び悩んでいることが死者数の減少幅を縮少させている（第1-21図）。

平成25年中の自動車乗車中の死傷者をシートベルト着用有無別の致死率でみると，非着用者の致死率は着用者の15.2倍と高くなっている（第1-22図）。

（7）チャイルドシート使用の有無別死傷者数

平成25年中の６歳未満幼児の自動車同乗中の死者数は，13人（うちチャイルドシート使用は６人）であり，重傷者数は86人であった（第1-23図）。

チャイルドシートの使用者率（６歳未満幼児の自動車同乗中死傷者に占める使用の死傷者の割合）は75.0％であり，前年と比較すると1.5ポイント上昇し，近年は漸増傾向にある。

６歳未満幼児の自動車同乗中の死亡重傷率は，10年前の1.51％から1.08％に低下している。この死亡重傷率をチャイルドシート使用有無別にみると，使用者の0.74％に対して不使用者は3.0倍の2.19％であり，チャイルドシートの使用が交通事故の被害軽減に寄与していることが認められる（第1-24図）。

平成25年中のチャイルドシート使用有無別の死亡重傷率をみると，正しく使用した場合に比べ，不使用者は3.9倍，不適正使用者は5.4倍であり，致死率をみると，不使用者は5.2倍となる（第1-25図）。

（8）月別，曜日別，昼夜別交通事故発生状況

平成25年中の交通事故発生状況を月別，曜日別，昼夜別にみると次のとおりである。

ア　月別交通事故発生状況

交通事故発生件数，交通事故死者数ともに12月がピークとなっており，年の後半に多くなる傾向が続いている（第１-26図）。

イ　曜日別交通死亡事故発生件数

曜日別一日平均交通死亡事故発生件数をみると，金曜日（12.7件），土曜日（12.2件），火曜日（11.9件）の順に多い（第1-27図）。

ウ　昼夜別交通事故発生状況

交通事故全体でみると，夜間の発生が約４分の１（27.2％）であったのに対して，交通死亡事故でみると，夜間の発生がほぼ半数であった（49.9％）。昼夜別の交通死亡事故発生件数の推移をみると，夜間死亡事故件数が昼間死亡事故件数を上回ってきたが，平成25年は昼間死亡事故件数が夜間死亡事故件数を上回った。（第1-28図）。

（9）道路形状別交通死亡事故発生件数

平成25年中の交通死亡事故発生件数を道路形状別にみると，交差点内が最も多く（33.9％），次いで一般単路（交差点，カーブ，トンネル，踏切等を除いた道路形状をいう。）（33.5％），カーブ（14.6％）の順になった（第1-29図）。

（10）第１当事者別の交通死亡事故発生件数

平成25年中の第１当事者の交通死亡事故発生件数を車種別にみると，自家用乗用車（50.2％）及び自家用貨物車（17.5％）で全体の約７割を占めている（第1-30図）。

自動車運転者が第１当事者となった交通死亡事故発生件数は，減少傾向で推移している。10年前と比較すると，16～24歳の若者は約３分の１に減少したのに対し，65歳以上の高齢者は増加している（第1-31図）。

（11）法令違反別交通死亡事故発生件数

平成25年中の交通死亡事故発生件数を法令違反別（第１当事者）にみると，安全運転義務違反が57.6％を占め，中でも漫然運転（16.1％），脇見運転（12.7％）が多い（第1-32図）。

（12）事故類型別交通死亡事故発生件数

平成25年中の交通死亡事故発生件数を事故類型別にみると，人対車両の横断中が最も多く（25.4％），次いで車両単独の工作物衝突（14.8％），車両相互の出会い頭衝突（12.9％）の順に多い（第1-33図）。

3　高速自動車国道等における交通事故発生状況

（1）概況

平成25年中の高速自動車国道等（高速自動車国道及び指定自動車専用道路（道路交通法第110条第１項の規定により国家公安委員会が指定する自動車専用道路）をいう。以下同じ。）における交通事故発生件数は１万1,520件（うち交通死亡事故208件）で，これによる死者数は227人，負傷者数は１万9,920人であった（第1-34図）。

前年と比べると，交通事故発生件数及び負傷者数は増加し，死者数も２人（0.9％）増加した。

（2）死亡事故率

高速自動車国道等は自動車専用の道路であり，原則として平面交差がないことなどから事故率は低く，高速自動車国道についてみれば，平成25年で１億走行台キロ当たりの交通事故発生件数は7.4件である。

しかし，高速自動車国道等は高速走行となるため，わずかな運転ミスが交通事故に結びつきやすく，事故が発生した場合の被害も大きく，関係車両や死者も多数に及ぶ重大事故に発展することが多い。このため，死亡事故率は，その他の道路の約2.7倍である。

（3）事故類型別及び法令違反別発生状況

平成25年中の高速自動車国道等における事故類型別交通事故発生状況をみると，車両相互の事故の割合（89.2％）が最も高い。車両単独事故の割合（9.7％）は，その他の道路（3.6％）と比較して高くなっている。

車両相互の事故では，車線上の停止車への追突が最も多く，次いで走行車への追突が多くなっている。

車両単独の事故では，防護さく等への衝突が最も多く，次いで中央分離帯への衝突が多くなっている。また，法令違反別発生状況をみると，安全運転義務違反が89.0％を占めており，その内容は前方不注視（49.2％），動静不注視（26.6％），安全不確認（12.1％），ブレーキ操作不適（6.3％）が多い。

（4）昼夜別交通事故発生状況

平成25年中の高速自動車国道等における昼夜別交通事故発生状況をみると，交通事故全体では昼間の発生（71.3％）が夜間の発生（28.7％）の約2.5倍となっているが，交通死亡事故でみると，夜間の発生（53.4％）が昼間の発生（46.6％）の約1.1倍となっており，死亡事故率では夜間（3.4％）が昼間（1.2％）の2.9倍となっている。