平成25年度 交通事故の状況及び交通安全施策の現況
第1編 陸上交通
第1部 道路交通
第2章 道路交通安全施策の現況
第1節 道路交通環境の整備
1 道路及び交通安全施設等の現況
(1)道路の現況
我が国の道路は,平成24年4月1日現在で実延長121万4,917キロメートルである。国土交通省では,安全で円滑な道路交通環境を確保するため,高規格幹線道路を始めとする道路ネットワークの体系的な整備を進めており,道路種別ごとの現況は,以下のとおりである。
ア 高規格幹線道路
高規格幹線道路は,全国的な自動車交通網を形成する自動車専用道路網のうち,道路審議会答申(昭62)に基づき建設大臣が定めたもので,高速自動車国道,本州四国連絡道路,一般国道の自動車専用道路により構成される。
(ア) 高速自動車国道
高速自動車国道(高速自動車国道に並行する一般国道自動車専用道路を含む)については,平成24年度に新たに354キロメートルの供用を開始し,24年度末時点の供用延長は9,143キロメートルとなっている。
(イ) 一般国道の自動車専用道路
一般国道の自動車専用道路(本州四国連絡道路を含む。)については,平成24年度末時点の供用延長は1,347キロメートルとなっている。
イ 地域高規格道路
地域高規格道路は,全国的な高規格幹線道路と一体となって規格の高い幹線道路網を形成するものであり,平成6年に路線の指定,10年には路線の追加指定を行い,平成23年度末時点で候補路線110路線,計画路線186路線(約6,950キロメートル),供用延長は2,219キロメートルとなっている。
ウ 都市高速道路
都市高速道路は,大都市圏における円滑な道路交通を確保するために建設されているものであり,地域高規格道路の一部を構成するものである。平成25年3月末現在の供用延長は,首都高速道路301キロメートル,阪神高速道路255キロメートル,名古屋高速道路77キロメートル,広島高速道路22キロメートル,福岡高速道路57キロメートル及び北九州高速道路50キロメートルとなっている。
エ その他の一般道路
一般国道,主要地方道及び一般都道府県道として分類される道路の実延長は,平成24年4月1日現在18万4,619キロメートルとなっている。
これに市町村道を加えると120万6,867キロメートルとなり,その改良率(幅員5.5メートル以上。以下同じ。)及び舗装率(簡易舗装を含む。以下同じ。)はそれぞれ60.3%,80.8%である。
(ア) 一般国道
一般国道の道路実延長は5万5,222キロメートル,改良率,舗装率はそれぞれ92.1%,99.4%である。
(イ) 主要地方道等
主要地方道(国土交通大臣の指定する主要な都道府県道又は市道)の道路実延長は5万7,924キロメートル,改良率,舗装率はそれぞれ77.9%,98.1%である。主要地方道以外の一般都道府県道については7万1,473キロメートルで,それぞれ61.8%,95.4%である。一般国道や主要地方道に比して,主要地方道以外の一般都道府県道の整備水準は低くとどまっている。
(ウ) 市町村道
市町村道の道路実延長は102万2,248キロメートル,改良率(幅員5.5メートル未満を含む。),舗装率は,それぞれ57.5%,77.8%であり,その整備水準は最も低くなっている。
(2)交通安全施設等の現況
交通安全施設等は,都道府県公安委員会及び道路管理者がそれぞれ整備を行っており,平成25年3月末現在の整備状況は次のとおりである。
ア 都道府県公安委員会が整備する施設
(ア) 交通管制センター
交通管制センターは,全国の主要75都市に設置されている。主な業務としては,信号機,道路標識及び道路標示の操作その他道路における交通の規制を広域にわたって総合的に行うとともに,道路交通に関する情報を収集・分析し,運転者等の道路利用者に提供している。また,隣接都府県の交通管制センターと連携し,必要に応じて交通情報の交換を行うことにより,迅速かつ的確な交通情報を提供している。
(イ) 信号機
信号機の設置基数は約20万5千基であり,その35.6%に当たる約7万3千基が交通管制センターで直接制御されている。なお,信号機のうち,押ボタン式信号機は約3万3千基であり,音響信号機,高齢者等感応信号機,歩行者感応信号機等のバリアフリー※対応型信号機は,約3万7千基である。
信号機については,集中制御化,系統化,感応化等の高度化を計画的に推進しており,交通の状況に的確に対応するため,青の時間配分の見直し,調整等を適宜行った。
また,交通実態に応じた信号機の運用等に努めるとともに,常時点検を実施し,故障等を早期に把握し修理を行うなど適正な保全管理に努めた。
(ウ) 交通情報提供装置
安全・快適な道路交通環境の整備を図ることを目的として,新交通管理システム(UTMS)構想に基づき交通管制センターの高度化,光ビーコン※,交通情報板等の交通情報提供装置の整備を図った。
(エ) 道路標識及び道路標示
都道府県公安委員会が設置し,管理する規制標識及び指示標識は約994万枚で,そのうち主要幹線道路における標識の視認性の向上等を図るための路上式の大型標識(灯火式,反射式又は自発光式)は,約62万枚である。
イ 道路管理者が整備する施設
(ア) 歩道等
歩行者・自転車・自動車の異種交通を分離することにより,歩行者,自転車利用者等の安全と快適性を確保し,併せて,道路交通の円滑化に資するため,歩道等の整備を推進しており,歩道設置済道路延長は平成24年4月1日現在で約17万3千キロメートルである。
また,安全で快適な歩行空間の拡大を図るため,歩道等の整備に際しては,高齢者や障害者等が安心して社会参加できるよう,幅が広く使いやすい歩道等の整備,既設歩道の段差の解消,勾配の改善,視覚障害者誘導用ブロックの設置等の措置を講じている。
(イ) 立体横断施設
歩行者等と車両を立体的に分離することにより,歩行者の安全確保とともに,自動車交通の安全かつ円滑な流れを確保するため,横断歩道橋及び地下横断歩道を整備している。
また,高齢者や障害者等の利用の多い駅やその周辺等において,必要に応じてスロープ※付や昇降装置の付いた立体横断施設の整備を行うなど利用者の利便性の向上を図っている。
(ウ) 道路照明
夜間において,あるいはトンネル等の明るさが急変する場所において,道路状況,交通状況を的確に把握するための良好な視環境を確保し,道路交通の安全,円滑を図るため,道路照明を整備している。
(エ) 防護柵
車両の路外,対向車線,歩道等への逸脱を防止し,乗員及び第三者への被害を最小限にとどめることや,歩行者及び自転車の転落もしくはみだりな横断を抑制することを目的として防護柵を整備している。
(オ) 道路標識
初めて訪れる観光客や外国人など,全ての道路利用者の安全かつ円滑な移動に資するため,主要な幹線道路の交差点及び交差点付近におけるルート番号等を用いた案内標識や,高齢者,身体障害者等を含む歩行者の安全かつ円滑な移動を確保する地図標識等を整備している。
(カ) 道路情報提供装置
道路交通情報をリアルタイム(即時)に提供する道路交通情報通信システム(VICS)については,ビーコン(ITSスポットを含む)の整備を図った。また,異常気象時の道路状況に関する情報等(都市間のルート選択に資する情報を含む。)を迅速かつ的確に提供するため,道路情報板2万4,761基を設置・運用している。
また,カーラジオを通してドライバーに道路の状況に関する情報を提供する路側通信システムを全国で設置・運用している。さらに,安全で円滑な道路交通を確保するため,高速道路等に,情報ターミナル※等を設置している。
なお,交通安全施設の老朽化等による第三者被害の防止を図る観点から,道路管理者による道路標識,道路照明等の総点検を実施している。
2 生活道路等における人優先の安全・安心な歩行空間の整備
地域の協力を得ながら,通学路,生活道路,市街地の幹線道路等において,歩道を整備するなど,「人」の視点に立った交通安全対策を推進した。
(1)生活道路における交通安全対策の推進
歩行者・自転車死傷事故発生割合の高い住居系又は商業系地区として指定した,「あんしん歩行エリア」(582地区)において,都道府県公安委員会及び道路管理者が連携して,歩道整備を始めとした面的かつ総合的な交通事故対策を推進した。
都道府県公安委員会においては,通過交通量の減少や走行速度の低下等を目的とした交通規制を行ったり,高齢者,障害者等が利用しやすい信号機,道路標識・道路標示を整備したりするなど,地域の特性に着目した交通事故対策を推進した。
また,市街地等における生活道路の安全を確保するため,通過交通の抑制等が必要な地区に対して,最高速度30キロメートル毎時の区域規制や路側帯の設置・拡幅等の対策を採りつつ,地区の状況に応じて,一方通行等の交通規制や物理的デバイス等の道路整備等を実施する「ゾーン30」を設定し,都道府県公安委員会と道路管理者が連携した歩行者・自転車利用者の交通安全対策を推進した。
道路管理者においては,歩道の整備等により,安心して移動できる歩行空間ネットワークを整備する経路対策,ハンプ※,クランク等車両速度を抑制する道路構造等により,歩行者や自転車の通行を優先するゾーンを形成するゾーン対策,外周幹線道路の交通を円滑化するための交差点改良や,エリア進入部におけるハンプ・狭さくの設置等によるエリア内への通過車両の抑制対策を推進した。
また,通過車両の進入を抑え,歩行者等の安全確保と生活環境の改善を図るため,歩車共存道路※,コミュニティ道路※等の整備を推進するとともに,道路標識の高輝度化・大型化・可変化・自発光化,標示板の共架,設置場所の統合・改善,道路標示の高輝度化等(以下「道路標識の高輝度化等」という。)を行い,見やすく分かりやすい道路標識・道路標示とするなど視認性の向上を図った。
また,「あんしん歩行エリア」や「ゾーン30」以外の生活道路においても,歩道を整備するほか,都道府県公安委員会と道路管理者が連携し,自動車の速度の抑制,道路の形状や交差点の存在の運転者への明示,歩車それぞれの通行区分の明示等を進め,歩車が共存する安全で安心な道路空間を創出するための取組を推進するなど,交通事故対策を推進した。
(2)通学路等の歩道整備等の推進
平成24年度に実施した通学路の緊急合同点検の結果を踏まえ,学校,教育委員会,道路管理者,警察等の関係機関が連携し,通学路における交通安全対策を推進した。
また,緊急合同点検における対策必要箇所を始め,小学校,幼稚園,保育所及び児童館等に通う児童や幼児の通行の安全を確保するため,通学路等の歩道整備,路肩のカラー舗装,防護柵設置,押ボタン式信号機や歩行者用灯器等の整備,立体横断施設の整備,横断歩道等の拡充により,通学路等の安全確保を図った。
(3)高齢者,障害者等の安全に資する歩行空間等の整備
ア 高齢者,障害者等の自立した日常生活及び社会生活を確保するため,高齢者,障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平18法91)に基づき,駅,官公庁施設,病院等を相互に連絡する道路について,平坦性が確保された幅の広い歩道を積極的に整備した。
このほか,バリアフリー対応型信号機,歩車分離式信号,エスコートゾーン,昇降装置付立体横断施設,歩行者用休憩施設,自転車駐車場,障害者用の駐車ます等を有する自動車駐車場等を整備するとともに,無電柱化を推進した。併せて,高齢者,障害者等の通行の安全と円滑を図るとともに,高齢運転者の増加に対応するため,信号灯器のLED化,道路標識の高輝度化等を推進した。
また,駅前等の交通結節点において,エレベーター等の設置,スロープ化や建築物との直結化が図られた立体横断施設,交通広場等の整備を推進し,歩きたくなるような安全で快適な歩行空間の確保を図った。
特に,高齢者,障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の重点整備地区内の主要な生活関連経路を構成する道路においては,公共交通機関等のバリアフリー化と連携しつつ,誰もが歩きやすい幅の広い歩道,バリアフリー対応の立体横断施設,道路横断時の安全を確保する機能を付加したバリアフリー対応型信号機等の整備を推進した。
さらに,押ボタンを押したり携帯用発信機を操作したりすることにより歩行者用青信号の時間が延長される高齢者等感応信号機等の整備を推進し,高齢者,障害者等の安心で安全な移動を支援した。
また,バリアフリー歩行空間が有効に利用されるよう,高齢者を始めとする歩行者等に対して,視覚障害者誘導用ブロック,歩行者用の案内標識,バリアフリーマップ等により,公共施設の位置や施設までのバリアフリー経路等を適切に案内した。
イ 横断歩道,バス停留所付近の悪質性・危険性・迷惑性の高い駐車違反に対する取締りを強化した。
また,高齢者,障害者等の円滑な移動を阻害する要因となっている歩道や視覚障害者誘導用ブロック上等の自動二輪車等の違法駐車についても,放置自転車等の撤去を行う市区町村と連携を図りつつ積極的な取締りを推進した。
(4)無電柱化の推進
歩道の幅員の確保等により歩行者の安全を図るため,「無電柱化に係るガイドライン」に沿って,安全で快適な通行空間の確保,良好な景観・住環境の形成,災害の防止,情報通信ネットワークの信頼性の向上,歴史的街並みの保全,観光振興,地域文化の復興,地域活性化等に資する道路において,地域の実情に応じた多様な手法を活用しながら無電柱化を推進した。
3 幹線道路における交通安全対策の推進
(1)事故ゼロプラン(事故危険区間重点解消作戦)の推進
交通安全に資する道路整備事業の実施に当たって,効果を科学的に検証しつつ,マネジメントサイクルを適用することにより,効率的・効果的な実施に努め,少ない予算で最大の効果を獲得できるよう,幹線道路において,「選択と集中」,「市民参加・市民との協働」により重点的・集中的に交通事故の撲滅を図る『事故ゼロプラン(事故危険区間重点解消作戦)』を推進した。
(2)事故危険箇所対策の推進
平成25年7月に特に事故の発生割合の高い幹線道路の区間等3,490箇所を指定した「事故危険箇所」について,都道府県公安委員会及び道路管理者が連携して,信号機の新設・高度化,歩車分離式信号の運用,道路標識の高輝度化等,歩道等の整備,交差点改良,視距の改良,付加車線等の整備,中央帯の設置,バス路線等における停車帯の設置及び防護柵,区画線等の整備,道路照明・視線誘導標等の設置等による集中的な交通事故対策を推進した。
(3)幹線道路における交通規制
幹線道路については,交通の安全と円滑化を図るため,道路の構造,交通安全施設等の整備状況,交通の状況等を勘案しつつ,速度規制及び追越しのための右側部分はみ出し通行禁止規制等について見直しを行い,その適正化を図った。
(4)重大事故の再発防止等
社会的に大きな影響を与える重大事故が発生した際には,都道府県警察と道路管理者等が連携して速やかに当該箇所の道路交通環境,事故発生の要因,同様の交通事故の再発を防止するために必要と認められる措置等を検証するための現場点検,現地検討会等(以下「一次点検」という。)を実施し,所要の対策を早急に講ずるとともに,一次点検の結果等について,警察本部,警察署及び道路管理者等で共有することにより同様に道路交通環境の改善を図るべき危険箇所を発見し,当該危険箇所においても同様の交通事故の再発を防止するために必要と認められる措置を講ずる「二次点検プロセス」を推進した。
(5)適切に機能分担された道路網の整備
ア 自動車,自転車,歩行者の異種交通を分離し,交通流の純化を促進するため,高規格幹線道路から居住地域内道路に至るネットワークを体系的に整備するとともに,歩道や自転車走行空間の整備を推進した。
イ 一般道路に比較して死傷事故率が低く安全性の高い高規格幹線道路等の整備やインターチェンジの増設等による利用しやすい環境を整備し,より多くの交通量を分担させることによって道路ネットワーク全体の安全性を向上させた。
ウ 通過交通の排除と交通の効果的な分散により,都市部における道路の著しい混雑,交通事故の多発等の防止を図るため,バイパス及び環状道路等の整備を推進した。
エ 幹線道路で囲まれた居住地域内や歩行者等の通行の多い商業地域内等においては,通過交通をできる限り幹線道路に転換させるなど道路機能の分化により,生活環境を向上させるため,補助的な幹線道路,区画道路,歩行者専用道路等の系統的な整備,区画道路におけるコミュニティ道路や歩車共存道路等の整備を総合的に実施した。
オ 国民のニーズに応じた効率的な輸送体系を確立し,道路混雑の解消等円滑な交通流が確保された良好な交通環境を形成するため,道路交通,鉄道,海運,航空等複数の交通機関の連携を図るマルチモーダル施策を推進し,鉄道駅等の交通結節点,空港,港湾の交通拠点へのアクセス道路の整備等を実施した。
(6)高速自動車国道等における事故防止対策の推進
高速自動車国道等においては,緊急に対処すべき交通安全対策を総合的に実施する観点から,交通安全施設等の整備を計画的に進めるとともに,渋滞区間における道路の拡幅等の改築事業,適切な道路の維持管理,道路交通情報の提供等を積極的に推進し,安全水準の維持,向上を図った。
ア 事故削減に向けた総合的施策の集中的実施
安全で円滑な自動車交通を確保するため,事故の多い地点等,対策を実施すべき箇所について事故の特徴や要因を分析し,箇所ごとの事故発生状況に対応した交通安全施設等の整備を実施した。
中央分離帯の突破による重大事故のおそれがある箇所について中央分離帯強化型防護柵の設置の推進を図るとともに,雨天時の事故を防止するための高機能舗装,夜間の事故を防止するための高視認性区画線の整備等の各種交通安全施設の整備を実施した。また,道路構造上往復の方向に分離されていない二車線の区間(暫定供用区間)については,対向車線へのはみ出しによる重大事故を防止するため,高視認性ポストコーン,高視認性区画線の設置による簡易分離施設の視認性を向上させたほか,凹凸型路面標示の設置,簡易分離施設の高度化や四車線化に伴う中央分離帯の設置等分離対策の強化を行うなどの交通安全対策を実施した。また,近年,高齢者等による逆走事故が多発していることから,道路管理者と協力して道路標識・標示の改良,逆走防止対策などを行ったほか,関係機関・団体と協力して広報啓発活動や参加・体験・実践型の交通安全教育を実施した。このほか,車両故障や交通事故により停車中の車両から降車し,又は車内に留まった運転者等が後続の通行車両等に衝突される死亡事故がここ数年増加傾向にあることから,利用者に対して「高速道路に入る前の心得」及び「車両故障や交通事故等の緊急の場合の措置」について周知するための広報啓発活動を推進した。
さらに,事故発生後の救助・救急活動を支援する緊急開口部の整備等も併せて実施するとともに,高速自動車国道におけるヘリコプターによる救助・救急活動を支援した。
イ 安全で快適な交通環境づくり
過労運転やイライラ運転を防止し,安全で快適な自動車走行に資するより良い走行環境の確保を図るため,本線拡幅,事故や故障による停車車両の早期撤去,上り坂での速度低下に対する注意喚起などの情報提供等による渋滞対策,休憩施設の混雑緩和等を推進した。あわせて,多様化する道路利用者のニーズにこたえるため,携帯電話,インターネット等広く普及している情報通信を活用してリアルタイムに道路交通情報提供を行う利用者サービスの向上等を推進した。
ウ 高度情報技術を活用したシステムの構築
道路利用者の多様なニーズにこたえ,道路利用者へ適切な道路交通情報等を提供するVICS等の整備・拡充を図るなど,高度道路交通システム(ITS)の整備を推進した。
(7)改築等による交通事故対策の推進
交通事故の多発等を防止し,安全かつ円滑・快適な交通を確保するため,道路の改築等による交通事故対策を推進した。
ア 歩行者及び自転車利用者の安全と生活環境の改善を図るため,歩道等を設置するための既存道路の拡幅,バイパスの整備と併せた道路空間の再配分,自転車の通行を歩行者や車両と分離するための自転車道の設置等の道路交通の安全に寄与する道路の改築事業を推進した。
イ 交差点及びその付近における交通事故の防止と交通渋滞の解消を図るため,交差点のコンパクト化,立体交差化等を推進した。
ウ 道路の機能と沿道の土地利用を含めた道路の利用実態との調和を図ることが交通の安全の確保に資することから,交通流の実態を踏まえつつ,沿道からのアクセスを考慮した副道等の整備,植樹帯の設置,路上駐停車対策等を推進した。
エ 商業系地区等における歩行者及び自転車利用者の安全で快適な通行空間を確保するため,これらの者の交通量や通行の状況に即して,幅の広い歩道,自転車道,コミュニティ道路,歩車共存道路等の整備を推進した。
オ 交通混雑が著しい都心地区,鉄道駅周辺地区等において,人と車の交通を体系的に分離するとともに,歩行者空間の拡大を図るため,地区周辺の幹線道路,ペデストリアンデッキ※,交通広場等の総合的な整備を推進した。
カ 歴史的街並みや史跡等卓越した歴史的環境の残る地区において,自動車交通の迂回を主目的とする幹線道路,地区に集中する観光交通等と歩行者等を分離する歩行者系道路の体系的な整備を推進することにより,歩行者・自転車利用者の安全・快適性の確保を図った。
(8)交通安全施設等の高度化
ア 道路の構造及び交通の実態を勘案して,交通事故が発生する危険性が高い場所等に信号機を設置した。また,既存の信号機については,交通状況の変化に合理的に対応できるように,集中制御化,プロファイル化,系統化,速度感応化,多現示化,右折感応化等の高度化を推進した。特に,幹線道路で夜間等横断交通が極めて少なくなる場所については,信号機の閑散時半感応化,閑散時押ボタン化を推進した。
イ 道路の構造,交通の状況等に応じた交通の安全を確保するために,道路標識の高輝度化等,高機能舗装,高視認性区画線の整備等を推進したほか,交通事故発生地点を容易に把握するとともに,自動車の位置や目的地までの距離を容易に確認できるようにするためのキロポスト(地点標)の整備を推進した。また,見通しの悪いカーブで,対向車が接近してくることを知らせる対向車接近システムの整備を推進した。
4 交通安全施設等整備事業の推進
社会資本整備重点計画に基づき,都道府県公安委員会及び道路管理者が連携し,事故実態の調査・分析を行いつつ,重点的,効果的かつ効率的に歩道整備を始めとした交通安全施設等整備事業を推進することにより,交通環境を改善し,交通事故の防止と交通の円滑化を図った。
都道府県公安委員会は,特定交通安全施設等整備事業として約372億円を計上し事業を推進した。
さらに,地方単独事業についても,交通安全対策特別交付金(約648億円)を活用するなどして交通安全対策等の一層の充実を図った。
なお,事業の実施に当たっては,事故データの客観的な分析による事故原因の検証に基づき,効果的な交通事故対策の実施に努めた。
(1)歩行者・自転車対策及び生活道路対策の推進
「あんしん歩行エリア」では,歩道整備を始めとした面的かつ総合的な交通事故対策を実施し,エリア内の死傷事故の抑止を図った。また,高齢者,障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律に基づき,駅,官公庁施設,病院等を相互に連絡する道路について,バリアフリー対応型信号機の整備や歩道の段差解消,勾配の改善等歩行空間のバリアフリー化を推進した。
(2)幹線道路対策の推進
交通安全に資する道路整備事業の実施に当たって,効果を科学的に検証しつつ,マネジメントサイクルを適用することにより,効率的・効果的な実施に努め,少ない予算で最大の効果を獲得できるよう,幹線道路において,「選択と集中」,「市民参加・市民との協働」により重点的・集中的に交通事故の撲滅を図る『事故ゼロプラン(事故危険区間重点解消作戦)』を推進するとともに,事故危険箇所について,交差点改良や歩道を含めた交通安全施設等を集中的に整備することにより,対策実施箇所の死傷事故の抑止を図った。また,大都市圏等の特に違法駐車が著しい幹線道路において,違法駐車抑止システム等の運用等による総合的な駐車対策を推進した。
(3)交通円滑化対策の推進
交通安全に資するため,信号機の高度化等を推進するほか,駐車対策を実施することにより,交通容量の拡大を図り,交通の円滑化を推進するとともに,自動車からの二酸化炭素排出の抑止を推進した。
(4)IT化の推進による安全で快適な道路交通環境の実現
ア 交通に関する情報の収集,分析及び伝達,信号機等の操作等の交通規制を広域的かつ総合的に行うため,交通管制システムの充実・高度化を図った。
イ 幹線道路において,交通の変動実態を的確に把握し,予想される変動に対応した信号制御を行うため,集中制御化,プロファイル化,系統化等の信号機の高度化を図った。また,交通流の変動にきめ細かに対応した信号制御等を可能とする交通管制システムの高度化を図った。
ウ 光ビーコンの整備拡充,交通管制センターの高度化等のUTMSの推進やITSスポットの整備といった情報収集・提供環境の拡充等により,道路交通情報提供の充実等を推進した。
(5)道路交通環境整備への住民参加の促進
安全な道路交通環境の整備に当たっては,道路を利用する人の視点を生かすことが重要であることから,地域住民や道路利用者の主体的な参加の下に交通安全施設等の点検を行う交通安全総点検を積極的に推進し,また,道路利用者等が日常感じている意見を受け付ける「標識BOX※」,「信号機BOX※」,「道の相談室」等を活用することにより,交通安全施設等の適切な維持管理等の道路交通環境の整備に反映した。
また,交通の安全は,住民の安全意識により支えられることから,安全で良好なコミュニティの形成を図るために,交通安全対策に関して住民が計画段階から実施全般にわたり積極的に参加できるような仕組みを作り,行政と市民の連携による交通安全対策を推進した。
さらに,安全な道路交通環境の整備に係る住民の理解と協力を得るため,事業の進捗状況,効果等について積極的な公表を推進した。
(6)連絡会議等の活用
都道府県警察と道路管理者が設置している「都道府県道路交通環境安全推進連絡会議」やその下に設置されている「アドバイザー会議」を活用し,学識経験者のアドバイスを受けつつ施策の企画,評価,進行管理等に関して協議を行い,的確かつ着実に安全な道路交通環境の実現を図った。
5 効果的な交通規制の推進
道路における危険を防止し,その他交通の安全と円滑を図り,道路網全体の中でそれぞれの道路の社会的機能,道路の構造,交通安全施設等の整備状況,交通流・量の状況等地域の実態等に応じ,速度規制を始めとする既存の交通規制を見直すなど,規制内容をより合理的なものにするよう努め,効果的な交通規制を推進した。
(1)地域の特性に応じた交通規制
幹線道路では,駐停車禁止,転回禁止,指定方向外進行禁止,進行方向別通行区分等交通流を整序化するための交通規制を,また,生活道路では,最高速度30キロメートル毎時の区域規制や路側帯の設置・拡幅等の対策を行う「ゾーン30」を推進したほか、一方通行,指定方向外進行禁止等の通過交通を抑制するための交通規制や歩行者用道路,車両通行止め,路側帯の設置・拡幅等の歩行者及び自転車利用者の安全を確保するための交通規制を実施した。
(2)安全で機能的な都市交通確保のための交通規制
安全で機能的な都市交通を確保するため,計画的に都市部における交通規制を推進し,交通流・量の適切な配分・誘導を図った。また,路線バス,路面電車等大量公共輸送機関の安全・優先通行を確保するための交通規制を積極的に推進した。
(3)より合理的な交通規制の推進
道路整備,地域開発,商業施設の新設,高速道路料金の改定等による交通事情の変化を的確に把握して,ソフト・ハード両面での総合的な対策を実施するとともに,地域の交通実態を踏まえ,最高速度,駐車,信号制御等の交通規制について点検・見直しを推進した。
速度規制については,平成21年及び22年に全面改正された新たな最高速度規制基準に基づき,最高速度規制が交通実態にあった合理的なものとなっているかどうかの点検及び見直しを推進し,駐車規制については、パーキング・メーター等の点検を行い、利用率の低いものについては撤去の上、自転車レーンの整備等、既存の道路空間を有効活用するための見直しを推進した。また、信号制御については,歩行者,自転車の視点で信号をより守りやすくするために,歩行者の横断実態等を踏まえた信号表示の見直しを推進した。
6 自転車利用環境の総合的整備
(1)安全で快適な自転車利用環境の創出
クリーンかつエネルギー効率の高い持続可能な都市内交通体系の実現に向け,自転車の役割と位置付けを明確にしつつ,交通状況に応じて,歩行者・自転車・自動車の適切な分離を図り,歩行者と自転車の事故等への対策を講じるなど,安全で快適な自転車利用環境を創出する必要がある。このため,国土交通省と警察庁は共同で「安全で快適な自転車利用環境の創出に向けた検討委員会」を開催し,同検討委員会から受けた提言を踏まえ,平成24年11月,道路管理者や都道府県警察が自転車ネットワーク計画の作成やその整備,通行ルールの徹底等を進めるため,「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」を策定した。また,ガイドラインを踏まえ,道路管理者や警察等関係機関が連携して,自転車道,自転車専用レーン等の自転車ネットワークの整備を推進した。
(2)自転車等の駐車対策の推進
自転車等の駐車対策については,その総合的かつ計画的な推進を図ることを目的として,「自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐車対策の総合的推進に関する法律」(昭55法87)による施策を総合的に推進しており,自転車等駐車対策協議会の設置,総合計画の策定を促進するとともに,自転車等の駐車需要の多い地域及び今後駐車需要が著しく多くなることが予想される地域を中心に,交通安全施設等整備事業,社会資本整備総合交付金による自転車等の駐車場整備事業を推進した。また,大量の自転車等の駐車需要を生じさせる施設について自転車等駐車場の設置を義務付ける附置義務条例の制定の促進を図っている。
鉄道の駅周辺等における放置自転車等の問題の解決を図るため,自転車等駐車対策協議会の積極的な運営と総合計画の策定の促進を図ること等を通じて,地方公共団体,道路管理者,都道府県警察,鉄道事業者等が適切な協力関係を保持した。また,効率的・総合的な自転車等駐車場の整備を推進するとともに,自転車利用者のニーズに基づく「量」と「質」による対策の推進を目的に,平成24年11月,「自転車等駐車場の整備のあり方に関するガイドライン」を策定した。
特に,高齢者,障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律に基づき,市町村が定める重点整備地区内における生活関連経路を構成する道路においては,高齢者,障害者等の移動等の円滑化に資するため,自転車等の違法駐車に対する指導取締りの強化,広報啓発活動等の違法駐車を防止する取組及び自転車等駐車場の整備を重点的に推進した。
7 高度道路交通システムの活用
最先端の情報通信技術(IT)等を用いて,人と道路と車とを一体のシステムとして構築し,安全性,輸送効率及び快適性の向上を実現するとともに,渋滞の軽減等の交通の円滑化を通じて環境保全に寄与することを目的とした高度道路交通システム(ITS)を引き続き推進している。そのため,ITS全体構想及び平成22年5月策定の新たな情報通信技術戦略に基づき,産・官・学が連携を図りながら,研究開発,フィールドテスト※,インフラの整備,普及及び標準化に関する検討等の一層の推進を図るとともに,ITS世界会議等における国際情報交換,国際標準化等の国際協力を積極的に進めた。
(1)道路交通情報通信システムの整備
安全で円滑な道路交通を確保するため,リアルタイムな渋滞情報,所要時間,規制情報等の道路交通情報を提供するVICSの整備・拡充を推進するとともに,高精度な情報提供の充実及び対応車載機の普及を図った。
また,詳細な道路交通情報の収集・提供のため,光ビーコン,ITSスポット等のインフラの整備を推進するとともに,インフラからの情報を補完するものとして,リアルタイムの自動車走行情報(プローブ情報※)を含む広範な道路交通情報を集約・配信し,道路交通管理にも活用するグリーンITSについて産・官・学の連携の下,実現を図った。
(2)新交通管理システムの推進
高度化された交通管制センターを中心に,個々の車両等との双方向通信が可能な光ビーコンを媒体として,交通流・量を積極的かつ総合的に管理することにより,高度な交通情報提供,車両の運行管理,公共車両の優先通行,交通公害の減少,安全運転の支援,歩行者の安全確保等を図り,交通の安全及び快適性を確保しようとするUTMSの構想に基づき,システムの充実,キーインフラである光ビーコンの整備等の施策の推進を図った。
また,平成21年度から4か年にわたり,高度な交通情報の提供,信号制御等を行うため,自動車からのプローブ情報を光ビーコンを用いて収集し,分析,活用するモデル事業を実施し,平成25年度は4か年のモデル事業の結果を踏まえ、プローブ情報を活用したよりきめ細かな信号制御システムの実用化に向けたモデル事業を茨城県及び兵庫県で実施した。
平成25年10月14日から18日の間に東京で開催された「第20回ITS世界会議」において,安全運転支援システム(DSSS)等の体験乗車コーナーや運転シミュレーターによる疑似体験コーナーを設けるなど,UTMSの推進状況について紹介した。
(3)交通事故防止のための運転支援システムの推進
ITSの高度化により交通の安全を高めるため,自動車単体では対応できない事故への対策として,新たな情報通信技術戦略に基づき,技術開発や道路インフラの整備を行うなど,情報通信技術を活用した安全運転支援システムの導入・整備を官民が一体となって推進した。
具体的には,路側インフラからの情報に加えて自車の位置,速度等の情報に基づき,車載機が運転者への情報提供の要否及びタイミングを判断し,音声や画像等で運転者に注意を促すDSSSについて,東京都及び神奈川県における交通事故発生件数の多い交差点を対象として整備し,平成23年7月1日からサービスを開始している。
平成23年度より産・学・官連携で行っている第5期先進安全自動車(ASV)推進計画において,これまでに実用化が進められた自律検知型安全運転支援システムの更なる高度化の促進に関する検討,次世代の通信利用型安全運転支援システムの開発の促進に関する検討を行った。
また,地上デジタル放送移行により空き周波数帯となった700MHz帯の一部について,安全運転支援に資する車車間・路車間通信を対象とし た無線通信システムの技術基準を検討し,平成23年12月に電波法関係の制度整備を行った。平成25年4月より,全国で利用可能となった。
(4)スマートウェイの推進
自動料金支払いシステム(ETC)の通信技術をベースとしたITSスポットの活用によるスマートウェイの推進を官民一体となって展開していく。ITSスポットの活用により,ETCに加え,広範囲の渋滞データで適切にルート選択を可能とするダイナミックルートガイダンス,ドライブ中のヒヤリをなくす事前の注意喚起を実現する安全運転支援等のサービスを実現した。
(5)道路運送事業に係る高度情報化の推進
環境に配慮した安全で円滑な自動車の運行を実現するため,道路運送事業においてITS技術を活用し,公共交通機関の利用促進に資するバスロケーションシステム・ICカードシステムの導入を推進した。
8 交通需要マネジメントの推進
依然として厳しい道路交通渋滞を緩和し,道路交通の円滑化を図るため,バイパス・環状道路の整備や交差点の改良,付加車線の設置等の交通容量の拡大策,交通管制の高度化等に加えて,パークアンドライド※の推進,ツイッター・インターネット等情報通信ツールの活用,相乗りの促進,時差通勤・通学,フレックスタイム(自由勤務時間)制の導入,ITS利用の促進,路肩活用等の柔軟な車線運用等により,多様化する道路利用者のニーズを的確に捉え,輸送効率の向上や交通量の時間的・空間的平準化を図る交通需要マネジメント(TDM)を推進した。併せて広報・啓発活動を行い,その定着化を図った。
(1)公共交通機関利用の促進
道路交通混雑が著しい一部の道路について,バス専用・優先通行帯規制の実施,ハイグレードバス停※や公共車両優先システム(PTPS)の整備,パークアンドバスライドの導入等バスの利用促進を図った。
また,路面電車,モノレール等の公共交通機関の整備を支援し,鉄道,バス等の公共交通機関への転換による円滑な道路交通の実現を図った。
さらに,鉄道,バス事業者による運行頻度・運行時間の見直し,乗り継ぎ改善等によるシームレス※な公共交通の実現を図ること等により,利用者の利便性の向上を図るとともに,鉄道駅・バス停までのアクセス(交通手段)確保のために,パークアンドライド駐車場,自転車道,駅前広場等の整備を促進し,交通結節機能を強化した。
(2)自動車利用の効率化
乗用車の平均乗車人数の増加及び貨物自動車の積載率向上等により効率的な自動車利用を促進するため,自動車相乗りの促進,共同配送システムの構築,車両運行管理システム(MOCS)の運用等による物流効率化等の促進を図った。
9 災害に備えた道路交通環境の整備
(1)災害に備えた道路の整備
地震,豪雨,豪雪,津波等の災害が発生した場合においても安全で安心な生活を支える道路交通を確保する必要があり,地震発生時の応急活動を迅速かつ安全に実施できる信頼性の高い道路ネットワークを確保するため,緊急輸送道路上にある橋梁の耐震対策を推進した。
また,豪雨・豪雪時等においても,安全・安心で信頼性の高い道路ネットワークを確保するため,道路斜面等の防災対策や災害の恐れのある区間を回避・代替する道路の整備を推進するとともに,津波に対しては,津波による人的被害を最小化するため,道路利用者への早期情報提供,迅速な避難を行うための避難路の整備及び津波被害発生時においても緊急輸送道路を確保するため,津波浸水域を回避する高規格幹線道路等の整備を推進した。
また,地震・津波等の災害発生時に,避難場所等となる「道の駅」について防災拠点としての活用を推進した。
(2)災害に強い交通安全施設等の整備
地震,豪雨,豪雪等による災害が発生した場合においても安全な道路交通を確保するため,交通管制センター,交通監視カメラ,各種車両感知器,交通情報板等の交通安全施設の整備及び通行止め等の交通規制を迅速かつ効果的に実施するための道路災害の監視システムの開発・導入,交通規制資機材の整備を推進するとともに,災害発生時の停電に起因する信号機の機能停止による混乱を防止するため,予備電源として信号機電源付加装置の整備を推進した。また,オンライン接続された各都道府県警察の交通管制センターからの詳細な交通情報をリアルタイムに警察庁に集約する広域交通管制システムを災害時の広域的な交通管理に活用した。
(3)災害発生時における交通規制
災害対策基本法(昭36法223)による通行禁止等の交通規制を的確かつ迅速に行うため,災害の状況や交通規制等に関する情報を提供する交通情報板等の整備を推進した。
(4)災害発生時における情報提供の充実
災害発生時において,道路の被災状況や道路交通状況を迅速かつ的確に収集・分析・提供し,復旧や緊急交通路,緊急輸送道路等の確保及び道路利用者等への道路交通情報の提供等に資するため,地震計,交通監視カメラ,車両感知器,道路情報提供装置,道路管理情報システム等の整備を推進するとともに,インターネット等ITを活用した道路・交通に関する災害情報等の提供を推進した。
10 総合的な駐車対策の推進
違法駐車は,幹線道路等における交通渋滞を悪化させる要因となるだけでなく,交通事故の原因ともなっており,また,歩行者や自転車等の安全な通行の障害となるほか,緊急自動車の活動に支障を及ぼすなど住民の生活環境を害し,国民生活全般に大きな影響を及ぼしている。
平成25年中の駐車車両への衝突事故の発生件数は,1,200件で,58人が死亡したほか,110番通報された要望・苦情・相談のうち,駐車問題に関するものが15.7%を占めた。
(1)秩序ある駐車の推進
ア 地域住民等の意見・要望を踏まえつつ,道路環境,交通実態,駐車需要等の変化に対応したきめ細かな駐車規制の見直しを図った。また,短時間駐車の需要が高いと認められる道路の部分については,貨物車,二輪車の駐車需要にも配意した時間制限駐車区間規制を実施した。
イ 違法な駐停車が交通渋滞等交通に著しい迷惑を及ぼす交差点においては,違法駐車抑止システムを活用し,駐停車をしようとしている自動車運転者に対して音声で警告を与えることなどにより,違法な駐停車を抑制して交通の安全と円滑化を図った。
ウ 都市部の交通渋滞を緩和するため,特に違法駐車が著しい幹線道路において,きめ細かな駐車規制の実施や駐車対策のための各種システムを運用したほか,違法駐車防止指導員等を配置して指導・広報・啓発を行い,悪質性・危険性・迷惑性の高い違法駐車に対する取締りを強化した。
(2)違法駐車対策の推進
取締り活動ガイドラインに沿ったメリハリのある取締りの推進,駐車監視員による放置車両の確認等に関する事務の適正かつ円滑な運用,放置違反金制度による使用者責任の追及,悪質な運転者の責任追及の徹底等により,地域の駐車秩序の確立を図った。平成25年中の違法駐車の取締り件数は170万458件(告知・送致件数と放置違反金納付命令件数の合計)であった。
(3)駐車場等の整備
路上における無秩序な駐車を抑制し,安全かつ円滑な道路交通を確保するため,駐車規制及び違法駐車の取締りの推進と併せ,次の施策により駐車環境の整備を推進した。
ア 駐車場整備に関する調査を推進し,自動車交通が混雑する地区等において,駐車場整備地区の指定を促進するとともに,当該地区において計画的,総合的な駐車対策を行うため,駐車場整備計画の策定を推進した。
イ 大規模な建築物に対し駐車場の整備を義務付ける附置義務条例の制定の促進等を行うとともに,民間駐車場の整備を促進した(第1-2表)。
都市計画駐車場 | 届出駐車場 (注2) |
附置義務施設 (注3) |
|
---|---|---|---|
箇所 | 459 | 8,788 | 66,561 |
台数 | 119,214 | 1,664,443 | 2,949,036 |
ウ 郊外部からの過度な自動車流入を抑制し,都心部での交通の混雑を回避するため,パークアンドライドの普及のための駐車場等の環境整備を推進した。
(4)違法駐車締め出し気運の醸成・高揚
違法駐車の排除及び自動車の保管場所の確保等に関し,国民への広報・啓発活動を行うとともに,関係機関・団体との密接な連携を図り,地域交通安全活動推進委員の積極的な活用等により,住民の理解と協力を得ながら違法駐車締め出し気運の醸成・高揚を図った。
(5)ハード・ソフト一体となった駐車対策の推進
必要やむを得ない駐車需要への対応が十分でない場所を中心に,地域の駐車管理構想を見直し,自治会,地元商店街等地域の意見要望を十分に踏まえた駐車規制の点検・改善,道路利用者や関係事業者等による自主的な取組の促進,地方公共団体や道路管理者に対する路外駐車場や路上荷捌きスペース整備の働き掛け,違法駐車の取締り,積極的な広報・啓発活動等ハード・ソフト一体となった総合的な駐車対策を推進した。
11 道路交通情報の充実
(1)情報収集・提供体制の充実
多様化する道路利用者のニーズに応えるため,道路利用者に対し必要な道路交通情報を提供することにより,安全かつ円滑な道路交通を確保するとともに,光ファイバーネットワーク等の新たな情報技術を活用しつつ,交通監視カメラ,路側通信システム,車両感知器,交通情報板等の既存の情報収集・提供体制の充実を図った。
また,平成23年度より,一部道路の道路画像・道路気象情報について集約を行うことにより,情報提供事業者の道路交通情報の提供の充実を図った。
(2)ITSを活用した道路交通情報の高度化
ITSの一環として,運転者に渋滞情報等の道路交通情報を提供するVICSの整備・拡充を積極的に図ることにより,交通の分散を図り,交通渋滞を解消し,交通の安全と円滑化を推進した。加えて,高度化された交通管制センターを中心に,個々の車両等との双方向通信が可能な光ビーコンを媒体とし,高度な交通情報提供,車両の運行管理,公共車両の優先,交通公害の減少,安全運転の支援,歩行者の安全確保等を図ることにより交通の安全及び快適性を確保しようとするUTMSの構想に基づき,システムの充実,キーインフラである光ビーコンの整備等の施策の推進を図った。また,平成23年,高速道路上を中心にITSスポットを全国約1,600箇所に設置し,広域な道路交通情報や事故多発地点における注意喚起や画像等の安全運転支援情報の提供を開始することにより,道路交通情報の高度化を図った。
(3)適正な道路交通情報提供事業の促進
予測交通情報を提供する事業者の届出制,不正確又は不適切な予測交通情報を提供した事業者に対する是正勧告措置等を規定した道路交通法(昭35法105)及び交通情報を提供する際に事業者が遵守すべき事項を定めた交通情報の提供に関する指針(平14国家公安委員会告示12)に基づき,事業者に対する指導・監督を行い,交通情報提供事業の適正化を図るなどにより,警察や道路管理者により収集された道路交通情報を活用した民間事業者による正確かつ適切な道路交通情報の提供を促進した。
(4)分かりやすい道路交通環境の確保
分かりやすく使いやすい道路交通環境を整備し,安全で円滑な交通の確保を図るため,交通監視カメラ,各種車両感知器等の整備,道路・交通等に関する情報(異常気象に関する情報や都市間のルート選択に資する情報を含む。)を迅速かつ的確に提供する道路情報提供装置,交通情報板,路側通信設備等の整備,時間別・車種別等の交通規制の実効を図るための視認性・耐久性に優れた大型固定標識及び路側可変標識の整備を推進した。
12 交通安全に寄与する道路交通環境の整備
(1)道路の使用及び占用の適正化等
ア 道路の使用及び占用の適正化
工作物の設置,工事等のための道路の使用及び占用の許可に当たっては,道路の構造を保全し,安全かつ円滑な道路交通を確保するために適正な運用を行うとともに,道路使用許可条件の履行,占用物件等の維持管理の適正化について指導した。
イ 不法占用物件の排除等
道路交通に支障を与える不法占用物件等については,実態把握,強力な指導取締りによりその排除を行い,特に市街地について重点的にその是正を実施した。
さらに,道路上から不法占用物件等を一掃するためには,地域における道路の適正な利用についての認識を高める必要があることから,沿道住民等に対して道路占用制度の周知を行った。
なお,道路工事調整等を効果的に行うため,図面を基礎として,デジタル地図を活用し,データ処理を行うコンピュータ・マッピング・システムの更なる充実及び活用の拡大を図った。
ウ 道路の掘り返しの規制等
道路の掘り返しを伴う占用工事について,工事時期の平準化及び工事に伴う事故・渋滞の防止のため,関係者間の工事調整による共同施工,年末年始及び年度末の工事抑制等の取組を実施した。
さらに,掘り返しを防止する抜本的対策として共同溝等の整備を推進した。
(2)休憩施設等の整備の推進
過労運転に伴う事故防止や近年の高齢運転者等の増加に対応して,都市間の一般道路において追越しのための付加車線や「道の駅」等の休憩施設等の整備を推進した。
(3)子どもの遊び場等の確保
ア 都市公園の整備
都市における児童の遊び場が不足していることから,路上における遊びや運動による交通事故防止のため,街区公園,近隣公園,運動公園など,都市公園法(昭31法79)に基づき設置される都市公園の整備を促進した(第1-3表)。
年度 | 住区基幹公園 | 都市基幹公園 | 緑道 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
箇所数 | 面積 | 箇所数 | 面積 | 箇所数 | 面積 | |
箇所 | ha | 箇所 | ha | 箇所 | ha | |
平成20年度 | 84,482 | 31,506 | 2,054 | 36,338 | 819 | 903 |
21 | 85,953 | 32,014 | 2,096 | 36,316 | 827 | 887 |
22 | 87,057 | 32,431 | 2,105 | 36,598 | 834 | 892 |
23 | 88,118 | 32,658 | 2,115 | 37,201 | 867 | 901 |
24 | 89,198 | 32,915 | 2,127 | 37,369 | 887 | 905 |
イ 交通公園の整備
児童が遊びながら交通知識等を体得できるような各種の施設を設置した交通公園は,全国で開設されており,一般の利用に供されている。
ウ 児童館,児童遊園等の整備
児童館及び児童遊園は,児童福祉法(昭22法164)による児童厚生施設であり,児童に健全な遊びを与えてその健康を増進し,情操を豊かにすることを目的としているが,児童の交通事故防止にも資するものである。平成24年10月1日現在,児童館が4,617か所,児童遊園が3,065か所それぞれ設置されている。児童遊園は,児童の居住するすべての地域を対象に,その生活圏に見合った設置が進められており,特に児童の遊び場が不足している場所に優先的に設置されている。
このほか,幼児等が身近に利用できる小規模な遊び場(いわゆる「ちびっ子広場」)等が地方公共団体等により設置されている。
エ 学校等の開放
子どもの安全な遊び場の確保のために,小学校,中学校等の校庭,体育施設等の開放を促進した。
(4)道路法に基づく通行の禁止又は制限
道路の構造を保全し,又は交通の危険を防止するため,道路の破損,欠壊又は異常気象等により交通が危険であると認められる場合及び道路に関する工事のためやむを得ないと認められる場合には,道路法(昭27法180)に基づき,迅速かつ的確に通行の禁止又は制限を実施した。
また,危険物を積載する車両の水底トンネル※等の通行の禁止又は制限及び道路との関係において必要とされる車両の寸法,重量等の最高限度を超える車両の通行の禁止又は制限に対する違反を防止するため,警察等関係機関と連携し,違反車両の取締りを実施した。
(5)地域に応じた安全の確保
積雪寒冷特別地域においては,冬期の安全な道路交通を確保するため,冬期積雪・凍結路面対策として適時適切な除雪や凍結防止剤散布の実施,交差点等における消融雪施設等の整備,流雪溝,チェーン着脱場等の整備を推進した。
さらに,安全な道路交通の確保に資するため,気象,路面状況等を収集し,道路利用者に提供する道路情報提供装置等の整備を推進した。
また,冬期の安全で快適な歩行空間を確保するため,中心市街地や公共施設周辺等における除雪の充実や消融雪施設の整備等の冬期バリアフリー対策を実施した。