平成25年度 交通事故の状況及び交通安全施策の現況

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第3編 航空交通

第2章 航空交通安全施策の現況

第2節 航空交通環境の整備

1 予防的安全対策の推進

空港及び航空官署における安全対策については,安全に関する方針及び目標を設定するとともに,目標達成のための管理計画の策定及び実施に係る状況の監視等,必要な措置を講じていくことにより系統だった包括的,継続的な管理手法(安全管理システム(SMS))の定着に取り組み,国際的な責務を果たすよう推進している。また,安全管理体制を監視するための安全指標及び目標値を設定する等,新たな国際標準に対応するための検討を進めている。


2 航空交通の安全性の向上及びサービスの充実
(1)首都圏空港・空域における容量拡大への取組

東京国際空港の再拡張事業等による交通量の増加により,関東上空空域の更なる交通混雑が見込まれることから,広域航法(RNAV)を効果的に活用した関東空域の再編を行うことにより,空域の容量拡大や運航効率の向上等を図り,対応している。


(2)航空交通管理(ATM)センターにおける取組

航空交通量の増大に対応するため,シミュレーションを用いた空域構成の最適化や自衛隊等の訓練空域の弾力的な利用を進めるとともに,交通流や交通量の予測や制御性の向上等,航空交通管理センターの機能を充実・強化し,きめ細やかな交通整理を行うことで全国の航空路の混雑緩和や空中待機等の減少を図っている。


(3)空域の安全性評価・監視体制の強化

航空機間の垂直間隔の最低基準を短縮する運用の安全性に関する評価の精度向上のため,航空機の飛行高度を実測する高度監視装置及び高度維持性能を解析する空域安全性評価システムによる監視を行い,首都圏空港の増枠による航空交通量の増大に対しても,継続して空域の安全性の確保を図っている。


(4)広域航法(RNAV)の整備

航空機の安全で効率的な運航を確保するため,広域航法(RNAV)の導入を促進している。また,飛行距離の短縮や就航率の向上等の効果が期待できる新たな技術の広域航法(RNAV)経路を, 運航者と導入効果などを検討しつつ, 必要な空港に順次展開している。


(5)小型航空機運航環境の整備

低高度を飛行する小型航空機の安全運航に必要な悪天気象情報を提供するため,広域対空送受信サイトと同じ周波数の送受信局を増設し,琵琶湖北部を始め小型航空機の運航者要望が特に高い地域での低高度における通信覆域の改善を図っている。また,ヘリコプター専用の低高度RNAV経路を設定するなど,悪天候下における消防防災活動等を円滑に実施するために,小型航空機の飛行特性に合わせた計器飛行方式(IFR)飛行の実現に向けた環境整備を行っている。

さらに,海上部及び山間部における送電線への接触事故等を未然に防止するため,特定された地区の航空障害物件への航空障害標識の適切な設置を促すとともに運航者に対して物件情報の提供を実施している。


(6)飛行検査体制の充実

航空交通の安全を確保するため,飛行検査機を用いて日本全国の航空保安施設等が正常に機能しているか確認する飛行検査及びRNAV方式等の飛行方式が適切で安全なものかを検証する飛行検証を実施した。


(7)将来の航空交通システムの構築に向けた取組

長期的に増大が見込まれる航空交通需要や多様化するニーズへの対応が求められるとともに,国際民間航空機関(ICAO)や欧米において世界的に相互運用性のある航空交通管理(ATM)に関する計画が策定・進められていることから,我が国においても平成37年を見据えた将来の航空交通システムに関する長期ビジョン(CARATS)を策定した。CARATSにおいては,高度に統合されたシステムにより出発から到着までの航空機の軌道を最適化する航空交通管理への変革を中核としており,平成23年3月にその実現に向けたロードマップも策定して以降,実施フェーズとして産官学連携のもとCARATSの実現に向けた取組を推進している。平成25年度も引き続きロードマップに記載された具体的な施策の導入計画の検討を行ったほか,CARATSで設定している目標に関する指標の分析・検討や、研究開発推進に向けた検討等を行った。


3 航空交通の安全確保等のための施設整備の推進
(1)航空保安システムの整備

高密度空域における航空機の監視機能の強化を図るため,二次監視レーダーモードS(SSRモードS)の整備を推進している。

航空交通管制情報処理システムの更新時期に合わせ,全国の航空機の運航に関する情報を一元的に管理するため,システムの統合を進めている。また,増大する航空交通需要に対応するため,管制サービスの継続性を強化するとともに,現在4管制部にある航空路レーダー情報処理システムを2拠点に統合し,相互のバックアップ機能の導入を進めている。


(2)大都市圏拠点空港等の施設整備

我が国のビジネス・観光両面における国際競争力を強化するため,我が国の成長のけん引車となる首都圏空港(東京国際空港・成田国際空港)の機能強化を図っており,平成26年度中に東京国際空港・成田国際空港両空港の年間合計発着枠を75万回化することを最優先課題として取り組んでいる。

東京国際空港については,国際線旅客ターミナルビルの拡張や駐機場等の整備を行うことで,25年度末に,国際線の発着枠を増枠し,年間発着枠が44.7万回へ拡大した。これによりアジア長距離や欧米を含む高需要・ビジネス路線を24時間展開している。引き続き深夜早朝時間帯に就航する長距離国際線の輸送能力増強に必要なC滑走路延伸事業等を着実に推進しているとともに,新たに際内トンネルの整備に着手し,国際・国内乗継機能の強化を図っている。

成田国際空港については,旺盛な首都圏の国際航空需要に対応する国際線のメイン空港として,26年度中の年間発着枠30万回化の着実な実施を図っているところ。また,25年3月からのオープンスカイの実現にあわせ,6時から23時までという現在の運用時間を前提としつつ,航空会社の努力では対応できないやむを得ない場合に限り,24時までの離着陸を認める離着陸制限(カーフュー)の弾力的運用を開始した。今後とも,国際線ネットワークの強化,国内フィーダー路線の拡充,格安航空会社(LCC)やビジネスジェット等のニーズへの対応強化等を図り,アジア有数のハブ空港としての地位の確立を図っているところ。

また,2020年の東京オリンピック・パラリンピック,さらにはその先を見据え,75万回化達成以降の首都圏空港の更なる機能強化に向けた具体的な方策の検討を進めているところ。


4 空港の安全対策の推進
(1)滑走路誤進入対策の推進

滑走路誤進入対策として,管制指示に対するパイロットの復唱のルール化等,管制官とパイロットのコミュニケーションの齟齬の防止や,滑走路占有状態等を管制官やパイロットへ視覚的に表示・伝達するシステムの整備等,ソフト・ハード両面にわたる対策を推進している。


(2)空港の維持管理の改善,安全技術の強化

航空機の安全な運航を確保するためには,滑走路等の施設が定められた基準に従って確実に建設され,かつ,常に諸施設が完全な状態で機能するよう維持管理されることが極めて重要である。このため,平成25年3月29日に取りまとめられた「空港内の施設の維持管理等に関する緊急レビュー」を受け,「人命への影響」および「航空機運航への影響」の観点から点検内容の改善及び空港毎に長期的視点に立った維持管理・更新計画の策定を行っている。また,施設の破損,故障等を未然に防止する予防保全,積雪地における迅速な除雪・融雪等,航空機運航の安全に直接関わる空港安全技術の強化を図っている。


(3)航空機への鳥衝突(バードストライク)防止対策の推進

鳥の生態に関する専門家,航空会社等により構成される鳥衝突防止対策検討会を開催して,バードストライクの分析と対策を検討している。検討会で提言された方針に基づき,鳥衝突情報データベースを構築し,関係者間の鳥衝突情報の共有を図るとともに,衝突した鳥の種類が不明な事例があることから,生態に応じた防除方法を開発するため,DNA/羽毛鑑定による鳥種の特定等の対策を推進している。更に,東京国際空港において鳥類の生態の監視強化等を推進するため,鳥検知装置(鳥検知レーダー等)を導入し,段階的に評価運用を実施している。


5 航空保安職員の教育の充実

航空保安職員の養成は,航空保安大学校本校(大阪府泉佐野市りんくうタウン)において新規採用職員に対する航空保安業務の基礎教育を,岩沼研修センター(宮城県岩沼市)において既に航空保安業務に従事している職員に専門的な知識及び高度な技能を習得させるための研修を行っている。著しく変革を続ける航空技術に対応した教育・研修内容の充実及び国際的に標準化された研修コース開発手法の導入を進めている。


6 空港・航空保安システムの災害対策の強化
(1)空港の災害対策の強化

新潟県中越地震・東日本大震災等において,空港は緊急輸送や鉄道・道路の代替輸送としての役割を担うとともに,復旧拠点として大きな役割を果たした。このことからも,空港は災害時においても,その機能を保持することが求められており,空港について災害対策の強化を図っている。

ア 空港施設の耐震性の向上

平成19年4月に策定した「地震に強い空港のあり方検討委員会報告」に基づき,発災早期の段階から救急・救命活動等を行うことができるよう,また,発災後3日以内に緊急物資・人員輸送の拠点として機能するよう,航空輸送上重要な13空港から優先的に滑走路等の耐震化を進めている。

イ 空港の津波対策

東日本大震災において,仙台空港が大津波により甚大な被害を受けたことを踏まえ,空港の津波対策の基本的考え方となる「空港の津波対策の方針」を平成23年10月に取りまとめた。当該方針に基づき,津波リスクの高い空港において,津波襲来時に人命保護を図るための津波避難計画を策定済みであり,本計画に基づく津波避難訓練等の取組みを実施している。また,津波被災後における空港機能を早期に回復させるための早期復旧計画を策定し,本計画に基づく関係機関との協力体制構築等の取組みを実施している。


(2)航空保安システムの災害対策の強化

大規模災害時に東京管制部が被災しても,システム開発評価・危機管理センター(SDECC)及び隣接管制部にて代替業務を実施できる体制に加え,航空交通管理センターの代替業務体制を構築し,危機管理能力の向上を進めている。また,航空保安施設及び局舎等の耐震診断やそれに基づく耐震補強による耐震性の向上等を適切に実施し,災害対策の向上を図っている。


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