平成26年度 交通事故の状況及び交通安全施策の現況
第2編 海上交通
第2章 海上交通安全施策の現況
第10節 海上交通の安全対策に係る調査研究等の充実
(1)総務省関係の研究
独立行政法人情報通信研究機構では,海上交通の安全に寄与するため,天候や昼夜の別に関係なく海流速度,波浪等を計測する短波海洋レーダの研究開発,応用技術やデータ利用の高度化を引き続き進めた。また,地表面,海表面の高分解能観測が可能な航空機搭載3次元マイクロ波映像レーダの研究開発においては,移動体検出技術の研究開発を引き続き進めるとともに,処理の高速化に向けた研究開発等を行った。
(2)水産庁関係の研究
独立行政法人水産総合研究センターでは,転覆防止等により漁船の安全操業及び航行安全の確立を図るための研究開発を行った。
(3)国土交通省関係の研究
ア 国土技術政策総合研究所の研究
(ア) 船舶諸元の現状・将来動向に関する研究
航路の幅員,水深,係留施設等の整備諸元の決定要素となる船舶諸元について,大型化の著しいコンテナ船やクルーズ船,バルクキャリア※,また近年増加している国際フェリー・RoRo船※の最近の動向を分析した。
(イ) 水域施設の計画手法に関する研究
航路や泊地といった船舶航行の安全に関わる水域施設の計画手法についてAISデータによる実態分析も踏まえつつ検討を行った。
イ 海上保安庁海洋情報部海洋研究室の研究
新たな国際基準に合致する航海用電子海図を作成するため,新基準の詳細や移行計画に関する情報収集を行うとともに,国際的な動向を踏まえた検討を行った。
ウ 気象庁気象研究所等の研究
気象情報等の精度向上を図り,海上交通の安全に寄与するため,気象庁気象研究所を中心に,気象・地象・水象に関する基礎的及び応用的研究を行っている。主な研究は,以下のとおりである。
(ア) 台風強度に影響する外的要因に関する研究
台風に関する進路予報の改善及び強度の予報精度向上のため,衛星データを用いた台風強度推定手法の高度化及び最適観測法の検討,日本付近に接近した台風の強雨・強風構造の実態解明等に関する研究を行った。
(イ) 次世代非静力学気象予測モデルの開発
集中豪雨・豪雪等の顕著現象を精度良く再現できる次世代非静力学数値予報モデルによる予測精度向上のため,モデルの開発・改良を行い,結果の検証に関する研究を行った。
エ 独立行政法人海上技術安全研究所の研究
先進的な船舶の構造解析技術等を活用した安全性評価手法や革新的な動力システム等の新技術に対応した安全性評価手法の開発のための研究,リスクベースの安全性評価手法等を用いた合理的な安全規制の体系化のための研究,海難事故発生時の状況を高精度で再現し,解析する技術の高度化と適切な対策の立案のための研究を行った。
オ 独立行政法人港湾空港技術研究所の研究
(ア) 船舶安全航行のための航路整備等に関する研究
<1> 全国港湾海洋波浪情報網(ナウファス)
海上交通の安全や海上工事の計画・設計・施工の各段階で必要不可欠である沿岸波浪の出現特性を把握するため,全国の港湾事務所等で観測された波浪観測データを収集・整理・解析し,随時速報処理を行うとともに,過年度1年分の速報処理済のデータを確定処理した後,統計解析し波浪観測年報を取りまとめるとともに,これまでの長期的な観測資料を基に波浪統計量の経年変化傾向を取りまとめた。
<2> 漂砂に関する研究
漂砂による港湾・航路の埋没を防止するため,地形や構造物による海浜流の発生および波と流れによる海浜地形変化シミュレーションを開発した。また,航路やその周辺に存在し,局所的な浅部を生じさせ航路障害を引き起こすサンドウェーブの発達予測モデルを構築した。漂砂現象の解明のため,波と流れ,地形変化の現地観測を波崎海洋研究施設において継続している。
(イ) 港湾における安全確保に関する研究
台風や発達した低気圧の影響で,毎年のように全国各地で高潮や高波による災害が発生している。これらの災害は,地球温暖化による海面上昇や強い台風の増加などによって,甚大化,頻発化することが懸念されている。そのため,地球温暖化に備えた施設整備計画の立案に向けて,こうした変化によって生ずる高潮・高波の発生確率の変化を,数値シミュレーションモデルを基に検討を行った。
津波については,次世代の津波防災技術の開発を目指し,地震と津波が重合する場における構造物の設計に関する研究,津波に対して粘り強い構造物に関する大規模模型実験,遠地津波の予測技術の高精度化,港湾の津波災害からの早期復旧を含むシナリオの作成のためのガレキの発生・移動を考慮した津波浸水シミュレーションモデルの開発,津波による港内の地形変化推定数値シミュレーションモデルの開発などを行った。