第3編 航空交通 第1章 航空交通事故の動向
※航空交通安全対策の今後の方向性 第10次交通安全基本計画より

目次]  [前へ]  [次へ

第3編 航空交通

航空交通安全対策の今後の方向性
第10次交通安全基本計画より

1 基本的な考え方

我が国の民間航空機の事故の発生件数は,長期的には減少傾向にあり,我が国の特定本邦航空運送事業者(客席数が百又は最大離陸重量が5万キログラムを超える航空機を使用して行う航空運送事業を経営する本邦航空運送事業者)における乗客死亡事故は,昭和60年の御巣鷹山墜落事故以降は発生していないが,航空運送事業の中心となる大型機の事故は,乱気流に起因する機体の動揺に伴うものを中心に,年間数件程度ではあるものの依然として発生しており,下げ止まりの傾向も見られる。また,ヒューマンエラー,機材不具合等による重大インシデントや安全上のトラブル,着陸失敗事故なども発生しており,航空交通事故を減らすため,また事故につながりかねない安全上のトラブルの未然防止を図るため,航空交通安全についての対策を着実に実施し,究極的には航空事故のない社会を目指す。

2 航空交通の安全についての目標

  1. (1)本邦航空運送事業者が運航する定期便について,死亡事故発生率及び全損事故発生率をゼロにする。
  2. (2)航空事故発生率及び重大インシデント発生率に関する14の指標で,直近5年間の実績の平均値について,年率7%の削減を図る。

3 航空交通の安全についての対策 

(1)視点

我が国においては,航空安全プログラム(SSP)を段階的に導入し,国が航空全体の安全目標指標及び達成に向けた管理計画を定め,各業務提供者と個々の安全目標指標等について合意した上で,その安全管理システム(SMS)を継続的に監視,監督,監査を行う等により,安全の向上を図る取組を推進してきたが,これを航空安全対策の中核と位置づけ,対策を進めることとする。

また,航空需要の増大への対応と,航空交通システムの安全維持・向上を一体として進めることが重要である。

(2)講じようとする主な施策 【重点施策及び新規施策】
  • 航空安全プログラムの更なる推進
  • 小型航空機等に係る安全対策の推進
  • 航空機の検査の的確な実施
  • 増大する航空需要への対応及びサービスの充実
  • 無人航空機の安全対策
<1> 航空安全プログラムの更なる推進

SSPを導入し各施策を取り組むことにより,これまでの法令遵守型の安全監督に加え,国が安全指標及び安全目標値を設定してリスクを管理し,義務報告制度・自発報告制度等による安全情報の収集・分析・共有等を行うことで,航空安全対策を更に推進する。

航空安全プログラムの更なる推進
<2> 航空機の安全な運航の確保

小型航空機の事故を防止するため,定期的な操縦技能の審査制度や安全講習会の開催等を通じて,操縦者の技量維持や運航の安全確保に必要な事項の周知徹底を図るとともに,更なる対策の検討を行う。

また,航空運送事業者の安全管理体制の構築・改善状況を国が確認する運輸安全マネジメント評価を行う。運輸安全マネジメント評価にて,事業者によるコンプライアンスを徹底・遵守する意識付けの取組を的確に確認する。

<3> 航空機の安全性の確保

技術の進歩等に対応した航空機等の安全基準の策定,安全の向上に資する技術に関する調査等を実施するとともに,我が国の航空機の安全性に関する情報や外国政府,外国メーカー等から得られる安全確保に関する情報を収集及び分析し,関係者に提供する。

また,航空機の検査体制並びに運航・整備に対する審査及び指導・監督体制の充実を図る。

<4> 航空交通環境の整備

航空需要の着実な伸びを受け,2025年頃には航空交通量が国内空域の現行の管制処理能力を超過することが見込まれるなか,安全かつ効率的な運航を維持しつつこれに対応するため,国内の航空路空域等の抜本的な再編を行う。

また,既存のシステムを統合した新たな管制情報処理システムの整備を進める。

<5> 無人航空機の安全対策

無人航空機について,関係府省庁と連携して安全な運航の確保及び健全な利活用に向けた制度構築に取り組む。

<6> 航空交通の安全に関する研究開発の推進

関連研究開発機関相互の連絡協調体制の強化による総合的な研究開発等を推進する。また,航空事故を防止するための技術とともに,万一事故が起こった場合に乗客を保護するための安全技術等,航空安全に関する先行的な研究開発を実施する。

<7> 航空事故等の原因究明と再発防止

航空事故及び航空事故の兆候(航空重大インシデント)の原因究明を迅速かつ的確に行うため,調査を担当する職員への専門的な研修を充実させ,調査技術の向上を図るとともに,各種調査用機器の活用により分析能力の向上に努める。

<8> 救助・救急活動の充実

航空機の遭難,行方不明等に際して,迅速かつ的確な捜索救難活動を行うため,救難調整本部と関係行政機関の連携を強化するとともに,隣接国の捜索救難機関と連携した捜索救難体制を確立する。

<9> 被害者支援の推進

公共交通事故による被害者等への支援の確保を図るため,平成24年4月に,国土交通省に公共交通事故被害者支援室を設置,公共交通事業者による被害者等支援計画作成の促進等,公共交通事故の被害者等への支援の取組を着実に進めていく。


目次]  [前へ]  [次へ