第3編 航空交通 第2章 航空交通安全施策の現況
第1節 総合的な安全マネジメントへの転換
第3編 航空交通
第2章 航空交通安全施策の現況
第1節 総合的な安全マネジメントへの転換
1 SSPの導入
国際民間航空条約附属書により各締約国に対し「国家安全プログラム(SSP)」の設定が求められていることを受け,平成26年4月から航空安全プログラム(SSP)を導入している。SSPを実効あるものとしていくため,航空の安全性を定量的に測定するために用いる指標(安全指標)及び目標値(安全目標値)の設定を含む年度計画を策定した上で,安全情報の収集・分析及び各分野の関係者と共有,業務提供者に対する検査等の航空の安全の向上のための活動を行っている。また,一連の活動自体をPDCAサイクルで不断に見直し,その質の向上を図っているとともに,業務提供者等に対して,一定の違反を伴う事象(航空事故等を除く。)については,対話を経て,内部的に改善措置を講じることを認める(当該対話において業務提供者等から適切な是正措置等が示された場合は,不利益処分等を実施しない)ことにより,業務提供者が安全管理システム(SMS)を確立することを支援している。さらに,5年程度の中期的な視点から,航空安全行政を取り巻く状況や取り組むべき課題,方向性を示した中期的方向性を策定し,これに基づき以後の各年度実施計画を策定することとした。
2 自発報告制度の確立
航空分野の日常の活動においては安全上の支障が顕在化していないため,義務報告制度では報告されないまま埋もれてしまいがちな安全に関する事象が多く存在する。これらに関する情報を潜在的なリスクと据え掘り起こして収集し,再発防止及び予防的対策に役立てていくことは,当該事象に起因した航空機事故等を防止する観点から極めて重要である。このことから,平成26年度に導入した自発報告制度について,引き続き運用を行っている。同制度においては,できるだけ広範囲の航空関係者から収集するため,報告者は航空活動に自ら直接携わる個人又は当該個人が所属する組織としている。また,報告を促すため報告手段はできるだけ多くし,報告様式はできるだけ簡潔なものとしている。また,提供した情報が航空安全当局により報告者の不利益な処分等に利用されるのではないかとの懸念を払拭するため,運用を航空安全当局及び報告者以外の第三者に委ね,個人,会社名等が特定されないよう運用主体が情報源の秘匿化を行い,航空安全当局は運営主体に対し個人・会社名等が特定されるような情報の提供を求めないこととしている。なお,平成26年度においては報告件数をさらに増やすことが課題であったことから,航空関係者に対する本制度の周知活動を積極的に実施している。
3 安全情報の分析・評価体制の強化
航空事故その他の航空の安全運航に影響を及ぼす事態の再発を防止するとともに,予防的対策の実施に役立てるため,義務報告制度等により航空の安全に関する情報を幅広く収集する。収集した安全情報については,有識者・学識経験者を含む委員会等の場において評価・分析を行い,分析後公表している。