参考-4 「本格的な高齢社会への移行に向けた総合的な高齢者交通安全対策について」(平成15年3月27日 交通対策本部決定)の推進状況(平成28年3月)

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1  高齢歩行者,高齢自転車利用者等の交通安全対策

(1) ユニバーサルデザインに対応した道路交通環境等の整備

【道路交通環境の整備】

死傷事故発生割合が高い地区等において,歩行者等の安全な通行を確保するため,都道府県公安委員会と道路管理者が連携して面的かつ総合的な死傷事故抑止対策を講じた。具体的には,歩車分離式信号の運用,バリアフリー対応型信号機の整備,信号灯器のLED化,道路標識の大型化・高輝度化・自発光化,道路標識の高光度化、歩道の段差・傾斜・勾配の改善,自転車道等の設置,歩行者等を優先する道路構造の整備を推進している。また,冬季バリアフリー対策についても行う。

【地域活性化事業の推進】

地方単独事業として実施するユニバーサルデザインによるまちづくりに対して,地域活性化事業債の対象としている。

(2)車両安全対策による歩行者保護等

【歩行者保護基準の導入・安全情報提供(平成15年度~)】

自動車と衝突した歩行者の死亡事故数を低減させるため,自動車のボンネット部の歩行者保護性能に関する基準を平成17年9月より適用した。さらに,重傷事故数を減少させるため,自動車のバンパー部の歩行者保護性能に関する基準を平成25年4月から適用した。また,自動車アセスメントにおいて,自動車のボンネット部の歩行者保護性能及びバンパー部の歩行者保護性能に係る評価試験を実施し,ユーザーへの情報提供を行っている。

【通信を活用した先進安全自動車の開発の促進(平成13年度~)】

事故防止を目的として,情報交換型運転支援システム(通信を活用した歩行者・車間,車・車間等の情報交換によりドライバーの運転を支援するシステム)の開発を促進する。

【ノンステップバス認定制度の創設(平成13年度~)】

高齢者,障害者にとって安全でかつ利用しやすい「次世代普及型ノンステップバスの標準仕様」を平成15年3月に策定した。これを踏まえて平成16年1月に標準仕様を満たすノンステップバスを認定する「標準仕様ノンステップバスの認定制度」を創設するとともに,一層の移動利便性等の向上のため高齢者等により優しい車両とするべく、平成27年7月にノンステップバスの標準仕様の改正を行った。

【公共交通移動円滑化設備整備費補助金(平成12年度~平成22年度)】

【地域公共交通確保維持改善事業(平成23年度~)】

高齢者,障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の趣旨に基づき,高齢者等が公共交通機関を利用しやすくするため,ノンステップバス等の導入に対して補助を行うことによりバリアフリー社会の実現を図る。

(3)交通安全教育及び広報啓発の徹底

【政府広報による働きかけ】

テレビ,ラジオ,新聞,雑誌,インターネット等の各種媒体の政府広報を通じて高齢者に対して交通事故実態,身体機能の変化,反射材用品等の効果など,交通事故防止に役立つアドバイス・情報の提供を行っている。

【高齢者に対する交通安全教育の推進】

高齢者に対し,加齢に伴う身体機能の変化が行動に及ぼす影響,交通ルール等を理解させるため,高齢者の事故実態の調査分析等に基づき,各種教育資機材を積極的に活用した参加・体験・実践型の交通安全教育を推進している。

【高齢者宅訪問活動及び交通事故防止のワンポイントアドバイス】

地域の実情に応じて,交通安全教育及び講習等を受ける機会が少ない高齢者に対し,平素から高齢者と接する機会の多い民生委員等の福祉関係者を始め,地域の関係機関・団体等と連携した高齢者宅の訪問指導や,医療施設や福祉施設等,高齢者が多数来訪する場における交通事故防止のワンポイントアドバイス等の交通安全指導を推進している。

【自転車の安全利用に関する広報啓発】

自転車利用者の交通ルール遵守及び交通マナーの向上を促進するため,関係機関・団体と連携して,交通対策本部で示された「自転車安全利用五則」等を活用し,自転車の通行ルール周知のための各種広報啓発活動,高齢者等を対象とした自転車教室の開催等の交通安全教育を推進するほか,自転車運転者講習制度を適切に運用し,危険な違反行為を繰り返す自転車運転者に対する教育を推進している。

また,自転車利用者の交通違反に対する指導取締り,自転車の通行環境の確立を柱とする良好な自転車交通秩序の実現のための総合対策を推進している。

5月の「自転車月間」(自転車月間推進協議会主催,警察庁等後援)や全国交通安全運動等において,自転車の安全利用促進の広報キャンペーンを全国的に展開している。

春の全国交通安全運動の実施に当たり作成し,全国に配布するポスター・チラシに「自転車安全利用五則」を掲載し,自転車の通行ルール周知のための広報啓発活動を推進している。

また,平成23年度には,自転車の安全性確保のためのDVDを作成し,各都道府県及び市区町村等に配布し,これを活用した交通安全啓発を行っている。

(4)夜間及び薄暮時の交通安全対策

【反射材用品等の着用の推進】

交通安全教育,広報等を通じて,夕暮れ時から夜間にかけて交通事故防止に効果が高い反射材用品等の普及を図るとともに,反射材用品等の視認効果,使用方法等について理解を深めるため,参加・体験・実践型の交通安全教育や関係機関・団体と協力した反射材用品等の展示会の開催等を推進している。

【前照灯の早期点灯の普及】

都道府県等を通じて薄暮時における前照灯の早期点灯の促進を図っている。

【道路標識の高輝度化等の推進】

道路標識の大型化・高輝度化・自発光化及び道路標示の高輝度化を推進している。

(5)電動車いすの安全対策

【電動車いすの安全利用の推進】

電動車いすの製造メーカーで組織されている電動車いす安全普及協会等と連携して,購入時等における安全利用に向けた指導・助言を徹底するとともに,「電動車いすの安全利用に関する手引き」や「電動車いす安全利用ビデオ」の作成,安全利用に係る指導者の育成,高齢者等の利用者を対象とした講習会等を開催するなどし,継続的な交通安全教育の促進に努めている。今後も,同協会等との連携を密にして,電動車いすに係る交通安全対策を推進する。

2 高齢運転者の交通安全対策

(1)高齢運転者に対する講習等の充実

【高齢者講習(平成10年度~)】

運転免許証の更新期間が満了する日における年齢が70歳以上の高齢者に,実際に自動車等の運転をしてもらうことや運転適性検査器材を用いた検査を行うことにより,運転に必要な適性に関する調査を行い,受講者に自らの身体的な機能の変化を自覚してもらうとともに,その結果に基づいて助言・指導を行っている。

【認知機能検査(平成21年度~)】

運転免許証の更新期間が満了する日における年齢が75歳以上の高齢者に対する認知機能検査の適正な実施と,検査結果に基づく効果的な高齢者講習の効果的な実施を図っている。

また,認知症の疑いがある運転者の把握に努め,的確に臨時適性検査を行うなどして,認知症であることが判明した場合には,運転免許の取消し等の行政処分を行う。

【臨時認知機能検査及び臨時高齢者講習の導入等】

一定の違反行為をした75歳以上の高齢運転者に対する臨時認知機能検査の導入,同検査で認知機能の低下が自動車等の運転に支障を及ぼすおそれがあると判断された者に対する臨時高齢者講習の導入等を内容とする道路交通法の一部を改正する法律(平成27年法律第40号)が平成27年6月に成立・公布されており,29年6月までに施行することとしている。

【高齢者安全運転推進協力者の養成】

高齢者交通安全指導員(シルバーリーダー)など,地域の高齢者に影響力のある者を対象にした参加・体験・実践型の講習会を開催し,高齢者の安全運転に必要な知識の習得とその指導力向上を図り,継続的な推進協力者を養成することにより,地域における高齢者安全運転の普及を図っている。

【事業用自動車の高齢運転者に対する特別な指導(平成13年度~)】

独立行政法人自動車事故対策機構等において,高齢運転者に対して義務付けられている適性診断を実施するとともに,自動車運送事業者に対し,適性診断の結果を踏まえた,個々の運転者の加齢に伴う身体機能の変化の程度に応じたバス,タクシー及びトラックの安全な運転方法等に関する適切な指導・監督の実施について指導する。

(2)他の世代の運転者に対する働きかけ

【政府広報による働きかけ】

テレビ,ラジオ,新聞,雑誌,インターネット等の各種媒体の政府広報を通じて他の世代に対して,高齢者の身体機能の変化を理解させ,思いやりのある運転をさせるように働きかける。

【高齢運転者標識の普及】

高齢者以外の運転者が,高齢者の身体機能の変化に理解を深め,思いやりのある運転をすることが重要であることから,高齢運転者標識を表示した自動車に対する配慮についての他の年齢層への運転者教育に努めるなど,高齢運転者標識の普及を図っている。

(3)道路交通環境の整備等

【道路交通環境の整備】

付加車線(ゆずりあい車線)の整備,道路照明の設置,道路標識の大型化・高輝度化,自発光化,道路標示の高輝度化,信号灯器のLED化等を行うほか,「道の駅」等の簡易パーキングエリアの整備等を推進している。

【高齢運転者等専用駐車区間制度の運用】

身体機能の低下が,運転に影響を与えるおそれがある高齢運転者等を支援するための高齢運転者等専用駐車区間制度を運用することにより,高齢運転者等が安全かつ快適に運転することができる道路交通環境を提供し,交通事故の抑止を図っている。

(4)高齢者を考慮した車両安全対策

【本格的な高齢化社会の到来に向けた車両安全対策総合プラン(平成16年度~)】

高齢者に重点をおいた車両安全対策を推進するため,事故実態調査及び行動分析を行うとともに,高齢者の知覚向上等を図る新技術の開発を促進する。

3  市民参加型の交通安全活動の推進及び高齢者保護の強化

(1)地域社会における交通安全対策

【参加・体験・実践型交通ボランティアの養成】

地域社会において様々な交通安全活動を行っている交通指導員(シルバーリーダーを含む。)や交通ボランティア等の現場活動を強化することを目的として,知識・技能レベルや指導力の向上及び士気の高揚を図るため,三世代交流型交通安全教育の実施による実践活動や講習会等を開催している。

【地域交通安全活動推進委員の活動】

地域交通安全活動推進委員の活動に「高齢者,障害者その他その通行に支障のある者の通行の安全を確保するための方法について住民の理解を深めるための運動の推進」を掲げ,高齢者等の通行の安全を確保するための啓発活動の推進を図っている。

(2) 交通指導員,交通ボランティアの資質向上と活性化

【参加・体験・実践型交通ボランティアの養成】

3(1)の事業内容と同様

【高齢者安全運転推進協力者の養成】

2(1)の事業内容と同様

(3)学校における交通安全対策

【学校における交通安全対策の推進】

文部科学省から通知を発出し,児童生徒の交通安全に対する関心や意識を高めるのみならず,児童生徒に対し,高齢者等の交通事故の被害者となることが多い年齢層の交通行動の特性について理解させるとともに,高齢者と児童生徒の世代間交流等を通じて交通安全教育を推進するよう,各教育委員会等を通じて各学校を指導している。

※ 国土交通省:平成26年度より社会資本整備事業特別会計が廃止されたことに伴い、直轄事業の国費(16,637億円)には、地方公共団体の直轄事業負担金(2,994億円)を含む。


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