特集 「高齢者に係る交通事故防止」
III 高齢者に係る交通事故防止に向けた更なる対策の推進

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III 高齢者に係る交通事故防止に向けた更なる対策の推進

我が国においては,いわゆる高度経済成長期に,大都市圏への若年層を中心とした大規模な人口移動があり,過密・過疎の問題が顕在化した。昭和40年代のモータリゼーションを契機に,過密化した大都市圏においては郊外の住宅開発が進められ,地方都市においても市街地の拡散が進行した一方で,農山漁村等においては人口減少と高齢化が進行して過疎化が深刻化し,公共交通機関の維持が困難な状況が拡大した。

マイカーは,多くの国民にとって利便性の高い交通手段であり,公共交通機関の利便性の低い地域の住民にとっては生活に不可欠なものとなっている。

今,我が国は世界でも類を見ない超高齢化社会を迎えている。いわゆる「団塊の世代」がいよいよ70歳代に差し掛かるなど,免許保有率の高い世代が高齢者となりつつあることで,高齢の免許保有者が今後も増加していくことが予測されている。

交通安全については,昭和40年代に年間死者数が1万6千人を超え,「交通戦争」とまで称されたが,交通安全対策基本法が制定され,国,地方公共団体,関係機関等が一体となって総合的な交通安全対策に取り組んできた結果,交通事故死者数は大幅に減少し,平成28年には67年ぶりに4千人を下回った。しかし,その中で,交通事故死者数に占める高齢者の割合は54.8%と過去最高を記録し,また,死亡事故件数が減少している中で75歳以上の高齢運転者による死亡事故件数はほぼ横ばいで推移している。

交通は国民生活の安定向上に欠くことのできないものであることから,高齢者に係る交通事故は高齢化が進む我が国にとって重要な課題であり,更なる対策が求められている。

焦眉の急となっている高齢運転者による交通事故防止対策については,関係閣僚会議における安倍総理の指示である改正道路交通法の円滑な施行,高齢者の移動手段の確保など社会全体で高齢者の生活を支える体制の整備,更なる対策の必要性の検討について,関係省庁が鋭意取り組んでいるところである。これらのテーマは相互に深く関係しており,交通対策本部の下に設置した「高齢運転者交通事故防止対策ワーキングチーム」を通じて緊密に連携しながら対策を検討し,実施可能なところから早急に実施に移していくことが重要である。

他方で,高齢歩行者等の高齢者の交通事故防止対策についても,道路交通環境等の整備,車両安全対策,安全教育及び広報啓発を引き続き進めていくことが重要である。

平成28年3月に決定された「第10次交通安全基本計画」においては,32年までに交通事故死者数を2,500人以下とし,「世界一安全な道路交通」を実現することを目標に掲げている。その実現のためには,これまでの交通安全対策の深化はもちろんのこと,交通安全に資する先端技術を積極的に取り入れた新たな時代における対策に取り組むことが必要である。自動ブレーキ等の先進安全技術を利用してドライバーの安全運転を支援するシステムを搭載した先進安全自動車(ASV)は,高齢歩行者等の交通事故,高齢運転者による交通事故の両方の防止にも資するものであり,更なる性能向上と普及促進を図っていく必要がある。

高齢者の交通安全については,関係省庁のみならず関係機関,民間企業,地域社会の一体となった取組を推進することにより,その向上を図り,世界一安全な道路交通を実現していかなければならない。

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