I 現況の概要 第1編 陸上交通 第2部 鉄道交通
第2章 鉄道交通安全施策の現況
第1編 陸上交通
第2部 鉄道交通
第2章 鉄道交通安全施策の現況
1 鉄道交通環境の整備
●運転保安設備等の整備
JR西日本福知山線列車脱線事故を踏まえて,「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」を平成18年7月に改正し,曲線部等における速度制限機能付き自動列車停止装置(ATS),運転士異常時列車停止装置,運転状況記録装置等の設置を義務付けた。なお,法令により整備の期限が定められたものの整備については,平成28年6月末までに完了した。
●鉄道施設の地震対策の強化
阪神・淡路大震災及び東日本大震災を踏まえ,また,防災・減災対策の強化が喫緊の課題となっている首都直下地震・南海トラフ沿いの大規模地震等に備えて,より多くの鉄道利用者の安全確保や,一時避難場所や緊急輸送道路の確保等の公共的機能も考慮し,主要駅や高架橋等の耐震対策の促進を図った。
●駅ホームにおける安全性向上のための対策の強化
視覚障害者等を始めとしたすべての駅利用者のホームからの転落を防止するための設備として効果の高いホームドア(可動式ホーム柵含む)の整備推進を図った(平成28年3月末現在で665駅に設置)。また,旅客による視覚障害者等への積極的な声かけを促す「鉄道利用マナーUPキャンペーン」を実施した。
さらに,平成28年8月に発生した東京メトロ銀座線・青山一丁目駅における視覚障害者の転落死亡事故を受け,「駅ホームにおける安全性向上のための検討会」を開催し,再発防止に向け,平成28年12月,ホームドアと内方線付き点状ブロックの整備の加速化を中心としたハード面の対策及び駅員等による乗車・降車の誘導案内を中心としたソフト面の対策といったハード・ソフト両面からなる総合的な対策をとりまとめた。
2 鉄道交通の安全に関する知識の普及
踏切事故防止について,ポスターの掲示等によるキャンペーンを実施し,学校,沿線住民,道路運送事業者等に対し,踏切道の安全通行や鉄道事故防止に関する知識の普及及び意識の高揚を図った。
また,鉄道の安全利用に関する手引きを活用して,鉄道事業者等に事故防止を図るよう促した。
3 鉄道の安全な運行の確保
●運転士の資質の保持
動力車操縦者の資質の確保を図るため,動力車操縦者運転免許試験を適正に実施した。また,乗務員の資質が保持されるよう,運転管理者が教育等について適切に措置を講ずるよう指導した。
●安全上のトラブル情報の共有・活用
主要な鉄道事業者の安全担当者等による鉄道保安連絡会議を開催し,事故等及びその再発防止対策に関する情報共有等を行うとともに,安全上のトラブル情報を関係者間に共有できるよう,情報を収集し,速やかに鉄道事業者へ周知している。さらに,国への報告対象となっていない安全上のトラブル情報について,鉄道事業者による情報共有化を図っている。
●大規模な事故等が発生した場合の適切な対応
国及び鉄道事業者における,夜間・休日の緊急連絡体制を点検・確認し,大規模な事故又は災害が発生した際に,迅速かつ的確な情報の収集・連絡を行った。
また,大都市圏,幹線交通における輸送障害等の社会的影響を軽減するため,鉄道事業者に対し,乗客への適切な情報提供を行うとともに,迅速な復旧に必要な体制を整備するよう指導した。
さらに,鉄道の津波対策については,東日本大震災における,津波発生時の避難誘導などの状況を検証するとともに,南海トラフ沿いの大規模地震等による最大クラスの津波からの避難の基本的な考え方(素早い避難が最も有効かつ重要な対策であること等)を踏まえた津波発生時における鉄道旅客の安全確保への対応方針と具体例等を取りまとめており,鉄道事業者における取組を推進している。
●運輸安全マネジメント制度の充実
平成18年10月より導入した「運輸安全マネジメント制度」により,事業者が社内一丸となった安全管理体制を構築・改善し,国がその実施状況を確認する運輸安全マネジメント評価を,28年において68者に対して実施した。