第1編 陸上交通 第2部 鉄道交通 第2章 鉄道交通安全施策の現況
第5節 踏切道における交通の安全についての対策
第1編 陸上交通
第2部 鉄道交通
第2章 鉄道交通安全施策の現況
第5節 踏切道における交通の安全についての対策
1 踏切事故防止対策の現状
踏切道の改良については,踏切道改良促進法(昭36法195)及び第10次交通安全基本計画に基づき,踏切道の立体交差化,構造の改良,歩行者等立体横断施設の整備及び踏切保安設備の整備を推進している。これらの諸施策を総合的かつ積極的に推進することにより,平成32年までに踏切事故件数を27年と比較して約1割削減することとしている。
平成28年度は,改正した踏切道改良促進法に基づき,課題のある踏切について,鉄道事業者と道路管理者で改良の方法が合意できていなくても国土交通大臣が指定できることとされたことを受け,従来の指定を大幅に上回る587箇所の指定を行った。
また,これまでに指定した踏切道と道路管理者,鉄道事業者等が自主的に行ったものを合わせて,平成27年度に改良が図られた踏切道対策数は,立体交差化40か所,構造の改良230か所,踏切保安設備の整備40か所に及んでいる(第1-33表)。また,踏切道の統廃合についても,立体交差化等の事業と併せて実施した。
種別 | 立体交差 | 構造改良 | 踏切保安設備 | |
---|---|---|---|---|
年度 | ||||
平成23 | 42 | 195 | 74 | |
平成24 | 98 | 191 | 77 | |
平成25 | 34 | 204 | 57 | |
平成26 | 26 | 203 | 35 | |
平成27 | 40 | 230 | 40 |
一方,道路管理者,鉄道事業者が連携し,踏切の諸元や対策状況,事故発生状況等の客観的データに基づき,緊急に対策の検討が必要な踏切として1,479箇所を抽出し,それらについて「踏切安全通行カルテ」の作成・公表を行ったことにより踏切道の現状を「見える化」しつつ,対策方針等をとりまとめ,踏切対策を推進することとした。
2 踏切道の立体交差化,構造の改良及び歩行者等立体横断施設の整備の促進
立体交差化までに時間のかかる「開かずの踏切」等の対策について,効果の早期発現を図るために構造の改良及び歩行者等立体横断施設の整備について緊急的に取り組んだ。
また,歩道が狭あいな踏切等における歩行者安全対策のための構造の改良等を強力に推進した。
さらに,「開かずの踏切」等の遮断時間が特に長い踏切等で,かつ道路交通量の多い踏切道が連担している地区等や,主要な道路との交差にかかわるもの等については,抜本的な交通安全対策である連続立体交差化等により,踏切道の除却を促進するとともに,道路の新設・改築及び鉄道の新線建設に当たっても,極力立体交差化を図った。
以上のような立体交差化等の従前の踏切対策に加え,カラー舗装等の当面の対策や駐輪場整備等の踏切周辺対策等,ソフト・ハード両面からできる対策を総動員することで総合的な対策を推進した。
3 踏切保安設備の整備及び交通規制の実施
踏切道の利用状況,踏切道の幅員,交通規制の実施状況等を勘案して踏切遮断機(踏切遮断機を設置することが技術的に著しく困難である場合は,踏切警報機)を整備しており,その結果,踏切遮断機又は踏切警報機が設置されている踏切道は,平成27年度末には3万568か所(専用鉄道を含まない。)に及んでおり,全体の91.4%である。
自動車交通量の多い踏切道については,道路交通の状況,事故の発生状況等を勘案して必要に応じ,障害物検知装置等,より事故防止効果の高い踏切保安設備の整備を進めた。
また,高齢者等の歩行者対策としても効果が期待できる,全方位型警報装置,非常押ボタンの整備,障害物検知装置の高規格化を推進した。
さらに,道路の交通量,踏切道の幅員,踏切保安設備の整備状況,う回路の状況等を勘案し,必要に応じ,自動車通行止め,大型自動車通行止め,一方通行等の交通規制を実施するとともに,併せて道路標識等の大型化,高輝度化による視認性の向上を図った(第1-34表)。
規制種別 | 踏切種別 | 計 | ||
---|---|---|---|---|
1種 | 3種 | 4種 | ||
大型車通行止め | 5,032 | 133 | 181 | 5,346 |
二輪の自動車以外の自動車通行止め | 1,754 | 437 | 1,178 | 3,369 |
車両通行止め | 1,064 | 206 | 495 | 1,765 |
その他の通行止め | 1,436 | 242 | 416 | 2,094 |
一方通行 | 379 | 4 | 17 | 400 |
合計 | 9,665 | 1,022 | 2,287 | 12,974 |
4 踏切道の統廃合の促進
踏切道の立体交差化,構造の改良等の事業の実施に併せて,近接踏切道のうち,その利用状況,う回路の状況等を勘案して,地域住民の通行に特に支障を及ぼさないと認められるものについて,統廃合を進めるとともに,これら近接踏切道以外の踏切道についても,同様に統廃合を促進した。ただし,構造の改良のうち踏切道に歩道がないか,歩道が狭小な場合の歩道整備については,その緊急性を考慮して,近接踏切道の統廃合を行わずに実施できることとしている。その結果,踏切道の総数は前年度から96か所減少し,平成27年度末で3万3,432か所(専用鉄道を含まない。)となった。
5 その他踏切道の交通の安全及び円滑化等を図るための措置
踏切道における交通の安全と円滑化を図るため,必要に応じ,踏切道予告標,情報通信技術(IT)の導入による踏切関連交通安全施設の高度化を図るための研究開発等を進めるとともに,車両等の踏切通行時の違反行為に対する指導取締りを推進した。
また,踏切道通行者の安全意識の向上及び踏切支障時における非常ボタンの操作等の緊急措置の周知徹底を図るための広報活動等を推進した。
この他,踏切道に接続する道路の拡幅については,踏切道において道路の幅員差が新たに生じないよう努めた。