特集 「先端技術を活用した交通安全の取組」
はじめに
平成29年中の道路交通における交通事故死者数は,官民が一体となった取組を進めてきた結果,3,694人と,現行の交通事故統計となった昭和23年以降で最少となり,また,過去最多の時期と比較しても4分の1以下と大きく減少している。しかしながら,未だ60万人近くが交通事故により死傷している。また近年は,高齢化の進展に伴う高齢者人口の増加等により,交通事故死者数が減りにくい状況となってきている。
死亡事故の要因をみると,近年,運転者の不注意に起因する事故の割合が相対的に高くなっており,特に,高齢運転者について,身体機能の低下などによるハンドルやブレーキ等の操作誤りに起因する事故の割合が高くなっている。
このような状況の中,交通事故による死傷者数を減少させるためには,事故を未然に防止し,また被害を軽減するための取組が重要であり,そのためには,先端技術を活用した施策の推進が有用と考えられる。「第10次交通安全基本計画」(平成28年3月決定)は,「平成32年までに24時間死者数を2,500人以下とし,世界一安全な道路交通を実現する」ためには,これまでの施策を一層充実させることはもちろん,先端技術を活用した安全支援システムの開発普及や情報の効果的な活用を強力に推進していくことが必要であるとしている。
本特集では,まず近年の交通事故の特徴,事故発生時の救急救命活動の状況と課題,先端技術への期待等を概括した後,先端技術を活用した交通安全の取組の現状や今後の計画等を紹介する。