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伊豆大島西岸沖での推薦航路設定について
東京湾,伊勢湾及び瀬戸内海を結ぶ太平洋沿岸海域(準ふくそう海域)は,船舶交通量が多く,複雑な進路交差部が生じるため,重大海難が発生する蓋然性が高いことから,船舶交通の安全性を向上させる取組を行っているところである。
1 伊豆大島西岸沖における検討
平成25年9月,伊豆大島西岸沖において内航貨物船と外航貨物船が衝突し,内航貨物船の乗組員6名が死亡する海難が発生した。この海難を踏まえ,伊豆大島西岸沖をモデル海域として,航行環境の基礎調査を実施し,AIS仮想航路標識を利用した整流化対策の検討を進めることとした。
船舶交通の整流化対策を検討するため,海上保安庁では国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所海上技術安全研究所と共同研究を実施した。研究に当たっては,平成21年度から24年度において,日本財団の助成を受けて(公社)日本海難防止協会が実施した準ふくそう海域における航行安全確保に関する既往調査を参考に,AISデータによる船舶の通航実態や漁船の操業実態,過去の海難の発生状況などの交通状況の解析や交通状況の分析を行い,推薦航路の設定のシミュレーションによる安全性と経済性の影響評価を実施した。
また,(公社)日本海難防止協会による官・学・民による「伊豆大島西方海域における安全対策の構築に関する調査研究委員会」において,推薦航路の設定について検討し,衝突の危険性の減少効果が得られるとの結論を得た。
2 推薦航路の設定
推薦航路の設定には,国際海事機関(IMO)における採択が必要なため,平成28年11月に本邦初となる推薦航路設定に係る提案文書をIMOに提出し,29年6月に開催されたIMO海上安全委員会において提案が採択され,30年1月1日からの運用開始が決定した。
3 これからの取組
推薦航路の導入後の船舶の通航状況について,AISデータを解析し,その状況をとりまとめ,訪船,船舶代理店等を通じた推薦航路の周知を行い,推薦航路の理解の促進に努め,整流化対策の実効性を高めていく。