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交通安全フォーラムの開催について
● 内閣府では交通安全意識の高揚を図るため,交通事情に詳しい学識経験者や交通安全に関わる方々をお招きし,地域における交通安全対策に関する講演やパネルディスカッションを行う「交通安全フォーラム」を開催している。
平成29年度は,10月25日に,千葉県及び船橋市との共催により,『高齢社会の交通安全を考える~事故にあわない,おこさない~』をテーマに船橋市民文化ホールで開催し,約430人の参加があった。
● この日のフォーラムでは,さまざまな立場の有識者から,高齢者の交通事故を防ぐための安全教育の在り方,交通事故を防ぐための取組等について,意見や提言が示された。
○基調講演及びパネルディスカッションの提言内容
基調講演
帝塚山大学学長・心理学部教授 蓮花 一己 氏
「運転手は運転診断で悪い点の改善を,自転車,歩行者は『正しい横断』を」
蓮花一己氏からは,交通の場面における高齢者の課題とその対応について次のようなお話があった。
高齢ドライバーには,自分の能力以上に過信し自己評価が高いこと,個人差が大きいこと,認知機能が低下していることなどの特徴が挙げられる。一人一人の弱点を確認する教育プログラムにより一時的とはいえ効果は得られるので,シニア予備軍の50~60代に教習所などのリフレッシュ講習を受け,運転診断で自分の悪い癖に気づいて改善する機会を作っていただきたい。また,高齢者の自転車,歩行者についても,個人差は大きく,特に免許を持っていない人は持っている人より周囲の確認が悪いなど行動が危ない傾向がある。事故にあわないためにも,無理な横断をしないなど,ゆっくりでいいので「正しい横断」をしていただきたい。
パネルディスカッション
高齢者の交通安全対策に詳しい専門家をパネリストとして招いて,蓮花一己氏のコーディネートにより有益な議論が行われた。パネリストからは,高齢者交通事故防止対策の現状,効果的な交通安全教育の在り方等について,次のような発言があった。
千葉県警察本部 交通部交通総務課管理官
土屋 裕二 氏
「3(サン)・ライト運動,運転免許を自主返納しやすい環境整備を推進」
千葉県では,交通事故死者数の半数以上を高齢者が占めていること,高齢ドライバーによる交通事故の割合が年々増加していることなどから,①早めのライト点灯等,②反射材等で目立つ,③道路右側からの横断者に注意,の3つを心がける「3(サン)・ライト運動」の推進や,運転免許返納にためらっている人のために自主返納しやすい環境整備を進めるなどの対策に取り組んでいる。
日本大学理工学部 交通システム工学科助教
稲垣 具志 氏
「個人の交通挙動から考える安全対策が必要」
人間は一人一人がもともと非常に個性豊かで,加齢に伴って感覚機能,身体機能,認知機能が低下していくと,さらに個人差が大きくなるため,高齢者を一括りで考えてしまうと個人レベルでは具体的な対策に結びつかないといった問題が出てきてしまう。「個人特性」と「交通挙動」との関連を意識しながら,個人で問題を捉えて対策や啓発を推進する体制が必要となってくると考える。
日本自動車工業会安全・ 環境技術委員会安全部会部会長
高橋 信彦 氏
「予防安全技術を搭載した『サポカー(安全運転サポート車)』を」
日本自動車工業会では,高齢ドライバーの特徴をドライビングシミュレーターなどの装置を使って調査し,車の開発に役立てている。近年は予防安全技術として衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ),ペダルの踏み間違い時加速抑制装置などを採用した車が各メーカーで販売されているが,新技術の商品名は各社で異なるので,車の購入時には「サポカーを」と相談していただきたい。
野球解説者・千葉ロッテマリーンズスペシャルアドバイザー
里崎 智也 氏
「交通安全は『家族』と『日常の当り前を当り前に』で」
私の3歳の子どもは車に乗るとすぐ自分でチャイルドシートに座って,シートベルトを締めようとする。その姿を見て私もちゃんと運転しなければと思うし,高齢者の方々も孫や子どもに言われて怒る人は少ないと思う。また,私たち一人一人が道路を渡るときには横断歩道を渡るといった,当り前のことを当り前にやっていくということが大事なので,そのような日常を送っていただきたい。
https://www8.cao.go.jp/koutu/keihatsu/forum/h29/result.html