第1編 陸上交通 第1部 道路交通 第2章 道路交通安全施策の現況
第3節 安全運転の確保
第1編 陸上交通
第1部 道路交通
第2章 道路交通安全施策の現況
第3節 安全運転の確保
1 運転免許保有者数及び運転免許試験の実施状況
(1)運転免許保有者数
平成30年末現在の運転免許保有者数は,前年と比べて約5万人(0.1%)増加して約8,231万人となった。このうち,男性は約14万人(0.3%)減少して約4,499万人,女性は約20万人(0.5%)増加して約3,732万人となり,その構成率は男性54.7%,女性45.3%となった(第1-5表)。
年 | 保有者数 | 対前年増減率 | 人口に対する割合 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
全体 | 人員 | 構成率 | 全体 | 男性 | 女性 | 全体 | 男性 | 女性 | |||
男性 | 女性 | 男性 | 女性 | ||||||||
千人 | 千人 | 千人 | % | % | % | % | % | % | % | % | |
平成30年 | 82,315 | 44,995 | 37,320 | 54.7 | 45.3 | 0.1 | -0.3 | 0.5 | 74.9 | 84.8 | 65.7 |
また,年齢層別の運転免許保有者数では,65歳以上の高齢者が約45万人(2.5%)増加した(第1-38図)。
運転免許の種類別保有者数は,第一種中型免許(8トン限定中型免許を含む。)保有者が約6,160万人で全体の74.8%を占めた(第1-6表)。
免許種別 | 平成30年 | 平成29年 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
全体 | うち男性 | うち女性 | 構成率 | 全体 | 構成率 | ||
千人 | 千人 | 千人 | % | 千人 | % | ||
第一種免許 | 大型 | 4,242 | 4,104 | 138 | 5.2 | 4,279 | 5.2 |
合計 | 82,315 | 44,995 | 37,320 | 100.0 | 82,255 | 100.0 |
障害者の運転免許については,運転できる車両に限定の条件が付されているものが延べ26万2,990件,補聴器使用の条件が付されているものが延べ4万7,202件となった。
なお,平成30年中の国外運転免許証の交付件数は33万4,514件で,前年に比べ7,804件(2.4%)増加した。また,外国等の行政庁等の運転免許を有する者については,一定の条件の下に運転免許試験のうち技能試験及び学科試験を免除することとされており,30年の当該免除に係る我が国の運転免許の件数は4万3,547件に上り,増減率で11.1%増となった。
(2)運転免許試験の実施状況
ア 運転免許試験の概況
平成30年中の運転免許試験の受験者数は260万6,179人で,前年に比べて4万8,107人(1.8%)減少した。
また,合格者は197万7,902人で,前年に比べて3万399人(1.5%)減少した。このうち,第1種免許についてみると,普通免許の受験者数は161万2,836人(合格者数115万5,475人)で,前年に比べ4.6%減少(合格者4.9%減少),大型二輪免許及び普通二輪免許については30万5,250人(合格者数26万5,555人)で,前年に比べ2.3%増加(合格者2.4%増加),原付免許については17万4,797人(合格者10万5,641人)で,前年に比べ6.1%減少(合格者6.1%減少)した(第1-39図)。
イ 障害者等の運転免許取得
障害や病気の症状が自動車等の運転に及ぼす影響は様々であり,運転免許に一定の条件を付すことにより補うことができる場合もあることから,運転適性相談を通じ,運転免許の取得に係る適切な助言を行っている。
聴覚障害のある人のうち,補聴器を使用しても一定の音が聞こえない人については,特定後写鏡等の使用を条件に準中型自動車及び普通自動車を運転することが可能であり,平成30年末現在,この条件が付された準中型免許及び普通自動車免許保有者数は1,205人である。また,大型自動二輪車,普通自動二輪車,小型特殊自動車及び原動機付自転車の免許については,適性試験における聴力が廃止されている。
なお,大型自動車,中型自動車,準中型自動車,普通自動車及び大型特殊自動車については,補聴器を使用して一定の音が聞こえることを条件に運転ができるほか,平成28年4月からは,タクシーやバス等の旅客自動車についても補聴器を使用して一定の音が聞こえることを条件に運転できることとなった。
2 運転者教育等の充実
(1)運転免許を取得しようとする者に対する教育の充実
ア 自動車教習所における教習の充実
(ア) 指定自動車教習所における教習の充実
平成30年末現在における指定自動車教習所数は1,321か所で,これらの指定自動車教習所で技能検定に従事している技能検定員は1万8,689人,学科又は技能の教習に従事している教習指導員は3万1,494人である。
一方,平成30年中に指定自動車教習所を卒業した者は152万9,334人で,前年に比べ1万9,130人(1.2%)減少し,指定自動車教習所の卒業者で30年中に運転免許試験に合格した者の数は152万1,016人で,全合格者(原付免許等を除く。)の97.4%を占めた。
都道府県公安委員会では,指定自動車教習所の教習指導員,技能検定員等に対する定期的な講習や研修を通じ,その資質及び能力の向上を図るとともに,教習及び技能検定等について定期又は随時の検査を行い,教習内容の充実に努めたほか,教習施設及び教習資器材等の整備等についても指導を行った。
また,交通状況の変化に迅速,的確に対応するため,常に教習内容の充実に努めている。
(イ) 指定自動車教習所以外の自動車教習所における教習水準の向上
都道府県公安委員会では,指定自動車教習所以外の届出自動車教習所に対して必要な助言等を行い,教習水準の維持向上を図った。
また,特定届出自動車教習所に対しても,教習の課程の指定を受けた教習の適正な実施等を図るため,指導等を行った。
イ 取得時講習の充実
大型免許,中型免許,準中型免許,普通免許,大型二輪免許,普通二輪免許,大型第二種免許,中型第二種免許又は普通第二種免許を受けようとする者は,それぞれ受けようとする免許の種別に応じ,大型車講習,中型車講習,普通車講習,準中型車講習,大型二輪車講習,普通二輪車講習,大型旅客車講習,中型旅客車講習又は普通旅客車講習のほか,応急救護処置講習の受講が義務付けられており,これらは,運転に係る危険の予測等安全な運転に必要な技能及び知識,気道確保,人工呼吸,心臓マッサージ等に関する知識についての講習となっている。
平成30年には,大型車講習を545人,中型車講習を538人,準中型車講習を781人,普通車講習を6,392人,大型二輪車講習を278人,普通二輪車講習を1,121人,大型旅客車講習を369人,中型旅客車講習を19人,普通旅客車講習を669人,第一種応急救護処置講習を7,015人,第二種応急救護処置講習を1,030人が受講した。
また,原付免許を受けようとする者に対しては,原付の運転に関する実技訓練等を内容とする原付講習が義務付けられており,平成30年には9万2,170人が受講した。
都道府県公安委員会では,これらの講習の水準が維持され,講習が適正に行われるよう,講習実施機関に対し指導を行った。
(2)運転者に対する再教育等の充実
ア 初心運転者対策の推進
運転免許取得後の経過年数の短い者(大部分が若者)が死亡事故を引き起こしているケースが多いことから,準中型免許,普通免許,大型二輪免許,普通二輪免許又は原付免許を受けてから1年に達する日までの間を初心運転者期間とし,この期間中にこれらの免許を受けた者が,違反行為をして法令で定める基準に該当することとなったときは,都道府県公安委員会の行う初心運転者講習を受講できることとされている(第1-40図)。なお,この講習を受講しなかった者及び受講後更に違反行為をして法令で定める基準に該当することとなった者は,初心運転者期間経過後に都道府県公安委員会の行う再試験を受けなければならない。
初心運転者講習は,少人数のグループで編成され,路上訓練や運転シミュレーター※を活用した危険の予測,回避訓練を取り入れるなど実践的な内容としている。
イ 運転者に対する各種の再教育の充実
(ア) 更新時講習
運転免許証の更新を受けようとする者が受けなければならない更新時講習は,更新の機会をとらえて定期的に教育を行うことにより,安全な運転に必要な知識を補い,運転者の安全意識を高めることを目的としている。この講習は,受講対象者の違反状況等に応じ,優良運転者,一般運転者,違反運転者又は初回更新者の区分により実施している。
各講習では,視聴覚教材等を効果的に活用するなど工夫するとともに,一般運転者,違反運転者及び初回更新者の講習では,運転適性診断を実施し,診断結果に基づいた安全指導を行っている。平成30年には,優良運転者講習を834万2,940人,一般運転者講習を282万233人,違反運転者講習を255万783人,初回更新者講習を108万9,096人が受講した。
さらに,更新時講習では,高齢者等受講者の態様に応じた特別学級を編成し,受講者層の交通事故実態等について重点的に取り上げるなど,講習の充実を図っている。平成30年には,3万602人がこの特別学級による講習を受講した。
また,一定の基準に適合する講習(特定任意講習)を受講した者は,更新時講習を受講する必要がないこととされている。特定任意講習では,地域,職種等が共通する運転者を集め,その態様に応じた講習を行っており,平成30年には,2,984人が受講した。
(イ) 取消処分者講習
取消処分者講習は,運転免許の取消処分等を受けた者を対象に,その者に自らの危険性を自覚させ,その特性に応じた運転の方法を助言・指導することにより,これらの者の運転態度の改善を図ろうとするものである。講習は,受講者が受けようとしている免許の種類に応じ,四輪運転者用講習と二輪運転者用講習に分かれており,運転免許の取消処分等を受けた者が免許を再取得しようとする際には,この講習の受講が受験資格となっている。講習に当たっては,運転適性検査に基づくカウンセリング,グループ討議,自動車等の運転や運転シミュレーターの操作に基づく指導を行うなど個別的,具体的な指導を行い,運転時の自重・自制を促している。また,飲酒運転違反者に対してより効果的な教育を行うことを目的に,飲酒行動の改善等のためのカリキュラムとして,スクリーニングテスト(AUDIT※),ブリーフ・インターベンション※等を盛り込んだ取消処分者講習(飲酒取消講習)を全国で実施している。平成30年中の取消処分者講習の受講者数は,2万6,261人であり,うち飲酒取消講習の受講者数は1万2,816人であった。
(ウ) 停止処分者講習
停止処分者講習は,運転免許の効力の停止又は保留等の処分を受けた者を対象に,その者の申出により,その者の危険性を改善するための教育として行うものである。講習は,行政処分の期間に応じて短期講習,中期講習,長期講習に分かれ,二輪学級,飲酒学級,速度学級等受講者の違反状況等に応じた特別学級を編成しており,受講者は,講習終了後の考査の成績等によって,行政処分の期間が短縮されることとなっている。講習では,道路交通の現状,交通事故の実態に関する講義,自動車等の運転や運転シミュレーターの操作に基づく指導等を行っている。平成30年中の停止処分者講習の受講者は19万3,387人であった。
(エ) 違反者講習
違反者講習は,軽微違反行為(3点以下の違反行為)をして一定の基準(累積点数で6点になるなど)に該当することになった者に対し受講が義務付けられているもので,受講者に対しては,運転免許の効力の停止等の行政処分を行わないとされている。
講習を受けようとする者は,運転者の資質の向上に資する活動の体験を含む課程又は自動車等の運転シミュレーターを用いた運転について必要な適性に関する調査に基づく個別指導を含む課程を選択することができる。運転者の資質の向上に資する活動として,歩行者の安全通行のための通行の補助誘導,交通安全の呼びかけ,交通安全チラシの配布等の広報啓発等を行っている。平成30年中の違反者講習の受講者は8万9,108人であった。
(オ) 自動車教習所における交通安全教育
自動車教習所は,地域住民のニーズに応じ,地域住民に対する交通安全教育を行っており,地域における交通安全教育センターとしての役割を果たしている。具体的には,運転免許を受けている者を対象として,運転の経験や年齢等の区分に応じたいわゆるペーパードライバー教育,高齢運転者教育等の交通安全教育を行っている。こうした教育のうち,一定の基準に適合するものについては,その水準の向上と免許取得者に対する普及を図るため,都道府県公安委員会の認定を受けることができ,平成30年末現在,1万1,716件が認定されている。
(3)二輪車安全運転対策の推進
ア 二輪免許交付時講習
主に二輪免許を新規取得した青少年層を対象として,免許証が交付される間における待ち時間を活用した二輪車の安全運転に関する講習を行っている。
イ 二輪運転者講習に対する協力
警察では,各都道府県の二輪車安全運転推進委員会が二輪車安全普及協会の協力を得て行っている二輪車安全運転講習及び原付安全運転講習に対し,講師として警察官等を派遣するなどの協力を行った。
(4)高齢運転者対策の充実
ア 高齢者講習等
高齢者は,一般的に身体機能の低下が認められるが,これらの機能の変化を必ずしも自覚しないまま運転を行うことが事故の一因となっていると考えられる。このため,運転免許証の有効期間が満了する日における年齢が70歳以上の高齢者には,更新期間が満了する日前6月以内に高齢者講習を受講することが義務付けられている。
高齢者講習は,受講者に実際に自動車等の運転をしてもらうことや運転適性検査器材を用いた検査を行うことにより,運転に必要な適性に関する調査を行い,受講者に自らの身体的な機能の変化を自覚してもらうとともに,その結果に基づいて助言・指導を行うことを内容としており,この講習を受講した者は,更新時講習を受講する必要がないこととされている。平成30年中の高齢者講習の受講者は269万867人であった。
また,運転免許証の更新期間が満了する日における年齢が75歳以上の者については,運転免許証の更新期間が満了する日前6月以内に,認知機能検査を受けなければならないこととされているが,高齢者講習及び認知機能検査については,各地域の対象者数の将来予測等の情報を定期的に実施機関と共有するほか,都道府県公安委員会による直接実施や新たな実施機関の確保についても検討するとともに,早期の予約を呼び掛けたり,予約状況を把握した上で,受講又は受検までの期間が短い実施機関に対象者を振り分けたりするなど,高齢者講習及び認知機能検査の円滑な実施のための取組を推進した。
検査の結果,認知症のおそれがある又は認知機能が低下しているおそれがあると判定された者に対する高齢者講習は,ドライブレコーダー等で録画された受講者の運転状況の映像を用いた個人指導を含む3時間の講習とされており,このほかの者に対する高齢者講習は2時間の講習とされている。平成30年中の認知機能検査の受検者は202万144人であった。
一定の違反行為をした75歳以上の運転者については,臨時認知機能検査を受けなければならないこととされており,その結果が直近において受けた認知機能検査の結果と比較して悪くなっている者等については,臨時高齢者講習を受けなければならないこととされている。平成30年中の臨時認知機能検査の受検者は14万5,205人,臨時高齢者講習の受講者は1万1,866人であった。
また,更新時の認知機能検査又は臨時認知機能検査の結果,認知症のおそれがあると判定された者については,その者の違反状況にかかわらず,医師の診断を要することとされている。
なお,一定の基準に適合する講習(特定任意高齢者講習)を受講した者は高齢者講習を受講する必要がないこととされている。また,コースにおける自動車等の運転をすることにより,加齢に伴って生ずる身体の機能の低下が自動車等の運転に著しい影響を及ぼしているかどうかについて,都道府県公安委員会の確認を受け,当該影響がない旨の確認書(チャレンジ講習受講結果確認書)の交付を受けた者は,簡易な特定任意高齢者講習を受ければよいこととされている。
イ 更新時講習における高齢者学級の編成
更新時講習では,65歳以上70歳未満の者を対象とした高齢者学級を編成し,高齢運転者の運転特性や交通事故の特徴等を内容とする講習を行うよう努めた。
ウ 申請による運転免許の取消し等
高齢運転者が身体機能の低下などを理由に自動車等の運転をやめる際には,本人の申請により運転免許を取り消し,運転免許証を返納することができる。
また,運転免許証の返納後5年以内に申請すれば,運転経歴証明書の交付を受けることができ,金融機関の窓口等で本人確認書類として使用することができる。
警察では,申請による運転免許の取消し及び運転経歴証明書制度の周知を図るとともに,運転免許証を返納した者への支援について,地方公共団体を始めとする関係機関・団体等に働き掛けるなど,自動車の運転に不安を有する高齢者等が運転免許証を返納しやすい環境の整備に向けた取組を進めている。
平成30年中の申請による運転免許の取消件数は42万1,190件(うち75歳以上は29万2,089件)で,運転経歴証明書の発行件数は35万8,740件(うち75歳以上は24万4,726件)であった。
エ 安全運転サポート車の普及啓発
高齢運転者による交通事故の防止及び被害軽減に効果が期待できる安全運転サポート車について,関係機関・団体・事業所等が連携し,各種機会において試乗会を開催するなど,官民一体となって普及啓発を推進した。また,普及啓発に当たっては,その機能の限界や使用上の注意点を正しく理解し,機能を過信せずに責任を持って安全運転を行わなければならない旨の周知を図った。
(5)シートベルト,チャイルドシート及び乗車用ヘルメットの正しい着用の徹底
シートベルト,チャイルドシート及び乗車用ヘルメットの正しい着用を図るため,関係機関・団体と連携し,各種講習・交通安全運動等あらゆる機会を通じて,着用効果の啓発等着用徹底キャンペーンを積極的に行うとともに,着用義務違反に対する街頭での指導取締りを推進した。
(6)自動車安全運転センターの業務の充実
自動車安全運転センターは,道路の交通に起因する障害の防止及び運転免許を受けた者等の利便の増進に資することを目的として,次のような業務を行った。
ア 安全運転研修業務
安全運転中央研修所では,高速周回路,中低速周回路,模擬市街路及び基本訓練コースのほか,スキッドパン※,モトクロス※,トライアル※コース等の特殊な訓練コースを備えており,実際の道路交通現場に対応した安全運転の実践的かつ専門的な知識,技能についての体験的研修を行い,安全運転教育について専門的知識を有する交通安全指導者や高度な運転技能と知識を有する職業運転者,安全運転についての実践的な能力を身に付けた青少年運転者の育成を図っている。平成30年度には,延べ5万100人の研修を実施した。
イ 少年交通安全研修業務
安全運転中央研修所の附属交通公園では,幼児及び小・中学校の児童・生徒を対象とし,歩行者及び自転車利用者としての適正な交通の方法等について参加・体験型の交通安全研修を行い,交通安全意識の啓発を図っている。平成30年度には,8,115人の研修を実施した。
ウ 交通事故証明業務
交通事故当事者等の求めに応じて,交通事故の発生日時,場所,当事者の住所,氏名等を記載した交通事故証明書を交付した。
エ 経歴証明業務
運転者の求めに応じて運転経歴に係る証明書を交付し,運転者の利便を図った。運転経歴に係る証明書は,企業等における安全運転管理を進める上での有効な資料としての利用価値が高いことから,運転経歴に係る証明書の活用効果についてのリーフレットを配付するなど,その活用を推進した。
また,運転経歴に係る証明書のうち,無事故・無違反証明書又は運転記録証明書の交付申請をした者(過去1年以上の間,無事故・無違反で過ごした者に限る。)に対して,証明書に加えSD(SAFEDRIVER)カードを交付し,安全運転者であることを賞揚するとともに,安全運転を促した。
オ 累積点数通知業務
交通違反等の累積点数が運転免許の停止処分又は違反者講習を受ける直前の水準に達した者に対して,その旨を通知し安全運転の励行を促した。
カ 調査研究業務
ミニカーの最大積載重量に関する調査研究,高齢者講習のドライブレコーダー映像の交通安全教育への活用に関する調査研究等を行った。
(7)自動車運転代行業の指導育成等
平成30年末現在,全国で8,637業者が都道府県公安委員会の認定を受けて営業を行っている。自動車運転代行業に従事する従業員数は7万2,868人,使用されている随伴用自動車の台数は2万4,465台である。
警察庁と国土交通省においては,平成24年3月に「安全・安心な利用に向けた自動車運転代行業の更なる健全化対策」を策定し,自動車運転代行業の健全化及び利用者の利便性・安心感の向上を図るための施策を推進した。また,国土交通省では,自動車運転代行業の利用者保護の一層の確保を図るため,28年3月に「自動車運転代行業における適正な業務運営に向けた「利用者保護」に関する諸課題への対策」を策定し,直近では30年8月までに運転代行業務従事者に対する指導・教育マニュアルを作成する等順次各種の施策を推進しているところである。
(8)自動車運送事業等に従事する運転者に対する適性診断の充実
自動車運送事業等に従事する運転者が受診する適性診断の受診環境を整えるため,適性診断実施者への民間参入を促進しているところであり,適性診断の実施者について99社を認定した。また,軽井沢スキーバス事故を踏まえ,雇い入れた全ての貸切バスの運転者に適性診断(初任)の受診を義務付けた。
(9)危険な運転者の早期排除
ア 運転免許の拒否及び保留
運転免許試験に合格した者が,過去に無免許運転等の交通違反をしたり,交通事故を起こしたりしたことがあるときは点数制度により,また,一定の症状を呈する病気,麻薬中毒の事由に該当するときには点数制度によらず,免許を拒否し又は6月を超えない範囲で免許を保留することとされている。
イ 運転免許の取消し及び停止
運転免許を受けた者が,運転免許取得後に交通違反を犯し又は交通事故を起こしたときは点数制度により,また,一定の症状を呈する病気,麻薬中毒等の事由に該当することとなったときには点数制度によらず,その者の運転免許を取り消し又は6月を超えない範囲で運転免許の効力を停止する処分を行うこととされている。
また,暴走行為を指揮した暴走族のリーダーのように自ら運転していないものの,運転者を唆して共同危険行為等重大な道路交通法違反をさせた者に対しても,運転免許の取消し等を行っている(第1-7表)。
停止 | 合計 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
うち初心取消 | 90日以上 | 60日 | 30日 | 計 | ||
42,887 | 1,519 | 42,339 | 39,061 | 156,392 | 237,792 | 280,679 |
3 運転免許制度の改善
運転免許証の更新申請等に係る国民の負担軽減の観点から,更新申請書に添付する申請用写真の省略等,運転免許手続における簡素合理化を推進している。
また,障害のある運転免許取得希望者に対する利便性の向上を図るため,受験者である障害者が持ち込んだ車両による技能試験の実施等,障害者等に配意した施策を推進している。
4 安全運転管理の推進
安全運転管理者及び副安全運転管理者(以下「安全運転管理者等」という。)に対する講習を充実するなどにより,これらの者の資質及び安全意識の向上を図るとともに,事業所内で交通安全教育指針に基づいた交通安全教育が適切に行われるよう安全運転管理者等を指導した。
また,安全運転管理者等による若年運転者対策及び貨物自動車の安全対策の一層の充実を図るとともに,安全運転管理者等の未選任事業所の一掃を図り,企業内の安全運転管理体制を充実強化し,安全運転管理業務の徹底を図った。
さらに,事業活動に関してなされた道路交通法違反等についての使用者等への通報制度を十分活用するとともに,使用者,安全運転管理者等による下命,容認違反等については,使用者等の責任追及を徹底し適正な運転管理を図った。
事業活動に伴う交通事故防止を更に促進するため,ドライブレコーダー等,安全運転の確保に資する車載機器等を効果的に活用した交通安全教育や安全運転管理の手法等について周知を図った。
(1)安全運転管理者等の現況
安全運転管理者は,道路交通法により,自動車を5台以上使用する又は乗車定員11人以上の自動車を1台以上使用する事業所等において選任が義務付けられており,また,自動車を20台以上使用する事業所には,その台数に応じ,副安全運転管理者を置くことが義務付けられている(第1-8表)。
年 | 事業所 | 安全運転管理者 | 副安全運転管理者 | 管理下運転者数 | 管理下自動車台数 |
---|---|---|---|---|---|
か所 | 人 | 人 | 人 | 台 | |
30 | 337,632 | 337,632 | 70,916 | 7,500,293 | 4,682,261 |
安全運転管理者等の年齢層別構成では40歳代と50歳代が多く,職務上の地位別構成では,課長以上が約半数を占めた(第1-9表)。
区分 | 安全運転管理者 | 副安全運転管理者 | |||
---|---|---|---|---|---|
人員(人) | 構成率(%) | 人員(人) | 構成率(%) | ||
年齢層別 | 20~29歳 | 7,459 | 2.2 | 2,584 | 3.6 |
337,632 | 100.0 | 70,916 | 100.0 | ||
地位別 | 課長以上 | 175,399 | 51.9 | 32,831 | 46.3 |
337,632 | 100.0 | 70,916 | 100.0 |
(2)安全運転管理者等に対する講習の実施状況
都道府県公安委員会は安全運転管理者等の資質の向上を図るため,自動車及び道路交通に関する法令の知識,安全運転に必要な知識,安全運転管理に必要な知識等を内容とした講習を実施している。
平成29年度における安全運転管理者講習は延べ2,321回実施され,全受講対象者の98.8%に当たる33万1,270人が受講し,また,副安全運転管理者講習は延べ2,018回実施され,全受講対象者の98.4%に当たる6万8,879人が受講した(第1-10表)。
年度 | 安全運転管理者 | 副安全運転管理者 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
実施回数 | 受講対象者 (A) |
受講者数 (B) |
受講率 (B)/(A) |
実施回数 | 受講対象者 (A) |
受講者数 (B) |
受講率 (B)/(A) |
|
回 | 人 | 人 | % | 回 | 人 | 人 | % | |
29 | 2,321 | 335,438 | 331,270 | 98.8 | 2,018 | 69,977 | 68,879 | 98.4 |
(3)安全運転管理者協議会等に対する指導育成
企業等における自主的な安全運転管理を推進するとともに,安全運転管理者等の資質の向上を図るため,安全運転管理者等の組織への加入促進,自主的な検討会の開催,自動車安全運転センター安全運転中央研修所における研修の実施,無事故無違反運動等に対する指導育成等を行った。
都道府県ごとに組織されている安全運転管理者協議会に対しては,安全運転管理者等研修会の開催,事業所に対する交通安全診断等の実施を始め,交通安全教育資料及び機関誌(紙)の発行等について積極的に指導したほか,同協議会の自主的活動の促進を図っている。また,同協議会は,全国交通安全運動等を推進するとともに,職域における交通安全思想の普及活動に努めた。
5 事業用自動車の安全プラン等に基づく安全対策の推進
平成21年に策定した「事業用自動車総合安全プラン2009」に代わる新たなプランとして,「事業用自動車総合安全プラン2020」を29年6月に策定し,令和2年までの事業用自動車の事故による死者数を235人以下,事故件数を2万3,100件以下とする新たな事故削減目標の設定を行い,その達成に向けた各種取組を進めている。
(1)軽井沢スキーバス事故を受けた対策
平成28年1月に発生した軽井沢スキーバス事故を踏まえ,二度とこのような悲惨な事故を起こさないよう,同年6月3日に「軽井沢スキーバス事故対策検討委員会」においてとりまとめた85項目に及ぶ「安全・安心な貸切バスの運行を実現するための総合的な対策」を着実に実施しており,これらの対策については同検討委員会で定期的にフォローアップを行っている。
(2)運輸安全マネジメントを通じた安全体質の確立
平成18年10月より導入した「運輸安全マネジメント制度」により,事業者が社内一丸となった安全管理体制を構築・改善し,国がその実施状況を確認する運輸安全マネジメント評価を,30年度は780者に対して実施した。特に,29年7月の運輸審議会の答申を踏まえ,令和3年度までに全ての事業者の運輸安全マネジメント評価を行うとした貸切バス事業者については,30年度には741者に対して実施した。
(3)自動車運送事業者に対するコンプライアンスの徹底
自動車運送事業者における関係法令等の遵守及び適切な運行管理の徹底を図るため,悪質違反を犯した事業者や重大事故を引き起こした事業者等に対する監査の徹底及び法令違反が疑われる事業者に対する重点的かつ優先的な監査を実施している。
また,平成28年11月より,事故を惹起するおそれの高い事業者を抽出・分析する機能を備えた「事業用自動車総合安全情報システム」の運用を開始した。
さらに,貸切バスについては,軽井沢スキーバス事故を受けとりまとめた総合的対策に基づき,法令違反を早期に是正させる仕組みの導入や行政処分を厳格化して違反を繰り返す事業者を退出させるなどの措置を同年12月より実施するとともに,平成29年8月より,民間の調査員が一般の利用者として実際に運行する貸切バスに乗車し,休憩時間の確保などの法令遵守状況の調査を行う「覆面添乗調査」を実施している。
このほか,平成30年7月に過労防止関連違反等に係る行政処分の処分量定の引上げを行うなど,行政処分等の基準について改正を行った。
(4)飲酒運転等の根絶
事業用自動車の運転者による酒気帯び運転や覚醒剤,危険ドラッグ等薬物使用運転の根絶を図るため,点呼時のアルコール検知器を使用した確認の徹底や,薬物に関する正しい知識や使用禁止について,運転者に対する日常的な指導・監督を徹底するよう,講習会や全国交通安全運動,年末年始の輸送等安全総点検なども活用し,機会あるごとに事業者や運行管理者等に対し指導を行っている。
(5)ICT・新技術を活用した安全対策の推進
自動車運送事業者における交通事故防止のための取組を支援する観点から,デジタル式運行記録計等の運行管理の高度化に資する機器の導入や,過労運転防止のための先進的な取組等に対し支援を行っている。また,健康や過労運転に起因した事故の未然防止のため,運転特性や体調管理等に関する情報について,ビッグデータとして集積,活用し,運転者の体調に即した運行経路の設定が可能になる等の事故防止運行モデルの検討を行った。
(6)業態ごとの事故発生傾向,主要な要因等を踏まえた事故防止対策
輸送の安全を図るため,トラック・バス・タクシーの業態毎の特徴的な事故傾向を踏まえた事故防止の取組について評価し,更なる事故削減に向け,必要に応じて見直しを行う等のフォローアップを実施している。
(7)事業用自動車の事故調査委員会の提案を踏まえた対策
「事業用自動車事故調査委員会」において,社会的影響の大きな事業用自動車の重大事故について,背景にある組織的・構造的問題の更なる解明を図るなど,より高度かつ複合的な事故要因の調査分析を行っており,33件の報告書を公表した。
(8)運転者の体調急変に伴う事故防止対策の推進
睡眠呼吸障害,脳疾患,心疾患等の主要疾病の早期発見に寄与する各種スクリーニング検査をより効果的なものとして普及させるため,平成27年9月に,「事業用自動車健康起因事故対策協議会」を立ち上げ,普及に向けた課題を整理するための事業者へのアンケート調査等を行っている。また,事業者による運転者の脳検診受診等を促進するため,30年2月に「自動車運送事業者における脳血管疾患対策ガイドライン」を策定した。
(9)貨物自動車運送事業安全性評価事業(Gマーク制度)の促進
貨物自動車運送適正化事業実施機関では,貨物自動車運送事業者について,利用者がより安全性の高いトラック事業者を選びやすくするとともに,事業者全体の安全性向上に資するため,平成15年度から,事業者の安全性を正当に評価・認定し,公表する「貨物自動車運送事業安全性評価事業(Gマーク制度)」を実施している。30年12月現在,2万5,343事業所に対して「安全性優良事業所(Gマーク認定事業所)」の認定を行っている。
6 交通労働災害の防止等
(1)交通労働災害の防止
全産業で発生した労働災害のうち死亡災害についてみると,道路上の交通事故による死亡者は,全体の死亡者数の20.7%を占め,特に陸上貨物運送事業では事業の特性から道路上の交通事故によるものが41.6%を占めた(第1-11表)。
年 | 全産業 | 陸上貨物運送事業 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
労働災害全死者数 (A) |
道路上の交通事故 (B) |
道路上の交通事故 の比率(B)/(A) |
労働災害全死者数 (A) |
道路上の交通事故 (B) |
道路上の交通事故 の比率(B)/(A) |
|
人 | 人 | % | 人 | 人 | % | |
厚生労働省では,「交通労働災害防止のためのガイドライン」に基づき,都道府県労働局,労働基準監督署,関係団体を通じて,自動車運転者の睡眠時間の確保に配慮した適正な労働時間等の管理及び走行管理の実施等の対策を積極的に推進するよう,関係事業者に対し周知徹底することにより,交通労働災害防止対策の推進を図った。
(2)運転者の労働条件の適正化等
ア 自動車運転者の労働条件確保のための監督指導等
自動車運転者の労働時間等の労働条件の確保を図り,もって交通労働災害の防止に資するため,自動車運転者を使用する事業場に対し,重点的な監督指導を実施することなどにより(第1-12表),労働基準法(昭22法49)等の関係法令及び自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(平元労働省告示7)の遵守徹底を図った。また,「特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法等の一部を改正する法律」(平25法83)の附帯決議において,「国土交通省及び厚生労働省は,累進歩合制の廃止について改善指導に努めること」等とされたことを踏まえ,タクシー運転者の賃金制度のうち,累進歩合制度の廃止に係る指導等の実施について,一層の徹底を図った。
監督実施 事業場数 |
改善基準告示 違反事業場数 |
||
---|---|---|---|
トラック業 | 4,295 | 2,963 | |
バス業 | 276 | 159 | |
ハイヤー・タクシー業 | 391 | 176 | |
その他 | 474 | 218 |
イ 相互通報制度等の活用
交通関係行政機関が,相互通報制度等を活用し,連携をより一層密にすることにより,協力して自動車運送事業者等の労務管理及び運行管理の適正化を図った。
ウ 労務管理の推進
自動車運転者の労働条件及び安全衛生の確保及び改善を図るため,使用者等に対し,労働時間管理適正化指導員により,指導・助言等を行った。
7 道路交通に関する情報の充実
(1)危険物輸送に関する情報提供の充実等
危険物の輸送中の事故による大規模な災害を未然に防止するため,関係省庁の密接な連携の下に,危険物の運送業者に対して,適正な運行計画の作成等の運行管理の徹底,関係法令の遵守,異常・事故発生時の応急措置を記したイエローカード(緊急連絡カード)の携行及び容器イエローカードの添付等を指導し,危険物輸送上の安全確保の徹底を図っている。
また,危険物運搬車両の交通事故により危険物の流出事故等が発生した場合に,安全かつ迅速に事故の処理等を行うため,危険物災害等情報支援システムを運用し,消防機関に対し,危険物の物性及び応急措置等の情報提供を行っている。
(2)国際海上コンテナの陸上輸送にかかる安全対策
国際海上コンテナの陸上運送の安全対策を充実させるため,平成25年6月に新たな「国際海上コンテナの陸上における安全輸送ガイドライン」等を策定し,地方での関係者会議や関係業界による講習会等を通じ,ガイドライン等の浸透や関係者と連携した実効性の確保に取り組んでいる。
(3)気象情報等の充実
道路交通に影響を及ぼす台風,大雨,大雪,津波等の自然現象について,的確に実況監視を行い,適時適切な予報・警報等を発表・伝達して,事故の防止及び被害の軽減に努めた。
ア 気象監視体制の整備
平成27年に開始した静止気象衛星「ひまわり8号」の運用を継続した。また,29年3月10日に「ひまわり9号」の待機運用を開始し,2機体制を確立した。
イ 道路情報提供装置等の整備
安全な通行を確保するため,道路の積雪状況や路面状況等を収集し,道路利用者に提供する道路情報提供装置等を整備した。
ウ 地震・津波・火山監視業務の整備
(ア) 地震・津波監視業務の整備
24時間体制で全国の地震活動を監視し,迅速かつ的確な地震情報や津波警報等の発表を行うとともに,情報の内容や利活用について周知・広報の取組を推進した。また,沖合の地震・津波観測データの活用等を進め,地震・津波監視体制を拡充した。緊急地震速報については,周知・広報の取組を推進するとともに,より一層の精度向上のために,同時に複数の地震が発生した場合でも適切に発表するための技術的な改善を図った。
また,関係機関や基盤的調査観測網によるデータを収集・処理し,そのデータを防災情報等に活用するとともに,その処理結果を地震調査研究推進本部地震調査委員会による地震活動評価や関係機関の地震調査研究に資するよう提供した。
(イ) 火山監視体制と噴火時等の避難体制の推進
全国111の活火山について,火山活動の監視・評価の結果に基づき噴火警報等及び降灰予報の的確な発表を行った。また,「火山防災のために監視・観測体制の充実等が必要な火山」として火山噴火予知連絡会によって選定された50火山については常時観測火山として,24時間体制で火山活動を監視するとともに,平常時からの火山防災協議会(都道府県,市町村,気象台,砂防部局,自衛隊,警察,消防,火山専門家等で構成)における避難計画の共同検討を通じて,噴火警戒レベル(平成31年3月現在,43火山で運用中)の設定や改善を推進した。また,28年12月21日より,常時観測火山の観測データを気象庁ホームページに掲載するなど,火山情報の提供の改善を進めた。
エ 気象知識の普及等
気象・地象・水象の知識の普及など気象情報の利用方法等に関する講習会等の開催,広報資料の配布等を行ったほか,防災機関の担当者を対象に予報,警報等の伝達等に関する説明会を開催した。