第1編 陸上交通 第1部 道路交通 第2章 道路交通安全施策の現況
第4節 車両の安全性の確保
第1編 陸上交通
第1部 道路交通
第2章 道路交通安全施策の現況
第4節 車両の安全性の確保
1 自動車保有台数の推移
平成30年12月末現在の自動車保有台数は約8,219万台であり,前年に比べて24万台(約0.3%)増加し,自動車1台当たりの人口は1.5人(30年9月末現在)である(第1-41図)。
自動車保有台数を用途別及び車種別にみると,軽四輪乗用自動車が約2,244万台と最も多数を占め,全自動車台数の27.3%を占めている。そのほか普通乗用自動車が約1,920万台で23.4%,小型乗用自動車が約2,038万台で24.8%となっており,この3車種で全体の75.5%を占めている。また,対前年増加率では,普通乗用自動車2.1%が目立っている(第1-13表)。
用途別・車種別 | 平成30年 | 平成29年 | 対前年比 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
台数 | 構成率 | 台数 | 構成率 | 増減数 | 増減率 | ||
台 | % | 台 | % | 台 | % | ||
貨物用計 | 14,473,012 | 17.6 | 14,493,399 | 17.7 | -20,387 | -0.1 | |
乗合用 | 普通車 | 112,627 | 0.1 | 112,672 | 0.1 | -45 | 0.0 |
乗合用計 | 233,223 | 0.3 | 233,466 | 0.3 | -243 | -0.1 | |
乗用 | 普通車 | 19,198,666 | 23.4 | 18,799,713 | 22.9 | 398,953 | 2.1 |
乗用計 | 62,026,432 | 75.5 | 61,803,642 | 75.4 | 227,790 | 0.4 | |
特種(殊)用途用 | 普通車 | 1,090,920 | 1.3 | 1,079,808 | 1.3 | 11,112 | 1.0 |
特種(殊)用途用計 | 1,751,852 | 2.1 | 1,736,808 | 2.1 | 15,044 | 0.9 | |
二輪車 | 小型二輪車 | 1,704,974 | 2.1 | 1,686,196 | 2.1 | 18,778 | 1.1 |
二輪車計 | 3,708,309 | 4.5 | 3,678,721 | 4.5 | 29,588 | 0.8 | |
総計 | 82,192,828 | 100.0 | 81,946,036 | 100.0 | 246,792 | 0.3 |
2 車両の安全性に関する基準等の改善の推進
(1)道路運送車両の保安基準の拡充・強化等
ア 車両の安全対策の推進
第10次交通安全基本計画(計画年度:平成28~令和2年度)の策定にあわせて取りまとめられた交通政策審議会陸上交通分科会自動車部会の報告を踏まえ,子供・高齢者の安全対策,歩行者・自転車乗員の安全対策,大型車がからむ重大事故対策や,自動運転など新技術への対応を中心に車両安全対策の推進に取り組んだ。また,高齢運転者による事故防止対策として,29年3月の関係省庁副大臣等会議における中間取りまとめに基づき,衝突被害軽減ブレーキについて,国際連合の場において国際基準の策定に向けた検討を行うとともに,基準の策定に先立ち,国による性能認定制度を創設するなど,「安全運転サポート車(サポカーS)」の普及啓発・導入促進に取り組んだ。
イ 道路運送車両の保安基準の拡充・強化
自動車の安全性の向上を図るため,国際連合欧州経済委員会の自動車基準調和世界フォーラム(WP29)において策定した国際基準を国内に導入することを通じ,シートベルト非装着警報装置(シートベルトリマインダー)の義務付け対象座席を拡大するなど,保安基準の拡充・強化を図った。また,公道を走行するカートについては,他の交通からの視認性の向上及びシートベルトの設置等の安全確保策について検討を行った。
(2)安全に資する自動運転技術を含む先進安全自動車(ASV)の開発・普及の促進
先進安全自動車(ASV)の開発・実用化・普及を促進するため,平成28年度より開始した第6期ASV推進計画において,自動運転の実現に必要な先進安全技術について,産学官連携の下,実用化されたASV技術の本格的な普及戦略及び路肩退避型等発展型ドライバー異常時対応システムの技術要件等の検討に取り組んだ。
また,バス,トラック等の安全対策として,衝突被害軽減ブレーキ,車両安定性制御装置,車線逸脱警報装置等ASV装置に対する補助を継続して実施するとともに,従来より実施している衝突被害軽減ブレーキ及び車両安定性制御装置搭載車両に対する税制特例措置に加え,平成29年度より新たに開始した車線逸脱警報装置搭載車両に対する特例措置について,30年度税制改正において対象車両の拡大を行った。
一方,自動運転システムの安全基準について国際的に議論するため,WP29傘下の自動運転分科会及びWP29のブレーキ・走行装置分科会(GRRF)傘下の自動操舵専門家会議において,それぞれ英国及びドイツとの共同議長として,自動運転に関するセキュリティガイドラインや高速道路での自動運転を可能とする自動操舵の技術基準の策定活動を主導した。その結果,自動操舵のうち,運転者がハンドルを握った状態での車線維持支援機能等に関する国際基準が平成29年10月に成立したことを受けて,これを国内に導入した。さらに国内においても,同年9月に交通政策審議会の下に小委員会を設置し,自動運転車等の設計・製造過程から使用過程にわたる総合的な安全確保に必要な道路運送車両法(昭26法185)に基づく制度のあり方について検討を行い,31年1月にとりまとめを行った。
3 自動車アセスメント情報の提供等
自動車アセスメントは,市販されている自動車やチャイルドシートの安全性能評価試験を行い,その結果を公表することで,ユーザーが安全な自動車等を選択できる環境をつくり,安全な自動車等の普及を図ることを目的としている。平成26年度より,衝突被害軽減ブレーキや車線逸脱警報装置など予防安全技術の評価を開始し,30年度には,ペダル踏み間違い時加速抑制装置等の評価を開始した。
4 自動車の検査及び点検整備の充実
(1)自動車の検査の充実
ア 自動車検査の実施状況
自動車の安全確保と公害の防止を図るため,独立行政法人自動車技術総合機構と連携して,道路運送車両法に基づき,自動車(軽自動車及び小型特殊自動車を除く。)の新規検査,継続検査及び構造等変更検査を行っており,平成29年度の検査実施車両は約2,517万台であった(第1-14表)。また,不正改造車の排除等を目的とした街頭検査を行っており,29年度の検査実施車両は,約12万台であった。
検査の種類 | 平成29年度 | 平成28年度 | 平成27年度 | 平成26年度 | 平成25年度 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
件数 | 構成率 | 件数 | 構成率 | 件数 | 構成率 | 件数 | 構成率 | 件数 | 構成率 | |
件 | % | 件 | % | 件 | % | 件 | % | 件 | % | |
計 | 25,173,249 | 100.0 | 25,899,473 | 100.0 | 25,146,261 | 100.0 | 25,345,878 | 100.0 | 25,733,888 | 100.0 |
イ 自動車検査施設の整備
自動車検査施設については,自動車ユーザーが受検しやすいよう音声誘導装置付検査機器及び映像式受検案内表示システムを導入している。また,より確実な自動車検査を行うため,車両画像取得装置等の自動車検査の高度化施設を整備し活用している。
ウ 軽自動車の検査の実施状況
軽自動車検査協会において,平成29年度に約1,441万台の軽自動車(二輪の軽自動車を除く。)の検査を実施した。
(2)型式指定制度の充実
自動車の型式指定等に当たっては,保安基準への適合性及び生産過程における品質管理体制等の審査を独立行政法人自動車技術総合機構交通安全環境研究所と連携して実施し,自動車の安全性の増進等を図っている。
また,複数の自動車メーカーにおける,型式指定車の完成検査における不適切な取扱いを受け,「適切な完成検査を確保するためのタスクフォース」において,平成30年3月にとりまとめられた中間とりまとめ等を踏まえ,30年10月に道路運送車両法に基づく省令の一部改正等を行い,これまで通達において規定されていた完成検査員の選任に係るルールを省令等に規定したほか,完成検査の記録を書き換えできなくする措置や,型式指定制度の適正な運用の確保のための勧告制度に係る規定を新設した。さらに,完成検査における不適切な取扱いを行っている自動車メーカーに対する是正措置命令の創設等を行うための「道路運送車両法の一部を改正する法律案」を31年3月に国会に提出した。
(3)自動車点検整備の充実
ア 自動車点検整備の推進
自動車ユーザーの保守管理意識の高揚と点検整備の適切な実施の推進を図るため,平成30年9月,10月(北海道は7月から10月まで)を強化月間として「自動車点検整備推進運動」を全国的に展開した。
また,大型車の車輪脱落事故やバスの車両火災事故,車体腐食による事故等の点検・整備等の不良に起因する事故の防止を図るため,事故の発生状況のとりまとめ,公表や点検・整備等の実施に当たって注意すべき事項の周知徹底を行った。
イ 不正改造車の排除
道路交通に危険を及ぼし,環境悪化の原因となるなど社会的問題となっている不適切な着色フィルムの貼付,消音器の切断・取り外し等の不正改造車等を排除するため,関係機関の支援及び自動車関係団体の協力の下に「不正改造車を排除する運動」を全国的に展開した。特に,平成30年6月を強化月間として,広報活動の一層の推進,関係者への指導徹底等により,自動車ユーザー及び自動車関係事業者等の不正改造防止に係る意識の更なる高揚を図るとともに,街頭検査の重点的実施等により,不正改造車の排除を徹底した。
また,不正改造を行った自動車分解整備事業者に対する立入検査の実施等を厳正に行った。
ウ 自動車分解整備事業の適正化
点検整備に対する自動車ユーザーの理解と信頼を得るため,法令違反行為を行った自動車分解整備事業者及び指定自動車整備事業者に対し,処分基準に基づく行政処分を適切に実施し,各地方運輸局等において公示するとともに,国土交通省ネガティブ情報検索サイトを通じて処分の統一的な公表を実施している。
また,認証を受けずに分解整備を行っている事業者を排除し,道路運送車両の安全確保を図るため,毎年7月を「未認証行為の調査・確認・指導のための強化月間」と定め,情報の収集及び収集した情報に基づく指導等を推進した。
エ 自動車の新技術への対応等整備技術の向上
自動車分解整備事業者は,自動車の点検整備を適切に実施するため,自動車への新技術の採用等の車社会の環境の変化に対応することが求められている。このため,整備主任者を対象とした技術研修等の実施により,自動車の新技術及び多様化するユーザーニーズに対応していくための技術の向上や高度化を図っている。また,自動車分解整備事業者の整備技術の高度化等への支援を行った。
また,平成25年に取りまとめた「自動車整備技術の高度化検討会」を27年9月に再開し,これまでの排ガス関連を中心とした装置に加えて,新技術が用いられている安全装置に対する整備環境及び人材育成体制の強化を図るための検討を行っている。
さらに,新技術が採用された自動車の整備や自動車ユーザーに対する自動車の正しい使用についての説明等のニーズに対応するため,一級自動車整備士制度を活用している。なお,平成29年度には773名が一級小型自動車整備士技能検定に合格した(30年3月末までの累計1万4,900名)。
5 リコール制度の充実・強化
自動車のリコールの迅速かつ着実な実施のため,自動車メーカー等及びユーザーからの情報収集に努め,自動車メーカー等のリコール業務について監査等の際に確認・指導するとともに,安全・環境性に疑義のある自動車については独立行政法人自動車技術総合機構交通安全環境研究所において現車確認等による技術的検証を行った。加えて,リコール改修を促進するため,ウェブサイトやソーシャル・メディアを通じたユーザーへの情報発信を強化した。
また,不具合情報の収集を強化するため,「自動車不具合情報ホットライン」(www.mlit.go.jp/RJ/)について周知活動を積極的に行った。
さらに,国土交通省に寄せられた不具合情報や事故・火災情報等を公表し,ユーザーへの注意喚起が必要な事案や適切な使用及び保守管理,不具合発生時の適切な対応を促進するために必要な事項について,ユーザーへの情報提供を実施した。なお,平成30年度のリコール届出は,自動車は408件で対象台数は822万台,チャイルドシートは1件でその対象は5,022台であった。
6 自転車の安全性の確保
自転車の安全な利用を確保し,自転車事故の防止を図るため,駆動補助機付自転車(人の力を補うため原動機を用いるもの)及び普通自転車に係る型式認定制度を運用しており,平成30年度には,駆動補助機付自転車を99型式,普通自転車を86型式認定した。
この型式認定制度は,型式認定を受けた駆動補助機付自転車等に型式認定番号等を表示させ,また,基準適合品であることを示す標章(TSマーク)を貼付することができることとし,当該駆動補助機付自転車等が道路交通法等に規定されている基準に適合したものであることを外観上明確にして,利用者の利便を図るとともに,基準に適合した駆動補助機付自転車等を普及させることにより,交通の安全の推進を図るものである。
また,自転車利用者が定期的な点検整備や正しい利用方法等の指導を受ける気運を醸成するため,関係団体は全国各地の学校等で自転車の安全点検促進活動や安全利用講習を実施するとともに,近年,歩行者との事故等自転車の利用者が加害者となる事故が発生していることに鑑み,こうした賠償責任を負った際の支払原資を担保し,被害者の救済の十全を図るため,損害賠償責任保険等への加入を促進した。
さらに,夜間における交通事故の防止を図るため,灯火装置の取付けの徹底と反射器材の普及促進を図り,自転車の被視認性の向上を図った。
加えて,BAAマークをはじめとする各種マーク制度(SBAA PLUSマーク,幼児2人同乗基準適合車マーク,TSマーク,SGマーク,JISマーク)を活用した安全性の高い自転車の供給・普及のため自転車技士※及び自転車安全整備士※に関する制度を後援した。