特集 「未就学児等及び高齢運転者の交通安全緊急対策について」
第2章 未就学児等及び高齢運転者の交通安全緊急対策
第4節 主な取組の進捗状況

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特集 「未就学児等及び高齢運転者の交通安全緊急対策について」

第2章 未就学児等及び高齢運転者の交通安全緊急対策

第4節 主な取組の進捗状況

「緊急対策」の主な進捗状況については,令和元年12月19日に第3回関係閣僚会議を開催し,総理に報告したところである。以下ではその後の進展も含めて,「緊急対策」に位置付けられた主な施策の取組状況を紹介する。

1 未就学児等に対する施策
(1)未就学児が日常的に集団で移動する経路の緊急安全点検

交通事故から次世代を担う子供のかけがえのない命を社会全体で守るため,関係省庁が連携し,全国の保育所や幼稚園など約6万2千施設を対象に,「未就学児が日常的に集団で移動する経路の緊急安全点検」を実施したところ,各施設から見て交通安全の観点から危険があるとする報告が約9万8千件報告された。このうち,施設のみで対応できないケースなど延べ約5万2千件の報告を基に,施設関係者と道路管理者,警察等との連携による「合同点検」を夏から秋頃にかけて実施したところ,全国で延べ約3万6千件について対策が必要とする報告が取りまとめられた。これを踏まえつつ令和元年度補正予算等も活用し,順次,各道路管理者,警察において,対策が実施されている(対策の概要は,(4)道路環境整備,(5)交通安全施設の整備等参照。)。

特集-第49図 未就学児が日常的に集団で移動する経路の緊急安全点検。関係閣僚会議、交通安全緊急対策、緊急安全点検、危険箇所の抽出、対策必要箇所の抽出、緊急安全点検実施状況、緊急安全点検実施結果の順に行っている
特集-第50図 緊急安全点検実施状況(概数)(令和元年12月19日公表)
施設種別 対象施設数 各施設からの報告件数(延べ数)
各施設において危険があると認めた延べ件数 道路管理者・警察等との合同点検実施対象の延べ件数 合同点検の結果対策が必要とされた延べ件数
保育所等
  • 保育所
  • 地域型保育事業所
約29,000 約59,000 約33,000 約23,000
幼稚園等
  • 公立幼稚園
  • 私立幼稚園
  • 国立大学附属幼稚園
  • 各特別支援学校幼稚部
約9,000 約7,000 約3,000 約2,000
認定こども園
  • 幼保連携型
  • 幼稚園型
  • 保育所型
  • 地方裁量型
約7,000 約14,000 約7,000 約5,000>
その他の施設
  • 認可外保育施設(企業主導型保育事業含む)
  • 児童発達支援事業所
約16,000 約18,000 約9,000 約5,000
合計 約62,000 約98,000 約52,000 約36,000

※ 「対象施設数」は,関係省庁資料等に基づくもの。

※ 「各施設からの報告件数」は,10月末に報告を受けた件数を取りまとめたもの。

※ 各施設からの報告件数は「延べ数」であり,同一の場所について重複して報告されることもあり得る。

※ 「道路管理者・警察等との合同点検実施対象の延べ件数」と「合同点検の結果対策が必要とされた延べ件数」の差分は,合同点検の結果対策不要となった件数のほか,合同点検未実施件数を含む。このため,「合同点検の結果対策が必要とされた延べ件数」は,今後増加する可能性がある。

※ 対策については,道路管理者による対策必要箇所約28,000箇所及び警察による対策必要箇所約7,000箇所(同一箇所に複数の施設からの報告に基づく対策が予定されている場合であっても1箇所として計上)のほか,移動経路の変更等,施設による対策を実施することもある。

(2)キッズ・ゾーンの設定等

厚生労働省では「緊急対策」に沿って,保育所等の周辺の安全対策を行う「キッズ・ゾーン」を創設し,令和元年11月に各自治体宛に周知を行った。「キッズ・ゾーン」は,保育所等の周囲半径500メートルを原則として,道路管理者や都道府県警察と協議の上,市町村等が設定し,その範囲内で日中の散歩コースを中心に,地域の関係機関と協力しつつ,具体的な交通安全対策を検討することとしている。

また,保育所外等での活動において,子供が集団で移動する際の安全確保を図れるよう,園外活動時の見守り等を行う,いわゆる「キッズ・ガード」について,令和2年度予算において必要となる経費を計上した。

キッズ・ゾーン。緑色の舗装の中に白線で「キッズゾーン」と記されている写真
(3)スクールガード・リーダーの活動支援,スクール・ゾーンの設定等

文部科学省では,「緊急対策」を受けて,内閣府,厚生労働省と連携して「緊急安全点検」を行うとともに,「幼児の通学路や園外活動中における見守り活動の充実」「スクール・ゾーンの設定促進」及び「通学路の合同点検」の取組を推進してきている。

また,「幼児の通学路や園外活動中における見守り活動の充実」として,地域の見守りの推進役となるスクールガード・リーダーの活動等を支援している。

スクールガード・リーダーは,市町村等から委嘱を受けた警察官OBや教職員OBなどの防犯の専門的な知識を有する者で,各学校を巡回し,警備のポイントや改善すべき点等の指導,学校安全ボランティアに対して防犯・交通安全に関する指導を行っている。スクールガード・リーダーや学校,警察,PTA,地域住民等が連携し,地域一丸となり子供の安全を守ることが重要である。

令和2年度予算においては,スクールガード・リーダー配置等の予算を拡充し,見守り体制の充実や学校安全ボランティアに対する講習会の充実を図っている。

「スクール・ゾーンの設定」については,令和元年6月に都道府県教育委員会等に対し「スクール・ゾーンの設定の推進について(依頼)」を通知し,設定を推進することにより,学校の周囲における交通安全対策につなげていくよう依頼したところである。

「通学路の合同点検」については,平成24年に京都府亀岡市で発生した登校中の交通事故を受けて,各市町村が策定した「通学路交通安全プログラム」等に基づき,学校関係者,警察,道路管理者等による通学路の合同点検,点検を踏まえた道路交通環境の整備等を行ってきているところであるが,令和2年度以降も同様の取組を継続して行い,通学路の交通安全の確保を図ることとしている。

スクールガード・リーダーによる見守り活動状況。白い服を着たスクールガード・リーダーが横断歩道を横断中の児童に合図をしている写真
特集-第45図 高齢運転者に関わる主な道路交通法改正)
施設種別 設定割合
幼稚園 10.9%
小学校 46.5%

※ 学校安全の推進に関する計画に係る取組状況調査(平成30年度実績)

(4)道路環境の整備

子供が犠牲となる事故等の発生を受け,令和元年度に実施した未就学児が日常的に集団で移動する経路の緊急安全点検等を踏まえ,幼稚園,保育所,認定こども園等のほか,その所管機関や道路管理者,警察等が連携し,必要な対策を推進することとしている。

高校,中学校に通う生徒,小学校,幼稚園,幼保連携型認定こども園,保育所や児童館等に通う児童・幼児の通行の安全を確保するため,通学路等の歩道整備等を積極的に推進するとともに,ハンプ・狭さく等の設置,路肩のカラー舗装,防護柵の設置,自転車道・自転車専用通行帯・自転車の通行位置を示した道路等の整備,立体横断施設の整備等の対策を推進している。

(5)交通安全施設の整備等

警察庁では,保育所,幼稚園,道路管理者等と合同で実施した緊急安全点検の結果,「ゾーン30」の整備を始め,信号機の新設・多現示化・LED化,横断歩道の新設・塗り直し,止まれ文字の塗り直し等の,交通安全施設の整備等を推進しており,今後も関係省庁と連携し必要な対策を早期に進めていくこととしている。また,可搬式速度違反自動取締装置を活用した取締りや「ゾーン30」入口での交通安全指導等,子供の通行が多い生活道路等における交通指導取締りを通じて,子供の安全な通行を確保するために取り組んでいる。

また,「キッズ・ゾーン」については,市町村等がその設定をする際に警察を含めた関係機関が協議することとなっており,警察においても設定に協力するとともに必要な対策を実施している。具体的には,スクール・ゾーンに準じた交通規制や緊急安全点検の結果も踏まえた「ゾーン30」の整備の検討のほか,交通安全施設等の整備,重点的な交通指導取締り,交通安全教育の実施といった交通安全対策を推進している。

なお,生活道路における交通安全対策の柱と位置付けられている「ゾーン30」については,これまで小・中学校等の通学路を含む区域等を選定してきており,令和元年度末までに全国で3,864箇所を整備しているが,今後は,未就学児を中心に子供が日常的に集団で移動する経路においても「ゾーン30」の整備等面的対策を含めた交通安全施設整備を強化していく必要がある。そこで,適切な箇所への「ゾーン30」の整備を進めるとともに,道路管理者と更なる安全対策を推進していくに当たって,国土交通省がハンプ・狭さくといった物理的デバイスの設置等を支援する「生活道路対策エリア」と「ゾーン30」について整合を図っていくなど,警察と道路管理者が連携し,生活道路におけるゾーン対策を一層推進していくこととしている。

可搬式速度違反自動取締装置を活用した交通指導取締り状況。路側帯に装置を設置し警察官が装置を確認している写真
2 高齢者の安全運転を支える施策
(1)運転技能検査制度及び申請による限定条件付免許制度の導入

ア 「高齢運転者交通事故防止対策に関する調査研究」分科会

高齢運転者による痛ましい事故の発生等を受けて平成29年7月に中央交通安全対策会議交通対策本部で決定された「高齢運転者による交通事故防止対策について」では,今後の方策として,80歳以上の運転リスクが特に高い者への実車試験の導入や「安全運転サポート車」限定免許の導入といった運転免許制度の更なる見直しについて,検討することとされた。また,令和元年6月に「昨今の事故情勢を踏まえた交通安全に関する関係閣僚会議」で決定された「緊急対策」においても,安全運転支援機能を有する自動車を前提として高齢者が運転できる運転免許制度の創設に向け,令和元年度内に結論を得ることとされた。

これらの政府決定等を踏まえ,警察庁においては,平成29年以降,調査研究を進め,令和元年度には「高齢運転者交通事故防止対策に関する調査研究」分科会を開催し,今後の高齢運転者の運転免許制度の在り方に関する検討を行った。その結果,令和2年3月に取りまとめられた分科会の最終報告において,次のような考え方が示された。

特集-第52図 緊急安全点検を踏まえた警察による対策のイメージ。止まれ文字の塗り直し、ゾーン30の整備(30キロの区域規制、ゾーン入口の明示など)、横断歩道の新設・塗り直し、信号機の新設、信号機の多現示化・LED化を示している

(ア) 運転技能検査

令和元年中の高齢運転者による死亡事故の情勢を見ると,認知機能検査で認知機能低下のおそれがないと判定された者によるものが6割以上を占めており,認知機能以外の身体機能の低下が関わる運転技能についての検査を導入することが必要であるとされた。そこで,一定の年齢や一定の要件に該当する者に対して運転技能検査を行うこととし,その結果,運転技能が特に不十分な場合には運転免許証の更新を認めないことが適当であるとされた。

また,運転技能検査を導入する場合,例えば,事故歴や事故につながりやすい特定の違反歴を確認するなどの方法により,運転技能検査の対象者を,将来事故を発生させるリスクがより高い者に絞り込むことが考えられるとされた。

(イ) 限定条件付免許

運転免許証を返納すると一切の運転ができなくなることから,自己の運転能力の低下を自覚した高齢者等が,自主的な申請によって,限定条件の付与を受けたり,新規に限定条件付免許を取得したりする限定条件付免許制度を設けることが,高齢者等の安全運転やモビリティの確保に資するとされた。

限定条件付免許の内容としては,衝突被害軽減ブレーキ等の先進安全技術を搭載した安全運転サポート車に限定する免許の条件を,制度として設けることが考えられるとされた。ただし,現在普及している安全運転サポート車の先進安全技術では,事故防止効果が限定的であることに留意する必要があり,今後の技術の実用化の動向を踏まえ,具体的な内容について検討する必要があるとされた。

イ 道路交通法改正

これらを踏まえ,令和2年6月,第201回国会において,高齢運転者対策の充実・強化を図るための規定の整備等を内容とする道路交通法の一部を改正する法律が成立した。今回の改正では,75歳以上の運転免許を受けた者で一定の要件に該当するものは,運転免許証の更新時に,運転技能検査を受けていなければならないこととされるとともに,都道府県公安委員会は,運転技能検査の結果により運転免許証の更新をしないことができることとされた。また,運転免許を受けた者は,都道府県公安委員会に,運転することができる自動車を一定の機能を有する自動車に限定する条件その他の一定の条件を,その者の運転免許に付することを申請することができることとされた。

(2)衝突被害軽減ブレーキの基準策定等

乗用車等の衝突被害軽減ブレーキに関する国際基準の発効を受けて,令和2年1月に国内基準を策定した。国内基準においては,世界に先駆け3年11月以降の国産新モデルから段階的に装備を義務付けることとしたほか,「ペダル踏み間違い急発進抑制装置」及び「対歩行者の衝突被害軽減ブレーキ」の性能認定制度を令和元年度内に創設し,2年4月から申請受付を開始した。また,既販車への後付けの安全運転支援装置の普及のため,後付けのペダル踏み間違い急発進抑制装置の性能認定制度を令和元年度内に創設し,2年4月から申請受付を開始した。その他,新たな先進安全技術の開発促進のため,自動速度制御装置(ISA:Intelligent Speed Assistance)に関する技術的要件等のガイドラインを令和元年12月に策定した。

特集-第53図 「緊急対策」に係る乗用車等の車両安全対策の措置方針。衝突被害軽減ブレーキ、ペダル踏み間違い急発進抑制装置(加速抑制装置)、自動速度制御装置(ISA: Intelligent Speed Assistance)について、令和元年度、令和2年度、令和3年度以降の措置を示している
衝突被害軽減ブレーキ(イメージ)。車の前方に人が立っており、ブレーキランプが点灯している様子を示している
ペダル踏み間違い急発進抑制装置(イメージ)。車の前方に壁があり、アクセルを踏む様子を示している
(3)安全運転サポート車の普及促進

高齢運転者による交通事故が相次いでいることを踏まえ,経済産業省及び国土交通省においては,令和元年度補正予算において,高齢運転者の交通安全対策の一環として,65歳以上の高齢者を対象に,安全運転支援装置を搭載した安全運転サポート車(サポカー)の購入等を補助するサポカー補助金を創設した。具体的には,対歩行者衝突被害軽減ブレーキやペダル踏み間違い急発進抑制装置を搭載したサポカーの購入に最大10万円,後付けのペダル踏み間違い急発進等抑制装置の購入・設置に最大4万円の補助を実施する。

経済産業省では,高齢運転者等に対して,サポカーの機能や使用方法等を分かりやすく伝えるため,サポカーポータルサイトの運営や全国での「サポカー実感試乗会」を開催した。サポカーポータルサイトには,これまで31.7万超の延べアクセス数があった(令和2年3月末時点)。また,「サポカー実感試乗会」は,令和2年1月から2月に経済産業省主催で北海道から九州まで全国8カ所の運転免許センター等で開催し,計625名が試乗した。

(4)高齢者に優しい道路環境の構築(高速道路における逆走対策)

重大事故に繋がる可能性の高い高速道路の逆走は,2日に1回以上の割合で発生しており,逆走した運転手の約5割が75歳以上となっている。これまで,インターチェンジやジャンクション部等でラバーポールや大型矢印路面標示の設置といった物理的・視覚的な抑止対策等を進めた結果,令和元年の逆走事故件数は平成28年と比較し約2割減少した。国土交通省においては,今後,行き先を間違えた車に対する安全・適切な誘導,平成30年度に民間企業から公募・選定した逆走対策技術の積極的な展開,東北道旧蓮田サービスエリアでの実験による路車連携技術の開発を推進し,令和11年までに逆走による重大事故ゼロを目指す。

特集-第54図 高速道路を逆走した運転者の年齢(平成23~令和元年合計)。75歳以上が45%、30~65歳未満が25%、65~75歳未満が21%と続いている
3 高齢者の移動を伴う日常生活を支える施策
(1)移動手段の確保・充実

地域公共交通に関する施策について,国土交通省では,平成26年に「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」(平19法59)を改正し,地域の総合行政を担う地方公共団体が先頭に立って,関係者と適切に役割分担しながら,まちづくりや観光振興等の地域戦略と連携しつつ,地域にとって最適な公共交通ネットワークの形成を,関係者の合意の下で実現していくための枠組みを構築した。

同法に基づき,令和2年4月末までに592件の地域公共交通網形成計画が作成され,38件の地域公共交通再編実施計画が国土交通大臣の認定を受けるなど,持続可能な地域公共交通ネットワークの形成に向けた取組が進められてきた。

また,人口減少の本格化,運転者不足の深刻化等に伴って,公共交通サービスの維持・確保が厳しさを増している中,高齢者の運転免許の返納が年々増加する等,地域の暮らしと産業を支える移動手段を確保することがますます重要になっている。

こうした状況を踏まえ,交通政策審議会交通体系分科会地域公共交通部会において,令和元年9月から5回にわたる議論を経て,令和2年1月に,地域ごとに地方公共団体が中心となって,国が予算面やノウハウ面から支援を行いつつ,既存の公共交通サービスについて,最新技術等も活用しつつ,その改善を図ることに加え,公共交通だけでは対応できない場合には,自家用有償旅客運送,福祉輸送,スクールバス等の多様な輸送資源を総動員して,地域の移動ニーズにしっかり応えられる体制を強化すべき,との中間とりまとめ「持続可能な地域旅客運送サービスの提供の確保に向けた新たな制度的枠組みに関する基本的な考え方~地域交通のオーバーホール~」が取りまとめられた。

これを受け,令和2年5月,第201回国会において,持続可能な運送サービスの提供の確保に資する取組を推進するための地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等の一部を改正する法律が成立した。

同法による新たな枠組みの下で,地方公共団体による地域公共交通計画等の策定や,それに基づく鉄道・バス等の確保・充実の取組に対し,予算・ノウハウ面等で必要な支援を行っていく。

特集-第55図 東北道 旧蓮田サービスエリアでの実験イメージ。逆走者に対して、注意(進入禁止看板等による注意喚起)、警告(ドラレコ、カーナビ等からの警告)、抑止(遮断機等による強制抑止)の順に対策している
(2)道の駅等を拠点とした自動運転サービス

高齢化が進行し,日常の足や物流の確保が喫緊の課題となっている中山間地域において,生活に必要なサービスが集積しつつある道の駅等を拠点とした自動運転サービスの実現に向けて,国土交通省では,平成29年度より実証実験を実施している。令和元年11月より道の駅「かみこあに」において,自動運転サービスの社会実装を開始したほか,令和2年3月時点で,長期の実証実験を7箇所実施しており,準備の整った箇所から順次社会実装を実現する。

特集-第56図 中山間地域における道の駅等を拠点とした自動運転サービスの実証実験箇所。日本地図上に、短期の実証実験、長期の実証実験、社会実施の実施箇所を示している
(3)ラストマイル自動走行実証

経済産業省及び国土交通省では,令和2年度に遠隔型自動運転システムを用いて1名の遠隔操作者が複数台の遠隔操作・監視を行う形での事業化を目指し,平成28年より福井県永平寺町及び沖縄県北谷町において,ラストマイル自動走行実証事業を実施している。また,自動運転車の事業性を向上するため,多数の乗客を運ぶことができる中型自動運転バスを用いた実証を,令和2年度より全国5地域にて順次実施し,中型自動運転バスによる公共移動サービスの事業化に向けた検証を進める。

(4)多様なモビリティの普及促進

「緊急対策」を踏まえ,経済産業省では,多様なモビリティ社会を実現するため,ユーザー,有識者,自治体,メーカー,関係省庁等からなる「多様なモビリティ普及推進会議」を令和元年8月から開催し,同年12月に今後の普及に向けた取組の方向性を取りまとめた。

この中で,電動アシスト自転車は,こぎ出しがスムーズでふらつきが少ない等の安全性や,筋力の衰えをサポートし重い荷物等も楽に運べること等といった利点についての理解が深まれば,自動車の代替手段として普及する可能性があると指摘された。電動車いすは,要介護者による利用が一般的と認識されているが,足腰の不自由な高齢者の潜在需要は大きく,空港,ショッピングセンターでのシェアリングサービス等屋内外で普及が進む可能性があると指摘された。これらのモビリティに関して普及を推進するために,価格低減や認知度向上等の取組が必要とされた。

このような観点から,令和元年度補正予算において,電動アシスト自転車や電動車いすの普及を推進するため,「多様なモビリティ導入支援事業」を措置した。具体的には,電動アシスト自転車については,高齢者等に対して安全講習会の実施を前提とした貸出事業を支援するとともに,利用形態に係るデータ収集を行うこととした。また,電動車いすについては,認知度を向上させるため,安全対策を含めた普及促進を行うとともに,利用可能性を拡大するため,屋内外の商業施設等における実証事業を行うこととした。その際,IoT端末を搭載した電動車いす等を利用することにより,各地域による利用状況の特性の違い等,今後の普及促進施策の検討のためのデータ収集も行うこととした。

特集-第57図 ラストマイル自動走行実証(自動運転による移動サービス実証)。2019年度のポイントは、地域事業者によるサービス実証、車両技術の開発、中型自動運転バスの実証評価。2020年度のポイントは、本格導入に向けた試験運用、無人回送による実証評価、中型自動運転バスの実証評価。
電動アシスト自転車。電動アシスト自転車の写真
電動車いす。電動車いすの写真
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