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荒天時の走錨等に起因する事故の防止
平成30年9月4日に発生した,関西国際空港連絡橋へのタンカー衝突事故を受け,同年10月に設置された「荒天時の走錨等に起因する事故の再発防止に係る有識者検討会」の提言を踏まえ,船舶交通の安全確保の観点から,平成31年1月31日より,同空港周辺3マイル(約5.5km)の海域における荒天時の航行禁止等の運用を開始するとともに,同空港周辺海域以外の海域における同種事故再発防止のための対策を検討した。
検討に際しては,各海域を取り巻く環境(錨泊実態や地形など)や固有の諸事情(海上施設の種別や社会的影響など)を考慮することとし,平成31年4月,関西国際空港を含めた全国で41箇所の重要施設(交通やライフライン等の断絶,代替手段がないことによる不利益等をもたらす施設)の周辺海域を選定し,これらの海域での荒天時における錨泊制限等の安全対策を講じた。
令和元年の台風シーズンにおける,全国41箇所の重要施設に対する走錨等に起因する事故はゼロであり,その対策の効果が認められたが,台風15号では,重要施設とはなっていない橋梁への衝突事故が発生した。
このような状況を踏まえ,走錨に伴う事故防止対策の強化等について,有識者検討会において更なる議論が行われ,令和元年12月,できるだけ台風の影響の少ない他の海域への時間的余裕を持った避難の推奨や荷役への影響等に対する荷主への協力要請,重要施設の追加も含めた対策の継続的な検証,走錨事故を防止するためのガイドラインの作成・周知,海域監視体制の強化,適切な錨地・錨泊方法の選定に関する支援など,ソフト・ハード両面の対策を一体的に推進することが重要との提言がなされた。
これらの提言を踏まえ,海上保安庁では引き続き関係機関・団体と連携し,官民一体となって走錨事故防止対策を推進していく。