特集 「道路交通安全政策の新展開」―第11次交通安全基本計画による対策―
第2章 近年の道路交通事故の状況
第1節 交通事故死者及び重傷者の傾向
特集 「道路交通安全政策の新展開」―第11次交通安全基本計画による対策―
第2章 近年の道路交通事故の状況
第1節 交通事故死者及び重傷者の傾向
第11次計画では,第10次計画に引き続き,世界一安全な道路交通の実現を目指し,24時間死者数の目標値を設定するとともに,第10次計画では目標として設定していた死傷者数に代えて,重傷者数の目標値を設定している。これは,本計画における最優先の目標は死者数の減少であるが,重傷者が発生する事故防止への取組が,死者数の減少にもつながることから,本計画においては,命に関わり優先度が高い重傷者に関する目標値を設定した。
以下,交通事故死者及び重傷者の傾向を見ていく。
◇状態別の比較
状態別にみると,交通事故死者は,歩行中が35.3%,次いで自動車乗車中が31.1%,自転車乗用中が14.8%を,交通事故重傷者についても,自動車乗車中が25.3%,歩行中が25.2%,自転車乗用中が23.3%を占めている(令和2年)。特に,重傷者において,歩行中が近年割合を増やし(平成22年19.4%→令和2年25.2%),原付乗車中が割合を減らしている(平成22年17.3%→令和2年11.0%)ことが顕著である(特集‐第5図,第6図)。
なお,交通事故軽傷者については,自動車乗車中が63.6%を占め,次いで自転車乗用中が17.3%を占めるなど,交通事故死者及び重傷者の状態別割合の構成と異なっている(令和2年)(特集‐第7図)。
また,令和2年中の状態別割合の比較をみると,歩行中は,重傷以上の割合が約2割であり,自動車乗車中と比較して高い。人優先の交通安全思想の下,歩行者の安全確保を図る必要がある(特集‐第8図)。
令和2年中の交通事故死者数は,第10次計画では平成27年の交通事故死者数(4,117人)と比較して39.3%減の2,500人に目標を設定していたが,31%減の2,839人にとどまった。状態別にみると,二輪乗車中は27年と比較して22.3%の減少,自転車乗用中は26.7%の減少にとどまった。
また,歩行中及び自転車乗用中の交通事故死者数は,2,106人(平成27年)から1,421人(令和2年)と32.5%減少しており,全状態の減少割合以上に減少している(特集‐第9図)。
◇損傷主部位別の比較
損傷主部位別にみると,交通事故死者は,頭部損傷及び胸部損傷が多く,令和2年については,頭部損傷(43.0%)及び胸部損傷(24.3%)の合計が67.3%となっている(特集‐第10図)。
交通事故重傷者は,頭部損傷(13.3%)及び胸部損傷(17.0%)の合計が30.3%で,一定割合を占めている一方で,腕部損傷(16.2%)及び脚部損傷(27.1%)の合計がそれを上回っている。これは,骨折により全治30日を超える負傷となったものが多いものと思料される(特集‐第11図)。
なお,交通事故軽傷者は,頸部損傷が55.0%を占めており,いわゆる「むち打ち(頸椎捻挫)」が多く占めているものと思料される(特集‐第12図)。
損傷主部位状態別でみると,令和2年では,交通事故死者は,全ての状態別で頭部損傷及び胸部損傷が多く占めており,頭部損傷については,自動車乗車中に占める割合が24.9%であるのに対し,二輪車乗車中に占める割合が43.3%,自転車乗用中に占める割合は54.4%,歩行中に占める割合も54.2%と高くなっている。交通事故重傷者は,頭部損傷及び胸部損傷も一定割合を占めているものの,脚部損傷及び腕部損傷が高い割合で占めており,特に,二輪車乗車中,自転車乗用中及び歩行中に顕著である。
交通事故軽傷者では,頸部損傷の割合が,自動車乗車中に占める割合が78.7%と約8割を占めている。一方で,二輪車乗車中,自転車乗用中及び歩行中では,脚部損傷と腕部損傷の合計が半数以上を占めている(特集‐第13図)。