特集 「道路交通安全政策の新展開」―第11次交通安全基本計画による対策―
第4章 第11次交通安全基本計画の概要
第2節 計画の基本理念

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特集 「道路交通安全政策の新展開」―第11次交通安全基本計画による対策―

第4章 第11次交通安全基本計画の概要

第2節 計画の基本理念

【交通事故のない社会を目指して】

我が国は,長期の人口減少過程に入っており,世界で最も高い高齢化率となっている。このような時代変化を乗り越え,真に豊かで活力のある社会を構築していくためには,その前提として,国民全ての願いである安全で安心して暮らすことができ,移動することができる社会を実現することが極めて重要である。

人命尊重の理念に基づき,また交通事故がもたらす大きな社会的・経済的損失をも勘案して,究極的には交通事故のない社会を目指すことを再認識すべきである。

【人優先の交通安全思想】

高齢者,障害者,子供等の交通弱者の安全を一層確保する「人優先」の交通安全思想を基本とし,あらゆる施策を推進していく。

【高齢化が進展しても安全に移動できる社会の構築】

全ての交通の分野で,高齢化の進展に伴い生じうる,様々な交通安全の課題に向き合い,解決していくことが不可欠となる。

世界に先駆けて高齢化が進展する我が国において,今後,高齢化が進展するアジア諸国を始め世界の国々のモデルとなりうるような,高齢になっても安全に移動することができ,安心して移動を楽しみ豊かな人生を送ることができる社会,さらに,年齢や障害の有無等に関わりなく安全に安心して暮らせる「共生社会」を,陸海空にわたる交通の関係者の連携によって,構築することを目指す。

1 交通社会を構成する三要素

交通社会を構成する「人間」・「交通機関」・「交通環境」の三つの要素について施策を策定し,国民の理解と協力の下,強力に推進する。

2 これからの5年間(計画期間)において特に注視すべき事項
(1)人手不足への対応

交通に関わる多岐にわたる分野・職種において人手不足の影響がみられ,自動化・省力化等の進展もみられる中で,安全が損なわれることのないよう,人材の質を確保し,安全教育を徹底する等の取組が必要である。

(2)先進技術導入への対応

先進技術の導入に当たっては,ヒューマンエラー防止を図り,また,人手不足の解決にも寄与することが期待されるが,安全性の確保を前提として,社会的受容性の醸成を進めることが重要である。

(3)高まる安全への要請と交通安全

感染症を始め,自然災害の影響,治安など,様々な安全への要請が高まる中にあっても,確実に交通安全を図り,そのために,安全に関わる関係省庁はもとより,多様な専門分野間で,一層柔軟に必要な連携をしていくことが重要である。

(4)新型コロナウイルス感染症の影響の注視

新型コロナウイルス感染症の直接・間接の影響は,陸海空の交通に及び,様々な課題や制約が生じているほか,国民のライフスタイルや交通行動への影響も認められる。これに伴う,交通事故発生状況や事故防止対策への影響を,本計画の期間を通じて注視するとともに,必要な対策に臨機に着手する。

3 横断的に重要な事項
(1)先端技術の積極的活用

今後も,全ての交通分野において,更なる交通事故の抑止を図り,交通事故のない社会を実現するために,あらゆる知見を動員して,交通安全の確保に資する先端技術や情報の普及活用を促進するとともに,新たな技術の研究開発にも積極的に取り組んでいく必要がある。

加えて,ICTを積極的に活用し,交通安全により寄与するように,高齢者を始めとする人々の行動の変容を促していくことも重要である。自動化の推進に当たっては,全体として安全性が高まるための解決策を社会全体として作り出す必要がある。

(2)救助・救急活動及び被害者支援の充実

交通事故が発生した場合に負傷者の救命を図り,また,被害を最小限に抑えるため,迅速な救助・救急活動の充実,負傷者の治療の充実等を図ることが重要である。また,交通事故被害者等に対する支援の更なる充実を図るものとする。

(3)参加・協働型の交通安全活動の推進

国及び地方公共団体の行う交通の安全に関する施策に計画段階から国民が参加できる仕組みづくり,国民が主体的に行う交通安全総点検,地域におけるその特性に応じた取組等により,参加・協働型の交通安全活動を推進する。

(4) 経営トップ主導による自主的な安全管理体制の充実・強化

公共交通機関等の一層の安全を確保するため,保安監査の充実・強化を図るとともに,事業者が社内一丸となった安全管理体制を構築・改善し,国がその実施状況を確認する運輸安全マネジメント評価を充実・強化する。

(5)EBPMの推進

交通安全に関わる施策におけるEBPMの取組を強化するため,その基盤となるデータの整備・改善に努め,多角的にデータを収集し,各施策の効果を検証した上で,より効果的な施策を目指す。

(6)知見の共有

交通事故の減少に向けて,我が国の知見と各国の知見を共有し,互いにいかしていく視点も重要であり,国際的な連携や協力を推進する。

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