特集 通学路等における交通安全の確保及び飲酒運転の根絶に係る緊急対策について
第3章 通学路等における交通安全の確保及び飲酒運転の根絶に係る緊急対策
第3節 緊急対策の取組経過

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特集 通学路等における交通安全の確保及び飲酒運転の根絶に係る緊急対策について

第3章 通学路等における交通安全の確保及び飲酒運転の根絶に係る緊急対策

第3節 緊急対策の取組経過

緊急対策を着実に推進していくため,ワーキングチームが設置されたところ,令和3年12月23日,第1回ワーキングチームが持回りで開催され,同年12月24日,第3回関係閣僚会議において,緊急対策の進捗状況が報告された。

1 通学路等における交通安全の確保
(1)通学路における合同点検の実施及び対策必要箇所の抽出

小学校の通学路を対象に合同点検を実施し,令和3年12月末時点で,全国で7万6,404か所の対策必要箇所を抽出した(特集-第35図)。

また,全国の自治体に対して「放課後児童クラブの来所・帰宅経路の安全点検の実施について(依頼)」を令和3年10月に発出した。

特集-第35図 通学路における対策必要箇所の抽出結果(令和3年12月末時点)
対策必要箇所(全体数) 7万6,404箇所
教育委員会・学校による対策箇所 3万7,862箇所
道路管理者による対策箇所 3万9,991箇所
警察による対策箇所 1万6,996箇所
(2)合同点検で抽出した対策必要箇所の対策案の検討・作成

合同点検で抽出した対策必要箇所について,令和3年12月末時点で,教育委員会・学校において対策を講じるところが3万7,862か所,道路管理者において対策を講じるところが3万9,991か所,警察において対策を講じるところが1万6,996か所である。令和3年度補正予算(道路管理者:国費500億円,警察:国費6億円)等を活用し,可能なものから速やかに対策を実施することとしている。また,交通安全対策補助制度(通学路緊急対策)を創設(令和4年度当初予算:国費500億円)し,道路管理者による対策の実施を計画的かつ集中的に支援している。

(3)子供の安全な通行を確保するための道路交通環境の整備の推進

(ア) 安全・安心な歩行空間の整備

〇 歩道の設置・防護柵等の交通安全施設等の整備

通学路において,歩道の設置・拡充,歩行者と自動車・自転車の利用空間の分離,ガードレール等の防護柵等の交通安全施設等の整備,無電柱化,踏切対策等,子供の視点に立った交通安全対策を講じている。

(歩道の設置)。歩道を児童が歩いている
(防護柵の整備)。歩道に白い防護柵が設置されている

〇 信号機の歩車分離化・信号灯器のLED化

歩行者と自動車が通行する時間を分離して交通事故を防止する信号機の歩車分離化や,逆光時における視認性を高める信号灯器のLED化を図っている。

(信号機の歩車分離化)。「歩車分離式」の表示板がある信号機
(信号灯器のLED化)。信号機の信号灯器がLEDになっている

〇 道路標識等の高輝度化,横断歩道の設置・更新等

自動車前照灯の光を反射しやすい素材を用いて薄暮時における視認性を高める道路標識・道路標示を整備するとともに,適切な場所への横断歩道の設置・更新を推進している。

(道路標識の高輝度化)。光に反射しやすくなっている道路標識
(横断歩道の設置・更新)。横断歩道として引かれた白線

(イ) ゾーン30を始めとする低速度規制と物理的デバイスの適切な組合せによる通学路等における交通安全対策

〇 ゾーン30の推進

生活道路におけるゾーン対策については,警察において,生活道路における歩行者等の安全な通行を確保することを目的として,平成23年からゾーン30を整備しているところである。ゾーン30とは,区域(ゾーン)を設定して最高速度30km/hの区域規制や路側帯の設置・拡幅等を実施することにより,区域内における速度を規制し,通過交通の抑制・排除を図るものであり,令和3年度末までに全国で4,186か所を整備した。

また,道路管理者では,当該規制の効果を高めるため,ハンプや狭さくといった物理的デバイスの設置による生活道路対策を推進している。物理的デバイスは,車両の速度を物理的に低下させることに加え,運転者に対し,その周辺においては,歩行者等の安全確保に一層の注意を払うべきであることを周知する効果も期待されるほか,設置に際しての地域における検討等の過程が参加・協働型の交通安全対策の推進等にも資するものである。

このため,警察と道路管理者では,連携を更に強化し,ゾーン30等による低速度規制と物理的デバイス等の適切な組合せによる生活道路の安全確保対策をより一層推進することとしている。

〇 「ゾーン30プラス」

これまで,ゾーン30を推進してきたところであるが,令和3年8月からは,第11次交通安全基本計画を踏まえ,最高速度30km/hの区域規制とハンプ等の物理的デバイスとの適切な組合せにより交通安全の向上を図ろうとする区域を「ゾーン30プラス」として設定し,警察と道路管理者が緊密に連携しながら,生活道路における人優先の安全・安心な通行空間の整備の更なる推進を図るとともに,外周幹線道路の交通を円滑化するための交差点改良やエリア進入部におけるハンプや狭さくの設置等によるエリア内への通過車両の抑制対策を推進することとしている(特集-第36図)。

特集-第36図 「ゾーン30プラス」のイメージ図及びシンボルマーク。「ゾーン30プラス」のイメージ図(警察による交通規制、道路管理者による物理的デバイスの設置)、「ゾーン30プラス」のシンボルマーク(路面表示、看板)

〇 スムーズ横断歩道

スムーズ横断歩道は,横断歩道の路面を盛り上げることで,歩道と同じ高さでつながり,歩行者の横断がスムーズになるメリットがあるほか,運転者に対し,横断歩道の手前における減速・一時停止を促すなどの効果が期待されるものであり,各地のゾーン30や,通学路等への設置を推進している。

(スムーズ横断歩道)。赤く舗装して三角形の白線を引いた周囲から横断歩道にかけてハンプ(凸部)を設けている
トピック
【事例】地域住民が検討段階から参加し,関係者が協働で対策を検討した事例(鹿児島県鹿児島市)

鹿児島市真砂本町地区では,幹線道路の渋滞を避け,最高速度30km/hを超える通過交通が通学路に流入していること等から,児童と車両が当事者となる致死率が高い交通事故が発生する危険性があるなど課題があった。このため,学校,警察,道路管理者等による通学路合同点検及び地域住民等との対策内容の検討を経て,可搬型ハンプを用いた実証実験を行った。その後,実証実験により確認された速度抑制効果等について地域住民に説明し,ハンプ設置について意向を確認するなど,地域全体で通学路の交通安全対策について検討を行った。

これらの検討を踏まえ,ゾーン30の整備に併せてハンプ(スムーズ横断歩道)を設置したところ,通過交通の速度抑制に効果をあげている。

対策検討の様子(平成31年3月)。室内でスクリーンの横で説明する人とその映像を見ている人々
スムーズ横断歩道設置状況(令和4年4月)。スムーズ横断歩道の手前に止まっている軽自動車

〇対策の検討

住民,学校関係者及び関係機関が連携し,通学路における交通安全対策を検討

H29. 7 :通学路合同点検

H29.11:通学路安全推進会議において対策内容(ゾーン30)の確認

H30. 9 :地域住民と対策内容を検討(実証実験の実施が決定)

H30.10~11:可搬型ハンプを用いた実証実験

H30.11:アンケート調査(実験の効果等)

H31. 3 :実験の効果等を踏まえ,地域住民と対策内容を再検討

R 1.10 :ハンプ(スムーズ横断歩道)の設置完了

(対策検討等の流れ)

(ウ) 幹線道路と生活道路の機能分化

幹線道路で囲まれた居住地域内の生活道路において,通過交通を可能な限り幹線道路に転換するため,交差点改良や改築等の幹線道路対策を推進する。例えば,右折レーンを設置することで,これまで右折車が交差点手前で滞留することによって,車両の進行の妨げとなり,その結果として生活道路を抜け道として利用していたケースが解消されることが期待できる。

(交差点改良(右折レーンの設置))。直進の右側に右折レーンを設けている
(4)「可搬式速度違反自動取締装置」の更なる整備の推進及び効果的な速度違反取締り

警察では,取締り場所の確保が困難な生活道路や警察官の配置が困難な時間帯においても取締りが行えるよう,可搬式速度違反自動取締装置の整備拡充を図っており,令和3年度末において46都道府県警察に117式が整備されている。

令和元年6月,「昨今の事故情勢を踏まえた交通安全対策に関する関係閣僚会議」において決定された「未就学児等及び高齢運転者の交通安全緊急対策」及び今回の緊急対策を踏まえ,可搬式速度違反自動取締装置を活用し,児童等の通行が多い生活道路等における適切な取締りを推進している。

(可搬式速度違反自動取締装置による取締り状況)。児童が歩く道路や歩道に可搬式速度違反自動取締装置を設置している
(5)子供を始めとする歩行者の安全確保のための交通安全教育・指導取締り

登下校時,歩行中小学生の死者・重傷者のうち,約8割が横断中であることを踏まえ,横断歩行者の安全確保に向けて,歩行者に対しては横断する意思を明確に伝えるなど自ら安全を守るための交通行動を促す交通安全教育等を,運転者に対しては歩行者等の保護意識の向上を図る交通安全教育等を推進した。

令和3年秋の全国交通安全運動の全国重点として「子供と高齢者を始めとする歩行者の安全の確保」「夕暮れ時と夜間の事故防止と歩行者等の保護など安全運転意識の向上」を掲げ,歩行者の交通ルール遵守の徹底のほか,運転者に対し,歩行者等の保護意識の徹底を始め,安全に運転しようとする意識及び態度を向上させるための広報啓発活動を推進した。

教職員や児童生徒の交通安全等に関する意識の向上を図り,児童生徒自身に,安全に身を守るための能力を身につけさせる安全教育の充実に努めているほか,小学校新1年生向けリーフレット(交通安全に関する注意事項をクイズ形式で学べるもの)を作成し,配布している。

また,令和3年秋の全国交通安全運動期間中に,通学路における全国一斉取締りを実施し,同年9月30日の登下校時間帯において,無免許運転,酒気帯び運転,最高速度違反等,約1万4,700件の交通違反を検挙した。

(登下校時の交通安全教育)。交差点に児童が集まって警察官の指導を受けている
(歩行者保護意識向上を目的とした運転者への啓発活動)。赤い帽子をかぶった参加者が自動車の運転手にノベルティを渡している
(6)登下校時の子供の安全確保

登下校時の安全確保に向け,スクールガード・リーダー等による見守り活動の充実を図ることや,スクールガード等のボランティアの養成・資質向上を促進することにより,警察や保護者,PTA等との連携の下で見守り体制の一層の強化を図っている。

また,小冊子「やってみよう!登下校見守り活動ハンドブック」を作成し周知するなど,これから見守り活動を始めようと思っている方や,既に見守り活動を行っている方に対して,見守り活動の効果を高めるポイント等を紹介し,児童生徒の登下校時の見守り活動を推進している。

令和3年9月から,千葉県八街市において,登下校時の子供の安全確保のための取組として,児童生徒への安全教育の実施や,スクールバスの運行,見守り要員,警備員等の配置などを実施するとともに,その効果や課題の検証を行っている。

(見守り活動を推進するための小冊子)。「登下校見守り活動ハンドブック」と書かれた冊子
(千葉県八街市でのスクールバスの運行)。黄色い帽子をかぶった児童が順番にスクールバスに乗り込んでいる
トピック
【事例】地域ぐるみの学校安全整備推進事業(スクールガード・リーダー,スクールガード)の取組事例(山梨県道志村「村全体で子供の安全を見守る体制の構築を目指した取組」)

道志村の小・中学生はスクールバスで通学しているところ,村内の主要道路の交通量が比較的多く,交通事故が多発していることに加え,他県等における子供がねらわれた事件等が発生したことをきっかけとして,スクールガード・リーダーによる車両追尾の見守り活動を実施している。

また,スクールガード・リーダー1人ではできることに限界があることから,地域全体での見守りの機運を高めるため,PTAの代表や校長,教職員,駐在所,教育委員,教育委員会を巻き込んだ「道志村児童生徒の登下校時見守り活動隊」を組織し,学期に2回,スクールバスの停留所などでの見守り活動を行っている。

(7)「未就学児等及び高齢運転者の交通安全緊急対策」に基づく安全安心な歩行空間の確保

令和元年中に実施した「未就学児を中心に子供が日常的に集団で移動する経路の緊急安全点検」等の結果を踏まえ,道路管理者により対策を実施する約2万8,000か所のうち,約2万3,000か所,警察において対策必要とされた約7,400か所のうち約7,200か所について対策を完了している(令和3年3月末時点)。

2 飲酒運転の根絶
(1)安全運転管理者の未選任事業所の一掃等,飲酒運転の根絶に向けた使用者対策の強化

(ア) 安全運転管理者の未選任事業所の一掃

各業界を所管する府省庁と連携し,安全運転管理者の選任義務を始めとした自動車の使用者の義務を周知した。また,自動車保管場所証明情報の活用により未選任事業所を把握し,選任に向けた指導等の徹底を図っているほか,自動車保管場所証明申請受理時の質問等を通じた未選任事業所の把握に努めている。

また,安全運転管理者の選任状況を全ての都道府県警察のウェブサイト上で公開している。

(イ) 飲酒運転の根絶に向けた使用者対策の強化

道路交通法施行規則(昭35総理府令60)を改正し,安全運転管理者の業務として,運転者の運転前後におけるアルコール検知器を用いた酒気帯びの有無の確認等を義務化することとした。令和4年4月より順次施行している(特集-第37図)。

特集-第37図 道路交通法施行規則の改正の概要

〔道路交通法施行規則の改正の概要〕

○ 令和4年4月1日施行分

・ 運転前後の運転者に対し,当該運転者の状態を目視等で確認することにより,当該運転者の酒気帯びの有無を確認すること

・ 上記の確認の内容を記録し,当該記録を1年間保存すること

○ 令和4年10月1日施行分

・ アルコール検知器を用いて上記の確認を行うこと

・ アルコール検知器を常時有効に保持すること

※ より多くの事業所において早期にアルコール検知器を用いた酒気帯びの確認が行われるよう,事業者に対し積極的な実施を促すことを都道府県警察へ通達。

(2)飲酒運転根絶に向けた交通安全教育及び広報啓発活動等の推進

令和3年秋の全国交通安全運動の全国重点として「飲酒運転等の悪質・危険な運転の根絶」を掲げ,地域,職域等における「飲酒運転等を絶対にしない,させない」という規範意識の確立に向け,飲酒運転の危険性や飲酒運転による交通事故の実態等に関する積極的な広報啓発活動を推進した。

また,飲酒が運転等に与える影響について理解を深めるため,映像機器や飲酒体験ゴーグルを活用した参加・体験型の交通安全教育など効果的な取組を一層推進しているほか,交通ボランティアや交通安全関係団体,酒類製造・販売業,酒類提供飲食業等の関係業界と連携して,(一財)全日本交通安全協会等が推進している「ハンドルキーパー運動」への参加を広く国民に呼び掛けるなど,関係機関・団体等と連携することにより,地域・職域等における飲酒運転根絶への取組を推進している。

(3)飲酒運転等の根絶に向けた取締りの一層の強化

PDCAサイクルに基づく取締り管理,飲酒運転者の周辺者に対する捜査の徹底等,飲酒運転等の根絶に向けた取組を推進した(特集-第38図)。

また,千葉県警察では,令和3年10月から年末までの3か月間,「飲酒運転取締り強化プロジェクトチーム」を編成し,千葉県内各署からの派遣要請に対応したほか,飲酒運転に起因する交通事故の発生場所,検挙場所等の分析を基によう撃捜査を実施し,取締りを強化するなど,各都道府県で飲酒運転根絶に向けた指導取締りが展開されている。

(広報啓発用ポスター)。「飲酒運転の根絶!」や「事業所の取組強化!」と書かれたてポスター
(4)運送事業用自動車での飲酒運転根絶に向けた取組強化

運送事業者に対してアンケートやヒアリング調査を実施し,運送事業者独自の優良取組事例について情報収集を行った。具体的には,アルコール依存症関係の専門医の受診,運送事業者独自の飲酒対策マニュアルの作成・活用,家族に対する協力依頼文書の発出等の事例があり,運送業界内での横展開を図っていく。また,運送事業者による運転者の指導・監督時の実施マニュアルへのアルコール依存症関係の記載を拡充した。

特集-第38図 飲酒運転等の検挙件数の推移
平成29年 平成30年 令和元年 令和2年 令和3年
酒酔い 566 559 495 495 490
酒気帯び 26,629 26,043 24,939 21,963 19,311
周辺3罪 車両等提供 103 92 74 81 75
酒類提供 32 45 40 55 43
640 774 732 693 639
(千葉県警察による「飲酒運転取締り強化プロジェクトチーム」)。ワイシャツ、紺色の制服、青色の制服の警察官が整列している
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