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保安検査等の確実な実施に向けた制度整備について

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【経緯】

我が国の航空保安は,ハイジャックやテロ行為等を防止するため,航空機搭乗前の旅客及び機内持ち込み手荷物に対する保安検査や旅客が預け入れる手荷物に対する預入手荷物検査の実施等,様々な対策が講じられており,その強化が図られてきた。一方で近年,空港や航空機をターゲットとするテロが発生するなど国際的なテロ等の脅威は厳しさを増す状況にある中,旅客の保安検査すり抜け事案等のトラブルも発生しており,保安検査の法的位置付けが明確でなく旅客の協力を得づらい場合があること,多様な関係者が関与する航空保安の取組に関する関係者間の連携強化や国のリーダーシップの強化,保安検査の量的・質的向上が必要である等の課題が指摘されていた。

このため,保安検査の受検義務付けや,航空保安に携わる関係者の役割分担や関係者が講ずべき措置を定めた危害行為防止基本方針の策定等を内容とする航空法の改正が第204回通常国会において成立し,令和3年6月11日に公布され,令和4年3月10日に施行された。

【主な概要】

(1)保安検査の受検義務付け

旅客等に対する保安検査の受検義務付けについて,具体的には,旅客取扱施設内(旅客ターミナルビル内)における危険物等の持ち込みを制限する区域を「危険物等所持制限区域」(クリーンエリア)として空港等の設置者が指定できることを規定するとともに,危険物等を所持していないことを確認する保安検査を受けなければ当該区域に立ち入ってはならない旨を規定した。また,クリーンエリアを通過せずに航空機に搭乗する等のケースも存在することから,その場合についても,保安検査を受けなければ航空機に搭乗してはならない旨を規定した。なお,これらの規定に違反してクリーンエリアに立ち入った場合又は航空機に搭乗した場合には,1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されることとなる。

(2)危害行為防止基本方針の策定

航空保安に携わる関係者(空港会社,航空会社,検査会社等)の役割分担を明確化して連携強化を図るとともに,必要な措置が確実に講じられるよう,国土交通大臣が「危害行為防止基本方針」を策定することとした。危害行為防止基本方針は,国が実施すべき施策や保安検査等の実施体制の強化・検査能力の向上,関係者が講ずべき措置,関係者の役割分担・連携強化といった内容を含むこととしており,国の主体的なマネジメントの下,関係者が有機的に連携した航空保安に係る取組を推進することとしている。

「航空保安に関する航空法の一部改正」と題した資料。背景・課題、(1)保安検査等の法律上の根拠・保安職員の権限の明確化、(2)ハイジャック・テロ等の防止に関する国の役割の明確化・関係者間の連携強化、(3)保安検査の量的・質的向上のための措置

【周知の取組】

本改正では,保安検査を法律上で義務付け,違反者に対しては罰則を科する内容も含まれることから,旅客等に対する十分かつ丁寧な周知が必要である。そのため,空港会社,航空会社,検査会社等の関係者と連携し,国土交通省ホームページへの掲載,各空港でのポスターによる周知,広報用動画の製作,機内誌への掲載,テレビ・ラジオ放送,各種SNSでの発信など,各種媒体を活用した周知活動を推進した。

(ポスターによる注意喚起)

「CAUTION」と書かれたポスター。「凶器や危険物の航空機内への持ち込みは航空法により禁止されています。」などとある
「保管検査前にご確認ください!」と書かれたポスター。「保安検査は航空法にもとづき行っていますので検査員や関係職員の指示にしたがって検査を受けてください。」などとある
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