別添参考
参考-4 令和5年度交通安全ファミリー作文コンクールの最優秀作

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○小学生の部 最優秀作〈内閣総理大臣賞〉

「班長の言葉」

栃木県那須塩原市立埼玉小学校 4年 前野 ちえり

「危ないから,一列で歩いて。」

これは,今年度,登校班の班長になった兄の言葉です。私は毎日,片道二キロ以上の道のりを歩いて登校しています。今まで優しかった兄が急に,並んで歩く事に対して,注意をするようになりました。私は,そのような兄をいつしか嫌だと感じるようになりました。

ある雨の日,かさをさしながら,いつものように友達と並んで歩いていました。兄の

「危ない。」

という言葉ではっとしましたが,自転車にのった中学生とぶつかってしまいました。転んで,かさが曲がり,膝から血が出ていました。

「助けられなくてごめんね。」

といつも怒ってばかりの兄が悲しい顔で言いました。その日の夜,兄と母が,私がけがをした事について話をしていました。兄は,

「注意をしても聞いてくれない。僕のせいだけではないけど,僕の力不足なのかもしれない。注意する事でみんなに嫌われて悲しいし,本当は班長なんかやりたくない。」

と言って泣いていました。兄がそんな風に言うなんて思いもしませんでした。その後,私も母と話をしました。まず,今回の事故の原因について考えました。私は,せまい道を二列で歩いていた事,友達との話に夢中になり,前をよく見ていなかった事がいけなかったと思いました。そして母は,事故と安全は常に紙一重で,自動車との事故は,運転者側だけでなく,歩行者側の問題もあると言います。その意味について少し考えてみました。確かに,事故の要因は一つではありません。今回の事故も私の不注意に加えて,雨でかさをさしていたため,周りが見えにくくなっていた事,中学生側の不注意もあったかもしれません。このように,少しくらい大丈夫だろうという思いから,その時の様々な状況が重なり,事故になるのだと思いました。

では,私にできる事は何なのか,自分なりに考えてみました。それは,自分自身の毎日の行動だと思います。その中で,兄が私に嫌われても,私を守ろうとしていた思いに気づき,涙がでました。そして,目の前の楽しい事しか考えていなかった自分を恥ずかしく思いました。私は,みなに堂々と注意ができる兄の事をとてもほこらしく思いました。次の日から私は,兄の命令にしたがいました。私が一列で歩くと,周りの友達も一列で歩くようになりました。

私は今回の事故から,自分自身が守らなければならない交通ルールについて,身をもって学びました。兄と登校できるのは後半年です。これからは私が,低学年の子を安全に登校させる立場になります。兄の思いを私も引き継ぎ,みなが安全に登校できるように,まずは私自身が,登校中は,必ず一列になり,周りをしっかり確認しながら歩く事から始めていこうと思います。そして私も,兄のように,相手を思い,注意ができる勇気ある人になりたいと思います。

第64回交通安全国民運動中央大会1

○中学生の部 最優秀作〈内閣総理大臣賞〉

「交通安全家族会議」

福島県郡山市立安積第二中学校 1年 安齋 真央

私にとっての交通安全を考えてみると,自転車を運転する時には「ヘルメットを着用する」,「左側を走行する」など主に,自転車に乗る側の視点での交通安全を一番に考えた。その理由は,中学生になって自転車通学になったからだと思う。では,他の人はどうだろうかと思った私は,家族と交通安全とは何かについて会議をすることにした。

まず初めに,小学生の妹が考える交通安全は,「信号を守る」,「横断歩道では手を挙げて横断する」など,主に歩行者側の視点での意見が多かった。

次に,母が考える交通安全は,「かもしれない運転をする」,「急のつく運転をしない」,「早めにライトを点灯する」など主に,車の運転者としての視点での意見が多かった。

次に,父が考える交通安全は,「出掛けるときは,早めに出発するなど時間に余裕をもった行動をする」,「夜間出歩く時は,夜光反射材を着用する」との意見であった。また,人それぞれの交通安全だけではなく,車の自動ブレーキ機能などの企業努力も交通事故防止に繋がっているなどと父は話していた。

このことから分かる通り,それぞれの年齢や立場によって考える交通安全があることが分かった。また,そのどれもが守らなければならない交通安全だと思う。

では,なぜ交通事故は起こるのか。福島県内の交通事故件数を調べてみると,令和四年中に二千七百件を超える人身事故が発生していることが分かった。これでも減少傾向にあるようだが,なぜこんなにも交通事故が発生するのだろうか。

それについても家族で会議をした。その中には,「疲れや調子の乱れ,それによる注意力の低下が原因なのではないか」,「前は大丈夫だったからという経験で基本が崩れたのではないか」,「自己中心的な考えで行動していたのではないか」,「そもそも交通安全に対するモラルがなく,交通ルールを守っていない人がいるのではないか」などの意見があった。

この時,ふと私が感じたことがある。それは,大人は事故を起こさないという加害者の視点,子供は事故にあわないという被害者の視点で交通安全を考えていると感じた。それぞれ交通安全のことを考えているのに,まったく逆の視点から考えていると感じた。また,交通事故は,自動車と歩行者の事故だけではなく,自転車と歩行者の事故も考えられることが分かった。それを考えると,自転車通学をしている私も交通事故の加害者になる可能性があることが分かった。今まで,事故にあわないための交通安全を考えていたが,これからは,加害者側の視点での交通安全も意識しなければならないと感じた。

この会議を通して,私が思う最大の交通安全は,全員が加害者側と被害者側の視点で交通安全を考えることだ。

第64回交通安全国民運動中央大会2
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