第2編 海上交通
第2章 海上交通安全施策の現況
第4節 船舶の安全性の確保

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第2編 海上交通

第2章 海上交通安全施策の現況

第4節 船舶の安全性の確保

1 船舶の安全基準等の整備

船舶の安全性確保のため、国際海事機関(IMO)において「1974年の海上における人命の安全のための国際条約」(SOLAS条約)等に基づいて国際的な安全基準が定められるとともに、我が国では船舶安全法(昭8法11)及びその関係省令において関連の構造・設備等の基準を規定している。

SOLAS条約等については船舶のより一層の安全性向上のため、IMOにおいて随時見直しが行われているが、我が国は、世界有数の造船・海運国としてIMOにおける審議に積極的に参画しており、技術革新等に対応した合理的な国際基準の策定に向け、主導的な役割を果たしている。

ヒューマンエラーの防止による海上安全の向上等が期待される自動運航船については、令和12年頃までの本格的な商用運航の実現を目指し、6年6月に設置された「自動運航船検討会」を通じて国内制度の検討・整備を進めるとともに、IMOにおける国際ルール策定作業を主導している。

また、2050年カーボンニュートラルの実現に必要不可欠な水素・アンモニア等のゼロエミッション船の普及の前提である安全確保に向けて国際的な安全基準作りを進めており、令和6年12月に我が国提案等をベースにしたアンモニアを燃料とする船舶の安全基準が策定されるなど、IMOにおける安全に関する国際ルール作りに貢献した。

旅客船のバリアフリー化については、「旅客船バリアフリーガイドライン」の改訂版を令和3年11月に公表し、バリアフリー化の指針として、その望ましい整備内容等を示している。6年度は旅客船のバリアフリー化の推進について、旅客船事業者に周知を行った。

2 船舶の検査体制の充実

海難事故が発生した場合には、人命及び船舶の損失、海洋への汚染等多大な影響を社会に及ぼすこととなる。このため国土交通省海事局では関係法令に基づき、海事技術専門官が人命及び船舶の安全確保、海洋環境の保全を目的とした船舶検査を実施している。

近年の技術革新、海上輸送の多様化に応じた従来の設計とは異なる船型を有する船舶の増加や、国際的な規制強化に伴い、高度で複雑かつ広範囲にわたる検査が必要となっている。こうした状況に適切に対応していくため、ISO9001に準じた品質管理システムにのっとり、船舶検査体制の品質の維持向上を図っている。

海上における人命の安全及び海洋環境保護の観点から、船舶及びそれを管理する会社の総合的な安全管理体制を確立するための国際安全管理規則(ISMコード)は、ヒューマンエラーの防止等に極めて有効であるため、同コード上強制化されていない内航船舶に対しても、事業者等が構築した安全管理システムを認証するスキームを運用しており、ヒューマンエラーに起因する海難事故の防止を図っている。

さらに、日本小型船舶検査機構に対して適切な指導・監督を行うことにより、小型旅客船等の安全性の向上を図っている。

また、危険物の海上輸送については、IMOで定められる国際的な安全基準に基づき、容器、表示等の運送要件及び船舶の構造、設備等の技術基準について国内規則の整備を図るとともに、危険物運搬船に対して運送前の各種検査や立入検査を実施することにより、安全審査体制の充実を図り、海上輸送における事故防止に万全を期している。

3 外国船舶の監督の推進

船舶の構造・設備等については、SOLAS条約等の国際条約に定められているが、これを遵守しない船舶(サブスタンダード船)が人命の安全や海洋環境等に多大な影響を及ぼす重大事故を引き起こす可能性がある。このようなサブスタンダード船を排除するため、関係条約に基づき外国船舶の監督(PSC)を推進した。さらに、東京MOUの枠組みに基づき、アジア太平洋域内の加盟国と協力して効果的なPSCを実施した。

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