第2編 海上交通
第2章 海上交通安全施策の現況
第9節 船舶事故等の原因究明と事故等防止

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第2編 海上交通

第2章 海上交通安全施策の現況

第9節 船舶事故等の原因究明と事故等防止

1 事故等の原因究明と事故等防止

(1)運輸安全委員会の事故調査状況

運輸安全委員会は、独立性の高い専門の調査機関として、船舶の事故及びインシデント(以下本節において「事故等」という。)の調査により原因を究明し、国土交通大臣等に再発防止及び被害の軽減に向けた施策等の実施を求めているところ、令和6年度中、調査対象となる事故等は、623件発生した。また、同年度中、699件の報告書を公表した。

(2)令和6年度に公表した主な事故等

令和5年8月、沖縄県宮古島市下地島沖でダイビング船が転覆した事案について、波が打ち込みやすい船尾形状への変更のほか、甲板上への潜水器材の積載による復原性の低下、船長による気象・海象の悪化前に避難する判断の遅れ等の複合的な要因により発生したことを明らかにした。また、ダイビング船の安全確保の必要性を周知するため、事故防止に役立つ情報を簡潔にまとめた安全啓発資料を発行した(令和6年9月公表)。

(3)事故等防止の啓発活動

運輸安全委員会のホームページ上に掲載している、プレジャーボート事故防止に関する情報を取りまとめたコンテンツ「プレジャーボートの安全運航のために」において、引き続き発航前や日頃の点検、航行中におけるレーダーや船舶自動識別装置(AIS)を活用した事故防止策等を、事故調査事例とともに紹介している。

(4)国際基準改正案への参画

国際海事機関(IMO)の下部組織のIMO規則実施小委員会(III)は、船舶事故等調査の国際基準の改正等を議論する場であるところ、令和6年度には、第10回IMO規則実施小委員会(III10)が開催され、議論に参画した。

2 海難事故の解析等の推進

国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所海上技術安全研究所に設置されている「海難事故解析センター」において、国土交通省海事局等における再発防止対策の立案等への支援を行うため、事故解析に関して高度な専門的分析を行うとともに、重大海難事故発生時の迅速な情報分析・情報発信を行っている。

3 海難審判による懲戒処分等の状況

令和6年中に行われた海難審判の裁決は計230件であり、海技士若しくは小型船舶操縦士又は水先人の職務上の故意又は過失により海難が発生したとして、業務停止197人、戒告111人の計308人を懲戒処分とした。

懲戒を受けた者を免許種類別にみると、一級小型船舶操縦士免許受有者が最も多く、次いで二級小型船舶操縦士免許受有者、四級海技士(航海)免許受有者、三級海技士(航海)免許受有者、五級海技士(航海)免許受有者の順で多くなっている(第2-1表)。

第2-1表 免許種類別処分の状況 (単位:人)(令和6年)
  処分 免許取消し 業務停止 戒告 懲戒処分計 不懲戒 懲戒免除 合計
免許種類  
海技士(航海) 一級 0 2 2 4 0 0 4
二級 0 1 1 2 0 0 2
三級 0 13 6 19 2 0 21
四級 0 25 13 38 5 0 43
五級 0 10 3 13 0 0 13
六級 0 5 2 7 0 0 7
海技士(機関) 一級 0 0 0 0 0 0 0
二級 0 0 0 0 0 0 0
三級 0 0 0 0 0 0 0
四級 0 0 0 0 0 0 0
五級 0 0 0 0 0 0 0
六級 0 0 0 0 0 0 0
小型船舶操縦士 一級 0 105 57 162 2 0 164
二級 0 35 26 61 1 0 62
特殊 0 1 0 1 0 0 1
水先人 一級 0 0 0 0 0 0 0
二級 0 0 0 0 0 0 0
三級 0 0 1 1 0 0 1
締約国資格受有者 0 0 0 0 0 0 0
0 197 111 308 10 0 318
注 1
国土交通省海難審判所資料による。
2
「懲戒免除」とは、懲戒すべきところを本人の経歴等を考慮して免除したものである。
3
「締約国資格受有者」とは、外国の海事当局が発給した海技資格に基づき日本籍船に乗船できる資格を与えられた者である。
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