第3編 航空交通
第2章 航空交通安全施策の現況
第4節 航空交通環境の整備

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第3編 航空交通

第2章 航空交通安全施策の現況

第4節 航空交通環境の整備

1 増大する航空需要への対応及びサービスの充実

(1)国内空域の抜本的再編

安全かつ効率的な運航を維持しつつ増大する航空需要に対応するため、国内空域の抜本的な再編の一環として、複数の空港周辺の空域(ターミナル空域)の統合を着実に進め、管制処理能力の向上を図っている。

(2)統合管制情報処理システム等の機能向上

管制処理能力の向上によって増大する航空需要に対応するため、統合管制情報処理システムについてハードウェアとソフトウェア両面での機能向上の整備を進めている中で、安全性を確保しつつ、航空情報や運航情報など航空機の運航に必要な情報の共有に係る運用サービスを段階的に拡大する。

(3)小型航空機運航環境の整備

低高度空域における小型航空機の安定的な運航の実現を図るため、計器飛行方式による、既存航空路の最低経路高度の引下げ、最低経路高度の低い新たな航空路の設定及びヘリポートへの進入・出発方式の設定について検討を進めている。

(4)航空保安職員教育の充実

今後の更なる航空交通需要の増大に伴う空域の容量拡大や航空保安システムの高度化に的確に対応するため、航空保安職員に対し高度な知識及び技量を確実に修得させることを目的として、航空保安大学校等における基礎研修及び専門研修について、研修効果及び効率を上げるための研修カリキュラムの見直し、訓練機材の更新及び国際的に標準化された教育手法への移行を進めている。

(5)新技術や新方式の導入

全地球的航法衛星システム(GNSS)を利用した進入方式(RNP ARLP/LPVGLS等)について導入を進めており、今後も継続的に設定を行うとともに、世界的に進められている更なる航法精度の高い進入方式の開発の動向を注視、導入を図ることで、航空機の運航効率の向上や悪天候時における着陸機会の向上等を図っている。

(6)飛行検査体制の充実

世界的な技術革新と航空交通量の増大に対応して高度化している航空保安システム及び飛行方式に対して、的確に対応できるよう飛行検査体制の高度化を図っており、既存の飛行検査機材の高度化のみならず、新しいドローン技術を用いた飛行検査機材の導入等を進めている。また、SDGsに則してSAFの積極的な利用を推進し、環境に配慮した飛行検査の実施を図っている。

(7)電子地形・障害物データ提供の拡充

航空機運航者の利便性や情報品質の向上を図るため、航空機の運航に必要となる空港周辺の地形や障害物等の基礎的情報をデジタルデータとして提供するとともに、対象となる空港の拡大を進めている。

(8)将来の航空交通システムの構築に向けた取組

国際的な相互運用性を確保しつつ、長期的な航空需要の増加や地球環境問題等に対応するとともに、更なる安全性の向上を図るため、ICAOや諸外国とも協調して、将来の航空交通システムに関する長期ビジョン(CARATS)の推進を実施している。

(9)大都市圏における拠点空港等の整備

訪日外国人旅行者の受入拡大、我が国の国際競争力の強化等の観点から、首都圏空港(東京国際空港(羽田空港)、成田国際空港(成田空港))の機能強化は必要不可欠であり、両空港で年間約100万回の発着容量とするための取組を進めているところである。

具体的には、羽田空港において、令和2年3月から新飛行経路の運用を開始し、国際線の発着容量を年間約4万回拡大しているところであり、引き続き、騒音対策・落下物対策や、地域への丁寧な情報提供を行うなど、新飛行経路の着実な運用に向けた取組を進めている。成田空港においては、地域との共生・共栄の考え方のもと、C滑走路新設等の年間発着容量を50万回に拡大する取組を進めていくこととしている。そのほか、福岡空港においては、滑走路処理能力の向上を図るため、二本目の滑走路を7年3月20日に供用開始した。北九州空港においては、国際貨物輸送の拠点機能向上を図るため、屋久島空港においては、首都圏からの直行便の就航による交流人口の更なる拡大等を図るため、それぞれ滑走路延長事業を実施している。また、那覇空港においては、空港の利便性向上を図るため、国際線ターミナル地域再編事業を、新千歳空港においては、航空機や除雪車両の混雑緩和等を図るため、誘導路複線化等を実施している。

そのほかの地方空港においては、航空機の増便や新規就航等に対応するため、エプロンの拡張やターミナル地域の整備等を実施している。

また、航空機の安全運航を確保するため、老朽化が進んでいる施設について予防保全型の維持管理を踏まえた空港の老朽化対策を実施するとともに、地震災害時における空港機能の確保を図るため、滑走路等の耐震対策を着実に推進している。加えて、航空旅客ターミナル施設においては、旅客の安全確保のため、高齢者、障害者等の安全利用に配慮した段差の解消等のバリアフリー化を引続き実施し、総合的・一般的な環境整備を実現するなどの観点からユニバーサルデザイン化を進めている。

2 航空交通の安全確保等のための施設整備の推進

(1)データリンク通信の利用拡大

音声通信により発生する管制官及びパイロットの「言い間違い」や「聞き間違い」によるヒューマンエラーの防止等を図るため、航空路空域に導入したデータリンク通信の活用の拡大について検討を進めている。

(2)航空路監視機能の高度化

航空路空域における更なる安全の確保を図るため、航空機が保有する速度、方位、機上設定高度、位置情報等の多様な情報を活用した管制業務の高度化を進めている。

3 空港の安全対策等の推進

(1)滑走路誤進入対策の推進

令和6年1月2日に羽田空港で発生した航空機衝突事故を受け、同年1月9日に公表した「航空の安全・安心確保に向けた緊急対策」を講じるとともに、有識者及び関係団体から構成される「羽田空港航空機衝突事故対策検討委員会」を設置した。同年6月24日に滑走路誤進入対策に係る中間とりまとめが公表され、提言に基づいた対策を順次進めている。今後は、運輸安全委員会の事故調査報告も踏まえ、必要な安全・安心対策を講じていく。

(2)空港の維持管理の着実な実施

滑走路等の諸施設が常に良好な状態で機能するよう、定期的な点検等により劣化・損傷の程度や原因を把握し、老朽化の進んでいる施設について効率的かつ効果的な更新・改良を実施している。

(3)空港における災害対策の強化

ア 災害への対応力の強化

災害時に航空輸送上重要な空港等の機能を維持するためには、空港内施設のみならずライフライン施設や道路・鉄道等の交通施設の機能維持が必要となることから、各施設の関係者と協議して、平成26年度の「南海トラフ地震等広域的災害を想定した空港施設の災害対策のあり方とりまとめ」を踏まえた、地震・津波に対応する避難計画・早期復旧計画を策定し、計画に基づき避難訓練等の取組や関係機関との協力体制構築等の取組を推進している。

加えて、平成30年9月の台風第21号や令和元年9月の令和元年房総半島台風等の影響により、空港機能や空港アクセスに支障が生じたことから、未経験レベルの大規模な自然災害やそれに伴うアクセス機能の喪失等外部からのリスクが発生した場合においても、我が国の航空ネットワークを維持し続けることができるよう、全国の空港で策定された空港BCPA2(Advanced/Airport)-BCP)に基づき、空港関係者やアクセス事業者と連携し、災害時の対応を行うとともに、訓練の実施等による空港BCPの実効性の強化に努めている。

イ 空港インフラの強靱化の推進

航空ネットワークの拠点となる空港等について、地震被災時における緊急物資輸送拠点としての機能確保、航空ネットワークの維持や背後圏経済活動の継続性確保と首都機能維持を図るため、必要となる滑走路等の耐震対策を進めている。

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