ステップ6 事業の実施、監視等
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本ステップで地方公共団体が実施すること
1. 提供される公共サービスの水準の監視等
募集資料に規定した事項や提案事項など、事業契約書において定められている選定事業者(SPC)が履行すべきものが履行されているか確認します。
2. 金融機関のモニタリング機能を活用したSPCの財務状況の監視等
金融機関の財務モニタリング機能を有効に活用することで、SPCの財務状況が安定的な業務遂行に支障がないか確認します。
- Q6-1:民間事業者が公共サービスを提供するに当たり、地方公共団体がサービスの質を確保するために、どのような取組を行っていますか。
- Q6-2:モニタリング支援業務を外部に委託している事例はありますか。
- Q6-3:財務やキャッシュフローのモニタリングは、どの程度の頻度で実施していますか。また、これらのモニタリングも外部委託していますか。
- Q6-4:建設期間中に、SPCが地方公共団体に提出する報告書はどのようなものがありますか。
- Q6-5:施設の竣工時に行う履行確認検査は、PFIと従来の請負工事とでは違うのでしょうか。
- Q6-6:サービス対価の減額の程度は、どのように設定するのでしょうか。
- Q6-7:モニタリングの結果は公表するのでしょうか。
- Q6-8:SPCの経営状況についてはどのようにして把握していますか。
- Q6-9:SPCが破綻した場合はどのように対応するのでしょうか。
- Q6-10:金融機関によるモニタリングとはどのようなものですか。
- Q6-11:民間事業者が会計・税務処理等を行う際に、参考となる指針や通知等はありますか。
Q6-1:民間事業者が公共サービスを提供するに当たり、地方公共団体がサービスの質を確保するために、どのような取組を行っていますか。
Answer
PFI事業では、地方公共団体がサービスの質を確保するため、主に次のことを行っています。
(1)事業契約書への明記 |
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選定事業者が実施すべき事項を、事業契約書に明記します。また、施設の利用者等が支払う利用料金に関しても規定します。例えば、「先行事例の紹介」の「(仮称)松森工場関連市民利用施設事業」では、利用料金の設定、変更に際して、市の同意が必要なことが事業契約書に規定されています。 |
(2)モニタリングの実施 |
地方公共団体は、選定事業者が契約内容を履行していることをモニタリングを通じて確認します。なお、モニタリングを実施することについても、事業契約書に明記します。 |
(3)サービス対価の減額等 |
モニタリングの結果、選定事業者の不履行が明らかになった場合、ペナルティを付与し、必要に応じてサービス対価を減額したり、事業契約を解除します。減額等の方法についても、事業契約書に明記します。 |
なお、モニタリングについては、「モニタリングに関するガイドライン(平成15年6月23日内閣府PFI推進委員会)」やコンサルタント等の意見が参考になります。
Q6-2:モニタリング支援業務を外部に委託している事例はありますか。
Answer
先行事例では、事業者選定アドバイザリー業務の委託期間は、選定事業者との事業契約締結までです。この場合、必要に応じて、それ以降のモニタリング支援業務は、別途委託しているようです。
「調布市立調和小学校整備並びに維持管理及び運営事業」においては、運営・維持管理モニタリング業務を、「市川市立第七中学校校舎・給食室・公会堂整備等並びに保育所整備PFI事業」においては維持管理モニタリング業務を、外部のコンサルタント等に委託しています。
また、「千葉市消費生活センター・計量検査所複合施設PFI特定事業」のように、施設の整備期間と供用開始1年目のみ外部委託し、供用開始2年目以降は庁内職員のみで実施している例もあります。
なお、モニタリング支援業務をコンサルタント等に外部委託しても、モニタリングの最終責任者は地方公共団体にあることに留意する必要があります。
Q6-3:財務やキャッシュフローのモニタリングは、どの程度の頻度で実施していますか。また、これらのモニタリングも外部委託していますか。
Answer
先行事例では、例えば、「八雲村学校給食センター施設整備事業」、「市川市ケアハウス整備等PFI事業」、「八尾市立病院維持管理・運営事業」、「寒川浄水場排水処理施設更新等事業」においては、SPCの年次決算報告書の内容の確認が、事業担当や財政関係の部局により毎年行われています。
なお、「市川市ケアハウス整備等PFI事業」、「寒川浄水場排水処理施設更新等事業」においては、SPCの年次決算報告書の内容の確認をコンサルタント等に外部委託しています。
なお、「市川市ケアハウス整備等PFI事業」、「寒川浄水場排水処理施設更新等事業」においては、SPCの年次決算報告書の内容の確認をコンサルタント等に外部委託しています。
Q6-4:建設期間中に、SPCが地方公共団体に提出する報告書はどのようなものがありますか。
Answer
「先行事例の紹介」で得られた、建設期間中に提出する報告書に関する情報を示します
事業名 | 建設期間中のSPCからの提出書類 |
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多摩地域ユース・プラザ(仮称)整備等事業(東京都) | 1 工事完了届 2 工事記録写真 3 完成図(建築(総合)) 4 完成図(建築(構造)) 5 完成図(電気設備) 6 完成図(機械設備) 7 完成写真 8 工事の数量等が把握できる資料 9 その他必要書類 ※ 上記書類を、施設終了後に提出。 |
四日市市立小中学校施設整備事業 | 1. 機器承諾願: 1部 2. 残土処分計画書: 1部 3. 産業廃棄物処分計画書: 1部 4. 主要工事施工計画書: 1部 5. 生コン配合計画書: 1部 6. 各種試験結果報告書: 1部 7. 各種出荷証明: 1部 8. マニュフェストA・B2・D・E 票: 1部 |
新総合福祉・ボランティア・NPO会館(仮称)等整備事業(岡山県) | 工事請負契約上の書類(A4ファイル綴じ1式) ○監理業務完了通知書A4 1 部 ○しゅん工届(完成通知書) A4 1 部 ○しゅん工引渡書/受書A4 1 部 ○しゅん工書類引渡書/受書A4 1 部 ○かぎ引渡書/受書A4 1 部 官公署関連許認可書類(A4ファイル綴じ1式) ○官庁届出書類及び許認可証A4 1 部 しゅん工図(原図等1式) ○二ツ折製本A1(A2) 3部 ○第2原図A1(A2) 1 部 ○二ツ折製本A3縮小版3部 ○第2原図A3縮小版1 部 ○金文字製本A4 1 部 ○CADデータA4 1式 施工図(総合図を含む。) ○二ツ折製本A1(A2) ○第2原図A1(A2) 1 部 ○二ツ折製本A3縮小版1部 ○第2原図A3縮小版1部 しゅん工写真等 ○アルバム(しゅん工写真) 1式 ○工事記録(写真) 1式 ○CD-ROM 1式 その他 ○構造計算概要書A4 一級 ○取扱説明書A4 一部 ○予備品一覧表A4 一部 ○特定工事の保証書A4 一部 ○主要仕上材一覧表A4 一部 ○主要資材一覧表A4 一部 ○機器・備品一覧表A4 一部 ○機器・備品の保証書A4 一部 ○機器試験成績表A4 一部 ○工事中の検査記録,性能表A4 一部 ○保守管理要望参考資料A4 一部 ○総合実施工程表A4 一部 ○協力業者リストA4 一部 ○施工確認シートA4 一部 |
市川市立第七中学校校舎・給食室・公会堂整備等並びに保育所整備PFI事業 | 1 日曜・祝日等の工事施工届 :2 部 2 承諾願(機器承諾願):2 部 3 承諾願(残土処分計画書):2 部 4 承諾願(産業廃棄物処分計画書):2 部 5 承諾願(主要工事施工計画書):2 部 6 承諾願(生コン配合計画書):2 部 7 報告書(各種試験結果報告書):2 部 8 報告書(各種出荷証明):2 部 9 報告書(マニュフェストD票):2 部 (内、一部は原本)ただし、これらについては、ケアハウス事業者と共同で各書類を作成し提出すること。 解体撤去等については、この限りではない。 また、承諾願については、建設企業体が工事監理者に提出してその承諾を受けたものを工事監理者が乙に提出し、乙が承諾した写しを甲に提出・報告する。 |
Q6-5:施設の竣工時に行う履行確認検査は、PFIと従来の請負工事とでは違うのでしょうか。
Answer
どちらの方式でも履行確認は行いますが、その内容はやや異なります。これは、従来の請負工事とは異なり、PFIは民間事業者の責任において提供されるサービスを購入する方式であることによります。
「先行事例の紹介」で得られた、竣工時に伴う履行確認に関する情報を示します。
事業名 | 竣工時に伴う履行確認 |
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四日市市立小中学校施設整備事業 | 第31条(市による完工確認) 1 市は、第28 条及び第29 条に定めるところの事業者による検査の終了後、それぞれの供用開始に先立って、以下の各号に定めるところに従って体育施設及び体育施設を除くその余の整備対象施設の完工確認をそれぞれ実施するものとする。 (1) 事業者は、工事現場において、建設者及び工事監理者を立ち会わせ、かつ、施工記録を準備した上、市による完工確認を受ける。 (2) 市は、体育施設及び体育施設を除くその余の整備対象施設と設計図書との照合により、それぞれの完工確認を実施する。 (3) 事業者は、事業者による機器、器具、什器備品等の試運転とは別に、機器、器具、什器備品等の取扱いに関し、市に対して説明する。 (第2項略) |
留辺蘂町外2町一般廃棄物最終処分場整備及び運営事業 | 第25条(事業用地への立ち入り) 甲は、本処分場の建設工事が施工計画書及び設計図書に従い施工されていることを確認するため、建設期間中いつでも、乙に対する事前の通知により工事現場内に立ち入り、乙又は工事受託者から説明を受けることができるものとする。 第28条(本処分場等の完工確認) 1 甲は、乙から、本処分場の整備が完了した旨の通知を受けた場合、本処分場について、設計図書に従った建設工事が行われていること及び備品リストに記載された備品が整備されていることを確認するため、通知受領後三週間以内に完工確認を実施するものとする。 (以下、第2~第4項略) |
寒川浄水場排水処理施設更新等事業(神奈川県) | (県企業庁による新設施設の完工確認及び完工確認通知の交付) 第30 条 第27 条及び第28 条の検査・運営準備が完了し、前条の試運転を実施したことを受けて事業者から提出された完成届を県企業庁が受領した場合、県企業庁は、完工確認として、新設施設が本契約、業務要求水準書、提案書及び維持管理・運営仕様書に規定された性能及び仕様を充足し、業務を実際に実施しうる体制にあることを施工記録簿、試運転結果報告書及び研修実施結果報告書等により確認する。 2 県企業庁は、完工確認の結果、不備が発見された場合、事業者に対して改善勧告を行う。 3 完工確認の方法その他の詳細については関係者協議会における協議で定める。 4 県企業庁は、第1 項による確認の後、事業者に対して完工確認通知書を交付する。 5 県企業庁による完工確認通知書の交付を理由として、県企業庁は新設施設の設計及び建設の全部又は一部について責任を負担するものではない。 |
Q6-6:サービス対価の減額の程度は、どのように設定するのでしょうか。
Answer
減額の方法については、「モニタリングに関するガイドライン(平成15年6月23日内閣府PFI推進委員会)」の20ページ~21ページを参考にしてください。減額の程度については次のとおり記載されています。
「モニタリングに関するガイドライン(平成15年6月23日内閣府PFI推進委員会)」の抜粋 |
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減額については、それを行うことによりサービス提供そのものが損なわれてしまうこと等がないよう他の措置とバランスをとり選定事業者の財務状況の急速な悪化への懸念にも配慮して検討する必要がある。 また、各サービスの要求水準の重要性等を加味した上で、要求水準書に定める指標を満たすかどうかを踏まえた減額を行うことが必要である。例えば、減額の対象とする個々のサービスの中でサービス提供を受けられない場合等の深刻度や影響度等を考慮して重み付けを行い、これに対応したポイントを付し、その累積が一定以上になると減額を行うことや、全体に占める各サービスの重み付けをし、サービスの提供を受けられない場合等の期間に対応した減額を行うことなどの考え方がある。 |
Q6-7:モニタリングの結果は公表するのでしょうか。
Answer
モニタリングの結果については、「モニタリングに関するガイドライン(平成15年6月23日内閣府PFI推進委員会)」の27ページ及び「地方公共団体におけるPFI事業について(平成12年3月29日自治事務次官通知)」の第1の6に示されるとおり、住民等に対し公表することが必要です。
ただし、公表することにより民間事業者の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれのある事項については、あらかじめ事業契約等で合意の上、これを除いて公表することが必要です。
Q6-8:SPCの経営状況についてはどのようにして把握していますか。
Answer
「先行事例の紹介」で得られた、SPCの経営状況の把握方法に関する情報を示します。
事業名 | SPC経営モニタリング | ||
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提出期限 | 監査人 | 提出物 | |
山陽町新型ケアハウス整備事業 | 各会計年度の最終日から3カ月以内 | 公認会計士等又は監査法人 | 財務書類 |
「豊川宝飯衛生組合斎場会館(仮称)」整備運営事業 | 各「事業年度」の終了後3ヶ月以内 | 公認会計士 | 決算報告書 |
(仮称)松森工場関連市民利用施設整備事業(仙台市) | 事業年度の最終日より3ヶ月以内 | 公認会計士 | 監査済財務書類 |
(仮称)大分市鶴崎総合市民行政センター整備事業 | 事業年度の最終日より3ヶ月以内 | 公認会計士又は監査法人 | 監査済財務書類 |
寒川浄水場排水処理施設更新等事業(神奈川県) | 事業年度の最終日より3ヶ月以内 | 公認会計士 | 監査済財務書類 |
指宿地域交流施設整備等事業 | 各会計年度の最終日から3カ月以内 | 公認会計士 | 監査済財務書類 |
Q6-9:SPCが破綻した場合はどのように対応するのでしょうか。
Answer
「先行事例の紹介」に示す「福岡市臨海工場余熱利用施設整備事業」では、平成14年4月に施設の供用を開始したものの、平成16年11月に選定事業者の代表企業が民事再生法を申請し、事業を中断することとなりました。
しかし、選定事業者が、別の民間事業者に本施設を売却することとなり、事業は施設の運営再開に向けて進んでいる状況です。
仮に、このような事業が第3セクターによって実施されていた場合、第3セクターが経営不振に陥ったときは、地方公共団体が追加的な財政支出(損失補てん)を行い、事業が継続されていたことも想定されます。
Q6-10:金融機関によるモニタリングとはどのようなものですか。
Answer
SPCが金融機関から資金を借り入れる場合、原則として当該事業からの資金がSPCの借り入れ返済の唯一の原資となるため、SPCの経営が計画どおり進捗し借入金の返済に支障がないかどうかについて、融資金融機関は強い関心を持っています。そこで融資金融機関は融資契約に基づき、SPCの財務状況をモニタリングします。
具体的には、SPCの窓口となるエージェント銀行を定め、SPCからエージェント銀行に対して定期的に財務諸表の提出や事業計画並びに計画に対する実績値等の報告を求めることにより、財務状況を融資期間を通じてモニタリングすることになります。
また、融資金融機関はエージェント銀行を通じて、SPCの預金口座の管理を行い、SPCの資金が事業目的に沿った形で支出されているかどうか資金の流れを管理することになります。
このように、金融機関によるモニタリングは、地方公共団体がSPCの財務状況の監視を行う上で有効に活用でき、事業の安定的な継続に寄与するものと考えられます。
Q6-11:民間事業者が会計・税務処理等を行う際に、参考となる指針や通知等はありますか。
Answer
民間事業者が会計処理等を行う際の取り扱いを明らかにしたものとして、企業会計基準委員会から「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い」が公表されています。
また、税務処理等については、各種事務連絡等が参考になります。