産業再生機構(仮称)に関するQ&A


  1.総論

1. 事業再生とは何ですか。
2. 今、なぜ機構を設立するのですか。設立の目的は何ですか。
3. 機構は何をするのですか。
4. 企業の再生は、民間に任せておけばよいのではないですか。
5. 機構の仕組みを使うと、どのようなメリットがあるのですか。
6. 再生計画の判断はどう決めるのですか。機構は企業の生死を決めることになるのでしょうか。
7. 機構の具体的な業務の流れを説明してください。
8. 政府は機構にどのような形で関与することになるのですか。
9. 機構の秘密保持と情報公開についてはどうなるのですか。

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Q 1−1 事業再生とは何ですか。図1参照
A  事業再生とは、過剰債務に陥っている企業がコアとなる事業に関して十分な競争力がある場合、これを過剰債務の原因となっている不採算部門から切り離すことなどにより、競争力を回復することです。
 

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Q 1−2 今、なぜ機構を設立するのですか。設立の目的は何ですか。
A  今般、機構が設立されるのは、
(1)  経営が悪化し出した企業は時間の経過とともにその悪化のスピードが増すために、早急な事業の立て直し(事業再生)を行い、これを通じて産業全体の競争力強化に資するようにすることが国民経済的にもプラスになると考えられること
(2)  不良債権を速やかに処理し円滑な金融仲介機能を回復する必要があること
(3)  他方、こうした事業再生は本来民間ベースで行われることが望ましいものの、事業再生に関するわが国のマーケットは未だ充分発達していない面も指摘されていること
等の理由に基づき、産業・金融一体となって、企業・産業の再生を政府として強力に推進する一環として設立されるものです。

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Q 1−3 機構は何をするのですか。図2参照
A  企業の再生が可能な場合であっても、例えば、メインバンクと非メインの金融機関間で調整が困難なために再生計画が進まないような場合があります。このような場合に機構がメインバンクと非メインの金融機関との間を中立的な立場から調整して債権を買取り、集約化します。(なお、 Q3−3.も参照。)また、機構は非メインの金融機関に再生計画への同意を求め、再生計画の成立のため中立的な立場から調整を行うこともあります。更に、成立した再生計画の実施をモニタリングすることなどにより、事業の再生を支援します。必要に応じ、融資、保証等のニーズにも対応します。
 

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Q 1−4 企業の再生は、民間に任せておけばよいのではないですか。
A
(1)  企業再生については、基本的には民間主体で進むことが望ましいと考えられます。しかしながら、企業再生・産業再生に日本全体で急いで取り組む必要がある(Q1−2.参照)との認識はあるものの、メインバンクと非メインの金融機関間で調整が困難な場合もあり(Q1−3.参照)、また、事業再生に関するわが国のマーケットは未だ充分発達していない面も指摘されています。更に、異なる銀行グループにまたがるような事業再生は、民間だけでは難しい場合も多いと考えられます。こうした理由から、期間を限って政府の関与により事業再生を促進する組織が設立されることになりました。
(2)  いずれにしても、本来は民間主体で進むことが望ましい分野であり、機構の活動に当っては、貸出債権マーケットの整備・拡充、その証券化商品の普及、企業再生マーケットの育成なども視野において、民間の叡智・活力を最大限活用することとしています。
 

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Q 1−5 機構の仕組みを使うと、どのようなメリットがあるのですか。
A  機構の仕組みを使うメリットとしては、当事者間だけでは調整が困難な金融機関等の利害を中立的な立場で調整することにより、債権の集約化が容易となるほか、以下のようなメリットが発揮されるような仕組みとなる見込みです。
(1)  機構が支援することを決定すれば、必要に応じ、買取決定までの間、機構から関係金融機関等に対して抜け駆け的な回収をしないよう一時停止の要請をしますので、債務者やメインバンクにとって再生計画の調整がしやすくなります。
(2)  産業再生法の認定基準と概ね共通の基準を採用しますので、債務者は産業再生法の認定を受けることにより、減税等の措置も受けることができます。
(3)  政策金融機関も事業再生への協力に努めます。
(4)  再生過程で必要な資金調達についても、必要に応じて、機構が融資を行ったり、政策金融機関などを紹介しますので、債務者の再生可能性が高まるとともに、メインバンクや非メインの金融機関にとっても再生計画に参加しやすくなります。

(注) 機構が関与して策定された再生計画により債権放棄等が行われた場合の税務上の扱いについては、Q6−3.をご参照ください。
 

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Q 1−6 再生計画の判断はどう決めるのですか。機構は企業の生死を決めることになるのでしょうか。
A
(1)  機構は、当該企業が再生計画3年以内の終了時点で機構以外からの資金調達が可能となる蓋然性が高い等、買取った債権等の譲渡等という出口を見据えた判断をします。
(2)  即ち、機構は対象事業者の早期の再生が可能となるようにという観点から、メインバンク等と再生計画の調整を行っていくのであり、対象事業者の生死を機構が決めるというわけではありません。

(注) 再生計画の内容等について、メインバンク等との調整が下記Q1−7.(1)の事前の審査の段階でつかない場合や、下記Q1−7.(2)の支援決定が行われない場合に対象事業者に関する情報を機構が公表することはありません。
 

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Q 1−7 機構の具体的な業務の流れを説明してください。図3参照
A
(1)  対象事業者やその債権者の金融機関等から機構に対し再生計画を添えて事前の相談があった場合、事前の審査などを行います。この段階で、機構が情報を外部に漏らすことはありません。
(2)  その後、対象事業者及びその債権者の金融機関等からの正式な支援の申し込みを受けて、産業再生委員会が当該事業会社の事業再生の可能性が高いと判断した場合に、対象事業者に対する支援決定を行います。
(3)  支援決定後は、関係金融機関等に対し機構への債権買取り申込みまたは再生計画に対する同意を求め、これが得られれば、産業再生委員会が債権買取り等の決定を行います。
(4)  買取り後は、機構は再生計画をフォローするとともに、必要に応じ融資・保証等のニーズにも対応します。
(5)  その後機構が保有する債権は、原則として、買取決定後3年以内に譲渡などの処分を行うこととしています。
 

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Q 1−8 政府は機構にどのような形で関与することになるのですか。
A  主な政府の関与としては、以下のようなものがあります。
 
(1)  機構の役員、産業再生委員会委員の選任の認可
(2)  業務運営への関与(支援基準の作成、産業再生委員会による債権買取決定時の意見陳述など)
(3)  予算等の認可
(4)  機構の借り入れへの政府保証
 

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Q 1−9 機構の秘密保持と情報公開についてはどうなるのですか。
A
(1)  機構の保有する情報は、債務者企業にとっても金融機関等にとっても、極めて機密性の高い情報であると考えられます。このため、対象事業者及びその債権者の金融機関等から機構に対し事前の相談があった場合、この段階で、機構が情報を外部に漏らすことはありません。
(2)  メインバンク及び債務者からの正式な支援の申込みを受けて、産業再生委員会が事業再生の可能性が高いと判断し、対象事業者に対する支援決定を行った場合に、その決定の概要が初めて公表されます。
(3)  逆に、機構が対象事業者に対する支援決定をしないときは、対象事業者について機構が公表することはありません。
(4)  このように秘密保持を徹底するため、インサイダー取引の排除を含めて機構は厳格な社内規程等を策定して内部情報管理を徹底することとしており、法案上も、機構の役職員に対しては、特別秘密漏泄盗用罪(注1)や特別賄賂罪(注2)等を設け、民事上の責任追及だけではなく罰則に担保された守秘義務規定を設けることとしています。
(5)  また、機構が取り扱う情報は、その多くが個別企業の機密情報であり、こうした情報は開示することは不適当であるため、情報開示の対象にする予定はありません。ただし、機構は、一方で、10兆円の政府保証を受けて業務を行うなど公的な側面もあることから、国民に対する一定の説明責任を果たす必要があると考えます。そのため、上述のように産業再生委員会が正式に支援決定を行った場合のほか、買取り、処分の決定を行った場合には、その決定の概要については、公表することを予定しています。
 
(注1)  特別秘密漏泄盗用罪について、法案では1年以下の懲役又は50万円以下の罰金を規定しています。これは、機構が、株式会社でありながらも高い公共性を有した組織であることなどを踏まえ、公務員と同等の罰則を課したものです。
(注2)  特別賄賂罪について、法案では、機構の役職員が職務に関して、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、3年以下の懲役に処する旨及びこれによって不正の行為をし、又は相当の行為をしなかったときは、5年以下の懲役に処する旨規定されています。また、機構の役職員に対して賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する旨規定されています。これらの規定は、一般の株式会社にはありません。
 

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