I 栄典の意義

I-1現代における栄典の意義について 現状
日本国憲法において、栄典の授与は、内閣の助言と承認により天皇が国民のために行う国事行為の一つとされている(第7条第7号)。
栄典とは、国家や社会への永年の功労あるいは社会の各分野における優れた行いに対して国家が個人を顕彰する制度であり、このような制度は洋の東西を問わず広く世界各国共通に存在する制度である。(政府が行った調査によれば、回答の得られた98か国のうち91か国に勲章制度が存在している。)
また、勲章は、国賓の来日等の機会に相互に交換されたり日本に対して功績のある外国人に贈られるなど国際的な友好親善を深める役割も果たしている。
我が国の勲章制度は明治8年にヨーロッパ先進諸国の勲章制度に倣って創設され、創設当時は軍人・官吏を中心に運用されていたが、戦後昭和39年に生存者への叙勲を再開するに当たり、この運用が大幅に改められ、各界各層のあらゆる分野において国家や社会に対して功労のあった者を幅広く対象とすることとされた。以来現在まで、年に2回春(4月)と秋(11月)に行われる叙勲を通じて28万人を超える方々が受章している。(勲章・褒章制度の沿革については資料8を参照
懇談会における主な議論
  1. (1) 歴史と伝統、文化
    • 我が国の栄典制度は長い歴史と伝統があり、日本の文化の一つとなっている。
    • 栄典制度の持つ文化的意味を明確にし、社会の共通の理解としておく必要があるのではないか。
  2. (2) 国家・社会への功労に対する国の評価・報い・栄誉
    • 栄典は、金銭では評価されないような国家・社会・公共への功労を国が評価し、報い、栄誉を称えるもの。
    • 栄典を名誉とする感覚は伝統的に広く残っている。
  3. (3) 各国共通の制度、外交儀礼
    • 国家というものにはそれぞれ国家・社会に対する貢献というものがあり、特に功績があった者を国家が評価し、表彰するというのは各国共通の制度。
    • 栄典制度には外国との交際儀礼という面がある。
  4. (4) 社会への価値判断の提示
    • 栄典制度は社会に価値判断を提示している面があり、その意味で栄典制度の意義は大きい。
    • 「公」の精神を広く国民に浸透させるためにも、国家・社会への貢献を国家が相応に評価するということは意義のあること。
    • 栄典制度が国民に対して「公共心」、「公共性」というものをきちんと発信しているかどうか検討が必要ではないか。
  5. (5) 栄誉の体系として国家に必須、天皇と国民とのつながり
    • 栄誉の体系というものは国家があれば必ずあるもの。
    • 象徴天皇制の下、栄典の授与は天皇の国事行為として天皇と国民を直接つなぐものであり、国民が最も天皇を意識し、国家というものを意識できるものであるから、この制度は維持していくべきもの。
  6. (6) 制度の定着、国民の支持・期待・励み
    • 栄典制度は広く国民の間に定着している。国民からも大方の支持を得ており、栄典に対する期待も高く、現代的な意義は失われていない。
    • 受章者は自分の功績が評価されたことを素直に受け止め、大変喜んでいる。栄典は国民の大きな励みになっており、特に地域において高い志を持って活動している人々の大きな励みになっている。。
    • 50歳以下の年齢層の大多数(若年層に限らず)は、栄典や勲章にあまり明確な意味を感じていないのが現実であり、栄典制度が広く国民の間に定着しているという認識は、その意味で、特に都市部の市民感覚とは一致しないかもしれない。
      一方、21世紀を担う若年層がパブリック・マインドを育み、公的活動により大きな価値を見出すようになるべきであり、そうした観点から、今までのような制度の不備(例えば官高民低、中央偏重等のイメージに繋がる過去の実績)を抜本的に正す視点に立った制度設計が重要。
  7. (7) その他
    • 栄典の意義について、国民により広く理解を得るための方法を考える必要があるのではないか。
    • 若い人にも栄典の意義や勲章の意味が理解される説明が要るのではないか。

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