I.-1.障害者対策に関する新長期計画の策定

新長期計画は、障害者基本法で策定を義務付けられた「障害者基本計画」として位置付けられたものであり、「全人間的復権を目指すリハビリテーションとノーマライゼーション」を理念として「完全参加と平等」を目標に、「障害者の主体性、自主性の確立」「すべての人の参加によるすべての人のための平等な社会づくり」そして「障害の重度化及び障害者の高齢化への対応」「『アジア太平洋障害者の十年』への対応」等を基本的な考え方として掲げている。こうした方針の下に、政府は障害のある人の自立と社会参加を支援するための施策を推進している。また、新長期計画に示された基本的な考え方は、障害者プランを始めとするその後の障害者施策推進の共通的な基本項目となっている。

この新長期計画の中でバリアフリーに関し、「四つの障壁」という考え方を打ち出している。「四つの障壁」は、「障害者を取り巻く社会環境においては、交通機関、建築物等における物理的な障壁、資格制限等による制度的な障壁、点字や手話サービスの欠如による文化・情報面の障壁、障害者を庇護されるべき存在ととらえる等の意識上の障壁」であり、新長期計画では、それらの障壁の除去に向け各種施策を計画的に推進するとしている。

物理的な障壁についての認識は、住宅分野から、公共建築物・施設、公共交通機関、民間建築物、さらには面としての街全体の在り方へと広がった。1994年には、公共の建物のバリアフリー化推進のため、「高齢者・身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」が制定され、交通の分野においても2000年に「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」が制定されるなど、物理的な空間・環境におけるバリアフリーへの取組は大きく前進した。また、国は、障害のある人が自立して生活し、積極的に社会参加していく上で、まち全体を障害のある人にとって利用しやすいものへと変えていくことが重要であるとの視点に立ち、各地で進められている総合的かつ計画的なまちづくりを積極的に支援している。

制度的な障壁の具体例としては、各種の資格制度、国家試験の欠格事由等が挙げられる。各種の資格試験では欠格事由が設けられており、障害のあることが欠格事由になっていたものも少なくなかった。このため、計画期間内に障害者に係る欠格事由を定めた63制度について、すべての見直しを終了することとしている。

文化・情報面の障壁の問題については、視覚障害や聴覚障害によりコミュニケーションに困難が生じている状況から、その障壁を除去するために、手話通訳者等によるサービス、テープ・点字書籍等による情報提供を行うほか、文字放送・字幕放送等の充実、テレビ番組に字幕、手話を挿入したビデオカセットライブラリー等の製作・貸出を行う聴覚障害者情報提供施設の設置を推進した。

意識上の障壁の問題については、障害者基本法に定められた障害者の日(12月9日)等における集中的な広報啓発活動の実施や福祉教育の充実等を行っている。

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