障害者差別解消法の見直しの検討に関する事業者団体合同ヒアリング(10月20日)議事録

令和2年10月20日(火)
10:30~11:18
中央合同庁舎8号館1階講堂

【議事に使用されている資料については「議事次第」のページにまとめて掲載していますのでご参照ください。】

○内閣府 植草企画官 それでは、お配りしている出席者一覧の記載順で御発言をお願いしたいと思います。まず、全国質屋組合連合会の加藤副会長よりお願いいたします。

○全国質屋組合連合会 加藤副会長 全国質屋組合連合会副会長の加藤でございます。
 まず、障害者差別解消法の趣旨について、職員に知識はあるかということなのですが、まず、現時点では、本法自体を知らない場合がかなり多いと思いますので、今後、周知が必要になるとともに、ケースに応じた、なるべく具体的な対処方法をお示しして頂くことが必要になるかと思っております。
 業務上、障害者の方と接する機会はどの程度あるのかということなのですが、視覚障害のある方、聴覚障害のある方などの御来店もあります。あと、やはり車椅子での御来店の方が多いのですが、店舗によりましては、昔から質屋という防犯上、店舗として非常にカウンターが高い場合が多いのです。だから、どうしても会話がスムーズにいかない場合などは、お客様側に回って話すということも多いのです。
 店舗によりましては、店内が狭い場合、車椅子のまま入店できないこともございます。今後はそういった問題をできるだけクリアにして、本法の趣旨に沿って、皆様に御利用頂けるようにしていきたいと考えております。
 ただし、質屋の数も少し減っていまして、工事経費などは、今、コロナ禍でお客様がちょっと減少しておりまして、経営が厳しい中、負担が大きいことだけは御理解頂きたい。
 また、業務上、障害者の方に対して通常どおりに対応したのでは、本来のサービスが提供できない場合はあるのかということなのですが、初回御利用時、初取引カードという身分証明みたいなものを記入して頂く場合は、障害類型によっては難しい場面が考えられます。あと、取引内容、重要事項等の説明時、障害類型によっては契約内容などを理解頂けるか難しい場合があります。
 本来の質のサービスを提供するために、障害者の方に配慮して特に行っていることはあるかということなのですが、視覚障害のある方の御来店時には、口頭による御説明、聴覚障害のある方の御来店には筆談による説明を心掛けております。
 先ほど述べましたように、車椅子が入りづらい店舗、リニューアルした質屋の店舗に関しては、かなりバリアフリーで、自動ドアで入りやすい傾向にはなっているのですが、皆様も御存知のとおり、町にある質屋さんのイメージからいくと、どうしても段差があって、車椅子の方が非常に入りにくいかと思われます。店の前のスペースに、その旨を伝える張り紙を掲示して、お電話をして頂いたり、お電話をして頂いてスロープを持って入って頂く。あるいは、店舗外で対応させて頂くということをしております。
 配慮する上で特に負担を感じていることはあるかということなのですが、こちらの配慮が逆に負担になっているのかもしれないと思うことも多いです。段差があったり、入りにくいとか入れないということを、小さいお店も多いので、その辺は非常に感じます。
 あと、業界の中で特に効果的な取組を行っている事業者の取組内容ですが、前述しましたが、視覚障害のある方は御来店には口頭による御説明、聴覚障害のある方は筆談の御説明を心掛けております。
 車椅子でお越しの場合は、どうしてもスロープを持ってこないと入れない店が全国的にも多く、このあたりは考えていかないといけないと思っております。
 以上です。

○内閣府 植草企画官 どうもありがとうございました。
 続きまして、一般社団法人全日本指定自動車教習所協会連合会の内山事務局長、お願いいたします。

○(一社)全日本指定自動車教習所協会連合会 内山事務局長 全指連の内山と申します。
 私どもの団体は、47の都道府県協会と、全国約1,250の指定自動車教習所を会員とする一般社団法人であります。
 1点目の、職員について知識はあるかということですが、私どもは毎月『自動車学校』という機関誌を1万4000部ぐらい発行しておりますけれども、平成28年の4月号に、「障害を理由とする差別の解消の推進について」という解説記事を掲載したり、あるいは警察庁さんからも平成28年から毎年、障害者差別解消法に基づく事業者の措置に関する調査というのを承っていますけれども、その中で出てきた好事例、84事例について、このような冊子にして、全国の指定教習所にお配りをしているような対応を取っておりますので、会員教習所の職員等々の知識については、相当程度浸透していると承知をしています。
 2点目の障害者の方と接する機会、あるいはどのような障害類型が多いのかということでありますけれども、ざっくり言うと、例えば、昨年の教習所への障害者の方の入校生は943名でした。大体年間1,000名弱でしょうか。内訳でいうと、四肢障害者の方々が428名、聴覚障害者の方が、重度障害者の方も含めて397名、その他の障害者の方が118名というような内訳になっていますので、おおむね日常的とまでは言いませんが、それなりの数の対応をさせて頂いている、経験値としてはあるとは思っております。
 ただ、私どもの業界は、他の業界さんと何が違うかと言いますと、一過性の対応ではなくて、入所して頂くと、免許を取るまでの長い間ずっと、一生懸命、一緒になって御対応するというところが違うところだと思います。
 例えば、他方で、業務上通常どおりにやっていたのでは本来のサービスが提供できない場合はあるかというお問合せですけれども、これについては、通常どおりにやっていると、障害者の障害の程度に応じた配慮をずっとしていかないと、免許の取得まで至らないと思います。それは当たり前のようにそういう配慮をずっと継続して、入校している間は継続しているというのが私どもの業界なのかなと思っています。
 例えば、具体的に言うと、発達障害や知的障害のある方については、学科教習が不得意ですので、その方については個別指導を加えるとか、あるいは車椅子でしか移動ができない方については、全ての教習所にエレベーターがあるわけではありませんので、その方の予約に応じて、授業の内容に応じて、人員配置をしておいて、手作業で2階まで上げる等々の対応が必要だと思いますし、発達障害のある方には、人が変わるとちょっと嫌がる場合もあります。その方の特性を把握して、指導員として教習していかなければいけませんので、その方がお休みになった場合も、他の指導員が対応しても同じように対応できるようにチームを編成するなど、いろいろな細かな配慮をしているところであります。
 障害者の方に対して、特に配慮をしていることでありますが、そもそも免許を取得するために入校して頂く場合には、すぐは受け入れられないのです。障害者の方が免許を取りたいと私どもの方にお越しになった場合は、まずは県警察の運転適性相談室に行って御相談をして頂かなければいけないのです。県警として、この方については、そもそも免許は取れませんという判断をするのか、あるいはこういう条件だったら教習をしていいですよという教習条件を付けて頂くことが前提です。教習条件を付けて頂く中身について、教習相談終了書という書式がありますけれども、それを私どもへお持ち頂いて、そこから個別の御相談で教習が始まるという流れになっています。
 具体的な事例、効果的な事例で、障害者の方はそういう制度は御存知ありませんので、例えばホームページに、障害者の方向けに、こういう流れになっていますので、まずは適性相談室に行ってくださいというようなホームページ上のリンクを貼ったり、あるいは、県警との日程調整を教習所が担ってみたり、場合によっては同行してあげたりというようなこともあり、教習所によってちょっとずつ違いますけれども、可能な範囲で対応しているところであります。
 あと、発達障害のある方などについては、前の方の座席に座ると落ち着かないということを仰る方もおられるので、その方については教室の後ろの方の席を確保するとか、例えば、車椅子の方だと、ずっと乗っているとやはりお疲れになりますので、横になれるような設備がある場合には、そこを御提供するとか、個別の内容に応じて対応しているところであります。
 逆の例で、うまくいかない事例というのは、例えば、教習所の場合は車の運転の教習をするわけですから、普通に「ブレーキを踏んで」とか「足を離して」みたいなフレーズを発するのが多々あるのですけれども、足のない方にそれを言うといけないというのが、一応、事前の教養とか、事前に認識はしているのですけれども、とっさの判断みたいなところで出てしまうようなことがないわけではありません。
 今の御時世ですと、コロナですので、普通はマスクをしていますけれども、聴覚障害のある方は唇を読むみたいなところがありますので、フェイスシールドに変えてみたり、あるいは、言葉で指示をすると、ついつい運転しているときに横を見てしまいますので、例えば指差しで指導するとか、少し視野の範囲内で顔を近づけて指示をするとか、いろいろな場面でそういう細かな配慮しているということであります。
 5点目の、配慮する上で特に負担に感じていることは、うちは1人で運転してもらわなければいけませんので、しかも、障害のない方も障害者も合否の基準は変わりません。障害者だから緩くすることもありませんので、1人で運転するために全部やってもらいます。例えば、車椅子から降りて、乗車をして、自分で車椅子をしまって、フルオープンにしたドアをどうやって閉めるか。ベルトを挟んで閉めるとか、そういう細かな配慮を一緒になって考えながらやって頂くということだと思います。
 それ以外に、うちとしてやっているのは、研修会の実施で、障害者研修については、平成10年からこれまで1,000人以上の指導員の方が受講して頂いていますし、今、注力をしている発達障害のある方に関しては、こういう教習支援マニュアルとか、高次脳機能障害のある方については、こういう調査研究報告書というのを、作業療法士の方と一緒になって作るみたいな手立てを講じているところであります。
 ちょっと早口ですけれども、以上であります。

○内閣府 植草企画官 どうもありがとうございました。
 続きまして、公益社団法人日本医師会の江澤常任理事、お願いいたします。

○(公社)日本医師会 江澤常任理事 日本医師会の江澤でございます。
 本日は簡単な資料4「団体提出資料:(公社)日本医師会」を提出しておりますので、そちらに沿ってお話ししたいと思います。
 まず、ページをおめくり頂きますと、ガイドラインから一部抜粋しておりますけれども、こういった視点が非常に重要だと思っています。上段の部分ですけれども、いかに国民に理解浸透を図り、共生社会の構築につなげるかという視点がベースには必ず不可欠だろうと認識しております。
 そして、2つ目のポツですけれども、法に定められたから義務としてやる姿勢ではなく、事業者や障害者が歩み寄り理解を深めていくということで、本質的には想いやり的な配慮というものが非常に重要だと思っております。
 次のページ、3ページ目ですけれども、まず、今申しましたように、合理的配慮の義務化について、反対するものでもなく進めていくべきだと思いますが、これは、ある意味では義務化というよりは当然行うべき責務だという意味で捉えております。
 そして、そこに「合理的配慮は、万人共通の「人」としての良心的振る舞いであり、本質は『想いやり的配慮』ではないか」と書いております。我々の業界では、特に、障害者あるいは要介護者の方に触れ合うことが多いわけですけれども、当然、仕事の中でも必然的に行われることは多いと思っております。
 あと、やはり我々は人が人に濃厚にサービスする職種でございますので、人と心の共有というのが重要になりますから、我々の業界としては必然的に多くの現場職員等が行っているというように感じています。
 あと、義務化については賛成ですけれども、義務化ということで、これまでの優しさとか心の距離感が離れたり、ぎくしゃくするようなことはないだろうかというのは若干懸念をしておりますけれども、まず、そういう考え方でございます。
 そして、難しいのは、義務化の範囲をどうするかでございまして、義務化につきまして、当然必要な支援はどんどん行うべきで、一方で、どうしても優しい気持ちから必要以上に支援したり、過剰に介護するということが時として起こり得ることです。それは自立支援を阻害することにもなりかねないときもあります。したがいまして、この義務化の範囲を慎重に検討していくべきであろうと思っております。そして、包摂的社会、共生社会においても、当然不可欠の視点であり、ぜひこういったことは進めて頂きたいと思っております。
 法律ではなく倫理と書いてあるのは、先ほどのガイドラインの趣旨のとおりでございまして、法律で決めたから義務的に行うということよりは、ちゃんと人を大切に支える、あるいは優しく想いやるということからそういうアクションを起こすということにつながることが重要ではないかと思っております。
 そして、先ほど申しましたように、我々は患者さんとか要介護者の方に最も触れ合うわけですけれども、皆さん好き好んで、自らの希望で要介護あるいは障害者、認知症等になっている方は当然誰もいらっしゃらないわけで、御家族、御本人もいろいろ悩みを抱えたり、つらい部分もありますし、ときには楽しいこともあると思います。そういったところに、私たち現場職員としては共感をしながら、今までも仕事をしてきたわけでございますけれども、そういった視点は、更にこういった取組においても尊重して頂ければと思っております。
 そして、次に、最近、病院とか介護施設は相当バリアフリーが進んでおりますので、ハードについてはそれほど問題ないかと思いますが、まだ段差がございましたり、古い建物でも当然一部そういうことがあるわけでございます。そこで、現場職員がどうしたらいいかということを考えながらサポートしているわけで、要は、ハードはソフトをカバーできませんけれども、人の配慮、ソフトはハードを十分カバーできると思っております。
 特に、本見直しを最大限尊重することが重要ということでございますけれども、現場で一番対応に苦慮するケースとしては、やはり、視覚障害、聴覚障害あるいは精神障害、発達障害、そういう方々だろうと思っています。
 例えば、御本人が自分はこういった支援が必要だということを明示するようなツールを用いることも有効ではないかと思っておりますけれども、要は、我々現場職員が気が付かないで配慮が足りないということはあり得るかと思いますので、その辺りをどうカバーしていくのか、つきましては、好事例の共有、そういったことを共有するような研修会等が必要ではないかと思っております。御本人のお気持ちをいかに察して、必要な支援が何であるかが十分把握できるような体制構築というのが必要であると思っておりますので、そういった意味で、その合理的配慮の定義であったり義務化をどう考えていくのか、当然、義務化は進めていくべきものでありますけれども、そういったことについて、これは我々業界だけではなく、各業界、全業界においていろいろと検討していくべきだろうと思います。つきましては、今、日本が国家的に目指している共生社会の構築につながるものでありますし、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
 以上でございます。

○内閣府 植草企画官 どうもありがとうございました。
 では、審議官から総合してコメントをさせて頂きます。

○内閣府 難波審議官 それぞれから大変貴重な御意見を頂きまして、また、実情等も教えて頂いて、ありがとうございました。
 その上で、やはり色々御苦労もあり、また、その中で配慮もしているということもあり、一つ確認したいのは、日本医師会の方から、先ほど、義務化そのものについては反対しない、進めるべきだけれども、例えば、研修とか好事例の共有等が必要だという御意見も頂きました。
 この点、質屋の業界あるいは指定自動車教習所の関係で、義務化をすることについて反対なのか、反対まではしないけれども、こういったことが義務化については必要、何か条件なりこういうことをお願いしたい。行政に対してもそうですし、それぞれの内部でこういう準備が必要とか、あるいは、場合によっては障害者の方にもこういうことは理解してほしいとか、そういうことが義務化に当たっては必要ではないかというように、何か思われることがあるのか、そういったことについて、教えて頂けると有り難いなと思っています。よろしくお願いいたします。

○内閣府 植草企画官 では、大変恐縮でございますが、また順番でよろしいでしょうか。
 加藤副会長からお願いいたします。

○全国質屋組合連合会 加藤副会長 質屋の店舗といいましても、全国的にかなり色々な店舗がございますので、反対、賛成、どちらか言われると、非常に厳しい。反対の店舗もありますし、賛成の店舗もあると思うのですが、これから課題として持ち帰って、もっと多く広めていく。差別解消についても、もっと多くの質屋さん、全国的に広げていかないと、今のところ反対も賛成もなかなか言いにくいところです。
 半々ぐらいで言われるのか、意見を聞かないと分からない状況です。すみません。

○内閣府 植草企画官 続きまして、内山事務局長、お願いいたします。

○(一社)全日本指定自動車教習所協会連合会 内山事務局長 個別の教習所に義務化について問合せをしたわけではありませんが、一般的には義務化について支障があるかないかという括りで言うと、特段支障はないと思います。ソフトの面については、これまでも積み重ねてきたということもありますので、支障はないと思います。
 ただ、ハードの面について、先ほど日本医師会さんからもお話がありましたけれども、私どもも地方の中小企業ですので、やはり身体障害者用の車両を整えるとかバリアフリーにする、エレベーターにしても1,250分の160基ぐらいしか備えていないような地方の中小企業でありますので、施設の充実という意味ではなかなか厳しいところがあるかもしれません。
 先ほど申し上げたとおり、年間1,000人ぐらいの入校者に対して、健常者の方を全部入れると130万人分の1,000ですので、その需要と供給にどれだけ経営資源を投じられるか、体力の問題もありますので、その辺の財政支援ということもお考え頂ければ大変有り難いと思います。

○内閣府 植草企画官 ありがとうございました。
 では、続きまして、江澤常任理事、お願いいたします。

○(公社)日本医師会 江澤常任理事 先ほどの追加になりますけれども、基本的に義務化については賛成でございますが、本来、国民一人ひとりに対するこういった配慮というのは、当然備えるべき、備わっておくべき責務と申しますか、人の資質に関わる部分かと思っておりますので、当然このことについては賛成ですけれども、本来ちゃんと人を大切に支えるとか、優しく想いやるという心から出るアクションがこういった合理的配慮であるべきと考えておりまして、そういうところを思っているところが一点。
 それと、先ほど、中小企業のお話も出ましたけれども、ハードの部分をソフトでカバーできる部分は相当あるかと思いますから、各事業所において、もちろん大変多額を投資してできるところばかりではないと思いますので、そういったことを含めて、やはりここは想いやりと人の知恵というのを十分いかして頂きたいと思っております。
 最後に申し上げますけれども、これはやはり我々現場職員にも気付きが必要ですし、ぜひこういったことを進めるための研修体制はお願いしたいと思います。
 以上でございます。

○内閣府 植草企画官 ありがとうございました。
 今頂きました御意見について若干私からも補足させて頂きます。
 まず、3団体様とも、今の段階から障害者差別の解消に関して非常に前向きに取り組んで頂いているようでして、私も興味深く聞かせて頂きました。本当にありがとうございます。
 その中で、合理的配慮が義務化されてしまうと、事業者にとって厳しくなるのではないかといった御懸念が、やはり皆様おありだと思うのですけれども、基本的に障害者差別解消法のスキームといたしましては、それぞれの事業者さんが、過重な負担のない限りで合理的な配慮をするということになっておりますので、合理的配慮が義務化されたからといって、過重な負担の評価が軽くなるのだよとか、そういうわけではございませんので、まずは配慮して頂くということが重要かと思っております。
 ただ、その中で、どういったものが過重な負担なのかとか、合理的な配慮というのは一体どういうものなのかとか、そういったところは皆さんもこれから御関心になってくると思いますが、それにつきましては、仮に法律が通って義務化された場合は、政府としても基本方針を作り、また、各省でそれを踏まえた対応指針などを作って頂きます。一律に大企業から中小企業まで同じような基準でというのはなかなか難しいので、どこまで皆さんに分かりやすいものになるかは分からないですけれども、最大限なるべく目安になるようなものをお示しできるように努力をさせて頂きたいと思います。
 特に、日本医師会様からも好事例の共有という御意見がございましたが、義務化に伴いまして、事例も増えてくるかと思います。国としても、なるべくその事例を吸い上げて、それを皆様に提供できるような仕組みづくりはしていきたいと思っております。
 あと、もう一点、皆様同じお考えだと思いますけれども、心の対話、心からのアクションということで、合理的配慮を提供する際には、やはり法的にも建設的対話を基にするということがありまして、まずは障害者の方と事業者の方が対話をして頂き、その中で、どういった配慮がふさわしいかという落としどころを探していこうということでございますので、ぜひ、事業者の方におかれましても、そういった観点から、決して無理をなさらない範囲で、できる範囲のことをやって頂くということがよろしいかと思っております。
 私からのコメントは以上でございます。

3 意見交換

○内閣府 植草企画官 それでは、残りの時間で意見交換をさせて頂きます。
先ほど話し足りなかった御意見でも結構ですし、今の当方からのコメントに対する返しでも結構ですので、御発言がある場合は挙手にてお願いいたします。
 また、本日、オンラインの参加者の方がいらっしゃいますので、御発言のときには必ず団体名を仰って頂ければと思います。
 内山事務局長、お願いいたします。

○(一社)全日本指定自動車教習所協会連合会 内山事務局長 全指連の内山です。
 今のお話の、過重な負担のない範囲内でということですけれども、まだ、実際に義務化はされていませんので想定もできないのですけれども。多分、実際に義務化をされた時に、現場の教習所でどうなるかというと、教習を受けることが前提で、受けさせてくださいというお申出があったときに、多分、教習所として、例えば、障害者の車両がないとか、いろいろなハードの部分、その他のことも含めてちょっと受けかねるみたいな場面が出てくると思います。まさに過重な負担という意味で受けかねる場面が出てくると思いますけれども、そうすると、場合によっては義務化をされると、それは義務ではないかという、ある種のトラブルの元といいますか、御納得を頂けるまでに若干の大変さが今まで以上に出てくる場面もあるのかもしれません。

○内閣府 植草企画官 ありがとうございます。
 今頂きました御意見につきまして、先ほど申し上げましたとおり、義務化されることによって提供するものの内容というのは変わらないということがございますが、もう一点、前提としまして、資料1「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の概要と見直しの方向性について」の6ページになるのですけれども、合理的配慮と別の話として、合理的配慮を的確に行うための環境の整備というものがございまして、こちらはまた障害者差別解消法の別の条文に規定がございます。
 例えば、今お話しがありました、特にハード面の整備というのは、環境の整備として努力義務としております。
 では、合理的配慮は実際にどういうものかというと、ここの環境整備を、努力義務でできる範囲のことをやって頂いて、さらに、この環境を前提として、できる範囲、負担の過重でない範囲で配慮して頂くという法の立て付けになっておりますので、まず、そもそも法的な理屈からすると、義務化になったから大変になる、必ずしもハード面を考慮しなければいけないということではないと思います。
 さらに、恐らく、今、事務局長が仰っているのは、それは分かっているのだけれども、義務化されたということをもって、利用者の方が、義務化されたのだからもっとちゃんとやれと仰ることを不安に思っている事業者の方はいらっしゃるかもしれないということだと思うのです。そこについては、まさに差別解消法の普及啓発というものが大事だと思っておりまして、当然、事業者の皆さんにも、この合理的配慮とはこういうものですよというのを、我々としてもしっかり働きかけていきたいですし、また、同時に、利用者の方にも、基本的には対話をして、その中で解決策を見いだしてくださいということは、ホームページ等を通じてこれから呼びかけていかなければいけないと思っているところでございます。
 他に御意見はございますでしょうか。今の関連でも全く違うものでも構いません。
 よろしいですか。

○内閣府 難波審議官 失礼いたします。審議官の難波でございます。
 当方、説明したところは若干重複もあるのですけれども、現在、努力義務ということで合理的配慮は既に法的な義務そのものではないけれども、努力義務ということにはなっているというのが合理的配慮であります。ですので、そこで求められている合理的配慮とか、その場合に過重な負担のない範囲でやってくださいという、そこの線引き自体が、今回、義務化を検討するに当たって何か変わるというものではないということを、一つ御理解頂きたいということであります。
 例えば、障害者の方の目線からしても、これまで事業者の方に努力を求めていたところについて、それは義務でしょうという言い方はできても、義務だからこれまでできなかったこともできるようになるはずだということにはならないというのがございまして、周知、広報、啓発という話を先ほどからさせて頂いていますけれども、事例の積み重ねや、あるいは、よりきめ細かいいろいろな研修等をやることによって、そこの周知は、事業者の方もそうですし、一般の国民、市民に対しても、あるいは障害者の方に対してもやはり図っていく必要はあるのだろうなと思っております。
 また、国の法律は、今、そういう立て付けなのですけれども、都道府県の条例レベルで申しますと、東京都は既に事業者に対しても合理的配慮についてはもう義務化がなされておりまして、また、具体的な動きとして、大阪府もその方向でかなり具体的に今進んでいると伺っております。
 東京都で既に条例は施行されておりますけれども、それをもって東京都内の事業者と障害者の間で、それ以前と比べて何か混乱とか大きな問題だとかという話は、伺う範囲では特に聞こえてきていないというところはあるかなと思っております。
 ただ、これも繰り返しになりますが、日本医師会さんから頂いた資料にもあるとおり、ある意味、常識的に配慮するというのは、事業者と利用者とか、そういった関係では常識的にやるべきことをやるのでしょうというところから出発しているというところで恐らく間違いはないのだろうと思います。
 法律の文言に書くと堅苦しくなったりはしますけれども、その常識的な理解の上に、法律的な形での手当てをするという関係になろうかと思っておりますので、それに当たって、逆に分かりにくくならないように御理解頂き、また、それに沿って分かりやすく対応頂けるような形の手当てが重要なのだろうと、当方としても考えているというところであります。
 随時、御懸念の点がありましたら、仰って頂ければと思いますし、関係省庁におかれても、御協力頂ければ有り難いなと思っております。

○内閣府 植草企画官 今の発言を踏まえまして、特にコメント、御意見はありますでしょうか。

○(一社)全日本指定自動車教習所協会連合会 内山事務局長 義務化の立て付けとか考え方みたいなのは、審議官、企画官が仰ったことは重々理解できたのですけれども、例えば、現場で言うと、ちょっとこだわるようですけれども、教習所側と障害者のお客様とで、やるやらないみたいなトラブルというのはきっと出てくるのだと思うのです。それで、うちとしては、それは合理的配慮の範疇を超えていますと切り捨てるのはなかなか心情的にできないところがありますので、強いて言えば、例えば、紛争解決の窓口を明示して頂くとか、最後、どうしてもお互いに話合いで折り合いがつかない場合は、そこに行って御相談くださいというようなところが、明確にそういう窓口を御教示頂けるのであれば、指定教習所各校に対して、最終的にそうなった場合は、そういうところを御案内してはいかがですかというアドバイスもできますので、その辺も含めて御検討頂ければと思います。

○内閣府 植草企画官 ありがとうございます。
 我々も、今、教習所協会連合会様から御意見を頂きました窓口については、他の事業者の皆さんからも多々御要望頂いておりまして、事業者の方、障害者の方が相談できるようなワンストップの窓口などを設けて対応していくことを検討する必要があるだろうと思っております。
 今、お互い事業者と利用者の間でわだかまりができてしまってどうしようもないということを仰っていましたけれども、できればそうなる前に、前広に相談に来て頂いて、一緒に解決に導いていくようなことができればと思っておりまして、その体制の在り方についても、今後、調査等をして研究しながら、義務化することになった場合には、法施行の前に何らかのものが出来上がるようにしたいと考えております。
 お願いします。

○全国質屋組合連合会 加藤副会長 義務化になったときの罰則などはどうなのでしょうか。

○内閣府 植草企画官 事業者に差別の禁止規定においては、特に罰則規定はございません。
 他にいかがでしょうか。江澤常任理事、いかがでしょうか。お願いします。

○(公社)日本医師会 江澤常任理事 これを進めていくに当たって、やはり国民一人一人の心に響くようなこともぜひお願いしたいと思っております。やはり、私は、人は最期まで誰もが尊厳が保障されるということをずっとライフワークで長年取り組んでおりますけれども、やはり人の尊厳というものを念頭に置いて、相手の立場に立って、なぜこういったことが必要なのかということを十分咀嚼できるように分かりやすく各業界に落とし込んで頂くことが重要であって、やはり、心から、想いやりから行動に出ることが人の本質だと思いますので、ぜひその辺りを御配慮頂いて進めて頂ければと思います。
 以上でございます。

○内閣府 植草企画官 ありがとうございました。

4 閉会(省略)